茶鬼
制作元ascoltか特定販売店でCD購入すると付いた特典小冊子です。
このSSは、千歳が大学生になり一人暮らしを始めた頃の前半と後半の間の、一番幸せだった頃のお話になります。
あめちゃんはひとりぼっちで寂しくて、月曜日の朝が切なかった先生の為に日曜日は月曜の朝を一緒に迎えるために先生の家に通っているのです。
先生の家に来る時に出る言葉は「ただいま」
雨にふられて濡れたあめちゃんを、先生は優しく迎えてくれる。
その晩、生徒が勧めてくれたケーキ店のケーキを買ってきて一緒に食べることに。
そんな出来事に、あめちゃんによって先生が随分と変わった変化が見てとれます。
それを臆面もなく素直に、あめちゃんのおかげと伝えることのできる先生と、年下なのに、まるで年上のように先生を諭すあめちゃんの関係はとてもほほえましいものです。
明け方あめちゃんが目を醒ますと、先生が座って窓の外見ている。
先生の淋しさを知っているあめちゃんだから、先生が心配になる。
二人が出会った頃の話をしながら迎える朝焼け。
もう寂しくない。
この二人はいつもいつもこうやって、幸せになるために月曜日を幸せにするために、二人で過ごしているんだなという思いやりと優しさに溢れた短編でした。
ただ、どうしても本編の記憶喪失前の話ということを鑑みてしまうと、
あめちゃんの「ただいま」と「いってきます」の言葉がその先の苦難を示唆するようで、切なくて切なくて、、、
甘い中にも切なさが漂う、でもとても素敵な時間でした。
CDを聴いた後にこの特典小冊子を読んで、胸が締め付けられました。
千歳が記憶を失う前、まだ先生と幸せな日々を積み重ねていたころの話です。
一番印象に残っているのは、あめちゃんが先生の家に来るときに「ただいま」と言う場面。
CDの中でも京都にまで押しかけてきたちいさんが、「ただいま」と言うのですが、この小冊子の中でのこの台詞が、CDでのあのシーンに繋がっているのかな、と……。
そう思うと何だかとても切なくて、胸が詰まってなかなか先に進めませんでした。
ふたりが幸せそうなだけに、余計にその後のことを考えてしまい。
この小冊子を読むと、あめちゃんと先生が、ふたりの思い出を宝石箱の中に大切にしまい込んで鍵をかけたものを、こっそり開けてのぞき見てしまったような気分がします。
その思い出は、評判のケーキをふたりで食べたり、いちゃこらとくすぐりあいっこしたり、月曜日の朝焼けのために仲良く眠り、さみしそうな先生の背中を見て傍らに寄り添いながら鴇色の朝焼けを見つめたりする。
たったそれだけの、何の変哲もない、どこにでもあるようなありふれた恋人達の時間なのに、それを見てしまったことが何となく申し訳ないような気持ちになりました。
そしてあめちゃんが学校へ行くために家を出るとき、さみしがる先生に向けて言う「いってきます」に、また涙腺が緩む。
いってきます。……またね。
この最後の一行に込められた気持ちが、とても甘くてせつないです。