てんてん
16nenme
本品はルチル文庫11周年記念フェアの
書き下ろしSSカードの1枚で
『薔薇色じゃない』の番外編になります。
本編の1年後、
16年目を迎えた2人のある日の出来事になります。
阿久津が呼び出されて
出勤したととある休日。
ソファで雑誌を読んでいた水野が
見上げた時計は午後4時をさしていました。
阿久津の帰りが何時になっても良いように
夕飯の支度に着手する事にします。
料理が出来あがっていくのを待ちながら
水野は作り置きのオイル漬けをつまみに
白ワインのグラスを傾けます。
2杯目を飲もうか迷っていると
玄関で鍵の回る音がしてほどなく
阿久津がキッチンに顔を出しました。
いい匂いだな。
筍炊いてる。山城さんの朝掘り。
最高だ。
すぐ食べる?
ああ、ちょっと飲みたい。
了解。
軽快な会話を交わし
水野は筍の他にも何品か
つまみを用意します。
阿久津はつまみにあわせて
鯖江のスパークングの日本酒を選び
2人は水野の料理と共に味わいます。
疲れていると酒がよく回るようで
阿久津は2杯目で早くも目元を染め
水野の膝に倒れてきました。
来月の食フェスに参加予定の
メーカーがゴネ出して最悪だと
素直に顔をしかめる阿久津の姿は
出会った20代の頃は
想像すらできないモノです。
その頃の阿久津は亭主関白で
水野に愚痴をこぼす事等
無かったのですから。
あれから16年たった今
阿久津は自分だけは弱音や愚痴を
もらしてくれるようになり…
SSカードはB5版中折り
文庫サイズで4頁とちょっと長めです。
本編は両視点なので
2人のすれ違いなった言動にも
其々なりの思いがあった事が知れて
ヤキモキさせられたのですが
本作ではそれぞれが
本編での過ちを認め歩み寄り
2人暮らしを充実させている様子が
とってもよく伝わるSSでした。
仕事の愚痴や弱音は
家に持ち込むべきじゃないと思っていた
阿久津が水野にならきいて欲しいと思えて
そして水野もそれを
ゆったりと受けとめられるのが
自分である事が嬉しいと感じられるのは
離れた事が相手への思いを育て
共にいる今をより良いものにする努力を
2人が惜しませないようになったから。
阿久津の変な努力の成果は
コミコミ特典で披露されています(笑)
2人の会話のテンポの良さが小気味良く
愚痴る阿久津を可愛いと言える水野も
とっても可愛かったです♪
好きな本は発売日買いの身としては
既刊本フェアの特典はハードルが高いのですが
GETして大満足な逸作でした (^-^)/