恋愛はそっちのけでもいいからちゃんと民と誇りのために戦う為政者が見た~~~い!!できれば金髪碧眼で!!と日頃から思っていたのでムチャクチャに最高でした……
恋愛以外にしっかりとした目的があり、展開の主軸はそっち寄り。骨太な物語にBLっぽさが噛み合っている……みたいなのが好きな方には特におすすめです。(2巻以降はちゃんとBL感も出てきます)
金髪碧眼で細身、絶世の美男子だけど冷徹で弁の立つ策士、ローレント王子。
真っ直ぐで心優しいけどローレントの国と対立する国家の元王子、現奴隷のデイメン。
ふたりの「王となるべき男」が対立しいがみ合いながらも双方の国家を救うために奮闘する……というのが大まかなストーリーです。
こちらの「叛獄の王子」はシリーズ1作目で、全体の物語の「序」の部分。出会いの物語と割り切って、甘々な展開やエロはあまり期待せず、魅力的なキャラクター造形と重厚な世界観、そして陰謀渦巻く王宮での剣なき戦いを楽しんでいただきたいです。
ある程度カップルっぽくなってくるのは2巻(の後半)からだ……! 舞台となる架空国家の文化設定はかなりドスケベなのでそこは1巻から期待して大丈夫です。
キャラの話になるんですが、とにかく受けのローレントが『強い男』なのが最高です。見てくださいこの表紙のラスボスポジション……!
打ちのめされない、泣かない、自分の過ちをしっかりと受け止める、助けを求めない、いつもまっすぐに背筋を伸ばして立ち、どんな状況でも必ず自分に余裕があるように見せかける。弁舌に長け、ひとたび敵とみなせば口だけで徹底的に相手を追い詰める。張り巡らせる策は幾重にも。
もちろん攻めのデイメンも『強い男』です。肉体的に優れているのはもちろん、慈悲深く正義感にあふれ、自国の民を何よりも大切に想う。真っ直ぐなぶんやや考えが至らないところはあっても、先を見据えて怒りを飲み込む聡明さがある。
そんな『強い』ふたりが対立し、たまに共闘し、時にはすれ違いぶつかり合いながらも認めあっていく様は最高の一言です。(しっかり認め合うようになるのは二巻以降ですが……)
1巻では基本的に敵国から贈られた奴隷であるデイメンの視点からの描写になるので、ローレントは終盤までかなりの悪役として描かれます。ただそれはあくまで宮廷での腹芸に慣れていないデイメンによる評価であり、ある程度行間を読めばローレントが非常に思慮深く誇り高い存在であることがわかるようになっています。
これは文章の妙だと思うのですが、基本的にこの巻では『ローレントや執政の動作の理由』がはっきりと描かれることはないです。なぜならデイメンが理解できないから。
しかし彼らの視線、手の震え、服の乱れや表情などなどは非常に雄弁な心理描写でもあります。是非、何を考えているのか推察しながら読んでみてほしい……!
そしてそれが巻を重ねるごとにデイメンにも察せるようになっていく心の接近を楽しんでほしい……!
今はシリーズ3作の「序破急」を一気に楽しめるタイミングでもあるので、ふたりの王の行く道をぜひ一気に駆け抜けてみてほしいです!