作家買いです。
まず『今』読むのにとても意味のある1冊だと思います。
毎作品『書いた動機』がしっかりされていて、しかし読者には一貫して『元気になってもらえたら』という気もちが詰まっています。
そんな小林先生の1年ぶりの新作。
ファンタジーと現代日本が舞台です。
全体的に「都合がよすぎる」と思わないこともありません。だけどげんなりするニュースが多いなか、夢物語に浸かって息抜きをし、あすもそこそこにがんばるか……と気分よく読み終えられるのは大きい。
感動して大号泣! 生涯で最高のBL! とはいかないものの、今の状況が落ち着いたとき、私はこの1冊に「支えられた」とかならず振り返るでしょう。
受けのかわいい顔にひとめぼれする当て馬が登場してしまう……そんな続編と未来を期待します!
大好きな樋口先生のムシシリーズ!
と期待しましたが、自分とは少々相性がよくない作品でした。ともかく長い。長すぎる。ふつう厚いだけよろこぶべきでしょうが、受けの心情を丁寧に描かれるゆえ、黄辺のようなキャラクターに寄り添うには疲れました。でも頁をすすめればきっと……! と思うのですが、最後まで攻めの志波が物足りない。
樋口先生の著作はどんどん1冊が長くなっているような傾向を感じるのですが、個人的には薄いときのほうが好きだったりします。もう少し全体的に軽く展開して、エピローグのようなくだりもほかと同じように膨らませてほしかったです。
そのぶん繊細で真摯な「愛」についての物語に仕上がっていますが、つきあうに長いが得るものが少なく感じました。
脇の社員・桜葉が好きです。
メディア関係に従事しています。イエスノーシリーズは読んでいると「こういう人マジでいるんだよな〜」とか「生放送は戦争なんで」「こんなオーダーきた死ぬな」という気持ちがすごいです。栄みたいな人いますし、こういう人がいないとダメなんです。相楽が目を離せない気持ちもわかります。
上記のことから個人的にボーイズラブ小説の恋愛の成就を楽しむというよりかは、プロが仕事に矜持を持って取り組む姿や、視聴者が何気なく見ているテレビ番組も多くのスタッフが「番組を見てもらいたい」「面白いものを作りたい」という一心で働いている懸命さがこのシリーズいちばんの見どころだと思っています。(また、ある意味でこういったおかしな世界でしか生きられない人もいるというところが……)
番外編2までは同業者同士ではないのでアレですが、今回はお互いがお互いの分野にもかなり詳しいので、サラリーマンとしての嫉妬や羨望、執着が強く感じられて、大人っぽい内容に仕上がっていると思いました。(挿絵もなくてよかったのかな…… 最初挿絵がなくて驚きましたがどんな事情にせよ、なくてよかったのかもしれないと思っています)
一穂さんの作品はすべて読んでいますが、メディア関係の描写がほんとうにしっかりしていて、こんなキャラクターを応援せずにはいられないな〜と思います。地の文も今まででいちばん?硬質な感じがしました。
いじめの件のついては難しいのですが、実際テレビとインターネットのメディアの差は縮まっているので、時間の問題で明るみになっていたのでは……と思いつつも、テレビもまだまだ大きいメディアなのでそりゃこうなっちゃうよな〜とも思います。なんというか栄の人生はいつも栄本人の直接の素行と別に、巻き込まれて急な路線変更が多いように感じるのですが、この理不尽さも社会にはあるあるなので……とも感じます。今後の栄に幸あれ……。
設楽は食えないキャラクターで、このぐらいじゃないと栄の操縦はむりだと思うので、お似合いだと思います。
陸人の件はもう少しフォローが欲しいですね。いいキャラだと思うので、また3人でぐだぐだしているところが見たいです。陸人は2人と違って婚姻も繁殖もしているんだし、対比がもっと見たいです。
あと国江田さんが栄の指揮で動いていた時の心情が気になりました。幅広い語彙で副音声で罵倒をしているんでしょうね。
国江田、皆川、名和田も登場するのでイエスノーファンはぜひ、と思うのですが、作風が2つに比べて重いのでその点ご注意ください。