序盤から張られている伏線から容易にどういう展開が待ち受けているかは
想像ができるのですが、それでも静謐な文章で綴られる切ない展開に惹き込まれました。
喬(受)に激しい執着を示し半ば脅迫のような形ではじまった君塚(攻)との関係ですが、
喬が君塚に思いを寄せるようになるまでの過程がページ数もエピソードもふんだんに
使って丁寧に描かれていたのが好感が持てました。
その分後半の山場と思われる展開からが少し駆け足だったような気がするので、
もうちょっとすれ違いの焦れっとした感じを味わいたかった気もします。
真冬の夜の冷たくて寂しい海のシーンから始まり、春の暖かな日差しの中での海の
シーンでのラスト。このシーンが喬と君塚2人の心を象徴していると思いました。