面白かった。とある衝撃的な展開に、これでハピエンは無理では?とハラハラする。共依存と突然の狂気的な大暴れが最高。ただ一点だけ、そのまとめ方で良いの?とどうしてもモヤモヤしてしまう事件があり、神評価にはできなかった。
日向は画家志望の美大生でスランプ中。芸術一家だったり才能に悩んだり挫折したりと、お約束設定盛り盛り。心に闇を抱えて他人を拒絶してるから、ちょっと近付けば隙だらけになりそうな印象。
ベルとの出会いシーンは、文章での演出がすごい。煌びやかなBGMが流れてきそうな独特の雰囲気を醸し出している。全体に感じる空気も、どこか重く静かで、この世界にどっぷり浸からせてくれる。この作家さんの作品をもっと読みたくなる。
現代ものかと思っていたら、ベルにファンタジー入っててちょっと意外。日向とベルが徐々に共依存のような関係になっていく流れは自然に感じ、その背景を考えるととても切ない。ベルのあの極端な行動は、商業でこれOKなんだっていう驚き。
山場は日向のヤンデレ覚醒が最高だった。ここまでぶっ壊れてくれるキャラはなかなかいない。ベルの激重ぶりも日向に負けない病み具合で。今後この二人が痴話ゲンカしたらどうなるんだろう……めっちゃ通報されてそう……。
引っかかったのは、犯罪の件。ベルがやらかすのも、またやると脅すのも楽しく読めたが、その後がしっくりこなくて。明るく今まで通り美大生活を送り、ベルとラブラブ全開の日向には、ダークな何かを纏って欲しかった。犯罪の内容がアレなだけに、もう少し関係性にも変化が欲しい。
巻末のベル視点のお話もとても良かった。二人の美しい最期が想像できるベルの語りに泣いた。
読後にタイトルに納得できる、面白い設定のお話。最後の展開は衝撃的な残酷さなのに、そう感じさせない爽やかで明るい読後感。メイン二人ともが救済されるお話で、とても良かった。
武は訳アリなお絵描き教室の先生。依頼を断りまくる理由は当然あるわけだが、過去を語る武の解釈には驚いた。武は自身の絵を過小評価でも自信過剰でもなく、人を狂わせる危険なものと評価している。この作品、深夜テンションで読んだ方が良いかも、と思う。
二人が近付く過程は両視点で描かれるので、お互いがお互いの欠けた部分にぴったりハマる存在なのがよく分かる。武の想いも恋愛感情にまで成長させられたのは、慎吾の押しの成果かな。簡単にはくっつかないとこが良い。
最後のシーンがめちゃくちゃ好き。カラフルで映像にすると映えそうで、ぜひ見てみたいと思ってしまう。切り抜いてCMにできる一場面のようだし、その後の二人が泣かせてくる。ポエミーな文章もぴったり。
ただ、冒頭から引っかかることがあり、最初は入り込みづらかった。先天的に全てが白黒に視えていたのに、なぜ初めて認識した色の名前が分かったのか。できればそこも詰めて色を文章で表現して欲しかった。それならぜひ読みたい。
あとたまに地の文の助詞が抜かれてるのが苦手。一人称で軽さの演出なのかな。
表紙が素晴らしい作品。慎吾の世界が白黒から一気にこれくらい明るくなったのかな、とか思うと泣ける。心に残る作品だった。
メイン二人ともが過去に縛られているお話。ただしその対象はお互いというわけでなく、決着の付け方も一瞬後退に見えそうな前進だったりして、不思議な読み心地。ラストに向け、爽やかさを爆発させていく文章がすごかった。
古着屋の店長と美人な警察官のお話。登場時から何かありそうだと思わせた晴人は、つまりは初恋を拗らせたのかな。晴人視点で語られる過去の英雄への想いはもはや崇拝のようで、理想と現実の違いを受け入れられない様子に心配になる。
でも晴人は憧れか恋かなんてことは飛び越えて、自分が好きだった過去の英雄に重なる姿を目にして気持ちを新たにしている。一見、理想の押し付けであり今の英雄を見てないようにも思えるが、英雄視点で見ると晴人の言葉が救いになっている。
英雄がかつて輝いていた時代の姿に囚われていた晴人が、その呪縛から解放される流れかと思ったら、逆に想いを強固にしていた。そして英雄は失っていたものを取り戻し、前に進み始める。
晴人の描写がセオリーから外れていて面白かった。ただ、過去の二人の関わりの少なさには驚いた。改めて晴人の拗らせぶりはすごいと思う。終わり方もとても良かった。
まず主人公が本当にクズで、一歩引いて読んだ。結構終盤までやらかしており、それをヤクザに反省させられるという不思議な話。金貸しのボスの方が小菅よりまともに見えて気になる。ハコイチがとても好きだった。
ハコイチには“いいもの”を選び取る能力があるらしい。そんなハコイチに好かれる小菅の魅力がどこにあるのか分からなかったが、ハコイチにとってはイイヒトなのかもしれない。小菅の心理描写は、適当で情けない人間らしさを堪能できる。
小菅とハコイチの距離が近付くのは、小菅の強引さによるもののような印象で、ハコイチが心配になる。小菅視点なのに小菅に共感はなく、ひたすらにハコイチに心を持って行かれる。好きだから疑うというハコイチのセリフが切なかった。
引っかかったのは、ハコイチについてのあれこれ。ハコイチの過去が小菅の一人称で語られる時点で読みづらいが、殴るのは平気で刺すのは心を病むとか、現在の勉強の不出来を生育環境とつなげる描写ばかりだとか、いろいろ違和感。まあふわっと読むのが良いかな。
終わり方が爽やかでとても良かった。小菅は才能はあるということなので、真面目に生きれば未来は明るいのかな。正直、ハコイチが幸せなら何でも良いと思ってしまった。
素直じゃなさすぎる教師と優柔不断な元教え子。何も起こらない中でノンケが同性に惹かれていく展開に説得力はないが、心理描写をじっくり読みたいときは良いかも。BL前提で“恋ってそういうものだから”とフォローありきな作品って印象。
両視点で、最初は棚橋視点から。彼女と結婚するつもりだが流される自分にモヤモヤしているのが伝わってきて、こちらもとてもモヤモヤする。事件も心理的な刺激もなく水原に惹かれていくのは、ちょうど心に隙間が空いていたからかと思う。
自主性がないと自己評価を下す棚橋は、本当にふらふらしている。水原への恋心を認めるまでにふらふらと揺れまくり、告白に至ってはただの二股宣言のようでびっくり。あとから理由を述べてたけど、これほど萌えない告白もない。
ギリギリの土壇場でやっと心を決めるのも、大竹の強力な後押しがあったからであり、ズルいというか人間らしいというか。ただ、棚橋は水原が女性なら彼女の方を振っていたと言っており、その時点で結論が出てた気がして、気持ち的に盛り上がらなかった。
後半は水原視点で、焦らし焦らしてなかなか付き合わない二人のあれこれ。水原は五回尋ねてもノーと言い、六回目でやっとイエスと頷く意地っ張り。この情報は振り向いてもらえない棚橋にとって、ずっと支えになっていたのかな。
棚橋いわく“人生を変えてしまうほどの想い”が、些細な日常の中で生まれるお話。恋心自体の心理描写は読み応えがあると思う。でも恋に落ちるエピソードに萌えたり共感したりしたいときに読むと物足りないかな。
タイムスリップというある種派手な題材ながら、ぼんやりした話だと思った。一番の目標:自殺防止が、間接的な影響でただの結果論的に成し得ただけで、行動の成果と言い切れないのがスッキリしない。見どころは心理描写なのかな。
久我山はまあ性格の悪い弁護士。でも自分の性質をよく理解したうえで性格悪いまま生きてるのでとても好き。作中評価と印象が一致してるのも良い。久我山はまだどうにでもなるし、周りを不快にさせない配慮ができる分、害がない。
曽根はDV彼氏に「本当に反省しているかも」とテンプレのようなセリフを吐いて何でも許す。荻野を甘やかす最適な相手で、ある意味ベストカップル。曽根の魅力が分からず、曽根に惚れる久我山を見てもBLテンションが上がらない。
タイムスリップ後は、一人称「私」の31歳弁護士が高校生やってる描写に笑った。女子高生に手を出そうとして失敗するのは、リターンを描くためにしても、BLに都合良すぎて面白い。曽根にはキスできる不思議。
高校生の久我山は、せっかく動ける身体があるのに、基本は見てるだけでイジメもスルーで展開に物足りなさがある。心理描写重視なんだろうが、それにしても何もせず考えてばかり。これで人一人の生死が変わったと言われても……。
後半は曽根視点で恋の成就が描かれる。久我山の中で15年のつじつま合わせがどうなっているのか分からず、セリフに違和感がある。ずっと昔から好きだったとか、15年思い続けたかのような重さを醸し出してくるのがなんとも。
初めて恋を知った久我山はこれで幸せなのかな。いまいち萌えないお話だった。
執事兼秘書と潔癖症ご主人様のお話。滅多に感情的にならない仁視点のときは読みやすかったが、乙矢視点に移ると自ら罠に嵌りに行くスタイルでゲンナリ。富益の策士ぶりは最高、この執事はめちゃくちゃ好きだった。
だまし討ちのような形で執事兼秘書に仮採用された仁。なぜ正式募集しないのか、乙矢の不自然な仕事環境も含めて説明が中途半端で、最初は入り込みづらかった。
キャラ設定は面白いと思う。乙矢の当たりの強さは上司としては最低だけど、仁がどんな嫌がらせにもめげず、冷静に対応してくれるおかげで徐々にその人間性と可愛さが分かってきた。それにしても仁の忍耐力は尊敬に値する。すごい。
山場はお決まりの展開。また受けが捕まって攻めが助けに来る。二十年前の作品でもコレってなんだかなあ。他の盛り上げ方じゃダメな縛りでもあるのか。
その後の乙矢の活躍はさらっと流れて残念だった。買収済み役員を一度の会議で寝返らせる説得なんて、どんな内容だったのか気になる。仕事における乙矢の優秀さは具体的に描かれておらず、ただ優れた意見を出すとだけ言われても説得力がなかった。
最後に富益の元気な姿が見れて一安心。なんだかんだで富益にしてやられた感があり、それがとても心地良かった。
表紙に一目惚れして読んでみた。口絵も神。内容は笑える部分が多く、しんどいとこもあるけど、気楽に読める感じ。人外キャラたちの、わちゃわちゃしつつも、いざとなると頼りになるとこが好き。メイン二人も好感度高めで良かった。
タイトルの展開は序盤に訪れ、分かりやすい。リヒトに危機が迫っても、助けが来るのが早くハラハラする前に救い出され、心穏やかに読める。常に一緒にいるケサランパサランとアンタスが可愛く、各所で癒やしてくれるのも助かる。方言は本気で何言ってるか分かんなくて笑った。
ヴィクトールはリヒトへの一途な執着はすごいけど、本質的には短気な印象。リヒトの害になる人間を即切り捨てる。真面目に考えればこれが王とは恐ろしい。でも無責任に見ている分には、その場でサクっと報復してくれるので、ストレスフリーで読めて良かった。
好きだったのは、夢が叶ったヴィクトールが泣いちゃうシーン。あとケサランパサランのアクセサリー擬態が、挿絵で見ると可愛すぎて衝撃。「うりきれ」札を掛けるアンタスも好き。これも挿絵で見たかったな。
気になったのは、リヒトの心理描写がワンパターンな点。中盤、リヒトが落ち込んでヴィクトールが来て浮上する流れを繰り返す中で、またこんなこと言い出して同じとこグルグルしてる、と飽きそうになった。リヒトは鈍すぎるのももどかしい。
「さわやか執着系初恋絶対叶えるマン」がわりとイイ性格してて楽しかった。この愉快なあらすじも好き。
面白かった!発作を抑えるエロといった定番はありながら、BLではあまり見ない設定。メイン二人は、淡々とした中にしっかりとした信頼が見える関係性で萌える。山場の緊迫感もすごくて、最後まで一気に読めた。挿絵は圧巻。
白井は眼白であることを隠しながら、眼白に関する捜査を担当する刑事。自身のルーツを探りたい想いと私情も見え隠れするが、新人にしては冷静な仕事ぶり。鵙矢と遠慮なくやりあう会話が読んでいて楽しい。
鵙矢は余裕たっぷりで捜査の協力者として安心感がすごい。鳴かせ屋としての腕が伝説級なのは、徹底して尽くすかららしい。肉体と精神のコンディションを整えるだけでなく、愛されている自信を持たせている感じなのかな。
鳥人が登場するファンタジーかつ事件ものでもあって、二人が追う敵は人身売買の黒幕。白井がかつて慕っていた眼白や鵙矢のトラウマ源の妖鳥など、全てが絡まり合って何度も絶望的な展開に。
危機的状況には、白井が自分の意思で行動できなくなることにより陥るので、もどかしくも緊張してしまう。そんな中で秘密が明かされていき、一時も目が離せない。瀬戸際の演出もお見事で、読み応えを感じた。
二人の間に恋心は見えなかったが、吊り橋効果もあって、相手への執着が生まれるのは自然な流れに思える。こういうくっつくき方がたまらなく好き。
欲を言えば、通常時のくるぶしの羽も挿絵で見たかった。羽が生えるのはなぜ首とくるぶしなのか、羽の役割が気になっていたので。他にも不思議なところはあったけど、特に意味はないのかも。
新鮮な設定と凝ったストーリーに魅力的なキャラもいて、とても面白かった。
ストーリー自体は嫌いじゃないが、キリイ視点で追っていくのが激しく苦痛。最終的なラスボスの処理は都合が良すぎて、スッキリしなかった。全体的に気の毒なモブが多すぎて辛い。読後感が最悪で、気持ち的には“しゅみじゃない”。
キリイの信条はワダツミを守りたいというもの。それなのに、歪んだ嫉妬と八つ当たりでモブ少年たちを穢しまくっている。彼らもワダツミの民なのに害しているわけで、「守りたい」←お前が言うな状態。
しかもキリイのやっていることは、信仰意識の強い者なら死に値する行為の可能性もある。日本の宗教観とは違うだろうし。幼少期の辛い経験など、少年たちには何の関係もないこと。金で黙らせるのがまた最低で、キリイの良さがどこにあるのか分からない。
ユアハにしても、私怨で戦を起こしておいて一人だけ記憶を失くして助かるなんて、ユアハに付き従い死んでいったモブ兵たちの命は何だったのかと虚しくなる。こうしたモブたちの酷い扱いに対し、悪役キャラに甘すぎると感じる。
ハヤテとユアハのカプは必要だったのかな。途中スザクの存在感が無くなり、別視点に移ったりもして、ただでさえメインカプのカプとしての魅力が微妙だったのに。最後までキリイとスザクの関係には興味を持てなかった。
ただ、三部作の最終巻として見れば、ちゃんと終わってたので★3。キリイが主役のBLとして見れば、胸糞すぎて読めなかったかもしれない。