ひょんなことから知り合った風俗店の店長と男子校生の二人の間が恋愛感情を育んでいく様子をとても丁寧に描いたBLです。
不器用でピュアな恋愛が好きな方にオススメの一冊。
~感想とネタバレ~
共働きの両親に代わって5人の弟妹の世話をする男子校生・希君が本作の主人公。
弟妹の世話に追われて友達づきあいも我慢する責任感ある性格ゆえ、みんなから"ニーチャ"と呼ばれて慕われている希君なのですが、心の底ではお兄ちゃんではなく一人の男の子として見て欲しいと思っています。
そんな希君がある時家族の食費が入った財布をスられてしまうところから物語が動きだします。
(お兄ちゃんなのに失敗してしまった希君が雨にうたれながら項垂れるシーンがとってもキュート!)
途方にくれる希君が頼ったのがひょんなことから知り合った風俗店の店長・安達さんなのですが、その安達さんが誰も呼んでくれなかった希君の名前を呼んでくれたことで、希君の中で安達さんが気になる存在になっていくというストーリー。
名前を呼んでくれたことが嬉しくて安達さんが店長をつとめる風俗でアルバイトをすることを決める希君ですが、この後の二人の関係が深まっていく描写がとても丁寧で何度も胸がきゅんとしました。
最初は遊ぶ金欲しさにバイトに来ていたと思っていた安達さんが希君の人となりを知って優しく声をかけるシーン。
弟が倒れたと連絡があり狼狽える希君を「俺が車を回すからしっかりしろ」と安達さんがはげますシーン。
病院で希君の5人の弟妹に囲まれて疲れ果た安達さんが、希君の日常に改めて思いを馳せるシーン。
そして車を出してくれた安達さんに対して自分でも理解しがたい感情を希君が抱いてしまうシーンなどなど。
希君と安達さんが互いを知って一歩一歩距離を縮めていく描写がとても丁寧に描かれています。
作中に登場するほかのキャラクター、黒服のまほ君やお店で働くお姉さんたちも希君と安達さんの進展を見守っているところがあり、全編を通じて優しい萌えに包まれる作品です。
三田先生のインタビューを読むと、作中で広がる風景(商店街に黒服男子が出入りして喋ったり喫煙したり、来店した中高校生に気軽に話しかけては店に戻っていく)は実際に先生がかつて見たものだそうですが、そういうリアリティも作品の中でブレない優しい空気感に繋がっているのかと思ったり。
とにかく世界観に浸れる作品なのでオススメしたいです。