まず、「獣王」「オメガバース」「溺愛」と、設定が大好きだったので購入しました。
きっと不幸な生い立ちの、あまり自我のない健気な主人公が、獣王にメロメロに愛されて終わる単純なお話なのかな?と、(失礼ですが)思っていました。本を買った時は仕事でとても疲れていたので、ただ単に甘く、癒されるお話が読みたかったのです。
ですが第一章を読み終えたあたりから、物語はガラリと変わってきました。
ただ愛されて、チヤホヤされるだけだと思っていた主人公が、自分の足で歩き出したのです。物語が大きく動き出しました。
ネタバレに繋がりたくないので、あまり深くは書きませんが、この主人公「只者ではない!」と思いました。女の子のように可愛いけれど、中身は超が付くほどの男前。健気でありながら、大事なものを守り、救い出そうとする勇気がありました。こういう主人公って、BLでは珍しい気がします。
そして攻の凌光をはじめ、みなキャラクターがいい!!悪役であるはずのキャラクターにも、なぜそうなってしまったのか?という理由がちゃんとあって、最後は涙が零れました。攻の弟である佳昌の純粋な優しさにも、胸を打たれました。
また、春夏秋冬と季節が流れるのですが、細かな感情の機微が時節の風と相まって、切ないほど伝わってきました。丁寧でとても繊細な感情表現だったと思います。
ただの「溺愛」「花嫁」ものではなく、自分も一緒に冒険をしているような気持ちになれて、最高のエンターテインメントでした。
最後に。ほかの方々も言われてますが、表紙に登場している竜の「小竜」が、隠れたアイドルでとても可愛かったです。私も小竜に乗って、空を飛びたい〜笑
柚月先生はまだ書籍デビューされて日が浅いようですが、軸のしっかりとしたお話が読めるのなら、次回作にも期待したいと思います。