今でもふらっと読み返したくなって、目を通してしまいます。
この文庫版が2005年出版なので、もうかれこれ15年弱か…と思うと、個人的にも感慨深い作品です。
木原作品には独特の「痛さ」があって、それがクセになってしまう(と勝手に思っている)わけですが、その「痛さ」が合う・合わないは、本当に個人の趣味嗜好の話になってくると思います。
この『こどもの瞳』も例に漏れず、記憶喪失、兄の幼児退行、近親相姦とまあ多分にその要素がちりばめられているのですが、街子マドカ先生のイラストの柔らかさもあってか、私にはほどよい~やや刺激的くらいの「痛さ」でした。
木原先生はやはりさすがの筆致で、いたたまれなさやチリッとした罪悪感は気持ち良いほどに感じさせてくれるのに、なぜか嫌悪感はそれほど覚えずに読み進められるという…まさに神の名に相応しい作品ではないかと思います。
なんというか、読んでいて「あいたたたっ、いたい…!」という感じなんだけど、それが妙に気持ちよくて、定期的にそれが欲しくなるんですよね…
先入観なしで読んだ初読時が、やはり一番刺激的でしたけれど(笑)
文庫版には、こどもの瞳とこどもの瞳2が収録されていますが、私が読み返すことが多いのは無印のほうです。