遠藤豆
ao wo daku
ss、という短さなのになんだろうこの充実感は!!
本編はめまぐるしかったですが、こちらはおだやかな日常。
それぞれの母親から受け継いだメニューを、答え合わせしていくように話す泉と宗清。同じところ、違うところ、これから一緒になるかもしれないところ。
何気ないようで『我が家の味』って確かにありますし、そこに母親たちが昔一緒にいた痕跡をみつけるのって、二人にとって特別で大切なことだなぁと思います。
同じものを食べて、同じ身体になろう。という泉の言葉にじんわりきてしまいました。毎回毎回、ssペーパーやブログの小話にやられてしまいます。
おいしいものを、おいしく書ける。幸せなことを書ける、一穂先生が大好きです。まだ読んでらっしゃらない方はブログssもぜひ!
「自分が今まで食べてきたもので自分の身体はできている。」
……という意味深い一文で始まるSS。
本編の後、引越しの日を描いた書き下ろしのそのまた後、
泉が東京で暮らすようになってからのある日。
泉の部屋でホットプレートで焼いた餃子をつつきながら
「うちの食」について語り合い笑い合う中、
それぞれの母親の昔や過越し方に思いを馳せ、
そうやって繋がってきた命の流れを止めてしまうことへの
罪悪感と幸せを感じるひと時。
食べることは人生そのもの、あなたの身体はあなたの生きてきた蓄積、
「食べちゃいたい」という恋の衝動の意味を感じる時。
☀︎
セックスした翌朝、宗清が作ってくれる朝食。
朝の日差しの中の幸せ、
恋人同士のちょっとしたじゃれあい、やきもち風味。
一穂先生のSSは、日常の一コマを切り取りながら
カップルが本当にカップルらしく、
二人で生きている様が目に浮かぶようなものが多い。
これもまたそんな一枚でした。