1巻で運命的な出会いをマッチングアプリによってした千堂と和泉。会社ではライバルなので素直になれずにいたふたりが両想いになりました。
一緒に暮らすことはできないけれど、隣人として半同棲的な状況で仲良く過ごしているところから2巻ははじまります。
そこでやってくるのはちょっとしたライバルになる新入社員の佐原とコンプレックスの元である兄の颯人です。佐原の指導担当になったうえ、1位どころか2位の成績さえ奪われそうな和泉ががんばるあまりに調子が悪くなっていく中、颯人が訪ねてきます。
颯人は弟想いの優しい兄だし佐原もワンコ系でもただの後輩なので、特に争いがあったり傷つけあったりということはありません。ただ、和泉がひとりで抱え込んで苦しんでいく様子がとても辛そうでした。そして、兄が伝える和泉の心の棘は思ったよりも苦しいものでした。
颯人が天才で勉強も運動もなんでもできて、親が1位以外認めない毒親だったので、子どもの頃の和泉はほんとうにかわいそうでした。それでもなにかを恨んだり、誰かのせいにしたりしない和泉は良い子すぎて余計に切なさを感じました。こんな過去があったとは1巻では感じられませんでしたよね。
でも2巻でこのふたりが出てきたことによって、がんばるだけじゃダメ、1番じゃなきゃダメというコンプレックスを和泉は少しずつ克服していけるようになりました。それは千堂が和泉の心の棘をなんとかしようと支え、親から与えられなかった自己肯定感も千堂によってありのままの自分を受け入れられることによって高まったからだと思います。
「和泉に追われるのは俺だけがいい」と佐原にも颯人にも独占欲を示して、精一杯和泉のために行動する千堂が1巻よりもとても魅力的な攻めになっていました。
1巻はわりと王道のラブコメでしたが、2巻は思ったよりもシリアスでした。ふたりのことをもっと深く知れた続編になっていたので、ふたりのつづきを読めてよかったなと思いました。
最後に温泉に行きます。そのエッチもふたりの語り合いもとてもいいのでぜひお楽しみください。
「フェアプレイ・フェアラバー」の続編。
ただセックスがしたいだけの関係からはじまった諏訪と長峰。一応、前作で付き合うことになって終わったはずなんですが、その巻末の5ページで「フェアプレイ・フェアラバーズ」と題してプロローグが描かれています。「最初はよくてもだんだん幻滅して」と長峰が思う様子が今作の発端になっているようです。
コミックス発売前から続編が決定していたのでしょうか?あとシーモア限定で母親からの「史ちゃん」呼びの手紙などもあり、新刊を読んでその繋がりに萌えました!
続編は長峰がずっと疎外感を覚えながら成長してきた様子がじっくりと描かれています。自分はみんなと違う道をひとりでいる、自分がしたいことがわからない。でもゲイだと知ってひとりでいる意味を見つけた長峰。そんな長峰の側にやってきた諏訪に対して、特別な存在になっているのにどうしていけばいいのかわからないし、諏訪の気持ちも素直に信じられません。
ずっと拗らせてきた恋愛をしたことがないゲイなので、なかなか素直になれません。
夏休み中、ずっと一緒に過ごしてセックス三昧のふたり。そんな中、突然母親が訪ねてきます。
諏訪は母親と長峰がいることで、今まで疎遠だった母親といろいろ話すことが出来ます。そして諏訪が大事な存在になっていることと、きっと30歳になっても40歳になってもこのまま自分だけが長峰を思っていであろうことに不安を覚えます。
夏休みが終わり、周りは就職活動を始めます。将来のことを考え始めるふたり。いつまで一緒なのか、一緒にいる意味はあるのか。今までちゃんとした恋愛をしてこなかったし、ノンケとゲイであり性格も正反対なふたりは、すれ違ってしまいます。
付き合っていたはずなのに、なんだかセフレのままのように読者も感じてしまうように、ふたりも付き合うことがよくわかっていないようです。そんなふたりですが、長峰は母親と諏訪は元カノと話すことで自分の気持ちとどう行動すればいいのかが理解できるようになります。
結局、お互いに自分だけが必死だと思っていたけど、それはお互い様だったんです。照れながらもふたりは幸せになっていきます。
やっと本当に恋人同士になったふたりのハピエンになっています。今作は上下巻作品のように2巻を通して物語が終わった感じがします。ぜひ「フェアプレイ・フェアラバー」「フェアプレイ・フェアラバーズ」両方読んでお楽しみください。
前作の「フェアプレイ・フェアラバー」では描き下し漫画で10年後のふたりとイラストで30年後のふたりが描かれていましたが、今回もふたりの30年後が1ページの描き下し漫画で読めます。
ずっとふたりが仲良くしていく様子が見られるのは嬉しいですよね。
今作の続きである就職後のふたりもまた読めたらなと期待しています。
彼女に騙されて仕事を辞めてお金も失った亮。連絡が取れなくなった彼女の家に行くと、待ち伏せしていたヤクザに彼女とグルだと疑われてしまいます。その時「俺の恋人」と嘘を吐いて助けてくれたのが、元同級生の夕星。その嘘のためにふたりはしばらく一緒に暮らすことに。
そんなふたりが過去の思い出を語り合ったり、一緒に過ごして優しさに触れたりするうちにどんどん仲良くなっていくお話です。
水曜日先生らしい受けの亮が明るく空回りしてかわいさ抜群で、攻めの夕星はクールかと思いきや照れ屋で赤面がかわいいキャラになっています。読んでいてすぐに夕星は中学の時から亮が好きだったんだろうな、だから逆に素っ気ない態度だったんだなとわかります。
クールな攻めがかわいい受けの絡みを塩対応しているフリしていながらも、実は受けが攻めをじゃれながら追いかけまわして惑わしている感じでした。とにかく亮のパーソナルゾーンが狭いんですよね、すぐ夕星に抱き付いちゃうんです。無自覚煽りされた夕星はずっとドキドキして、それがかわいくてかわいそうです。
亮は無邪気ですぐ人を信用して好きになっちゃうんでしょうね、そして素直なので夕星への恋心を抱くとすぐに「キスしていい?」とか言っちゃうし「好き」って伝えたくなっちゃいます。でも夕星はヤクザである自分と一緒に亮がいることをいいとは思っていないので、好きなのに、好きだからこそ拒絶します。それでも諦めきれない亮。かわいい亮だってやっぱり男!くじけません。そんなところがBLの良さだなって思いながら読みました。
もちろん最後はハピエンです。でもハピエンに向かうまでの最後の山場はネタバレなしでぜひ読んでください。ネタバレなしの方が楽しめると思います。
水曜日先生らしいかわいらしいラブコメにヤクザならではのシリアスな場面もあり、1冊でよくまとまっていたと思います。笑顔も赤面も泣き顔もホント上手に描きますよね。今作はふたりの思い出のキャラ・むじゅかわもかわいい!えっちもたくさんあり満足な1作でした。特に描き下ろしはめちゃくちゃよかったです!
舞台で恋人役として初共演する前から互いに興味を持っていたふたりの物語です。
初舞台で上手くいかない千尋をフォローしていく間に仲良くなっていくふたり。もしかしたら恋愛対象かもと互いにちょっかいを出したり意識したりして赤面するんですが、伊吹も千尋もどっちもめちゃくちゃかわいいです。いつも大人でかっこいい伊吹もモデルとしてかっこいい千尋も見ているのでそのギャップがいいんですよ!
舞台共演が終わってもプライベートでよく会い、そのまま上手く付き合っていくのかと思いきや。年下の千尋の恋と憧れに戸惑い、自分が夢中になった後に勘違いだと思われるのが怖くて伊吹はインタビューでよけいなことを言ってしまいます。その臆病さに伊吹の今までの恋愛がいいものではなかったんだなと切なくなります。
受けの伊吹の方が年上で大きくてムチムチしているので、逆がよかったと言う人もいるかもですが…… わたしはゲイでない千尋が「男抱けるか?」と問われてすぐ「伊吹さんなら」と言ったシーンがとても好きです。
でも残念ながらその後に千尋が射精できなかったので、伊吹が「冷めるのも時間の問題か」となっちゃうのですが(涙)そのすれ違いも相手が好きで自分が傷つきないための理由がそれぞれにあって、物語としてキャラの心情がすごくよく表現されていてよかったです。そしてその後に「恋愛って頑張らないといけないんだな」と伊吹が気づくところも好きです。
ふたりが素直になるきっかけはやっぱり千尋からなんですが、ふたりとも俳優としても個人としても好きだと言う気持ちを伝え合います。俳優というキャラだからこそのシーンでとても素敵でした。
年上でゲイである伊吹とノンケである千尋ならではのすれ違いや素直になれない気持ちなど、読んでいて納得できる感じがしました。1巻完結ですが、無理やりっぽい心情変化や都合よく物語が進んでいく感じもなかったです。シリアスな物語ですが、時々笑わせてくれるエピソードもあります。その匙加減もとても上手でした。さすがrasu先生だと思います。
おすすめです!ぜひ読んでください。
そしてなにより!電子購入ですが、めちゃくちゃ修正が神です!!え?これ18禁バージョンじゃないの?という感じ。エッチもいろんな角度から描かれていてビックリでした。それだけでも読む価値あるかも!
「結婚」「初夜」「蜜月」「純愛」ときて「誓い」。偽造結婚からだんだんと惹かれ合い愛し合うようになって本当の家族・夫夫になるまでの京極家の物語がとうとう完結。
誠志郎と尊の夫夫に幼い礼央との三人の家族。誠志郎と両親。尊とママとパパ。礼央と母親。それぞれの家族や愛の形はいろいろあって、ギクシャクしたりコンプレックスがあったりしたけれど、やっとすべての家族が丸く収まりました。
最後には家族揃っての結婚式をもう一度します。偽造ではなく愛に溢れた結婚式を。
5巻を通していろいろな試練やすれ違いなどありましたが、じっくりと誠志郎と尊の過去現在が描かれていていてからのハッピーエンドだったので、それぞれの気持ちや行動に無理がないので違和感を抱くことなく読み進めて行けました。特に過去の話をしたがらない尊が少しずつ誠志郎に自分のことを語っていくのは、尊の心が楽になっていくようで読者としても嬉しかったです。
今巻のメインテーマは尊と母親の関係です。女優である母親に愛されていなかったことで、人を愛することや家族・結婚についても深く理解できていなかった尊ですが、誠志郎と過ごしていくうちに愛する気持ちも親の愛情もわかり始めます。また、元妻ともきちんと話して決別もでき、母親とのいい思い出にも気づいていきます。
そんな母親が倒れたと連絡が入り、尊と母親、そして父親が病室で再会します。
その時のモノローグ、1巻で誠志郎が礼央に行ったセリフです。「男同士でも 女同士でも 年が離れてても 若くても老いてても 愛し合ってる大人なら 誰だって 結婚していいはずだ 変な結婚なんて この世にはない」ほんとにその通り。京極家のみんな幸せな結婚なんですよね。
ラスト、みんなに祝ってもらいながらの和装の結婚式、ほんとによかったです。誰もが幸せそうで。
これからもバカップルでいてね!誠志郎、尊お幸せに!
ただちょっと残念だったのは朝倉先生が活躍してなかったこと。もっと絡んでくると期待してたんですが。次、朝倉先生のスピンオフきますかね?
三十四歳、四代目代議士朝倉先生のスピンオフ、待ってます!
「普通の恋がしたい」「ただそれだけ」きっと多くの人がそう思っているはずです。ただ好きな人に好きなってもらいたい。それを普通の恋というけれど、実はそれってすごくミラクルなこと。でもきっとマイノリティの人はそのミラクルがもっと難しくなるんでしょうね。
好きな人に騙されてお金も恋も無くしてしまった佑月は、カフェのイケメン店員の渡辺に一目惚れをします。同じカフェにバイトに入り、飲み会で酔っぱらった渡辺を自宅へ連れて行きます。飲み会前から渡辺は佑月が自分に気があると感じていたはず。渡辺に彼女がいると知っていても、佑月は渡辺に対して否定できずにセックスをしてしまいます。
翌日のバイトでも普段通りの渡辺に対して、やっぱり流されただけで調子に乗っちゃダメだと思った佑月は、バイト先に来た渡辺の彼女を見ても気にしないフリをします。そこに渡辺はあれ?と思ったんでしょうね。彼女とのデートの後に彼女から返されたぬいぐるみを渡しに部屋に来たり、いつもと違う甘い匂いを身体につけていたり、優しいセックスをしたりと典型的なクズ攻めです。それでも好きになっちゃって拒めない佑月は都合のいいセフレで甘んじています。
佑月が小学校の先生になりたい理由や渡辺が家族と距離を取っている理由など描かれ、普通でいたい、いい子でいたいと訴えてきます。ふたりとも自分を受け入れてくれる誰かをずっと必要としていたんです。でもそれは家族では埋められなくて、きっと恋愛相手に受け入れて認められたいとがんばりすぎて、ふたりとも恋愛がうまくいかなかったんでしょうね。そしてそんなふたりが共依存の関係になってしまうのは必然なんだと感じました。
「ふたりよがり」というタイトルですが、それぞれ「ひとりよがり」で自分と相手のことを見ています。相手を思った行動だったり自分に都合のいい行動だったりをして、微妙にすれ違います。
また、「ふたりよがり」のその中に渡辺の彼女というクッションが間にあるので、真剣に向き合ったり衝突したりしないでいられる歪な共依存の関係で、彼女を巻き込んだふたりの誤魔化しのある恋愛ができています。
彼女がバイトの飲み会に来て嫌な女子っぽい素振りに見えますが、実はいい子です。嫌な奴は渡辺で、渡辺と佑月のことに気づいて傷ついているのにちゃんと渡辺を諭します。彼女がいたからこそ、渡辺が自分の想いに気づかされます。
そして最後に向けて、渡辺も佑月も今までの自分のダメなところや想いをぶつけます。振り回していたはずのクズ攻めの渡辺が、チョロ受けだったはずの佑月にざまあされますが、佑月が自分に向き合って成長しているとてもいいシーンになっています。
自分を大事にしたい、大事にされたい、好きだと伝い合えます。とてもいいセリフが綴られています。ぜひ読んでください。誰もがそう思って行動してほしいなと思いました。
そして実はあれは・・・というかわいい伏線もあるのでそれもやっぱりね!とニヤニヤしながらのいいハッピーエンドになっていました。
表紙とタイトルを見て、この作品もダーク系かと思いましたが、安心してください、これは違います。グロさも乱暴さもないので安心して多くの人が読める作品になっています。
黒いよだかと白いよだかとグロ系からほのぼの系まで書かれる黒井よだか先生はこの作品をグレー(グレイ?)よだかと言っていました。でも個人的にはこれは白いよだかだと感じました。
よだか先生らしい激しさはありますが、それは暴力的ではないし、誰がどう見ても幼馴染の両片想いのわちゃわちゃでしかないんですよ!ちょっと顔面キツメの男同士の拗らせでしかないんですよ!!
それがめちゃくちゃかわいいんですよね。白です。白いよだかですよ。
攻めの千鶴も受けの時生も相手に好きな人がいると思い込んでいながら、互いしか知らない純情さがたまりません。
王道の両片想いなので、ここで詳しくストーリーは書きません。
読みながら「そうだよね」「いやー、ここで素直にならなきゃ」「違うのになぁ」「やっぱそうきたか」と思う存分ツッコみながら楽しめる作品になっています。
おんせん先生お得意のかっこいい攻めとちょっと野暮ったいけどかわいい受けによる両片想いの物語です。今作は大学で出会った人気者の足立と猫しか話し相手のいない賢太郎がメインカプになります。実はこのふたりはおんせん先生の「葵さんえっちしよ!」のマインカプと関わりがあったりします。(その様子は後半にちょっと楽しめます)
大学の授業でたまたま隣になった足立にシャーペンを貸してもらってから、賢太郎は足立と仲良くなり彼の優しさに惹かれ好きになります。でも口下手でなにを考えているのかわからないと言われてきた賢太郎は自分に自信がなく、足立の友だちとして恥ずかしくないようにがんばる様子がとてもいじらしくてかわいいです。
ある日、勇気を出して足立の参加する飲み会に一緒に行くことにします。はじめての飲み会での賢太郎の様子に献身的な足立に読者は萌えること間違いなし!互いに別の相手に嫉妬したり、突然キスしたり、だってどう見たって足立は好きって伝えてるんですよ。
二次会を断って、ふたりだけで部屋飲みをすることにします。その後、いい雰囲気になってセックスしちゃうんですが、賢太郎は自分にかわいいという足立を信用できなくて翌朝も足立の記憶がないと信じてなにもなかったふりをしてしまいます。足立も賢太郎の本当の気持ちを言葉にしてもらえないから、そのままなかったことにします。そしてその後もふたりは足立が酔っぱらうとエッチをする関係になります。
ふたりとも好きなのに素直に好きだと言えないうちにだんだん拗れていくし、友人関係も変わってちょっとした当て馬くんも出てくるし・・・という割と定番の勘違いしたすれ違いによる両片想いBLですが、受けの賢太郎のかわいい泣き顔や攻めの足立の執着、そしてかわいいミニキャラなどを楽しみながらモダモダきゅんきゅんがとてもかわいく描かれていきます。
賢太郎ががんばって足立に相応しくなろうと、ちゃんと伝えなきゃと思い勇気を出す様子などとてもよかったです。少しずつ変わっていく賢太郎を一緒に応援したくなる作品になっています。
ホラーアンソロの「東京戦慄奇譚」で読んでいたのですが、消化不良というか、もっとふたりのことを知りたい!読みたい!と思っていたので連載になったのを知り、単行本になるのを楽しみにしていました。
でもやっぱり難しかったです。伏線がとても多くて複雑で、これは1度読んだくらいでは自分の中で消化できない物語でした。
簡単に「メリバです。ホラー系です。残酷に人を殺めるシーンなどがあります。読む人を選びます」とは伝えられますが、物語をきちんと理解して語るのは難しいです。
これはネタバレしてから読んだ方が分かりやすいと思いますが、自分で気づいてハッとして欲しい気持ちがすごくあります。読んだ人それぞれの感想や解釈があるので、ぜひ自分が読み終わった後に他の人のレビューも読んでみるのをおすすめします。
同棲している幼馴染みの禄斗と七海。もしかして七海は宇宙人なのかもしれないと禄斗が思うところから物語は始まります。
!この先からネタバレ!
人肉を食すために、弱っている人間の寂しい心のすき間を埋めてその人の求める相手に擬態する人間ではない者。自らの体液を与えることによって相手の記憶も自分の記憶も改ざんしていきます。
でもなぜか禄斗は他より弱く純粋のようです。禄斗をコントロールするというよりも七海にコントロールされています。禄斗の食事のために人を殺めていく七海。七海だけを求めて無邪気に残酷になる禄斗。
幸せなふたりも描かれています。楽しいデートもいちゃいちゃのエッチも。当たり前のカップルの幸福のそのそばに仄暗い謎や残酷なシーンも描かれていきます。
いつも手を繋ぐのはほのぼのラブラブではなく、禄斗が勝手に誰かを殺したり何かを知ったりしてしまわないように。共存してふたりだけで生きていきます。
実は、禄斗は七海が高校時代に愛して失った恋人のコピーでした。皆に愛されていた完璧な恋人とは違い、七海が望んだ通りの不完全な恋人。ずっと一緒にはいられないと分かっているのに人を殺め、禄斗に嘘を吐いてふたりの世界を守ろうとします。
でも自分の正体を知ってしまった禄斗は苦しみ、自分が人間のまま死にたい、生まれ変わった七海と出会いたいと望みます。
そして互いに呪いをかけ一緒に生まれ変わることにし、クリスマスイブ七海は禄斗と一緒に屋上から飛び降ります。
クリスマスの朝に見つかった遺体はひとつだけ。ミサンガが左腕にあるので亡くなったのは七海のようだけど、洋服も違いますし雪が降った様子もありません。この亡くなった人は違う世界観の七海なのか、それとも別人なのか。
その後、生まれ変わりや時代の変化が描かれます。そして、ブランコに小学生ぐらいの男の子の前に裸の人間ではない者が現れます。それは後世の七海なのか。結局ふたりはどちらも人間にはなれないのか。
それとも気がつかないうちに漫画の中のふたりは別の世界のふたりだったのか。
上手く言葉にまとめられず、まだわからないことばかりです。だからまた読み返さなくてはいけません。
キリスト教には輪廻転生の思想はありません。七海はカトリック教徒のようでしたが、完璧じゃないことによって親から追放されたけれど自ら「禄(神からの贈り物)」と名付けた禄斗と永遠に人生を繰り返すのかなと思ったら、これぞホラーだなと怖かったです。なぜならキリスト教にとって死は、神のもとに召され天国で過ごす安息であるから。
6は「不完全」でありながらも「思いやり」「母性」の意味があり、7は「完全」であり「世界」であります。タイトルの「6と7」だけでも設定について考えるとまたまだたくさん語れそうですよね。
2巻で人型固定バランスが崩れてクッキー症候群になったさちおの精神や発情期の安定のために番になることにしたふたり。でもその前に結婚、さらにその前に家族への挨拶です。
まずはさちおの実家へ。もちろん被食種であるネズミ族からは怖がられて反対をされますが、おばあちゃんの賛成と宇迦野の策略・買収により胡桃沢家は無事蹂躙!
次は宇迦野家ですがその前に、さちおが本名のままペンネームにしている理由の元同級生や、旅行先で出会った宇迦野の学生時代の友だちとの様子にいつまでもさちおに敬語を使う理由などのお話もあります。これらのお話はどれもふたりのことが深く知れるので読めてよかったです。メインストーリーから外れているかもしれませんが、こういったお話を読めるのも1冊で終わらないで連載が決まっているからなんでしょうね。
そしてふたりの旅行先にサプライズでやってきた宇迦野の父親に兄。お兄さんは優しそうですが、お父さんは一癖も二癖もあるようです。結婚を認めると言いながらも条件を伝えてきます。
その条件をクリアする前になんと「おめだん」が打ち切りになり・・・4巻へつづきます!
ふたりがどうやって「おめだん」を守り、結婚へゴールできるのか、4巻を読むのが楽しみです。結婚式や新婚旅行は5巻かな?まだまだ読み続けていきたい作品です。
宇迦野どんどんいいキツネになってきていますよね!今後の彼の活躍がさらに期待です。