kirara
renai no theory
隆巳ジロさん作画の漫画『恋愛のセオリー(上・下)』の原作小説です。
商業では未発表だった(同人誌で出されたものらしい)作品が漫画化されて、その原作小説が小冊子になったんですね。
私はこの漫画がすごく好きなんです。ストーリーとしてはまあよくある王道ですが、キャラクターが魅力的。
特に、千洋が隆巳さんの絵もあってホントに可愛いんです。
こちらは、漫画のあとで読むとホントに忠実に漫画化されてるなというのがわかります。
もちろん『一字一句まで』ではありませんが、台詞・モノローグも結構そのままなんですよね。
漫画が上下巻2冊でじっくり描かれていることもあるでしょうが、驚くほど小説との差異を感じませんでした。『小説と漫画の情報量の違い』を考えたら驚異的なくらいです。
こちらで初めてわかったのは、戸倉(千洋の父)の実家が病院で、美紗子が出産まで母とそこで過ごしたってことと、漫画でラフはあったけど登場してない(名前だけちらっと出てた)賢吾がスタントした俳優が脇で出てたくらいなんじゃないかなあ。
それくらい漫画は細かい部分まできちんと拾って描かれていました。
とにかく、漫画の方は『原作付き・コミカライズ』としては完成度が高くよくできているとは思いますが、逆にこちらが『小説としては』ちょっとあっさりで物足りない気もします。←だからこそ『漫画向きの作品』とは言えるかも。
書き下ろしの短編(タイトルなし)は、ストーリーというほどのものはない謂わば『らぶらぶ後日談』です。
待ち合わせしてデートして、それから美紗子の留守に千洋の家でHへ・・・
内容は違いますが漫画の描き下ろしと同じようなトーンですね。
あとは、隆巳さんの描き下ろし(だろう)イラストが結構入っていたのがよかったな。
表紙は隆巳さんのイラストじゃなく、一見シンプルな(でも凝ってて綺麗ですよ)デザインなので、本文中に挿絵があったのはちょっとしたサプライズでした。イヤ、よく見たら拍子にイラストとして隆巳さんのお名前もクレジットされてるんだけど。
トータルでは、ストーリーもエピソードもほとんど落とさず漫画化されているので『漫画に描かれていない(小説独自の)』内容がほとんどなかったんですが、だからと言って『読むまでもなかった』とも思ってません。
あくまでも『きたざわさんの小説』を読んだという満足感はありますし、これはこれでよかったんですよ。小冊子自体、結構厚みもあるし読みごたえはありました。
きたざわさんの小説は基本的に好きなので『昔の作品だな~』という感じはしましたが(実際、漫画の10年以上前なので、今からは確実に15年以上前の作品です)、悪くはなかったんですよ。もともとキャラクターもストーリーも好きなので。
ただ、やっぱり『原作小説』には『漫画で描き切れなかった部分・補足』を求めていた部分もあるのでそういう意味ではちょっと物足りなくて残念ではありますが、単体として見れば昔の作品だけあって非常にシンプルで(いろんな意味で。キャラクターの癖も強くないし)読みやすい作品ではありました。
評価はちょっと迷ったんですが(漫画は文句なく『萌×2』なんですが、同等までは行かないかな~と)、決して悪くはないのでもう『萌×2』で。