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女性シアさん

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ボツデザイン版で本編が見たい。マジで。

主役2人のボツデザイン披露マンガだそうです。

「うわっ、誰だ!」「ボツになったお前だ」という会話があるように、メタです。ボツとイキが会話してます。いや、待って。

ボツになった王弟殿下、イケオジすぎませんか………………?「枯れすぎ」と言われてボツにされたらしいですが、なんて勿体ないことを!!!渋くて超かっこいいのに……!!!軍服超似合う!!!どうせエロなしBLなんだから、枯れすぎで全然いいのに……。

レビュータイトルは魂の叫びです。うわー……、渋すぎイケオジ版で本編が見たかった……。

面白かったけど、萌え不完全燃焼。

皆さま高評価ですね……。評価下げてごめんなさい。でもね、面白くなかったわけじゃないんですよ。むしろかなり面白かった。デビューコミックでこのクオリティはなかなか。ので、この評価は割と純粋に、萌えたか萌えられなかったか、ですね。萌えと萎えがせめぎ合った結果の萌評価です。

個人的推しポイントは、とにかく、受けの楓が良いキャラしてること。

生い立ちのせいでちょっとひねくれてるけど、健気で常に前向きに自分を奮い立たせている。この子、意地でも幸せになってやる、という気概が買いなんですが、それ自体がすでに、見知らぬ異郷に生け贄同然に突然放り込まれた自分の境遇に対する、楓なりの立ち向かい方なんですよね。強気強気と書かれていますが、強気でいようとするその心意気に、私はむしろ健気さを感じてしまいました。この子いいわー、推せる。かなり好きな部類の受けでした。

しかし一方で、攻めの練。こっちが問題です。この人にどこまで好感が持てるかで、かなり評価が違ってくるのではないかと思います。

元々、ケンカップルも塩対応攻めも独占欲強め狼攻めも好物です。その上で、この話も最後まで読んで、練には練なりの事情があったことは理解しましたが、特に最初のほうの練はやっぱり自己中で横暴だと思ったので(ブチ切れた時の楓に全面同意!)、残念ながらあんまり好感が持てませんでした。

そこに長年にわたる薬の副作用という要素があったことは、理解しました。それがどこまで人格を侵食していたのかは、練の側の心情描写がほとんどないのでよくわからないのですが。しかし、初めて楓と会った頃には、飲んでも飲まなくても変わらないから、すでに気休め程度にしか飲んでなかったとは本人の弁。え、そうなると、つまり、百夜結で見せた投げやりさは、本人の責任ということでは?

自分の意志じゃない結婚だったとしても、それは他ならぬ自分自身の体質の安定のため。薬を飲んでも飲まなくてもあまり変わらないということは、かなり待った無しな状況だったのでは?そのために、わざわざ遠くから探してまで連れて来た嫁に対する気遣いがゼロとか、大店の次期当主それで大丈夫かよ……。しかも楓のほうは、喧嘩したら食べられるんじゃないかとまで想像して怯えていたのに。

それ以上踏み込んだ描写がないのが異種婚姻譚の割にこの作品ちょっと残念だったのですが、食物的な意味で食べられる恐怖を乗り越えて嫁ぐ覚悟を固めるって、相当ですよね。その上幸せになってやろうと前向きに努力ができる楓に対し、それを表面上のものととらえて突っかかる練。嫁を貰う=他人と深く関わっていろいろ擦り合わせて生きていくことだし、その相手と上手くやって行く気がないって、自分の人生ドブに捨てるようなもんよね?じゃあそもそも、何のための結婚?体質安定させて、真っ当に生きるためなんじゃなかったの?と、あまりにも投げやりというか子供っぽいというかな練に、ちょっとイライラしてしまいました。

嫁体化もね、ケンカしながらエロいことしてるプロセス自体はたいへん良いのですよ……。でもね、毎回(義務的に)一定時間やった後、そのまま放置はやっぱりいかんですよ……。後半、むしろ我慢した自分を褒めろみたいなこと言ってましたけど、っとにこいつは……。それとこれとは別問題でしょ。相手に対する思いやりの問題です。抜いて来た後にフォローもできんとは言わせんぞ。で、楓を可哀想に思った従兄の裕士が抜いてあげてたことを知り、嫁に手を出されたとブチ切れて先祖返りすることになるわけですが、それ、他人の嫁に軽い気持ち(親切心なのか、これ?)で手を出した裕士も悪いけど、完全放置プレイ決め込んでたアンタに責任は……?たしかに楓に気持ちが移ってきた描写が増えて来たところではあるのですが、それでもそれまでの冷淡な仕打ちとの落差がありすぎて、私、ここで気持ち的に、だいぶ置いてけぼりにされました。

この先祖返りのシーンが物語的クライマックスだと思うのですが。楓と会ってから感情が引き出されて薬を減らしていたとかだったら、なんかもうちょっとこう、萌えられたんだと思うんですが。作者さん的にはかなり裏設定を考えられていたようなので、この辺りにも多分きっと、作者さんなりのお考えはあるんだと思う。でも、ごめんなさい。私はそれを汲み取ることができなかったので、練というキャラに理解を示すのがどうにも難しい。

まあ、最終的には塩対応系溺愛夫になるわけなんですが、初夜の後の2人のやり取りを見ても、何となくボンクラ感が否めない。もう、練は思い切り尻に敷かれてくれた方が、この家は安泰なんじゃないかと思われるので、今後も楓の頑張りに期待したいと思います。

なんちゃってではない異種婚姻譚。

はじめに余談ですが、表紙のカラー絵が線の滲みまで見て取れる、手塗り感溢れる仕上がりで、手描き大好き人間はテンションが爆上がりしました。それとも最近のデジタルは、そこまで再現できるようになってたりする……?

さて、本題。先行レビュアーさんもおっしゃっているように、表紙とタイトルと帯がある意味でミスリードをしています。なので、表紙で妄想を膨らませすぎないほうが良いかもしれません(主にエロ的な意味で)。

国の守護役を降りようとしている龍と、国のために、龍の要求に従ってその伴侶となることを決めた王弟(軍人)の物語。帯には龍×王弟と書いてありますけど、実質受け攻めなしです。

読後の感想は、あー、なるほどーー、こうきたかーーー、という感じでした。事前にエロなしとの情報はつかんでいましたが、お相手がそもそも、三大欲求すら存在していない生物だったとは。というわけで、異種婚姻譚と言いつつ、性愛的な要素はほぼ皆無。ブロマンスではなくBLを標榜する作品で、それはかなり珍しいのでは、と思ってしまいましたが、私はこの作品、ちゃんとBLだと思いました。が、ここが受け入れられないという方も、きっといらっしゃるでしょう。

そんなわけで、そもそも生物としての折り合いを付けるところから始まる二人のお話です。この辺がヌルくない。そこらの異種婚姻譚でうやむやにされがちなところを、キッチリ描いてくれています。

表紙が詐欺でなくミスリードと言ったのは、実際にこういうシーンがあるからですが、それはエロいというよりむしろ痛いシーン。主人公が龍の眷属として体を作り変えられるに当たり、鱗を体内に埋め込まれる。麻酔無しで腹を割かれて異物を埋め込まれるわけですよ。そして、馴染ませるために龍になめられて大量の唾液を浴びせられる。主人公が感じているので、この辺りがエロ的な萌えどころと言えば萌えどころですが、ビジュアル的には完全に食べ物的意味で喰われているので、あんまり萌える余地はないかも。

主人公や読み手からすると、主人公が龍の伴侶になると決めた直後にこの展開が来てえええええ、となるのですが、のちのちこのシーンの裏事情が、龍視点で語られます。

最初は、人間とは考え方も在りようも全く違い、理解し難く恐ろしいばかりだった龍の側の事情と気持ちが徐々に明かされてゆく。このあたりが物語のキモになります。

主人公は途中、国の守り神であるはずの龍が、何かを守るという発想を持たないのではないかと疑い、その振る舞いに疑問を持つのですが、これは正解。

「天災が人に興味を持つなど、哀れなことだ」

これは物語のキーパーソンとなる「姫」(王弟の遠い祖先で、龍が人間に興味を持つきっかけになった人)の独白ですが、この台詞が龍の本質を言い当てている。龍が憧れを抱くのも宜なるかな。

龍という種族にとっての人は、人にとっての虫なんかと同じような存在なのでしょう。基本的に意思の疎通もできないし、共に生きるには儚すぎる存在で、殺してもなんとも思わない。そんな龍という種族の中で、それでも人という生き物と、人が人を守ることに興味を抱いたこの龍が、変わりダネだというオチなんですね。

そして変わりダネ故にそれを共有できる相手がおらず、孤独を抱えているわけなのですが、そんな龍の心情に思いを馳せたのが、少年期の王弟。龍はそんな彼ならば自分の孤独を埋めてくれるのでは、と期待し、ひっそり執着していたわけですが、敵国の神から受けた呪いで王弟が歳を取るようになり、焦りを覚えてなんとか自分のものにしようと行動に出た結果が、伴侶として自分のそばにいろ、という要求+前述の人体改造だったわけです。

しかもこの人体改造、「逆鱗」を使ってるんだとか。それ、一枚しかない上、普通、触っただけでやばいヤツですよね……?それ引っぺがすとか、どんだけ……?そして、改造中も失敗したらどうしようと手が震えてるとか。必死か!……やべえ。こいつ思ったより可愛いぞ。最初の頃の威圧感はどこへやら、この龍、後半、完全にワンコと化します。

王弟の側も、長命の呪いの効果は薄れたとは言え、それでも通常の人の法則からは外れた存在で、はみ出し者の孤独を感じる身。描かれる周囲は彼に十分好意的ではあるのですが、誰とも番うことのできない孤独は抜き難くあったわけで、龍の存在は図らずも、その孤独を埋めてくれるものだった。お互いの孤独をお互いの努力と思いやりによって埋め合うこの関係は、十分に愛の名に値するのではないか?

そもそも、生き物としてのあり方が違う存在同士が、互いのあり方を理解して、歩み寄って共にいようと努力する。これって、愛の本質なんだと思うわけですよ。それがちゃんと描けているので、この作品は十分いい作品だと思いますし、BLと呼んで全く差し支えないと思うのです。が、それ以上に、異種婚姻譚として思ったより深く踏み込んでいてくれたところが物語として面白かったので、若干甘いかなあ、と思いつつ、神評価で行かせていただきます。

しかし、読み終わってもサブタイトルの意味がよくわからない……。どこが亡国?

帝國の宦官(2) コミック

日野晶 

これで終わり、だと……!?

私も何だかんだ、商業で出ているのは全部読んでる宦官シリーズ。一通り描かれて、日野先生満足されちゃったんですかね。ひとまずこれで終わりだそうです。残念。

でも、宦官というとっつきにくい題材で、よくここまで描いてくださったなぁ、と思います。ファンタジーだと謙遜されていますが、なかなかどうして、宦官という存在をめぐる様々な葛藤が描き出されており、そういう存在がかつてこの地上に存在したんだよ、という裾野を広げる意味は、十分に持っているのではないかと思うのです。

しかしこの本、収録順にミスがあるのでは?表題作を優先させたい気持ちもわかるんですが、嫁取り話が後半に来ているので、そちらを読んだことないと、「夫夫」前提で話が進んでいることに途中で「???」となる方もいるのではないか……?

今回は一応「帝国の宦官2」ということで、右弦皇子殿下×雀(ビジャン)のカップルがメインですが、そこにビジャンの弟、パールシャーがガッツリ絡んできます。と言っても間男兄弟BL展開ではなく、日野先生ご自身が「ホームドラマになってしまった」とおっしゃっているような意味で。

……うん。確かにホームドラマ。電子版の「嵐を呼ぶ弟編」の表紙(単行本版口絵)からは、エロ展開以外の何を想像すれば良いのかわからないくらいなんですが、本人たちはまさかの番外編までエロなし(笑)。そしてその絵で思いっきりお尻めくられてるの、レギュラーキャラの宦官三人衆筆頭・張春だったのね……。初対面で陥没乳首つつかれるエンカウントからの、まさかのエロなしですよ(二度言う)。皇子殿下と兄貴は、バレたくないとか言いつつ遠慮なくやってるのにねぇ。

しかしこのパールシャーと張春、何というか、思ったよりいいキャラというか、いいカプでした。身内を宦官にされた事実を受け入れ難く感じて苦悩するパールシャーに、自らが宦官であることを納得しつつもどうしようもない歪みを抱える張春が、かつてパールシャーにかけられた言葉を返し、胸を張る。お互いを救える、この組み合わせじゃないといけないんだ、と思わせてくれる二人の物語って、やっぱりいいなと思いました。

ちなみにパールシャーは、デカい、力強い、言葉足りな目、距離近い、素直、狭いところが落ち着く、ときて、初対面の相手は匂いかいで確認するとか、なんか、全般的に挙動が動物的。こー、何というか、(そんなものは実在しないかもしれませんが)バカ犬のセントバーナードか土佐犬?みたいな?イメージです。「付き合ってる」と公言しながらも、やり方わからんから張春に手を出さなかったとか、意外とかわいいやつです。

張春はわりかし美人系の見た目ですが、宦官としての自分の欠落を埋めるため、屈強な男を組み敷いて喘がせるのが好き、という性癖持ち。このへん、妙なリアルさがあるなー、と思います。もちろんパールシャーにもそういう意味で迫ってみたわけですが、結果はお察し。相性いいみたいでよかったね(合掌)。

後半には「皇帝と宦官」の短編も入ってます。この時間軸では右弦と雀はどうしているのかしら。

しかしまあ、何が残念って、右弦泰藍話の登場人物粗方出てきたのに!麗琳いるのに!……文昌様の出番がないなんて。ヤンデレ皇帝一族の中では個人的に一押しだったんですが、最後に一目お姿が拝めず、なんとも無念。

真田、ちょっと校舎裏来い。

すみません。全く!!!!!しゅみじゃなかったです。読まなきゃよかったと本気で思った作品は久しぶりです。高評価な割に今まで食指が動かなかった、自分の勘を信じればよかった……。

ちょっと憤懣やる方なく、かなり口汚いレビューになってしまっているので、この作品がお好きな方は、回避していただけましたら幸いです。




原因の九割は、攻めの真田。一応地雷なしを自認してるんですが、これはあかんかった。受け付けませんでした。「自分の身勝手さで受けを傷つけて、そのことを自覚しているのに謝らない攻め」。地雷かもしれない、と今回思いました。恋愛的に、だけだったらまだしも許せたと思うのですが(恋愛なんて所詮エゴとエゴのぶつかり合いなので)、この人、それを人間の尊厳レベルでやってますからね。糸永くんが許しても、オバチャンは許しませんよ。ちょっと校舎裏来い。で、そこへ直れ。

教室でみんなが見てる前で水ぶっかけて、いじめのきっかけを作るだけではなく、積極的に手も出した。その後転校した時にはホッとした。その理由が「これで自分の気持ちを知られることはない」から。……どんだけ身勝手なのさ。いやこれ、傷つけたの後悔してるのと、違うよね?明らかに?傷つけた自分に傷ついたフリで、結局自分に酔ってますよね?

多感な思春期に、男に惚れた自分を認められない。そこまではまあいい。それが攻撃衝動になって外に出る。それも仕方ないと思える。でも、問題はそこから。糸永くんが目の前から消えて、自分の気持ちを自覚してから。この男、自分の身勝手な感情で、好きな相手を傷つけたことに対する反省が、ゼロ。

再会して、謝りたいと思ったとモノローグにあるけど、口ばかり。こんなに嫌われてたんだ、って、当たり前でしょ?なんでそこで謝らない?怖がらせないように、何もなかったように、って、それ、得するのお前だけだよね?問題先送りにしているだけじゃん?

自分の過去の振る舞いを反省してるんだったら、男らしく謝ったらんかい!!!お前にもいろいろ葛藤があったことはわかったから、最初にそれをしろとはまあ、言わない。大学一年生なんてまだお子ちゃまだから、そこまでは求めない。一回くらいは逃げても許そう。でもな、付き合ってもらって、すれ違って、傷つけて、別れを切り出して(このへんのくだりがまた、たいへん独りよがり)、また傷つけて。話し合いはして過去に自分が糸永くんのことをいじめていた理由も話したらしいですが、正面から男らしく謝った雰囲気じゃないよね。糸永くんも僕のこと好きだったんだ、お互い誤解がとけてメデタシメデタシ、な雰囲気に持ち込んでんじゃないですよ!!!元々弱気な糸永くんを更に萎縮させ、青春を灰色にするようなことをしておきながら、好かれていることに甘えて、うやむやにするな!男としてどうこう以前に、人間としてないだろ。

ここまでで相当げんなりしましたが、書き下ろしで真田がまたやらかしてくれましたよ。

言うに事欠いて、「ちゃんと好きって言ったのに、信じてくれなかったのがショック」だと……!?正直、開いた口が塞がらなかったです。お前、過去に自分が何してきたと思ってんの……?自分が「許してもらってる」立場だって、全くわかってないね?お前も糸永くんの気持ち、信じてなかったくせに。その上、体を落としてそれで繋ぎとめようとかしてたくせに。マジ最低。

これがね、最初から屑BLのたぐいだとしたら、まあそんなもんかと思って読めるんだと思うんですよ。でもこの作品、そういう路線じゃないですよね。お互い相手のことを忘れられなかった一途な純愛路線ですよね。なんでこんな最低な男が、いい男として扱われているのか全く理解できませんでした。外ヅラ含めた顔以外、なんかいいとこあんの?

イケメン無罪にもほどがあります。そして、そんな真田にベタ惚れで、全面的に許しちゃう糸永くんにも健気さを通り越してイラッとさせられてしまったので、まあ、破れ鍋に綴じ蓋なんでしょうよ。ああもう、スッキリしないことこの上ない。いっそ読まなかったことにしたい。それができないからこんな形で吐き出しているわけですが。

皆さま、お目汚したいへん失礼いたしました。

やっべぇもん読んじまった……(褒めてます)。

ちょっと前から気になっていた作品。ようやく読めました。

いやー、ヤバかった。萌えを求めてBLを読む方には明らかに不向きな作品集ですが(ほぼほぼBL未満だし)、「この作者にしか描けないもの」をしっかり持っているので、そういうものを求める読者を魅きつける作家さんになられることでしょう。次回作が今から楽しみ。以下、特に表題作、かなりネタバレしているレビューなのでご注意ください。


「彼の植物は美しい」

エロないので不明ですが、表題作はたぶんヤン×ユアン(ハンス)。表紙もこの作品の登場人物たちです。

先行レビュアーさん方が言及されているように、淡いブルーグリーン系統の表紙に、振り向いて笑うツギハギ顔の金髪青年が印象的な表紙。一見したところ、とても爽やか。まあ、ツギハギ顔の時点で不穏な展開は想像して然るべきなんですが、これ、中身が思った以上にヤバかった(汗)。

フランケンシュタインの怪物的アレというか、人体錬成系というか、なやつでした。帯に「生まれ変わり」とあったので、転生ものみたいな感じかな、と思ってたら、死体に魂入れちゃうやつでしたね。とりあえずリビングデッドは生理的に無理、という方は、回れ右するのが無難です(直接的なバイオハザード系グロ描写はほぼありませんが……、とあるプレイ?的描写はそれに該当するかも)。

しかしこの作品のヤバさは、そこじゃありません。攻めが、攻めが……、攻めが…………、言い訳できない、真っ黒のサイコパス。

さ、さ、さ、サイコパス出たーーー!と思わず叫びたくなるくらい、ヤン、真っ黒でした。それを言ったら受けの原形となったユアンもある意味立派なサイコパスなんですが、サイコパス対決させたらヤンには完敗でしょう(実際殺されてるし)。

さて、そうして殺されてしまったユアン。キラキラの美形で、子供の頃のヤンを拾って育てた人物なんですが、先程も書いたように、この人もたいがいサイコパス。世間体でヤンを拾ったはいいが、笑顔で結構えげつなく精神的虐待。そりゃまあ、ヤンの愛情というか愛憎というかもネジくれるわな……。というわけでユアンに関しては自業自得感は否めないんですが、完全な被害者が、蘇生したユアンとして目覚めた、中の人、ハンス少年。

彼は孤児院で虐待されて育ち、そこを逃げ出したはいいけど仕事がなく、運良く拾ってくれた人がいて一旦は幸せな生活を掴みかけるのですが、通り魔に殺されるという徹底的に不幸な子。ユアンとして目覚め、ヤンにひたすら大事にされ、「俺、ユアンじゃないんだけど……」と後ろめたさを感じながらも、居心地の良い生活と、生まれて初めて他人に必要とされる幸福に、ズブズブになって行く。これ、誰も責められませんよね……。そして君の葛藤ね、残念だけど意味ないから……。ヤツは全部知ってるから……。

そして二人は幸せに暮らしました、めでたしめでたし……、と言いたいところですが、そんなわけあるかい!と、言いたい!ユアンに必要とされ、優しくされたい、そのために、そう仕込んで(意味深)そう振る舞う、というヤンが黒すぎる!でも、ハンスがかわいそうすぎるから、真相は知らないでめでたしめでたしのほうが、彼のためには、きっと、いい…………。

いやぁ、タイトルが、タイトルが……、じわじわ効いてきますね。ユアン=ハンス、上手いこと育てられている。これ、この後どうなるのかな?臭っちゃってるユアン=ハンスはちゃんと定着するのか?とか、このままヤンの思惑通りというのもそれはそれですっきりしないけどやっぱり真相知ったらハンスかわいそうすぎる、とか、いろいろぐるぐる考えてしまうのですが。

あと思ったのは、この方、何というか、闇寄りのコメディセンスをお持ちだな、ということ。作品の方向性は完全に闇なんですが、その中でも、笑いを取りに来ることは常に忘れていない感じ。ある意味稀有な資質なんじゃないかと思われます。

「21時45分の偶像」

いやー、可愛かった。両方が。特に幕間。なんかこのコメントがマックスネタバレを起こしている気がしてなりませんが、とりあえず、導入からは予想もできなかった方向に転がって行くお話でした。大変アレだった表題作の後の、一服の清涼剤。…………こんな隣人リーマン、欲、し、い!!!切実に!

「松下くんと宮下くん」

好き嫌いで言うと、この作品が一番好きです。何か、日常系小ネタBLというか、ネタがある限りちょこちょこ描いてくれないかな、的作品ですね。デキてんのかデキてないのかどうにも思わせぶりなイケメン(?)友人二人に愛されて振り回されてキレて机を振り回す、モブ系男子のお話。と言っても、三角関係でも3P展開でもなくって、単純に揶揄うと面白いから的意味(?)で友人として溺愛されてます。

「6日目キミとここで」

デビュー作改稿版のようです。表題作もそうですが、作者さん、植物や園芸がお好きなようですね。 あと、キリスト教的というか西洋民俗学的な要素がお好きなのかな、と。

それから、他人に価値を認められ、必要とされることの幸福、というテーマ性が、表題作とともに強く出ている一本。きっと文字通り、作家さんの原点なのでしょう。

王道でした。

当初買う予定はなかったのですが、評価が高いのと、pixivで読めた分がよかったので購入。絵の系統と色遣いのセンス、タイトル的にジャケ買いはないなぁ、と思った作品ですが(※個人の趣味の問題です)、ド王道すれ違い系としてはそれなりに面白く、とりあえず買って損はなかったです。評価としては、萌×2寄りの萌というところで。

クーデターが起こり、王政が廃止された国サンタマリア・ハートランドが舞台の物語。王族の専属護衛騎士候補→軍人のオリヴィエ(ルカ)×王子→軍人のリヨンという幼馴染み両片思いカップリング。

物語のポイントは、記憶と名前。これが上手く使われて、二人のすれ違いを生んでいます。

オリヴィエは代々王族の護衛騎士を務める家柄の妾腹の子、ルカ・ベルナードとして生まれ、家族に疎まれる中、王子であるリヨンと出会い、友情を育みます。王族の専属騎士候補としてリヨンから指名を受けたルカは、そのための訓練を受けることになりますが、そんな中で起こったのがクーデター。その時のショックでリヨンはほとんど全ての記憶を失い、それを知ったルカは、リヨンと自分の身元を隠す意味もあって、本名ではなく、リヨンの母である第三王妃から授けられた、護衛騎士としての名「王を守る者(オリヴィエ)」を名乗ることに。目覚めた時からそばにいて、世話を焼いてくれたオリヴィエに全幅の信頼を寄せるリヨン。長い間そばにいる中で、その気持ちはいつしか……、という展開です。

この、「ルカ」→「オリヴィエ」の変化が、物語的には重要なポイント。王族の専属騎士には、王族から名前が下賜されるしきたりがあり、まだほんの少年に過ぎなかったルカにリヨンを託した、王妃の願いの詰まった名前がオリヴィエだったわけですが、当然、それは戸籍名じゃなく、さらに、リヨンは「ルカ」のことは、全く覚えていないのです。

後半、リヨンを利用しようとしたとある人物が、「オリヴィエ・カーライルという人物は存在しない。偽名だ。やつを本当に信用していいのか?」と揺さぶりをかけてくるんですが、クーデター以前の記憶のないリヨンは、オリヴィエがリヨンのために「オリヴィエ」を名乗っていることを知らず、まんまとそれに乗せられて、助けに来たオリヴィエを拒否ってしまう。このへん、なかなか上手い構成だなー、と思いました。

結末は大団円なので、みなさん安心して読める仕様です。王政が倒された国で王族が身バレして(て)も無事、という辺りにはご都合主義感がありますが(上司がアレということは軍の上層部にも旧王政側の人間かなりいそうだし、そもそもどんなクーデターだったの?)、まあ、野暮なことは言いっこなしにしましょう。

お互い我慢期間が長かったせいか、くっついた後はひたすらイチャコラデレデレしています。特にオリヴィエ。それまでは「俺は騎士なんだからリヨンに手を出すわけには行かない」と典型的ヘタレ攻め(しかも、ある程度までやることやっときながら急に我に返って、「女ができた」と言ってリヨンを突き放すとか、なかなかに最低)の振る舞いをしておきながら、死線越えたら、急に吹っ切れてガッつきやがりましたね。何が彼の中の障壁を突き崩したのかが今ひとつわかりにくかったのは、ちょっと残念ではありました。

まあ、ひたすら健気で、オリヴィエの気を引きたいがために夜遊びしまくっちゃうあたりお前カワイイなー、な受けリヨンが幸せになってくれるなら、いいんですけど。最後には「ルカ」のことも、ちゃんと思い出したというオマケつきです。

しかし、これもちょっと気になったのは、BLあるあるですが、リヨンが回を重ねるごとに美人化していること。初登場の時は軍人、しかも遊び人臭漂う登場なだけあって、割と男っぽさがあったんですが、表紙に至っては完全に美人系になってしまっているのは、個人的残念ポイントかな、と。騎士×王子ならそれでもいいけど、軍人×軍人と言われると、もう少し男っぽさを……!となります。

猿と桃 コミック

ハジ 

熱烈希望、ハジ版西遊記。

ほとんどBLとしてじゃない感想です、スミマセン。

いやあの、前々からハジさんの作品は少年漫画的ノリの、漫画としての面白さがあるなぁ、と思っていたんですが。

本編も面白かったけど、本編終了後の天竺取経編(仮)がめっさ面白かったです。主に本編開始前に悟空が天界でやらかした諸々の埋め合わせのために引き受けたバイト=天竺まで経典取りに行く坊さんの護衛、というわけなんですが、その護衛対象が。

顔面刺青入りロック坊主玄奘三蔵。最高。

もう、最初に顔を合わせた時の悟空と桃矢の顔ときたら(笑)。そうよね、高僧が来ると聞いて、普通こんなん想像しないよね。でも実際、相当気合の入った坊主じゃないと、単独で密出国して生きては帰れん言われる砂漠突っ切ってインド行こうとは思わないだろうから、アレで正解だと思います。

道中男女問わない妖怪に食物的&性的に狙われて、何度捕まっても全くめげず(この辺は元ネタも同じだが、この人は悲愴感ゼロなところがマル)、悟空とともに妖怪から「これを私だと思って……」と謹呈されたゴールデンお◯んぽ(笑)をあっけらかんと売り払い、路銀稼げたありがたや〜と合掌しながら満面の笑み。おまけにその金で悟空と桃矢にいい部屋取ってくれるとか(でもその宿がまた妖怪ホテルで本人襲われてるとか・笑)。ブラザー三蔵、あんたサイコーだよ(笑)。

あーーーーーー、ハジ版西遊記、読みたい!これ絶対面白い!元々性欲過多気味の猪八戒とか、BL的にも美味しいキャラいるし!「西◯妖猿伝」とは言いませんが(笑)、もうちょっと長い尺で是非とも読みたいっす。

……これだけじゃあまりにあまりなんで、BLとしての感想も書いておきますが。

まさか天下の暴れん坊孫悟空がスパダリ攻めになるとは誰も考えなかったと思うんですが……、なってた・笑。上には逆らいまくるけど舎弟には優しいヤンキーと言うか、なんか、そんな感じです。さらりと王様というか俺様というかなんですが、板につき過ぎていて逆に嫌味がないかんじですね。

そして、受けの桃矢は、見た目は完全女の子ですが、中身は桃太郎。この子いいです。見た目で簡単にコマせると判断して迂闊に手を出してくるセクハラ野郎はキッチリのして、財布をカツアゲてくる強者です。でも恋する乙女でもあります(怪力だけど)。

こんな二人が終始いちゃいちゃしてます。物語的な山場は、恋愛よりもむしろバトル系でしたが、まあライバル出てきてどうこう、すれ違いでどうこう、というタイプの話でもないので、これで良かったのかな、と。

あー、ダメだ。天竺取経編(仮)に全部持っていかれてます……。

コールコール コミック

こん炉 

名言いただきました(笑)。

野田彩子さんの「ダブル」にハマり、「……劇団員モノください!」な気分の時に見つけたのがこれ。コントラストの強い表紙が印象的で、思わずポチりました。こん炉さん作品、初読みです。

とある(喜劇系?)小劇団の新入団員(未来のホープ)鰐淵×退団間近の古株団員、八敷の組み合わせ。クール系イケメンに見せかけた純愛ワンコ×真意の見えにくい飄々系です。

レビューを読まずに突撃しましたが、結果的に正解。皆さんおっしゃってるように、たいそうギャグ寄りでしたね。試し読みの段階では、もうちょっとしっとりした作品なのかと思い、実際、1話の終盤までは割とそんな雰囲気で行くんですが……。1話の最終コマが全てを吹き飛ばしましたね。そのままなだれ込む2話の飛ばしっぷりがすごかったです。以下、派手にネタバレしてます。


両片思いの2人が酒の勢いでヤってしまうというパターンは、それなりの数BLを読んでると飽きるほど見てきた展開なんですが、この作品はそこからが違います。まず、目撃者がいる(しかも3人も)。さらに受けの酒乱っぷりを知っている目撃者たちが、攻めの鰐淵を逆レ◯プ被害者と勘違いし、受けの八敷をぶん殴って引き剥がす。「さ、パンツはこうな」といたわられる攻め(大事なことなので二度言います。攻め、です)、初めて見ましたよ(笑)。更に彼らは暴走して、鰐淵の(未来の?)ために、事実の隠蔽に走る(大爆笑)。

しかし、隠蔽されて納得行かないのが、ぶん殴られて気絶した八敷。酒のせいで明確な記憶はないが薄っすらした記憶はある。そして、明らかに後ろから何か流れ出てる=事後だよ……、という状況でも何とか誤魔化そうとする目撃者たちとそれに巻き込まれた鰐淵に対し、これを悪ノリで済ませられるかとキレた八敷が言い放った一言。

「全員、ち◯こを出しなさい」(原文伏せ字なし)

敬語。しかも、無駄にキリッとしてる。…………腹筋震えましたとも。ひさびさにめっちゃ笑った。いやー、名言いただきました。そしてその後、全員キッチリパンツを剥ぎ取られて、阿鼻叫喚が繰り広げられます。ウィンナーであることが暴露され、泣き伏す某劇団員に謝りながら優しく毛布をかける八敷。いや、百パーお前のせいだから(笑)。

なんかもう、面白かったからあとはいいや、と言いたくもなりますが、ちゃんと恋愛的キュンもあります。裏名ゼリフが八敷の、「いやだ…鰐淵じゃないなんて…」。ヤッたのは俺だ、と鰐淵以外の劇団員から言われて思わず漏れた一言ですが、受け攻め双方がちゃんと思いを自覚するセリフで、これいいなぁ、と思いました。表裏逆だろ、という異論は受け付けませんので悪しからずご了承くださいませ。

無事くっついた後はラブエロ街道まっしぐらですが、ワンコ鰐淵、八敷が好きすぎて無駄に振り回されてから回っています。がんばれ、鰐淵くん(笑)。でも、そんな彼の苦悩も、立派な芸の肥やしになったので、決して無駄ではなかったのでしょう。意外とヤンデレな八敷さんと、末永くお幸せに。

ご馳走さまでした。

作品ごとに作風というか、味付けが違うな、と思っていた日乃チハヤさん作品。同じレーベルなだけあって、大好きな「片道映画一本分」の味わいが蘇ってくる作品でした。面白かった。たいへん美味しくいただけました。

「人間観察同好会」という名の、「人間観察によって洞察力とコミュニケーションを養う」ことを建前にした飲みサーの後輩×先輩のお話で、典型的なまでに割り切ったイケメンゲイ・塩見と、コミュ障鈍感ノンケチョロイン(勿論初物)・寿先輩の組み合わせです。表紙がいろいろ物語ってくれているので、表紙でピンと来た方ならたぶん外さないでしょう。そして、二人のネーミングセンスがまた、何とも言えない(笑)。

「片道映画一本分」の味わい、と言っても、スレスレ恋愛……?か、これ?だったあちらに比べ、こちらはガッツリ恋愛していました。相変わらず「無自覚」をテーマに萌えさせてくれるのが、非常にお上手だな、と思います。でも、今回は一歩踏み込んで、そこからの「自覚」がテーマになっています。

本編終了後に、「その1のその後」として、塩見が先輩に仕掛けるまでの話が入っているんですが、これはまさにそれ。塩見が自覚するまでのお話で、こいつ逐一計算尽くでやがる……ということがわかる一方で、基本何考えてるかわからない塩見の人間らしさが薄っすら透けて見える作りにもなっていて、いいネタばらしだったと思います。続けて「その6のその後」を読むと、「こいつ、意外と可愛い……」と思わされて、ちょっと心外な気分に(笑)。

チョロインと見せかけて、ノーガード戦法が意外と手強いかと思いきややっぱりチョロインな先輩が、かわいい。そんなに騙されやすくて大丈夫ですか、と思うんですが、肝心なところはちゃんと自覚した上で踏み込んでいるので、そこのところは安心できる仕様です。まあ、塩見が隣にいるなら多分問題はないとは思うんですが、最大の問題はその塩見が、積極的に先輩を騙しに来ることですかね……。怖がるほど太くないとか言っといて、「長い」とかどんな詐欺だよ……(笑)。かなり笑いました。先輩、この先いろいろ大変そうだけど頑張って…………(笑)。

性癖的な萌ツボとしては、時間をかけて(一時間以上)前戯をガッツリやってくれてたのはポイント高かったですね。今回、結構エロ激しかったです(日乃さん作品比)。

あとは、毎度のことですが、日乃さんは嫌味のない女性キャラの使い方が本当に上手いな、と思います。BLに登場する女性キャラって賛否両論ありますけど、この話に登場する藤崎・金江組はかなり理想的な立ち位置なんじゃないでしょうか?藤崎さんの彼氏の(一見チャラ男系)イケメン、森村くんも大変いい味出していて、主人公カプに対して、三者三様のリアクション芸を見せてくれます。