タイムスリップという言葉に惹かれて読みましたが、ここまで号泣したお話は初めてかもしれません。
結末については、悲しいお話としての結末と、希望のある二つの解釈ができるかなぁと思いました。
(以下ネタバレですのでご注意ください。)
一つは、過去に戻った先で鴻さんが死んでしまうこと。
「あおに鳴く」冒頭で鴻さんが特攻隊員ということがわかり、過去のあの状況に戻ってから生存できる可能性は限りなく低い。
けれど、菊次郎さんは鴻さんの遺体を確認した人がいないから諦めきれず、家族を愛することができなかった。鴻さんは自分が死んだことを菊次郎さんに伝えるために過去に戻ったのかなと思いました。
(遺体が見つからなかったのは、死の直前に身体ごとタイムスリップしたためでしょうか)
鴻さんの死をはっきり理解したことで、鴻さんを待ち続けることが終わり、菊次郎さんは家族を愛せるようになった。そのため、写真の中で司朗くんの両親が一緒に笑っている。
鴻さんは、自分の命をかけて司朗くんに家族の愛を与えさせた、という解釈です。
(「俺と一緒に生きてくれ」という言葉もここにかかっているのかな、と思います)
もう一つは、過去に戻った鴻さんが戦争から生きて帰ること。
菊次郎さんの元に帰った鴻さんは、司朗くんに話した通り、菊次郎さんとちゃんと話をした上で婚姻の背中を押したのでしょうか。
菊次郎さんは鴻さんへの未練を断ち、家族を愛す。司朗くんは両親の愛を知る。
司朗くんが最後に飛行機を飛ばしたとき鴻さんと再会できる希望もあるのかな、と思いました。
個人的には、前者なのかなぁと思っています。鴻さんを失った司朗くんのことを思うとつらいですが……。
いずれにしても、鴻さんが過去に戻ったのは司朗くんの未来のため。二人の深い愛を感じた、悲しいけれどとても優しいお話でした。