海野先生ご本人が「高性能圧力鍋系攻」とTwitterで呟いていましたが、まさにそうとしか言いようのない表現。
とにかく自己評価低めな受けが、顔が好みど真ん中の攻めにでろでろに甘やかされながらちょっとずつ素直になっていく話です。
これまでも甲斐甲斐しく受けを気遣う攻めが登場する作品は読んできたような気がしますが、スパダリというよりは「オカン」。
料理が得意で常備菜は冷蔵庫に切らさない。
卑屈な受けに対してあたたかい言葉で真っ当な評価をしてくれる。
包み込むような攻めの優しさに受けがちょっとずつ慣れていく様をずっと見守っていたくなります。
こちらは付き合ってから3ヶ月くらいまでの物語で終わっていますが、この先の2人が描かれた続編もぜひ読みたい作品です。
名だたる商業作家さんに惹かれて購入。
読んでから初めて、ウェブ投稿で受賞した作品と書き下ろし作品が一緒に収録されたものだと知りました。
https://fujossy.jp/contests/novel/36/awards
こちらのサイトを参考にすると、受賞作品は5作、商業作家さんの書き下ろしがそれ以外の9作ということでいいのかな?
自分が読んだ範囲内ではそれらを区別する表記が見られず、順序もばらばらに収録されているので、商業作家さんに明るくない人にはやや不親切な作りに感じます(あえて区別せずに収録して読んでもらうことがねらいなのかもしれないけど)。
読んでいて「これは誤字では?」と思ったものが受賞作にあったので、投稿作と知らなければ本の作りが雑に感じる可能性もあるように思いました。
コンセプトはすごく良いと思います。
BL漫画のアンソロジーは沢山ありますが、BL小説のアンソロジーってあまりなかったのでは……?
お気に入りの作家さんを見つけ、開拓するルートとして最適だと思います。
実際このアンソロジーを読んで、これまで作品に触れたことのなかった遠野春日先生と伽野せり先生が気になりました。
また、「初恋」というテーマ故か性的な場面がほぼないので、BL初心者にも勧めやすい作品集になっています。
今後もこのような企画が続いていけばいいなと思いました。
はじめに、心理学用語で『インナーチャイルド(内なる子ども)』というものがあります。
言葉の通り心に存在する子どもの部分を指し、子どもの頃に経験した不安や悲しみなどのネガティブな感情によってインナーチャイルドが傷つき、大人になっても影響することがある、と言われています。
ムシシリーズを1巻から順に読んでおり、本作は4巻に当たりますが、登場人物の家庭環境や生い立ちが関係性に最も影響している作品だと思います。
主役2人の育ちが「愛とはどういうものか」の認識にすれ違いを生み、それが最終的にどういう地点に落ち着くのかを描いた物語です。
当時意識していたかどうかは問わず、2人とも幼少期に親との関係性で多少なり傷ついていて、それを見つめなければ本当の意味で交わることができない。
つまり互いのインナーチャイルドを癒し、慰め合うことで前に進もうとしている2人。
攻めと受けのどちらか一方の家庭に問題があって……という作品は割とありますが、双方の家庭にそれぞれ違った問題があって知らず知らずのうちに互いに癒しているという構図にグッときました。
最後はハピエンですが、道中攻めが受けにつらく当たる部分もあり、受けが攻めにずっとかわいがられてほしい人には不向きかもしれません。
蛇足ですが痛々しい作品の多い(褒め言葉です)木原音瀬先生の作品を多数読んでいるので自分は平気でした。
ただ3巻までよりも、最後まで「この2人どうなるの?」と展開にどきどきさせられたので、ストーリー重視派の人にはぜひ読んでほしいです。
水原とほる先生作品は初読でした。
1冊丸ごと表題作となっていますが、前半は2人が交際に至るまで、後半は受けが過去に付き合っていた男性が出てきて一悶着、と大雑把に分けることができます。
前半部分で受けが過去の恋愛でいろいろあったことを匂わせます(後半で詳細がわかります)。
そのこともあって受けは今回の恋愛はゆっくり進めようと思っているのですが、我慢できずに攻めを誘うような素振りを見せた場面に性急さを感じてしまい、やや拍子抜けしてしまいました。
我慢できないにしても、その我慢できない気持ちに至るまでの描写がちょっと足りないような……?
全編受け視点で進むので攻めの気持ちが分かりにくいところもあり、それに対して攻めも割とあっさり受け入れていたのでその場面に物足りなさを感じてしまいました。
上述の場面にはうーんとなりましたが、後半の受けの元彼に対する攻めの対応は素敵だと思いました。
大学講師×デザイナーのカップリングですが、攻め受けともに仕事の描写がそれなりにある印象で、恋愛要素以外の描かれ方が丁寧だと思います。
久我先生作品は初見です。
受が満月の夜にだけ別人格のカグヤに変わるという設定。
別人格になってもその時の記憶は残るというのが面白かったです。
カグヤの言動に普段の受が悶々としたり、逆に普段の受の言動にカグヤが苦言を呈したりする様は、読んでいてどこか不思議な気分になりました。
攻のカグヤに対する好意は最初からあからさまでしたが、普段の受に対する好意は何となくわかる……かな?程度の描写に見えました。
だから告白シーンはやや唐突に感じてしまったところがあります。
いつの間に普段の受に対する好意がカグヤに対するそれを上回っていたのだろう?という気持ちになりました。
あとは2人で行為に至るまでの流れもやや唐突に感じられました。
ただ、行為中に受がカグヤ寄りのメンタリティになり、1人でシているのを攻に見せ始めるところは個人的に好みのシーンでした。
物語全体の流れがややぎこちなく感じられましたが、ちょっとしたファンタジーものを読みたい人におすすめです。
経営が傾きかけた会社が舞台なので、お仕事小説のような側面もあります。
「お、お前ら早くくっつけよーーー!!!」と心の中で叫びながら読みました。
2人が正式に交際するまでの過程がとにかくじれったいです。
もちろんそれがこの作品の良さなのですが。
受がひたすら攻をはっきりと恋愛的に思い続ける一方、攻は自分の気持ちがよくわからないものの受と離れたくないことだけは自覚している結果、時折受を混乱させています。
側から見ると「攻、もうちょっと自分の気持ちに気づいて!」となりますが、感情にはっきりとした名前をつけるのって実は難しいのかも……?という気持ちも湧きました。
片思いや再会ものが好きな方におすすめです。
めっっっちゃ好みな作品でした!
というか攻めの性質が自分のツボに入りまくりました。
・受けを溺愛してるけど悟られないようにしている(そして実際に受けも気づいておらずむしろ嫌われているとすら思っている)
・好きすぎて行動が一周回っておかしくなってる(無理に彼女つくろうとする、実家になるべく寄りつかない等)
・受けのピンチを陰ながら阻止している
・蓋を開けるとタガが外れて変態っぷりがモロに出てくる(受けも案外すんなり受け入れている)
溺愛、変態な攻めが好きな人には刺さる作品だと思います!
ちなみに一応兄×弟ではあるけど、血のつながりは全くないので近親ものが苦手な自分でも普通に読めました。
あと2人の父(弟とは血がつながっていない)が寛容なので変にドロドロした感じもありません。
いかにもBLな要素は薄めだと思います。
エッチなシーンもほぼないし、せいぜいキスくらいかな?という感じ。
ギャー!萌え!となることは少ないですが、ほのぼのBLをお探しの方にはぴったりです。
ストーリーは1話完結のような感じで進んでいき、コミカルな要素もあって読みやすいです。
シリアスな場面もありますが、主役2人のキャラクターに重い雰囲気がないので、そこまで深刻な気持ちにはなりませんでした。
探偵事務所なのに、いつのまにか動物が増えてしまっているのがクスッとなります。
主役2人について深掘りするだけでもまだまだ楽しめそうなので、ぜひ続編を期待したい作品です。