相も変わらずラブラブなカップルの日常話。ディックはユウトしか見えていない溺愛ぶりだし、ユウトはディックに見惚れ続ける毎日。そしてしきりに伝わってくるのは、こんな日々が永遠なのだということ。安心できる最終巻でとても良かった。
今回の大きな出来事は、二人で引っ越しを決めることかな。きっかけはディックの嫉妬で、そこから発展したのはディックに趣味を持って欲しいユウトの想いがあってのこと。賃貸だけど、雰囲気的にはここが終の住処になりそうだと思った。
この一連の流れの中でも、最後に収録されている短編でも、この先もずっと一緒にいる決意のようなものがセリフやモノローグからあふれ出している。ここまで来たんだなあと感慨深く、始まりの「DEADLOCK」全三巻を読み返したくなった。
少々気がかりなのは、ロブとヨシュアの不安が取り除かれる結末を見れないまま終わってしまったこと。ロブ推しなのでこれは辛い。問題なく続いていくであろう確信は持てるが、やっぱりこの二人も最後は笑顔であって欲しかったかな。
タイトル通り≪Forever≫を感じられる短編集。幸せすぎてちょっと泣けた。
精神的に追い詰められておかしくなっていく凛の、鬼気迫る心理描写がとても良かった。ヒステリックに愛を乞うシーンは読んでいてしんどいが、そこに愛憎だけでない、歌手としての焦燥が加わり激しくなっていくさまに読み応えがあった。
凛とエリアスの関係は、アーティストとパトロンもしくは不倫夫と囲われる愛人のよう。途中からは凛もエリアスのパートナーの存在を知ったうえで関係を続けており、エリアスに愛を求める姿はただただ痛々しい。
割り切りや弁えもなく正妻の座を欲しがる不倫描写は、切なさが足りず、気持ちが盛り上がらない。次第にヒステリーを起こし始める凛を見ているのもキツい。もう少し歌手としての危機感が深刻になってからヒスってくれると読みやすいと思った。
とはいえ共感できなくても、切羽詰まった様子や心が壊れていくどうしようもなさは伝わってきて、ぐいぐい引き込まれてしまう。主人公が好きになれなくても、BL以外に惹かれる要素があれば楽しく読める。なので前半は面白かった。
二人が別れてからは、エリアスの後悔が見どころなのかな。最初からエリアスは“そういう人”として見てたので、意外というか違和感というか。まさかの攻めザマァな定番オチ。ここまでの描写がすごすぎて、賛否ある尖った終わり方を期待してしまった。
個人的に、エリアスの独特の倫理観を理解して受け入れていた当初の凛が好きだった。貴族として仕事に生きるエリアスのありのままを尊重する愛し方。でも多くの読者はそれに耐えられない凛に共感するわけで、エリアスを変えるしかないんだろう。残念。
凛の人生として見るととても面白かったが、BLとしては刺さらなかったのでこんな感想。ハピエンというより、これから二人で過ごす穏やかな余生の始まりを見た気がした。(電子は挿絵なしで200円値引きしてくれるのも好印象)
東屋の初登場時の印象が最悪でどうなることかと思ったが、すぐに内面を晒してくれ、読みやすくなった。怜王と東屋がお互いに影響を受け、急激に成長していくお話。本当に急激に人が変わっていく様子に、ちょっとびっくりした。
前半は怜王視点で、見た目から生き方までみるみるうちに変わっていく。かつての仲間と空気が合わなくなっていく描写がリアルで良い。東屋と身体の関係込みの同棲のような関係になったのは、ただただ怜王の頑張りによる感じ。
で、ふとこの二人は付き合ってたっけ?と思ったところで同じように怜王が悩み出し、まあそうだよなあと。なので終わりを決めるまでは納得の展開だったが、何も言わずに消えるのは自己完結の度が過ぎる気がして、怜王の行動が疑問だった。
そこから東屋視点に移ると、今度は怒涛のような反省の数々。正直これはやりすぎに思えるし、あまりに東屋が(書き手に)責められすぎているようで、読んでて辛い。攻めザマァ系や後悔攻め作品でよくある書き方だが、これだと受け優遇に見えてしまう。
東屋へのヘイトが溜まっていれば、後悔する姿を見て溜飲を下げ、ハピエンを応援する、という読者心理を煽る手法。個人的には、東屋がそこまで酷いことをしたとは思えず、ただただ気の毒になってしまった。最初に東屋はそういう人と自己紹介があったし、問題は双方にある。
と、後半はモヤりながら読んだが、お互いが良い方向に変わっていく姿は心に刺さったし、タイトルの「ベターハーフ」ですとんと腑に落ちる感覚があり、読後感は良い。嫌な事件も起こりそうで起こらないので、穏やかに読める。良かった。
付き合うまでは可もなく不可もなく。お付き合い後の二人の関係性は好みじゃない。見下す遠藤と見下されて喜ぶ昂大という、昔の少女漫画みたいなカップル。表面上そう見えるだけ、と言いたげに遠藤視点の補足もあったが刺さらなかった。
八方美人で誰にでも気を使いまくる昂大と、「うざい」が口癖で才能はある遠藤は、二人が友人や同僚なら笑って見ていられると思う。でもここに恋心が加わると、昂大に惨めさや痛々しさを感じる。切なさを超えてそんな感想になってしまうのは、昂大の卑屈な内面と情けない外面のせいかもしれない。
昂大に告白させて動き出す遠藤は、尊大さが鼻につく。キツイ言葉も、昂大の本音を隠して取り繕う顔や、抱えている辛さをグサグサ刺しにいってるなら良かった。が、巻末の遠藤視点を見ると、そんな意図は無いようで。
あの短編は遠藤の言い訳に終始し、自己中でしかなく、びっくりした。最後の言葉も「身体で伝えたい」って。人間じゃなかったのかな。そういえばエロにだけノリノリで強引に迫っており、通常時とのテンションの違いに引いた。
完全に昂大を自分のモノ扱いして上から目線に見える遠藤が、BLの攻めとして人気なのは納得。精神面の上下関係がハッキリしすぎ、差がありすぎで、私はこんなカップルに魅力を感じないが。古さを感じるところも微妙な気持ちになる。
結局モヤるのは、昂大にプライドはないのかってこと。嬉々としてペットになりに行くようにしか見えず、価値観が合わないと感じた。
途中まではルビー文庫でよく見る複雑化を許さない書き方で正直ガッカリしたが、終盤にかけて盛り返してくれたので、満足度は高い。問題解決までの過程が詳細に描かれており、読み応えがあった。ユンの仕事への姿勢が好きかな。
物語はユンとザイの二視点で進む。まずユン視点でザイへの悪印象を語り、ザイ視点でそれについて釈明してる感じ。誤解やすれ違いが透けた状態は分かりやすいが、早々の種明かしに冷める。できればユンの一視点で読みたかった。
過去の暗殺事件の真相究明と、現王ザイの廃位を目論む勢力との対決が主なお話で、間にBL描写が入ったり入らなかったり。シリアスな場面で一瞬恋愛脳になる不自然描写が挿入されるのはもはやお約束。と、いまいちノリ切れずに読んでいた。
面白くなってきたと感じたのは終盤。謎を一つ一つ調べ上げていく描写が丁寧で良い。ザイとユンの協力体制ができていて読みやすい。特にザイ側の味方を増やしていく戦い方が、地に足がついていて良い。ユンもてきぱき動くタイプで、心理描写にウジウジ感がなく、好感度は高い。
少々あっさりしすぎてご都合感はあるものの、地道に堅実に物事を進めてくれたおかげか、解決シーンでとてもすっきりできた。BL的には、実はずっと前から両想いだったというオチで、エピソードは事件に必要なものに絞っていたのかな。ストーリーに集中できて楽しく読めた。
電子おまけSSは嫉妬するザイ(通常運転)と抜けてるユン。ザイへの態度に何か含みがありそうなウェイが気になる。
タイトルは語呂重視なのか売れ線単語を並べたかったのか。やっぱりこのレーベルは苦手だけど、佐竹さんの作品は好き。今後も作家買いしようと思う。
将棋棋士と何でも屋のお話。基本は敦也視点で、人生の迷子状態だったのが、雪と再会して好転していく様子が良かった。雪の方はトラウマと向き合い、乗り越えられたようで安心した。ラストが遠恋状態なのは気がかりかな。
有田焼の修行から逃げ、何でも屋で働く敦也。24歳で将来に迷いつつ、ゆるゆる生きてる印象。雪にとって大切な子供時代の敦也との思い出は、敦也にとっては何気ない一コマで、敦也視点だと純粋に大人になった今の雪に惹かれていく感じ。
雪は、棋士設定にありがちな極端なキャラ付け。積極的に告白して、すぐ一方的にお断りは意味が分からない。隠してる理由があるにしても、これでは敦也が気の毒。狭い世界で生きてるそういうキャラって設定だから、こうなるのかな。
物語はくっついて終わりでなく、それぞれの人生が上向くところまで描かれていてとても良かった。対局シーンはなんか熱い、いや熱すぎて、キラキラしたファンタジーな何かを見ている気分になった。
気になったのは、取材ゼロの観る将(作中では“見る将”表記)が書くとこうなる、の見本のようなとこ。観る将特有の偏見をアマ段持ち設定の敦也が言ってて違和感だし、知識の偏りが見受けられる。また、有田焼の説明と将棋の説明で、熱量の違いを感じて微妙。
でも良い部分もあって、外から見える綺麗で華やかなところだけを煮詰めて崇高なものに昇華しているようで、書き手の将棋愛に圧倒される。リスペクトと同量の将棋に夢見すぎてる感もある気がして、置いてけぼりにされるところもあったが。
どちらかというと、BLより将棋描写に細かなこだわりを感じる作品。雪の自己完結と内向的な面は、特殊な環境が説得力を出していたのかな。敦也の鷹揚さとバランスが良く、しっくりくるカップルだと思った。
設定は面白かった。が、主人公は何か起こればつっ立ってるだけになり、読んでて楽しくない。各章タイトルがネタバレになっており、読む前に大事な出来事が分かってしまうのもなんだかなあ。攻めに守られる受けの話だった。
結晶栽培にまつわるノアのさまざまな設定が良い。親とのあれこれや正体不明の箱など、謎が散りばめられていると興味を惹かれる。ノア視点で、内面が見えないレンが記憶喪失というのも面白い。
レンは最初から武力でノアを守る存在になり、地位と権力も持っていそうなのは分かるので、記憶が戻ればノアが抱える諸々の問題は即解決しそうで、ある意味安心。実際には危機が訪れる前に救助され、レンの回復を待つまでも無かったが。
ラスボスと思われる敵の正体が分かると、伏線が微妙だったと思った。他にも文章表現のバリエーションが少なく、語彙不足に感じる場面が多々あり、これを商業小説と言われると不満。とはいえ他の人気BL小説もこんなものかも。特にWeb系。
最後のお片付けはサクサクあっさり。あんなに気持ち悪さを与えて来たキースは、名前さえ出ない状態で退場していた。で、大事なのは、レンはもうノアの知っているレンじゃないという悲観的な葛藤。共感できれば切なさを味わえそうな。
ラストは何とも言い難い。情緒があるとも言えるし、中途半端な印象もある。レンが迫ってノアが保留でBLらしい、受けに都合よく進むお話。実害あるキースよりレンにばかり噛みつくエランといったストレス要素もあり、たぶん読み返さない作品。
「ひつじの鍵」のスピンオフ、といってもスピン元から十年以上経っている。羊の友人和楽のお話。元から和楽は好きなキャラだったが、相手役の群も一生懸命で可愛くて、ストーリーもとても良かった。大好きな一冊。
大人になった和楽は、ドライさが増したような、でも恋に臆病なとこは変わっていないような、そんな印象。ただ群の描いた絵に対してだけは熱くなっていて、描いた本人に会う前から恋に落ちていたのでは、と言いたくなった。
二人の出会い方はものすごい偶然だったけど、その先の道を作ったのは和楽。群にとっては信じられないサクセスストーリーの始まりで、これまでの苦労が見えてくるたびに応援したくなり、ワクワクしながら読んだ。
群は家庭環境から多くのことを諦め、家計を支えることを第一に考えて生きてきた若者。和楽を疑うのも納得と思っていたら、急激に懐いてほっこりした。尻尾ブンブンが見えそうな素直な感情表現をしてくれるキャラで、和楽も育て甲斐がありそう。
家出からの流れは、とてもドラマティック。地球上のどこにいるかも分からなかった群を、一枚の絵から探し当てるなんて。心理描写も情景描写も心に刺さる文章で、何度でも読みたいと思った。
あとがきのおまけSSは、早速年下彼氏群のワガママ(?)を聞いてあげる和楽。伊織は当て馬要員だったのか、掴めないキャラな気がしたけど、スピンオフの匂いは醸し出してたと思う。新刊出ないのかな。
さらっと軽く読めるお話だと思う。最初は羊のワガママ坊ちゃんぶりに驚くが、根が良い子なのはすぐ分かるので読みやすい。さらに何より相手役の一色が強すぎて、羊が何をしたところで、という感じなので微笑ましく見ていられた。
羊は一色限定でトンデモ発言を繰り出しており、後からあれは甘えだったのかな、と思った。お金持ち学校に通いながらも庶民感覚を失っておらず、それなりにふらふらしてそれなりに考えてる高校生。たまに直情的になるのは若さゆえかな。
一色は仕事モードとプライベートでの態度が違いすぎる。BL的にオイシイ設定っぽいが全然萌えないギャップ。ただキャラとしてとても面白く、コンシェルジュとして・大人として・恋人としての言葉をしっかり分けてる感じが良かった。
山場は誘拐現場に攻めがバーン!を一穂さんも書くんだ、と笑った。そこからあっさりくっついたけど、一色の羊への躊躇の無さは意外。あんなに性急に制服着た子供に手を出すとは思わなかった。ページ数の都合かな。
後半は一色の嫉妬に萌えられたら良かったが、和楽がとても魅力的に見え、嫁子の最期のメッセージに泣き、主役カプよりそちらの印象が強く残っている。一色と羊は放っておいても勝手に幸せになってる、と確信が持てるからかも。
一色に絶対的な信頼を寄せる羊と、羊といると楽しいと笑う一色は、これからどんどん良いカップルになっていくんだと思う。歳の差を感じないくらい大人になった二人も見てみたい。
身も蓋もない言い方をすれば、女から男に乗り換えるノンケ男のお話。何も簡単には進まないし心理描写も丁寧なのに、暁行が遥を“恋人”として選ぶ流れに納得感がない。リアルとファンタジーのバランスがいまいちに感じた。
合間合間に暁行の独白ブログを挟む、懐かしさあふれる雰囲気。彼女の真希と友人の遥とはもうそれなりの長さの付き合いで、どちらとも関係は深い。物語の始まりは、遥が暁行に告白したところから。
BLだから仕方ないが、描写もその丁寧さも最初から遥にだけ寄りすぎで、違和感がある。自然に結婚を思い描くような彼女という設定なのに、暁行の心理描写の中で真希は全く存在感がない。さらに遥が性欲の対象外である点への踏み込みもない。
丁寧に書けば書くほど作者のBLに持って行きたい圧が見えてくるようで、キャラを捻じ曲げていないか不安になる。読みたいのは無理矢理男同士をくっつける話でなく、キャラ本人の感情で相手を選んだと思える恋物語。
描写不足に不満を抱く場面は何度もあり、でもここをきちんと描くとBL読者のウケが悪くなると分かってしまうところばかりで、BLというジャンルの縛りの多さを実感した。そもそも暁行のノンデリ程度で賛否分かれそうなとこあるし。
一夜の過ちを犯す心境が分かると言っていた暁行は、その伏線を回収するかのように、いつか自身の言葉通り“うっかり子どもをつくって”しまいそう。遥との十年後より、そちらの未来の方が容易に想像できると思った。
表題作の終わり方と、そこから遥視点に切り替わる構成がとても好き。