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女性renachiさん

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まだまだ続きが読みたいシリーズ

一束と圭輔、良時と密と十和子、西口と碧、冬梧と望の各カプのページ割合は1巻同様かな。相変わらず西口と碧パートはとても平和で、間に挟まれる清涼剤のよう。一束と圭輔も転勤による遠恋展開はまだ先のようで平和だった。

一束と密が再会し、良時に二人の過去を勘付かれたようだったけど、密と良時の関係に影響はなさそう。一方、一束の方は12時間もかけて圭輔のもとに飛んで行く。この二組のカップルの両極端な感じが面白い。

密と良時は、どこまでいっても三人なんだな、と思った。この二人で恋人同士で身体の関係もこの二人の間にしかないが、十和子がいないと崩れる繊細なバランスを保っている気がする。既存の言葉では言い表せない関係に見える。続編を読めば読むほど不安になる不思議。

このシリーズの新刊はもう出ないのかな。掌編集という位置づけの一冊にしては、スッキリしない気持ちが残ってしまったので、もう少し読みたい。あと欲を言えば、冬梧と望の番外編も読みたい。

各作品の補完と萌えの補給

シリーズ四作分の前日譚・後日談や作中エピソードの別視点バージョンなど。悪友三人組周りのお話多めで、冬梧と望はほぼ出てこず。他にサブキャラの秘密や気になっていたアイテムの行方が分かってスッキリできたりも。
各作品の補完と萌えの補給ができるおまけ本のような一冊だった。

一束と圭輔は、その後が一番気になるカップル。圭輔は仕事柄転勤は避けられず、そろそろ次の場所に移る日が近付いてるが、一束は香港を離れる気がない様子。もし遠恋になるなら、そんな二人もぜひ見てみたい。

この二人のエピソードでは「after you」がとても好き。一束に内緒でフィリピンパブでの懇親会をセッティングした圭輔が、あっさりバレてあたふたし、軽くお仕置きされるお話。一束がちょっと佐伯っぽくて面白かった。

碧と西口の日常はあまりにも平和。笑っちゃうほど穏やか。ぴりっとしたお話の後に、清涼剤のように挟まれるこの二人のエピソードに、ほっと癒やされた。碧のマイペースぶりが相変わらずでなんだか安心。

変な感想だけど、みんなしっかり生きてるな、と思った。全てのエピソードに後付け感が無く、本編の作中世界と時系列の矛盾も無く、綺麗にはめ込まれていく感じが心地良い。
描かれていないこの先も、ちゃんと彼らの世界は続いていると思わせてくれる、それがとても嬉しかった。

運命について考えたくなる

突拍子もない出会いから、あそこまで大きな出来事に発展し、かつ切ない経緯を辿ることになるとは。十七年を経て再会後、やっと二人が自由になり、初めて真っ直ぐ向き合える状態になれた結末に泣いた。

シリーズ作品で、時系列でいえば前三作のずっと前のお話(他を読んでなくても問題ないと思う)。新聞記者の冬梧と製薬会社勤務の望。一見、ただの偶然で交流が始まった二人に見えたが、二人だけでなく、関係する多くの人の人生に影響を与える出会いだった。

亡くなった想い人を忘れないままの望に翻弄される冬梧は、ふわふわした恋心を自覚するかしないかのタイミングで、衝撃的な事態に陥る。人と人との運命について考えたくなるような展開。これが決してロマンチックな意味でないとこがすごく好き。

あんなことになってしまえば、冬梧の中に望がより一層強く刻み込まれるだろうし、人生が一変したと言えるかもしれない。望に出会わなければ、冬梧の人生は全く違っただろうし、無難に結婚もしていたかもしれない。そうした因果に感動を覚える。

十七年後の再会は、劇的でも運命的でもない。ただ、望が支えて来た人たちの協力あっての結果で、それは望の十七年の成果でもあるのかと思った。

巻末の望視点の短編では、シリーズ四人目のバツイチ男が完成しそうな気配。あっちでもこっちでもよく離婚するシリーズ。まあこちらは円満離婚だし、可愛い親バカぶりは継続しそうでほっこりできた。

毎度思うが、一穂さんの作品は読後の感情を言語化するのが難しい。確かなのは、良かった好きだったということくらい。ココが好き、という点もあることは分かるのに、ぴったりの表現が見つからない。だから次も読みたくなるのかもしれない。

カップルとしてはとても好き

シリーズ作品だが単体で読んでも問題ないと思う。前作で出番があった西口は、名前がやたらと出てくるモブのような印象だったので。速記者の碧はこの作品で初登場。仕事も性格も興味深いキャラで引き込まれた。

碧は発言だけを見れば浮世離れしているような、独特の雰囲気を持っている印象。その実、料理も裁縫も得意で、地に足のついた生活をしている。落ち着いた振る舞いに説得力を持たせる背景も描写されており、するするっと入ってきた。

西口は良くも悪くも四十代のオジサン。人間性に魅力を感じるのは確かだが、時代ゆえに確立された価値観に諦めを感じる。ついでにシリーズ三人目の離婚済みメインキャラ。離婚理由はただの自滅で情けなく、人間だなあと思う。

ストーリーはちょっとしたチート要素を含んでいて面白かった。謎のタイミングで挟み込まれるボランティア活動にも、ちゃんと意味があった。描かれる全てに意味がある、という認識が当てはまらないBLに不満を持っていたので、そうでないBL作品に出会えると嬉しい。

碧と西口の間にある障害は、一つの誤解。なのでそれさえ消えてしまえば、あとはすんなり。ここにきて碧の強引さが見られてとても良かった。一度腹をくくれば一直線。

カップルとしてはめちゃくちゃ好きだし、シリーズの中でも読みやすく、魅力的なキャラを描く筆力に脱帽する。ただ読み返しを躊躇するのも正直なところ。女性と働く難しさを語る男性、それを描きたがる女性BL作家、この構図が苦手。

ハッキリ言うと、BLの枠内という前提があるから、ノンケ男性が同性に恋する展開に納得できる内容。BLの枠外に出せば、同性に性欲を覚えるノンケ男性の描写に説得力など皆無。軸がそんな作品で現実的な何を語ったところで、と冷める。

強い思想や主張は感じないので、気にせず読める気はする。二人のBLストーリーだけを追うならとても好き。

大人になって一緒にいるためには

シリーズ作品「is in you」から続けて読んだ。あちらでは強烈な当て馬として存在感を示していた佐伯密のお話。こちらだけでも読める作品だが、あの過去があってこその結末な気がするので、両方読むとより楽しめると思う。

両視点で、最初は良時視点から。良時の語りは年齢のせいもあってか、淡々としているように感じる。そして決して思うままに行動したりしない。その慎重さは良時を支えるものでもあると思う。
嘘は吐いていない、かといって自分に素直でもない、だからこそ立っていられるというか。我慢を我慢と感じないほど、それが当たり前の環境で生きてきた大人。

密視点で見る世界は、まあ捻くれた大人に育つのも分かると思えるものだった。で、身も蓋もない言い方をすると、密は良時と十和子の二人ともが欲しかった。でも当時は男という選択肢を持っておらず、十和子のことは妹としか見れなかったが結婚した。それは、言葉にしなくとも十和子も承知の上だったという話。

ここで「is in you」の前提があると、香港で初めて男と寝た密とその相手に本気になった意味が重くなってくる。とある一場面でその相手を「静」と呼んでしまったことがあった、あれは十和子のことだったんだろうか。

両想いになった二人の表面上の関係性は変わらず。密は良時を好きにからかい翻弄する。ただし良時は素直に嫉妬を表現するようになったし、密も全てを受け入れている。心理的な距離が近付いたのは確実で、なんだかこそばゆかった。

密の生き方が魅力的でとても好き。自分を理解してもらう気なんて全くないかのような振る舞い。大事なものとそうでないものがハッキリしており、その大事なものは弱点にもなっている。強くて弱い、その人間らしさに惹かれる。

心に刺さったのは「大人になって一緒にいるためには特別な約束が必要だった」という十和子のセリフ。十和子のような境遇でなくても当てはまるケースはいろいろあるし、この一言だけで泣けそうなほどの切なさが伝わってくる気がした。

十三年越しの初恋とすれ違い

すれ違って終わった高校時代と、社会人として再会し、三角関係を経て関係を築き始める二人のお話。一束の設定が興味深く、相手役の圭輔も魅力的で良かった。社会人編は香港の描写が楽しい。当て馬にしては強烈な佐伯のキャラも好きだった。

一束は香港からの帰国子女で、それゆえに疎外感を抱いている。同じ帰国子女の中でもいろいろある、という視点は勉強になった。個人的に一穂さんに驚かされるのは、少ない文字数で人物を分厚く描写できるとこ。これ本当に意味が分からない、すごすぎて。

圭輔は高校生とは思えない人を見る目を持っているとこに感心した。二年半付き合ったせいもあるだろうけど、自分の彼女を冷静に評価してるな、と。社会人になっても、善良でイイ奴と強く思わせる様子が変わってなくて良かった。

香港の紹介をしながら、昔を思い出し懐かしみ、過去と現在の違いを実感していく一束が良い。ただの観光シーンでありながら、回想と切なさが混じり合う描写に引き込まれる。デートシーンを楽しめる作品は貴重で嬉しい。

一束と不倫中の佐伯は、飄々としているかと思いきや、あまりにも人間だった。そして寂しがり屋でもある。ああいった無様な姿をさらけ出すそれなりの年齢の大人を見ると、なぜか泣きたくなる。イイ人とは思わないが、好きだな、と思う。

ほんのり運命を匂わせる圭輔が、もし結婚していたとしたら、その後に一束と再会していたらどうなっていたんだろう、とか考えてしまう。とはいえ、佐伯から奪おうとする必死さは最高に萌えたので、フリーのときに再会できて良かった。

巻末の里帰り編は、まだ打ち解け切っていないカップルのもだもだがもどかしく、同時に、二人はこれから、という明るさもあって微笑ましかった。読み返したくなる作品。

ある意味現実的なファンタジー

設定が興味深い作品だった。霊獣の性質や生死に関する思想が独特。ファンタジーだけど、勧善懲悪でなくままならなさに現実味があり、良く言えば地に足がついてる感じ。終盤の先祖たちには泣かされた。あの二人の物語も読んでみたい。

主人公は国を追放されたミフル。といっても偽の許可証で国内に住み、家族のような存在もいるし、毎年母の命日にはイザークが会いに来る。精神的な辛さはあっても、それなりの生活はできており、悲壮感はあまりない。

追放に関しては、ミフルが自己完結的に仕方ないと言い聞かせているだけで、国側の扱いは軽い。元凶である王は、今までもこれからも変わらず権力者で在り続ける。あんな不快な人物として描いておいて、最後までノーダメージなんてモヤる。

イザークはいつかミフルを連れ戻すために地位を固めたのかな。元から左宰相家の人間なので、のし上がった感は薄いのが残念。宮殿内で畏怖されているらしいが、そこは具体的なエピソードで見たかった。子供時代に大暴れする話がとても好き。

BL的には最初からイザークの想いは丸見えで、反発していたミフルがドキドキし始めてから動き出すのが分かりやすい。ミフルの中で、真っ直ぐ相手を見れるようになれば、遅かれ早かれという位置にイザークはずっといたってことかな。

王妃の夢という鍵はありつつ、先が見えないストーリーで、最後まで引き込まれた。エルハムとナシールと、イザークとミフル。夢のような運命に感動していたら、最後にまとめるように「人なんてそんなもの」と言い、現実も見せてくる。

傲慢な権力者がのさばり続けるのもそうだし、歴史の修正に触れてみたりと、絶妙なバランスで現実感がある。真面目な作品という印象が残った。
苦手だったのは、説明文の回りくどさと要約になっていない確認セリフ。ストーリーはスッキリしないながらも面白かった。

分かりやすい義兄が可愛い

嫌われ悪役が前世の記憶を取り戻し、更生?した姿で周囲を驚かせながらBLするお話。もはや定番になったテンプレで、序盤で婚約破棄されるのもお約束。ラファエルの分かりやすさが可愛くて良かった。

傍若無人であったユリウスは、前世の記憶を取り戻した瞬間からコロっと変わり、常識人のように振る舞い始める。二つの人格が同居してるはずが、性格は全面的に前世の自分で、ユリウスの記憶を持つ別人のよう。少々違和感を覚えるが、そういうもの、という暗黙の了解なのかな。

ラファエルは恋に落ちるのも早いし、反応は初々しいしで、笑ってしまった。ユリウスの変化に戸惑う様子をラファエル視点で読んでみたい。顔が好きだと言われて刺さりまくってる義兄ちょっと面白い。監禁願望も、相手がユリウス限定なら病み感ゼロに思える不思議。

ストーリーはユリウスが冤罪に次ぐ冤罪をかけられ、もどかしい。転生・回帰系作品でよく見る、流行り病と薬のマッチポンプや令嬢の自作自演等、お決まりのエピソードが満載。衆人環視のプロポーズは、ユリウスのあほのこぶりに笑った。

気になったのは、心理描写の文章表現にバリエーションが乏しいこと。気楽に読める一方、物足りなさも感じる。逆に内面の分からないラファエルは、ユリウス視点で伝わるくらいあからさまな反応で、好感度がぐんぐん上がっていった。

読後に表紙を見ると、大量の鳥かごにおぉ、となる。ユリウスを閉じ込めたいラファエルの執着心の発露は、コミカルに描写されており、何の不安もない明るいハピエンだったと思える。ティモも可愛く、最後まで楽しく読めた。

どうしようもなさがとてもリアル

衝撃的な始まりからどうなることかと思ったら、読み終わるころには最初の衝撃など忘れてしまうほどに、杉浦のことで頭がいっぱいになっていた。実は三者視点で語られる杉浦充の物語だったんだろうか。ラストはめちゃくちゃ泣いた。

「秘密Ⅰ」は啓太視点で、冷凍庫に殺した死体が、という驚きの展開。でも決定的な場面になると描写が曖昧になり、啓太が本当に殺人犯なのか、確信が持てないまま緊張感を持って話が進む。

で、その秘密が暴かれるタイミングは、ギリギリを超えて行き過ぎてからのように見え、このラインを超えられるのが木原さんのすごいとこだと個人的に思う。充のように、人並みの社会生活が難しいキャラを多く生み出すのもすごいが。

「秘密Ⅱ」は充の従兄弟の榎本視点の過去話。杉浦家が崩壊していく様子と、充が自立するまでが描かれており、それぞれのどうしようもなさがとてもリアルに伝わってくる。辛すぎるお話で、充と啓太が五年経っても続いていることが唯一の救い。

「秘密Ⅲ」は充の弟視点。樹は父親の価値観を色濃く受け継いでいるようで、充と素直に話ができる日が来るとは思えない。ただ、最後の描写から、まだ残っていた良心が間接的に見えたのはとても良かった。

通して見ると波乱万丈な人生を送っている充は、純粋な心根がずっと変わっていないように思える。啓太のためなら、どんなことでも成し遂げるであろう愛の重さは怖くもあるが、啓太が道を踏み外さない限り大丈夫という安心感がある。

警察騒動後、啓太の妄想癖がどうなったのか分からないけど、充のおかげでこちらも安定したのかな。最後の最後で嬉しくて焦る充が見れて、心地良い読後感。幸せの予感に浸れる余韻がとても良かった。泣いた。

どうしようもないもどかしさ

四編構成・四者視点の一冊。最初の二編でハッピーな結末かと思いきや、わだかまりを残しながらも一緒にいたいという話になり、モヤモヤの残る終わり方。ただ、これ以上の追求は藪蛇感があり、どうしようもないもどかしさがあった。

ノンケ男が同性の部下に告白されるところから始まるお話。有田は過去の経験から元々ゲイへのマイナス感情があり、だからこそ広瀬を過度に気にして心を乱され、絆されていったと思う。自身の恋心に気付く描写は秀逸。

その後、広瀬視点に移り謎の四角関係になり、あんなに遠回りするとは思わなかった。それにしても、川上と磯貝は出向先の社内で何度修羅場ってるのか、外でやれと笑った。有田との関係は、結局広瀬の頑張り次第なとこが切ない。

三編目は広瀬の弟視点で、兄カップルを別れさせようと画策するお話。この誤解は物語が終わっても解けることはなく、有田の中で広瀬は浮気二股男のまま。それでも良いと心を決めるのは感動的だけど、辛い気持ちは読後も残る。

でも有田が真実を知るってことは、広瀬の家族が自分たちの仲を裂こうとした事実を突きつけられるということで、それはそれであっさり別れを選んでしまいそうな気がする。どうしようもないこの現実は、ひたすらに同情を禁じ得ない。

気持ちはどちらも重いけど、二人の関係がどうなるかは、広瀬の行動にかかっているのかな。この先の二人の話も読んでみたいと思った。