BLにここまで感情移入して泣くことがあるか…? っていうくらい泣きました。
もちろん悲しいお話ではないのでご安心を。とっても甘々で、温かいお話です。
受けのフィンレイがとにかく健気で逞しい。
中扉のカラーイラストがドレスを着た受けっぽかったため、このご時世にBL作品で受けがドレスを着るのか〜とも思いました。
しかし、ここで引き返すなかれ。これはフレデリックの亡き母が残したドレスを、時間と予算が無いために仕立て直した急拵えのものなんです。それを不満ひとつ漏らさず、幸せそうに着るフィンレイ。
そういう経緯があるイラストで、彼の良いところが一枚に詰められた素晴らしい挿絵です。
私がぼろぼろ泣けたのは、フィンレイがとある事情で愛する人と家族の間で板挟みになってしまったところです。悩み苦しむ姿はとてもリアルで、痩せて指輪が緩くなってしまうシーンには胸が痛みました。
それでも立ち向かうフィンレイの強さ、そして彼の苦悩ごと包み込んでくれたフレデリックの優しさを感じて、たまらなくなりました。溢れたのは辛い涙ではなく、温かい涙です。
繰り返しますが、基本は甘々なので安心して読んでもらって大丈夫です。
何度も改稿を重ねたというのも納得の名作です。
表紙のえっちな美麗イラストに吸引力があります。絵の美しさは、さすがの九尾先生。
受けの揚羽の身体がとても綺麗。すらっと長い手足と、もちもちして柔らかそうなお尻がたまりません。これは高級男娼(確信)
赤面顔がかわいいのもポイント。
攻めの恒ちゃんはイケメン社長でありながら、中身は心優しく繊細なギーク。これは好きにならないわけがない。めんどくさいオタクみたいな振る舞いもなんとなく理解できて笑えます。
メインの2人意外にも、魅力的なキャラクターがたくさん出てきます。
最初は生意気そうにみえたエスメラルダくんの、不器用な女王様には脇役ながら萌えました。彼と中御門のペアはちょっとマニアックすぎる組み合わせかもしれませんが、私はお気に入りの2人です。
出オチみたいな濃さのキャラばかりですが、読んでいけば人間らしい面がどんどんわかってきます。キャラクターの振る舞いから、彼ら自身の背景がちょっと透けて見える感じが好きな方にはたまらないと思います。
エリュシオンという特殊な舞台設定と、個性的なキャラクターが光る神作でした。