どこまでも二人にとって真っ直ぐなハッピーエンドでした。
上巻で散りばめた伏線が綺麗に回収されていきます。タイトルからして既に危うい雰囲気だったとはいえ、再会してから幸せに暮らしていた二人の世界、そして穏やかに笑っていた福太が着実に壊れていく様は、読んでいてとても胸が苦しかったです。
福太がしまい込んだ記憶、そして葵兄ちゃんの真実。全てを知ってから上巻を読み返すと、葵兄ちゃんの言葉や表情の一つ一つが切実でぐっときます。
最後の最後まで、福太を大切に思い続けた葵兄ちゃん。
記憶から消してしまってもなお、葵兄ちゃんが大好きだった福太。
二人がもう一度同じ場所で手を繋げたのなら、それは幸せ以外の何物でもない。心中という言葉を選択したことも、盲目的に想い合った二人だからこそ説得力があるものなんじゃないかなと思います。
帯にも『賛否両論』と書かれていましたが、過程も含めて好みの分かれる作品であることは確かです。ただ、話の作り込みや表現の繊細さはやはり素晴らしいものでした。
私はこの作品に出会えてよかったです。ありがとうございました。
これからはずっと二人で幸せになってね。