ネガティブなレビューです。ごめんなさい。
全体としてシンデレラ的なフィクションに振り切れていて、現実的に考えると色々なところが気になってしまいました。
・レイプは普通に犯罪なので訴えたりはしなかったのでしょうか。(身も蓋もないが)
・娘を5歳までどうやって育てたのか。実家を出ているのはなぜなのか。
・我が子に絶対辛い思いなんかさせないと言いながら、生活を安定させるために資格を取ったり在宅ワークを探したりなどの努力があったのかわからない。それすらできない世界なのでしょうか。
・過去のトラウマから「アルファが嫌い」ゆえに今まで番を見つけることに消極的だったのだろうに、それを良くわかっているだろう母がなぜ何の配慮もなく婚活パーティー出席を強制するのか。攻めはバイトなんだし女性アルファしかいない会だからと言うことなら納得した。(そもそもここで受けはオメガの俺が産んだ子を愛してくれる番がいるのだろうかと考えており、アルファが嫌いという意識は感じられない)
・「攻めに惹かれてフェロモンが強くなる」以外にも匂いにあてられたアルファに襲われてしまうという描写があるので、平常時も受けには匂いをコントロールできないのだと解釈したけれど、「ただでさえ元気な子がいっぱい」で番のいないものが大多数のはずの高校をなぜ職探しの選択肢に入れるのか。自身のトラウマをも思い起こすような場所ではないのでしょうか。(攻めと再会する流れにするためなのはわかります)
・抑制剤の効きが悪いのか?と思ったタイミングでひとまず首輪をするとかの対策は考えないのか。
その他いくつも疑問がありますが、
全ては「かわいそうなオメガがひどいことをされるけど、運命のアルファという王子様に救われるお話を作るためだから」
が答えなのかなと思いました。
だから攻めや近しい存在だけがこの世界の差別や異常を疑問視していて、他者は徹底的に非情で記号的です。そこへの想像力がないです。
第二次性の差別だけでなく男女差別まで出てくるので読んでいて二重に辛いです。
オメガのことだけ考えると、この作品のオメガバ世界は地獄でしかないです。オメガもおなじ人間なのですが…と思ってしまいます。
現実的になど考えず、昼ドラを楽しむように、このかわいそうな主人公が幸せにしてもらえる世界に耽溺すればよかったのでしょうが、私にはついていくことができませんでした。
令和の時代において、このお話の「かわいそう」が非常に作為的で前時代的だからです。
「オメガバってそういうもんだから」では片づけられませんでした。