小ワザをきかせた展開で、ちょっとずつ変わっていく関係を1話ごとにゆる~く読ませてくれます。評価は低めですが、味わい深くて好きな作品です。
帯やコミックスに描かれたあらすじのおおよそといえば、
”リュクスでラグジュアリーな三代目社長が、ガサ入れで会社にやってきた国税専門官を気に入り、ゴージャスなデート&Hに誘う…”
確かにその通りなのですが、なにかが違う…本作の面白みはそこではないんです!
ストーリーではなくて、シチュエーションとふたりの会話を楽しむお話なのです。
例えるなら、コントが物語や舞台装置が簡略化されていても、会話や場面だけで十分に面白い、というような感じです。
なので、スーパー攻め様登場のゴージャスな話とは、ちょっと違うと思って頂きたい。
雑誌掲載時には攻めの中原と受けの続木、ふたりのHとその前後が切り取られた小話が「上質な男と◯◯でH」というタイトルで連載されていたと思われます。
この◯◯は場所であったり、状況であったり、その都度変わり、それら10話分がこの『上質な男とH』として1冊にまとまっています。
前半は短めのお話が多く、とくに1話目は「あれ?これってシリーズものの2冊目だったのかな?」と思うくらいに、がっつりと説明が省かれたままスタート。
そんな調子で軽いテンポの小話が5話分続き、お互いの職業や出会いなどが読者に徐々に明らかになっていきます。
コミックス中盤で出会い当初まで時間が戻り、「初めてのH」までが長めに描かれ、その後の「最後のH」になって大きく話が動いてきます。
このページの配分や前後する構成も、なかなか思い切ったニクい演出です。
演出方法といい、モノローグなどの説明の少なさといい、ふたりの簡潔な会話で読ませていく作風は読み手を選びます。
ただ、この会話劇だけでも、十分にキャラ立ちしているのが不思議な魅力。
そして、タイトルからエロを多大に期待しがちですが、そこは生々しいエロではなくて”上質なH”ですから。H前のやりとりにクスクスと笑い、最中の色っぽくも可愛い様子に萌え、ピロートークでほんわかします。
攻めの中原の程よい甘々と、受けのキキちゃんのちょっとずつ、ほどけていく様子を堪能しましょう。
ちなみに私のイチオシ場面は、お風呂でシャコシャコしているシーンです。
「(タイツなんてはいて)チャラチャラ躍って」「男のくせにバレエなんて」
そんな馬鹿げた偏見を軽やかにとびこえていく彼らを、爽快に思ったのが旧ノベルズ版でのこと。LOVEよりも『青春』小説という印象が強く残っていました。
今作はというと、付き合って10年後の彼らが登場する書き下ろし付きで、萌えが増量。大幅加筆もあって、青春とLOVEのバランスのとれた作品となっています。
王子様のような容姿とは裏腹に、勝ち気で口の悪い櫛形。
(弱さや不安をひた隠し、プライドを持ってがんばる姿は私のドストライク!)
一方、我慢強く男気タイプの原。
(硬派そうでいて、頭のなかで櫛形のことを何回、可愛いと言っているのか!?)
無骨な攻めがひっぱっていくとか、可愛い受けが甘やかされるという図式ではなく、前に進んでいく要所要所で手をとったりとられたり、攻受の対等性が強く伝わってきます。
それは改稿されたHシーンにもちらりとあらわれていて、人生に1回しかない初体験のきらめきがハンパないです…
(しいていうなら、幸せMAXすぎて、私はエロい気持ちになれなかったという欠点がありますが、この先も彼らはお互いのカラダしか知らないのかも、と思うと激萌えますし、書き下ろしでエロは補充)
そして、彼らの会話に安易な慰めや気休めの言葉はありません。
久しぶりに踊る櫛形に原は「大丈夫だ」と声をかけます。
それは「きっとできる、大丈夫」ということではなく、「失敗してもいいんだ。みんなうけとめてくれる、大丈夫」の意味だと思うのです。
「高校生って、キラキラまぶしい!」という高揚感に身をまかせたあとに、一歩ひいて彼らに目を向けてみると、冷静かつシビアに現実と向き合っていることに驚きます。
軽快でコミカルな印象が表立ってはいますが、どちらかというと奇抜な設定のない、地に足のついた作品ではないかと思っています。
どのシーンが変わっているかを読むことで、榎田先生の意識したポイントやバレエ愛も伝わってきて、ファンとしては非常に面白いです。新旧を比べたことで感じた完成度の高さから、神評価にしました。
カバーも忘れずに外してね。
最近、手に取った作家さんのなかではイチオシです。
評価は低めですが、それはこの作品のライトな性質上とでもいいますか、まだまだ楽しみにしているという期待値を残して。
コミカルすぎず、シリアスすぎずが、いいバランスです。少し前に出た『デンタルダーリン』と同じくゆる〜い独特のテンポは変わらずですが、クセは押さえ気味、メインはキャラレーベルらしい正統派カップルになっていますので、読みやすくなっています。
双子同士の恋愛のメインは、主人公である塩崎弟と、加賀兄です。
この塩崎弟は議員秘書として働き、半ニートの兄の面倒をみて、そのうえ兄の犬のお世話までも…思わず「人生って渋い」なんてボヤいてしまうような、面倒ごとを押し付けられる貧乏くじ体質。
そんな彼が惚れしてしまうのが、ドックカフェのオーナー癒し系ハワイオーラ持ち主の加賀兄。
癒し系ハワイオーラってなんやねん!という感じですが、疲れた彼氏の不調を見抜き、梨のはちみつ漬け入りの紅茶を出し、その紅茶のおまけにサクサクっと親に挨拶(?)に行ってくれるという男前です。
そとではそつなくバリバリと働く美人受け、その疲れを癒す男前攻めが待っているという、ジェンダーをこえた感じがツボです。
そして、なにが一番素晴らしいって、周りが見えなくなうような恋ではないってことです。
「もめてもさ、やっぱり仕事はちゃんとしなくちゃね」というセリフがさらりと出てくる。なにげない日常の会話のなかに、ぽ〜んと投げ込まれるセリフが巧いです。
する〜と読み過ごしてしまいそうなくらい、なんてことないセリフなのですが、それは真理なんですよね。ドキリとします。
もちろん、もう一方のカップル、塩崎兄×加賀弟カップルもオススメ。
こちらは読み返したときに、ジワジワと萌えがきます。
海のそばという設定があって、葉山とか逗子とかそういったイメージですかね。
そんなふうに書くとシャレオツそうですが、気負った感じがないんです。
むしろ、「ささ、ちからを抜いて〜」と言われているような、のんびりとした海辺の空気にこちらもホッとひと息。
知らず知らずのうちに、お互い兄弟に似た性質のひとをパートーナーに選んでいるというのも微笑ましく、彼らが歳をとって、何十年後のお話も読みたいなぁ。
顔が真横にあるのに、お互いの表情が見えない表紙。
帯で高尾先生も描かれていますが、兄・元春の表情はどんなものなんでしょう?
針で刺されるような痛みがピリピリと伝わってくるような作品です。
弟の秋生は、兄・元春のことを「汚い」と多々、表現します。まるで言い聞かせるかのように。
秋生は自分のことを汚いと思っているので、兄の元春にも汚れていて欲しい。自分を高めて兄を掬い上げるのではなく、兄を沈めていきたい。
この秋生のこの鬱屈とした部分は、どこからきているのでしょうね?
でも、元春自身は自分のことを「汚い」とは1度も言いません。ビッチとかクズとか言うことはあっても。
キレイとか、汚いとかいった価値観に自身は生きていないのかもしれません。
だからこそ元春は秋生が思うように汚されず、堕ちてくることはなく、魅力的にうつるのでしょう。
逆に秋生はそのことを考えれば考えるほど、自分こそが堕ちて行っていることに気がついていない。
兄弟…近いようでいて、実はもっとも得体の知れないものとして描かれています。
そして、泥の中は、身動きはとれないけれど、どこか生あたたかく守られて、ふたりの境界線があいまいになっていくような感覚なのでは。
作中の言葉でいうならば、「でも、潜在的には似ていたり」、「でも、お前もオレと同じだったんだな」ということです。
兄弟ものといえば、明日美子先生の『薫りの継承』と比べてみると面白いと思います。本作はそれに比べ、大人未満だからこその"ずるさ"と"したたかさ”に抉られる作品です。
花屋で秋生が花を買う姿は、両親を不慮の事故で亡くした彼らの「真っ当な」生活の実現だと思いました。まぎれもないハッピーエンド。
エロシーンも充実していますが、私は不憫さや怖れの感情が先立ってしまい、萌えは不発弾なままでした。
萌えはとらのあな購入特典のマンガで補填しての評価です。
(神評価とかなり迷いまくりましたが、萌×2に後日、変えました。)
高校生カップルの表題作シリーズ、そのスピンオフ作が幅をしめる構成。
それとは別に大学生カップル、社会人カップルのお話がそれぞれ1話ずつプラスされた1冊です。
『読みたい恋がいっぱい! しあわせBOYS LOVEマガジン』
本作が掲載されていたMAGAZINE BE×BOYの、このキャッチコピー通り!
BLに限定されない、恋愛マンガのお約束どまんなかが盛りだくさんです。
帯には「からまる恋の四角関係」とありますが、そんなにからまっていませんよ。するする〜っと、ほどけていきます。
男前だったり、可愛かったり、さわやかで、ちょっぴり意地っ張りだったり、健気だったり、素直だったり、はやとちりだったりな男の子たちがオンパレードです。
また、"指から出た血は舐めときゃなおる"、”眼鏡をはずすと可愛いな”なんてシーンや、恋の決め台詞的なものも満載で、「ぎゃー!これが世に言う胸キュンというやつなのか!おらー!」という気分になれます。
ただワタクシめは、その"お約束どなんなか"に盛り上がれる時期を過ぎてしまった腐りぶりゆえ、本作から発せられる日の光がまぶしすぎて、腐ったカラダがもげてしまう…もう体質にあわなくなってしまった…といった始末でした。
このような、BLの初期衝動の甘酸っぱさを懐かしむという間違った読み方になってしまいましたが、あらためてBL登竜門といえば、リブレ。
まさしく『しあわせBOYS LOVEマガジン』だな、としみじみ思い、ぜひぜひこの作品から、フレッシュな腐女子が誕生することに期待したく、リブレさんと坂崎先生に敬意を評すばかりです。
とっても優等生の作品となっています。優等生すぎて面白みにかけてしまったかもしれません。
(余談ですが、保健医×立川くんでスピンオフして欲しかった…)
坂崎先生の絵の完成度の高さは抜群です!
その強みを武器にした優等生の枠を飛び越えたような作品が、他のレーベルさんから出てきたりしないかなぁ、なんて勝手に思ったりしてしまいます。
作風が独特で、読むひとを選びます。
シリアス、せつない、甘々がお好きな方は、ご遠慮くださいませ。
むしろ、キュンキュンがあると恥ずかしさに、思わず「わーッ」って叫びながら逃げ出したくなるような "こじらせ系な貴方”、本屋へGO!
例えるならば、脱力系の笑いのある深夜ドラマのような…ハマるひとはハマる。
なによりテンポが独特なんです。
細い線でゆるく描かれた人物、書き込みの少ない白い背景。
コマも大きかったり刻んだり、視点となる角度もよく動き、ズームアップしたり、外したり。
ツッコんだり、ボケたり、間があいたりと、主要人物3名の会話のかけあい中心でストーリー展開していきます。
舞台は開業して間もないハニ歯科クリニック。
院長の羽仁しかいないつぶれそうなクリニックに、歯科医師のタマゴである森澤がやってきて、ドラマはスタート。
イケメンだけどコミュ障ヘタレ攻めの森澤に、"死んだ魚の目"をした、おとぼけだけど潔い羽仁先生(ちなみにピンクのポロシャツが院長の羽仁先生です)。
ふたり(プラス1名)の滑稽で、馬鹿馬鹿しく、ときにマジで、たまーにキュンとくるような掛け合いがいいんです。
で、キュンとしたあとに、恥ずかしさにのたうちまわりたくなるような悶絶があって、また笑いがある。
その笑いというのはきっと、表紙を飾る羽仁先生の「ニィィ」って歯を見せる笑い方なんです。
読んでいる私も「ニィィ」てニンマリ笑顔になってしまった作品。
裏表紙の某フォーメーションの3名様も、馬鹿かわゆくてお気に入りです。
期待値を反映して辛口評価にしていますが、オススメ作です。
表紙を見て、「あれ?どちらが攻め?」と不明なまま、読み進めた本作。
BL世界の大多数では、おそらくスーツの彼が受け、仕立て屋の彼が攻めというのが、いままでのセオリーかと思います(私の勝手な意見ですが)。
「まぁ、でもそこをひっくりかえしてくるのが、べリ子先生でしょ」と、ここまでは想定内。
しかし、その受けの仕立て屋の志田さんの色気がここまでハンパないとは…想定外でした。
美人とか可愛らしいとか男を誘っているとか、恋愛の駆け引きとかいったものじゃなく、自然体のなか、ふとした瞬間に目をうばわれるような何か。
髪をおろした姿、タバコを吸う姿、眼鏡、ガウンetcetc。
30歳後半の落ち着きと、自立した男のカッコよさと、ちょっぴりくたびれた感じが入り交じり、チラリみえる色気。
志田さんに萌えです。私の今年の受けキャラBEST3入り決定です。
お話自体は、前作『四代目・大和辰之』に比べると平凡です。
いささか、ふたりの距離の近づく過程が一足飛びな気もしますし、男性を好きになるということに躊躇もない。
せっかくなのでスーツが出来上がっていく時間にかさなるように、ふたりが出来上がっていくシーンをもっともっと画にして欲しかった…
そして、大海が王子ではなく、王様でもなく、女王と比喩される部分も正直、ピンとこなかったのが残念です。
そのぶん、歳の差恋愛に話の的は絞られてもいて、「人が一人で出来る事なんて案外そう多くもないんですよ」…この言葉に集約されていると思います。
前半に年上の志田が大海に言ったこのセリフが、じつは後半、そのまま志田自身にも当てはまるわけで。
どこか自信なさげだった大海と、相手にしてあげるばかりだった志田が本音を話しあったあとは、Hシーンというよりは「MAKE LOVE」シーンですね。
美しいMAKE LOVEのあとに続く、エンディングシーン…さらりと輝かしい未来を予感させる演出がニクいです、ベリ子先生!
好きな男の戦闘服をつくる男。最高じゃないですか。
下半身がヒレのヒトウオの王子と、ヒトウマ(ケンタウロス)の王子、”ふたりの”恋が始まるまえ”。
「それは むかしむかしのおはなし」で始まる、おとぎばなしのような作品です。
えすとえむ先生の偏愛キャラといえばケンタウロスですし、その身体性に特化した作品のファンも多いのでは。
この作品でも、彼らの手、足、背中、首などの身体バーツが美しく描かれ、ストーリー自体も王子同士がお互いの足に魅了されるという、艶かしさにうっとりしてしまします。
お互い自分にないものに焦がれ、そのどちらも等しく魅力的である、というのはBLの原点。少ないセリフ、トーンなしの白黒線画、大胆なコマ割り。彼らだけで終わらない物語。
34ページという短さの、そぎ落とされたなかに、BLの原点と無限の可能性を感じました。
これぞ、商業誌ではできない同人誌の醍醐味!
えすとえむ先生は、アーティストです。
まるで高級ショコラのよう(もちろんアルコール入りですよ)。
お子様にはこの美味しさはわかるまい。
ひと粒でも、濃密で上品で洗練された逸品。
美味しいものは万国共通です。
新装版で初の蛇龍どくろ作品体験です。
コミックス全体の評価としては低くなっていますが、収録作『SUGAR SUGAR SUGAR』は萌×2です。
シュガーミルクシリーズが全体の1/3くらいのページ数で、そのほかも含めた短編集となっています。
◯十年前、紺野けい子先生が好きだったワタクシ。
どくろ先生ご本人も書かれているように「少女漫画なHOMO」感に、「懐かしい〜」というのがコミックス読後の第一印象。
時代の流れをしみじみと感じてしまいました。
その時代の流れをもうひとつ、強く感じる部分があります。
それが表題作のシュガーミルクシリーズです。
あらすじを書いてしまうと、なんてことはないんです。
気持ちのすれ違いはありますが、大きな障害や事件はなく、20代前半の幼馴染み同士がくっつくまでとその後になります。
太一と翔が再会する『MILK』
高校時代を振り返りつつ、気持ちが通じ合う『SUGAR』
その後の『大晦日』のふたり。
新装版に新たに追加は同人誌からの再録20P弱、クリスマスのドタバタを描いた『SAGER SUGAR SUGAR』
これらは彼ら自身の時系列順なのでしょうが、読み進めるとむちゃくちゃ表情が生き生きとしてくるんです!
もちろん、作者の画力のレベルがあがったからなのは、わかっていますとも。
でも、どんどん愛が深まって、「好きな人と一緒にいるって楽しい!面白い!」っていう彼らの全力疾走な気持ちが伝わってくるんです。
とくに『SUGAR SUGAR SUGAR』のふたりは、めっちゃ可愛いです。
太一くんのバカな顔、拗ねた顔、泣いた顔、空を見上げる顔。
ヤンチャ受けが特別好きではない私がぁ、あああ。この太一くんにはお小遣いをあげたいくらいだよ〜。
そして、そのヤンチャでアホな子を見る、翔のまなざしの優しいことといったら…。この子は絶対にソツなく、カッコいい大人になりますね。
アホでバカなやりとりの合間に、ちらっと見える未来への希望と不安。読んでいて、胸がぎゅっとさせられます。
はぁ、どくろ先生の新作BLが読みたいッス。
BL王道、幼馴染みってやっぱええわ〜、と再認識です。
かわい先生の特殊捜査班(SIT)のシリーズ。
『甘い水』にて遠藤にからんできた篠口が主役ですが、この1冊だけで読み始めても問題なしです。
私自身も、この篠口というキャラクターが好きだったよなぁ、程度にぼんやりとしか覚えておらず、それでも楽しく読めました。
受けの篠口は、「優等生のようでいて厭世的」。
人当たりもよく仕事も付き合いもこなしていくけれど、どこかで一線ひいた立ち位置をとる孤独なひと。
まわりから見るととても魅力的なのに、本人自身はなにかを諦めているような、近づき難いひと。私の好物、どストライクな受けです。
そして、攻めの黒澤は3歳年上の元上司。公安所属。
こちらも表面上は「一流の外交官のよう」、物腰柔らかく隙がないタイプ。その実、つかみどころがなく、頭のキレるひとといったところでしょうか。
しっかりしてそうでいて脆い篠口を、適度な距離で見ているのが黒澤です。
その篠口が何者かに拉致、監禁されてしまうことが、ふたりの関係の進展につながっていきます。
かわい先生の警察シリーズの盛り上がる部分といえば、組織のしがらみやかけひき、事件解決にむけた動きなどの職業ものらしいエンターテイメント性。
今回も特殊捜査班の篠口ならではの分析に興奮しましたが、やや物足りず。
事件が篠口自身の拉致監禁にクローズアップされているからこそ、犯人と交渉するなかで、挫けたり揺らいだりしながらも毅然とした篠口自身の戦いを見たかったです。
監禁時のバイオレンス描写を抑えめしているのかもしれませんし、やりすごすという一種のテクニックなのかもしれせんが、坦々とした低温気味の篠口のそうではない一面を見せるという点では意外性がなく、内面描写まで大人しくまとまっていて非常にもったいない!
恋愛面はというと、あえて本作では描いていない部分も多いのでは?と思います。続編を考えての進行なのかな。まだまだ序章。
3歳差というのも、また肝です。黒澤の包容力でどうこうなるには、難しい距離感。
まぁ、大人の恋ですからね(…恋なんて言ったら、彼らに笑われそうです)。
ふたりはお互いの本心を探ることさえ、しませんから。
事件があったからといって恋を自覚して、くっついて、最後まで『ヤッちゃわない』というところがポイントです。
『甘い水』に出てくる北上版篠口(攻めだった?)と、本作の円陣版篠口の挿絵を見比べてみるのも面白そうです。
人物を多面的に見る事ができるのが、このシリーズの醍醐味になっていますし、この先のふたりの続編が出たら、手に取ってしまいます。