空虚で透明な人間である「ハル」が、炎のような「篝」というカリスマに魅入られる1話から、加速するようにその関係性が歪んでいく展開が凄まじいです。
恋を知らない人間がその感情を例えるときに、暴力衝動のような危うさ秘めてしまう描写が美しく「星が燃え尽きて死ぬように激しく 俺のこと焼き尽くしてくれなきゃダメだ」というハルのセリフが印象的でした。
作中で篝がハルの瞳をガラスに例えた場面がありますが、
"私という現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です"
という宮沢賢治「春と修羅」冒頭の一文を想起させられ、
燃え尽きた後の篝火は、真空のガラスに閉じ込められたフィラメントとして光り続けることができるのかもしれない…と、そのように感じました。
仄暗くひりひりと痛む様な青春の物語でありながら、晴れやかな読後感のある美しい作品です。