ほのぼの前世モノかと思ったら、徐々にシリアスになり、わりとガチめの戦争のお話に。まあ二度と帰って来れないかもしれないという生死をかけた出征前に、ラブコメか、っていうシーンが入ったりしてたので、そこまで重くならない。
前世の運命はありつつ、現世の二人として思い合う様子が良かった。
ルインは夢で見た前世の記憶に振り回されないよう、シグルドに冷たく接する。こちらはルインが主な視点主なので気持ちを理解したうえで言動を見守れるが、何も知らない人から見れば無礼でしかない。
BLとして見ると、前世の自分と今世の自分の感情を切り離して相手に向き合おうとするのは好印象。態度の悪さでシグルドが気の毒になる気持ちはあるが、ルインの考え方は好き。
シグルドは正体不明の金髪碧眼を追いかけたり、戦闘後の孤独に精神をやられそうになっていたり、穏やかな笑顔の裏で大変そう。ぐいぐい迫ったかと思ったら、ダメなタイミングで手を出してごめんなさいする、情緒不安定な中尉殿。
戦時中という特殊な状況下で、二人ともが冷静でいられない心理状態の中、自分と向き合い前世を振り切り前を向くルインが良かった。
シグルドは似た相手を抱くのは良くて好きになるのは裏切りって、言わなきゃ分からん自分基準だと思った。どちらかというとシグルドの方が前世に縛られていたのかな。ルインが踏み出したおかげで、それも解かれたようで良かった。
その後平和が戻ってきてからは、ただただ甘々。変な人も出てこなかったし、読後感も良い。アーベントがとても好き。
面白かった!回帰後早々に復讐すると誓った相手とBLフラグが立って一瞬テンションが下がったが、込み入ったストーリーにぐいぐい引き込まれ、気付けば一気読み。挿絵もじっくり見たくなる美しさで素晴らしかった。小説・挿絵どっちも神。
始まり方は回帰ものテンプレの処刑までのエピソード。恨みつらみを抱えて死に戻り、アレッシオへの復讐が始まるかと思いきや、弄んで捨ててやる→失敗系BLな展開に。回帰前も現世でも、アレッシオの本性がなかなか見えず面白い。
ガブリエーレは前回の記憶を、主に自身の反省と成長に活かしていたのが良かった。それでいて剛胆さや強かさを身に付けた感もあり、頼もしい主人公。わりと流されて意志の弱さも見えたのは、柔軟さも得たってことなのかな。
話はテンポ良く進み、事件の規模はどんどん大きくなっていく。絶体絶命のピンチに陥り、この広げ過ぎた風呂敷をどう畳むのかと思ったら、驚きのチートオチ。え?っていう。これってアリなんだ、と正直ちょっと笑った。
はっきり言ってひどく大雑把で強引な終わらせ方だと思う。でもそのおかげで数多ある回帰ものの中に埋もれることなく、印象的な作品になっており、とても楽しく読めた。迫力ある挿絵の影響も大きい。
ガブリエーレは回帰前の堅物だったころですらアレッシオに落ちていたわけで、二度目の愛を誓わない、なんて最初から無理な話だったのかな。アレッシオの前回の人生での罪は相当に重いが、今世では間違えなかったし、拷問で十分な償いになった気がした。
二人の幸せ後日談がもう少し読みたかった。番外編とかあればぜひ欲しい。
ストーリーの前半は人魚姫か?という感じ。そしてタイトル通りずっと一人を探してる。後半のあまあまはすごかった。リクの明るく前向きなとこが好き。
下働きのリクと恩人を探すライルの両視点。
リク視点は使用人仲間たちとのわちゃわちゃが楽しい。リクは食べ物で簡単に釣れるちょろさが可愛いし、基本的にポジ思考なので読みやすい。前向きといえば13回誘ってデートにこぎつけるルルも好き。ヘタレなロングも応援したくなるキャラ。
ライル視点は、対象が逃げても避けてもいないのに、手掛かりすら見つけられない。カルイが空気を和らげてくれて救いはあるが、それでも正直退屈。
個人的にはもう少しニアミスなんかで盛り上げて、ヤキモキさせて欲しかった。二人が出会わない期間がちょっと長い。
諦めなかったライルがついにリクと対面すると、あの手この手で強弱をつけた甘々攻撃が始まり、人気の理由に納得。BLってこういうの好きそう、ってな展開、女に冷たい攻めの受けへの一方的な求愛と溺愛。
リクに甘いのは確かだが、ライル自身が芯から甘いわけでなく、腹黒さを持ちながらリクを絡めとっていくような。
終盤で急激に存在感を示したリハームが良い。悪役と見せかけて、それだけで終わらせないとこが好き。巻末の番外編での活躍もカッコ良かった。
気になっていたのはライルの病について。症状や治り方から何か裏があるのかと思ったが、何もなかった。ただのファンタジーディジーズだったのかな。
文章はWeb系でたまに見る体言止めがちらほら。苦手でゾワっとするので、エロシーンは飛ばした。今後こういう文体のBL小説が増えていくんだろうか。
大富豪の跡取り息子と下働きの少年のシンデレラストーリー。明るい雰囲気で良かった。
守られ系オメガが主人公のお話。受けは泣いて困っていれば攻めが助けにくるやつ。この展開を何回繰り返したのか、とにかく何度も危険な目に遭っていた。キラを男性キャラとして見て、楽しいシーンは一つもなかった。
キラは必死に子供を守る母親の顔が強調されており、キラ自身に何かあると誰かが飛んでくる。加害者はキラの目の届かないところで成敗されるので、モヤモヤが残ることはあまりないのかもしれない。
ジャムシードは正体を隠してはいるが、将来の最高権力者であり、何の不安もなく見ていられる。平民がこういうキャラに愛され見せつける様子は、優越感に浸る気分を味わわせる構造で一定の人気があるのかな、と思った。
やたらと“男のオメガ”が登場し、陰湿な嫌がらせをするのは何なんだろう。主人公含め、わざわざ男性と言及しながら女性的な振る舞いをするキャラたちだと感じる。それにしても悪役キャラが多くて大変。
終始事件が起こっていたのに、いまいちテンションの上がらない読書だった。
謙虚発言は一見発言者を良い子に見せるが、投げかけられた相手が「そんなことないよ」と褒めるしかない会話を作り出す。キラを良い子に見せようとする描写を読むたびに、好感度が下がっていく気がした。
転生、竜族、王子といった属性を盛り、商業BL小説定番の卑屈受けを主人公に据え、下々の者が王子に愛される人気のストーリーに仕上げた作品。設定の良さが活かせていない印象。ウジウジ悩むだけで幸せを与えられる主人公にうんざりした。
ヒナタは王宮の下っ端事務官。誰に何を言われても自分なんかが……と卑屈になり、ただ謝るだけ。王太子に引き上げられても、できるようになったのは、悪事を言いつけることと助けを求めることくらい。
ピンチに陥った際、まず最初に考えるのが自分でどうにかすることでなく、守って助けてと願い始めて驚いた。そもそもずっと自身の身に何が降りかかっても解決しようという気概がなく、一人殻に閉じこもる主人公なんて応援できない。
結果的にくっついたが、王太子が一人で頑張って手籠めにしたみたいな。王太子視点で見れば、ヒナタが人形でも愛玩動物でも変わりなく成立する話だと思う。心の中で何か言ってるだけで行動しないのでは、意思を持っている意味がない。
転生設定は逆効果だった気がする。転生者だからじゃない、お前だから好きなんだ、てことにするための説明が必要で、それに関するあれこれも辻褄合わせが必要になり、長い言い訳を聞かされている気分になってしまった。
卑屈になって、ウジウジ悩んで謝って逃げていたら、最上位の身分を持つ王子に幸せにしてもらえる主人公が見られるお話。合わなかった。
流行りの逆行ものに弱々主人公を据えてBL仕様にあつらえたもの。せっかく良い設定なのに、いつもの受けといつもの展開で、ありふれたBL小説の一つに感じた。
でもストーリーの練り方や整え方がとても巧く、この作家さんの他の作品を読んでみたいと思った。
サスランはBLの受けでよくいるタイプ。武力も知力も持たず、窮地に立たされれば他の誰かに助けられる。ウジウジするし自己犠牲に走るし頭も回らない、読み続けるのが辛い視点主。思考の範囲が狭いので、逆行前の記憶も上手く使えていない。
アウスラーフは、逆行前の様子はサスランの回想からしか分からないが、逆行後に明確な目的を持って言動を変えたのが良かった。生きる意味を得た喜ばしさと、性格まで変えなければやっていけない皇室の厳しさを見たようで、切なくもある。
逆行(回帰)ものは好きで別ジャンルの作品をよく読むので、内容は使い古されたテンプレな印象。派閥や次期皇帝の座をめぐる争いなどがあり、徐々に記憶の内容から時期がズレ、予測できないことが起こり始める。皇太后が悪役なのもベタ。
山場はBL大定番の誘拐と救出。またか。よくあるストーリーは、キャラが好きになれるか否かが重要。受け受けしいサスランは見ていて楽しくない。
回帰モノ初心者だった頃に読めばわくわくしながら読めたかもしれないが、これは後発なのに既存作の下位互換に見え、先の展開への興味を持てなかった。
各エピソードは全てどこかで見たことのあるものだったが、組み立て方がとても綺麗で、読み応えはあった。愛を知らないサスランと虐待を受けて育ったアウスラーフ、身分も違うこの二人が未来を変えてハピエン。読後感は良かった。
情景が浮かぶ描写が素晴らしく、古書店にまつわる過去ストーリーも素敵。BLとしては、最初から恋愛対象内だった二人が出会い、するするっとくっつく。人の縁を感じる数々のエピソードがとても良く、BL部分は刺さらなかった。
古書店を舞台に、淡々と進むお話。静かな世界に浸りながら読める感じで、文章から醸し出される空気が心地良い。ただの客でありながら店を継いだ小鳥と、先々代経営者の孫である宗一。この二人の出会いをきっかけに、古書店の過去が明らかになっていく。
開業から十年間、古書店で二人暮らしだった宗一の祖父と先代店主。そんな二人の小さな思い出の欠片を拾い集めていく宗一と小鳥。そうしてゆっくり見えてくるものは、その時代の匂いと切なさで、時を経て今を生きる二人に繋がるのがとても良い。
BLに関しては、宗一は最初から思わせぶりでぐいぐい迫り、小鳥はストレートにときめいている。さらっと恋人になり、何もない日々を過ごしていたのに、いきなり“死ぬまで”“死んだ後も”“永遠に”と激重感情をぶつけてきて驚く。
宗一自身にそこまでに至る経験があるなら分かるが、感化された結果の言葉なら薄っぺらいと言わざるを得ず、一瞬で冷めてしまった。過去の悲恋エピソードが良かっただけに、宗一と小鳥のBLが残念。
心に響く心理描写は恋愛以外のところばかりだったので、別ジャンルの作品があれば読んでみたい。文章がとても好き。
唐揚げが食べたくなるお話。他にも出てくるおかずが全部美味しそうでお腹がすく。ストーリーは全部が驚くほどするするっと上手くいき、ストレートにくっつく。ノーストレスで読めるし、たまにはこんなのも良いかな、という感じ。
日向太は弁当屋でバイトする大学生。俳優としてブレイクした学生時代の友人がバイト先に訪れて再会し、流れるようにBL展開へ。ハウスキーパーとして雇ったり濡れ場の練習をしたりお忍びデートしたりと、定番エピソードの詰め合わせ。
嫌な人は出てこず、テレビスタッフは事前連絡しっかり配慮も完璧、炎上もなく記者に見つかることもなく、空気の読めない友人は忠告一つで大人しくなる。所属事務所も応援モードで、二人は何の障害もなくいちゃいちゃいちゃいちゃ。
何かが起こりそうな気配が見えても、芽が出る前に潰されていき、とにかく平和な日常が続く。お互いに誤解もすれ違いもなくカップルとなり、後出し情報のやりすぎ感がすごかった。両想いをここまで甘くできるのか、という衝撃。
萌え重視作品として見ると、一城のギャップが良いのかな。クールな印象で売り出して以降、常に求められるキャラを演じてきた俳優が、日向太の前でだけワガママな甘えん坊になる。プラスめちゃくちゃ顔が良い芸能人、肩書きは最強。
口絵の唐揚げが大きすぎて笑った。あの唐揚げレシピ、炭酸をビールに変えた小森母バージョンで作ってみたい。美味しそうなおかずのレシピが印象に残る作品だった。
特に匂うとも思えなかったが、ちるちるに登録される要素はどこなんだろう。一人の天才を伝説にするためだけに十五年をかけた男、というのが萌えポイントだったのかな。でもその点も含めてすっきりしないお話だった。
スケボーの天才アラタを生み、専門施設があったりと、スケボーが盛んな町が舞台。その町は分かりやすい悪役の竜玄が仕切っている。事故死したアラタを憎む竜玄の周りには、黒い噂がいっぱい。
主人公の爽羽はアラタに憧れる転校生。アラタが建てたスケボー施設から、アラタ信者であるという理由で追い出される。その後、同じように竜玄に目の仇にされている仲間たちが集まる廃墟で、スケボーの練習をすることになる。
竜玄一派のクラスメイトに避けられてからは、グラフィティアートの才能がある友達ができたり、堅物教師が実はアラタの弟でスケボーの練習を見てくれたりと、少年漫画のよう。アラタの死の真相を探り、疑惑がいっぱいな展開も面白い。
そしてスケボーの才能は平凡っぽかった爽羽が、実はすごい技を習得できる可能性を秘めていた、という流れに。で、いよいよコンテスト当日というところで、竜玄を追い詰める。
話のオチは正直あまり納得できなかった。どんな思いがあったにせよ、竜玄はやりすぎたと思う。冒頭で爽羽にやったことが危険すぎて、肯定できるものではない。
終わり方も爽やかさを醸し出してはいるものの、どうなるかは読者の想像に任せる感じで、竜玄へのモヤモヤも読者側で処理しなくてはならない。ストリートカルチャーであるスケボーの背景とのリンクのさせ方も中途半端に感じた。とはいえ、グラフィティアートの活かし方と三島のキャラはとても好き。
スケボーメインで見れば面白いが、人間模様やミステリ部分を見れば微妙。匂い系としてのおすすめは難しい。漫画や実写など、視覚的に派手な演出が映える作品だと思う。
途中で脱落しそうになった作品。女児向け雑誌に載ってる漫画っぽい。メイン二人ともにドン引きしてしまった。相手の気持ちが見えすぎるので、BLとしては良く言えば安心して読める。芸能界ものとしてはナニコレって感想。
悠太は幼なじみに誘われて劇団に入り、後に演技の才能を開花する。だが自分の練習より櫂に付き添うことを優先したがり、芸能活動にやる気もない。ネガ思考で、櫂の気持ちを憶測で決めつけ、勝手に距離を取ろうとしたり。
櫂は好きアピールが分かりやすく、気付いていないのは悠太だけ、という状況。ストーカーに直接対峙し、説得するなんて最悪の手段を取ったシーンにドン引きし、その際のセリフの幼稚さに驚いた。あれをカッコ良いと褒める悠太にも同じくドン引き。
プロ意識や演技論を語っても、上辺の言葉が流れている印象で、読んでいて恥ずかしくなる。キャラが年齢に見合う中身でない気がした。