snowblack
2012summer
「ステノグラフィカ番外編。じじいの昔話です。」
…と、作者が軽口で紹介している、夏コミの無料配布小冊子。
巨人では川上や広岡が活躍していた時代(ということは、1950年代半ば)、
若かりし日の杣友もとい松田老人と、亡くなった誠士郎のある夜の情景。
全8Pという短いストーリーだが、非常に濃密な時間が描かれている。
特別な出来事がある訳でもなく、性行為自体の描写がある訳でもないのだが、
まるで白鳥のように水面下では必死で足を動かしているのを誰にも悟らせず、
永田町で駆け上がろうとしている男と、それを水中でつぶさに見て仕え支えている男の、
深い繋がりが、ジワリと迫って来るような一編だ。
「ステノグラフィカ」を既読の読者ならば、その後の杣友の人生を知っている。
それを思うと、胸が締め付けられる。
評価は…
非常に迷ったのですが、この分量でこの世界を描いた作者に敬意を評して
(そして、それを無料で配ってしまう気前のよさに?!)
神評価に致します。