てんてん
ruri no shonotsukasa wa midori no ouji no sho
本品は『瑠璃の書の司は碧の王子の番』のコミコミ特典小冊子です。
本編幕間、シグリス視点でナイティスに恋物語を薦められるお話です。
最近、大学の授業が終わったシグナスが王宮図書館に行くと、妙に館内
がざわついている時があります。
シグナスは幼い頃からこの図書館に毎日のように通っていますが、古く
重厚な建物であり、書架が威圧するよう壁一面に並ぶこの図書館がこんな
に浮ついた雰囲気だった事はありませんでした。
これまで図書館では見た事が無いほど若い学生が増えた事が原因ですが、
とある1人の書の司がその原因を作っていたのです。今も特徴的な墨染め
の衣に身を包んだシラス派僧が席に着いた途端、本を持った学生達が貸し
出し机の方に向かい出しました。
離れたところからその様子を見守っていたシグナスは昨日のナイティス
との会話が蘇ります。書の司見習いとして真面目に務める事にのみ没頭
しているナイティスは自分の存在が学生を増やしている事に気づいてお
らず、20冊もある注釈大全が新しく入ったからかもと言い、皆勉学に熱
心だと言っていました。
堅苦しいまでに真面目な書の司見習いは利用者が増えた事を単純に喜ん
でいますが、シグナスはナイティスが薦めたからこそ本の貸し出しが
増えているとにらんでいます。
シグナスはしばらく閲覧机に座って選んだ本を読んでいましたが、ナイ
ティスが当番を終えて休息に入る直前に彼に近づきます。シグナスに
気付いたナイティスが淡く微笑み席を立つと、1冊の本を手にした彼と
連れ立って図書館の庭に出ました。
庭のペチに並んで腰かけるとナイティスは今日のお薦めの物語をシグナ
スに差し出してきて・・・
A5判カラー表紙(文庫カバー同イラスト)12頁のボリュームにてシグナス
とナイティスの交流風景(笑)になります♪
シグナスはパラパラとめくってみますが、先日お薦めされた本との違わ
ないように思えます。身分を隠して出会い、身分違いに悩んだ挙句、
どちらかが王族と判る話で基本の筋は同じに見えます。
ナイティスは筋も設定も主人公の人となりも違うのだから同じ話では
ないと言い、どこがどう違うのかを力説されてされますが、シグナスは
儚げな美貌のナイティスが生き生きとした表情と手振りを交えて語る
様にこそ意識を惹かれていました。
結局ナイティスのお薦め本を持ち帰り、晩餐後に炉端で読み始めました。
シグナスにはこの本の良さもどうしてナイティスがこの手の本を好きな
のかも理解できそうにありません。
そんなシグナスにナイティスは本当に楽しんでいるのかと訝しみますが
シグナスは心の中で好きなのは物語を読む事ではなく、ナイティス本人
だと呟く
・・・書の司見習いに惹かれる王子の健気なアプローチが微笑ましい短編で
した。
僧としてあまり人と接せずに来たナイティスは良くも悪くも鈍感君です。
本編では見えなかったシグナス視点により、彼は彼なりに努力していた
のが判ります。本人も判っていますが、伝わってないままの会話に読者の
ほうがジレジレです。
ナイティスにとって恋物語は現実じゃないから惹かれ、シグナスにとって
は現実離れしすぎていて惹かれないのでしようね。そんな対比も面白かっ
たです (^-^)