吉田ナツさんの久しぶりの作品です。
物語は大型犬で俳優のたまご「長嶺」くんと、仕事で知り合った美人受け(誘い受け?)ヘアメイクアーティスト理知の息がぴったり合った物語です。
最初、ヘアメイクの理知はあまり人付き合いのようほうではないのですが、妙に長嶺くんがなついてくるのが気になります。
長嶺くんは、天然で純粋でストレートな性格で、その見事な懐きぶりに「お主、ういやつよのぉ」と思わず抱き寄せたくなります(笑)。
俳優でいうと、坂口憲二さんを思い浮かべてしまいましたが、それくらい元気がよくて悪意が全然ないやつなのです。
そんな長嶺くんに、理知もしだいに心を開いていきます。これだけ甘えられたら、当然ですよね。
そして長嶺くんは、とっても好奇心旺盛なやつ。理知がゲイとわかっても、さらに興味をもって接してくるのです。ここまで懐かれたら、もう覚悟を決めるしかないですよね。
最初、粋がって理知を誘っていた長嶺くんが、いざ理知が本気になると、さすがに今までの勢いもどえやら、立場が逆転、しっかり理知に騎乗位で乗られて調教されてしまいます。
この場面が私は一番、萌えました! 襲い受けというのでしょうか? いきなりへたれに変身してしまう長嶺くん最高です。
でも最初は理知の手のひらで泳がされている長嶺くんも、次第にたくましくなって、逆に理知のことをメロメロにしてしまう過程を丁寧に描いています。
途中、長嶺くんの友達の不幸などありますが、全体的に甘いムードを、読んでいてほんわかほっこりできる作品ですよ。
アナウンサーの息子・陸。
彼が父親に成人式のスーツを仕立てに連れていかれるところからストーリーが展開します。
テーラーの店長・柊は、仕事ができる上品で教養のある男。プロフェッショナルな強さと心の弱さを持ち合わせたセクシーな男なんです。
あることがきっかけで陸は柊を強姦! しかし柊はさして抵抗することもなく受け入れてしまう。彼は男妾というか、ミステリアスな存在。一途な陸と釣り合いが取れないぐらいキャラが立ちまくっています。
陸に犯されたり、顧客に裸にされて車からたたき出されたりするよわっちぃところを見せながらも
なお、心理的に優位な状況にある柊さん。心理的に優位と考えていた陸は愕然とします。
この下克上的、微妙な駆け引きの心理戦が、この作品のメインかもしれません。
最後は、2人がくっついて終わりのBLですが、どう考えても陸に柊店長を乗りこなすことはできないでしょう。
無理やりくっつけないといけなかったかもしれませんが、
最後まで柊店長は、ミステリアスな人でいてほしかったよぉ。
この作品は「萌え」とかそういう言葉が定着する以前のものだから、今のBL的世界なんてまったく眼中にない。作者の感性のままに自由に描かれたような芸術的な漫画です。
(芸術と言葉を使ったのは、ある種、不穏な感覚を刺激する作品だからです)
今の「萌え」テンプレにはまっていない分だけ、なんだか薄気味悪いぐらいのエネルギーが爆発しています。
「萌え」とか言葉に定着できないところが、本仁戻さんのオリジナリティがありますよね。
学園のお話なんですが、どこか世紀末のすさんだ世界みたいな雰囲気。国籍不明時代も携帯電話が出てくることで、かろうじて現代ということがわかりますが、どこか現実を感じさせません。
水につけてのレイプなど、かなりシリアスなサディスティック加減に引く人も多いだろうけど、暗い、人間としてあまり外に出してはいけない感情を刺激してくれる作品です。
登場人物も多く、一般世界とはちがった学園ルールがあったり(飼育係はセックスフリーだから、OK。ただし、レイプに参加していない第3者が認めれば逮捕)など、スラスラっと読めるストーリーではありません。でももし手に入るようでしたら、ためしに読んでみてください。
まだ物語は完結していませんが、この筋をひとつに束ねるのは、至難の技でしょう。変に結末を描かないで、このまま放置してくれたほうがよいのかもしれません。
下巻は半分ぐらいが同時収録の作品です。
こちらはBLというより、スプラッタ的な作品です。
宗教の教祖に祭り上げられた青年とテログループの駆け引きを主体に、人の心の闇を描くという、BLぽいけど、BLとは別世界のダークなストーリー。本仁さんは、たまにこうしたボーダーこえちゃった快楽殺人の作品を描きますね。こわいこわい。
ドレッドヘア or メデゥーサヘアというのですかw
とても印象的なヘアスタイルの肩幅広い男子が、魅力的、印象的な作品です。
絵も作品ごとに試行錯誤している?のか違うタッチで描かれています。どれもうまいです。センスのいい絵を描きます。
個人的には「誰がためにのばす手」のタッチが好きですが、メインは「メデゥーサ」タッチのほうです。
表題作の「コルレオニス」は、ひねくれて引きこもりの政治家の息子を懇意にしている弁護士が、父親に頼まれて、社会復帰させようと奮闘します。
最後は、うまくいって学校に息子は戻り、そこからまた新たな展開が始まります。
私は、同じく「描きおろし」された「HOME」のほうが好きです。
両親の離婚で、離れ離れになる兄弟、仲がよいのに、
自分より優れた兄への、嫉妬に似た感情を抱く弟。その想いが強くなって、対立的な態度をとるようになっていきます。そして母親の命日のため、実家「諏訪」に帰る列車に乗るのですが、そこで偶然、向かいに乗り合わせた客は、今でも感情を刺激する兄だった。
というのがお話のあらすじです。
久江羽さんも書いていましたが、細かい筋が一読しただけは、ちょっとわかりづらい部分もありますね。これはストーリーのテンポがうまく進行すれば解消できると思います。
おそらく何かうまいワンシーンをひとコマ含めるとうまくいくのに、と思います。
どこか懐かしくてそしてふわふわした浮遊感がある。
これは、紺野さんにしか出せない独特の雰囲気です。もちろん現実の世界を描いているのだけど、知らぬうちに、異空間に迷い込んているような、記憶の再体験をしているような不思議感覚。読んでいるとそれが普通に感じられます。
今回は夏の田舎の風景の中で繰り広げられる、微妙な中学生の心模様です。
ボーイズラブというには、あまりにラブが薄すぎて、BLとしての範疇に入るかどうかとても微妙な気がします。
表題作の「田園少年」からなる少年シリーズは、テツとシゲが同時に恋心を抱く、ヒロイン美佳子が登場するし、美佳子はほとんど主人公級の扱いです。設定としてBLなのか微妙なところです。
しかし、そうした設定でも、見事にまとめてくれるものだと感心します。しかも16Pしかないのに、思春期の夏をすべて描いているような印象を与えます。時間の長短の感覚って、ページ数とかコマ数で出るものじゃないんですね。本当に不思議な作品です。
これくらいにおい系のほうが、初心者には受け入れられやすいでしょう。でもここから本格BLに進むかどうか、とても微妙な気がします(笑)。
巻末に収められている「夜を訪なうもの」もマント姿の少年が登場する耽美でちょっぴり怖い作品です。オチは100%納得できませんでしたが、作品の雰囲気はとてもすばらしいです。