ちゅんちゅん
tenohira no hana
電子書籍おまけ
ある週末の金曜日、菖蒲は聡介にあるプレゼントを渡します。
それは聡介の羽二重の黒紋付と羽織でした。
菖蒲の実家では20歳の時にお祝いと共に喪服を作る風習があるとか。
菖蒲の実家は短命な家系だそうで、敢えて不吉なことをすることで死を遠ざけようとしていたと。
実際には黒塚家の血を引いていない自分には必要がなかったかもと寂しそうに言う菖蒲にたまらない気持ちになる聡介。
厄除けになればという菖蒲の気持ちをありがたく受け取ることにするのですが、箪笥にしまう前に試着してほしいと言われ、断り切れず手を通します。
結局そのまま菖蒲の怪しい手や吐息、喪服と情欲との背徳的なコントラストに惑わられ、セックスに雪崩れ込んでしまい、気を失うまで翻弄された聡介。
「喪服と聡介は想像以上だった」という満足げな菖蒲の言葉を聞く人は誰もいませんでした。
寂しそうな表情とか絶対聡介の同情を引く演技だと思うのですが、菖蒲の本性を知ってもやはりあっさり騙される聡介が、いつまで社会生活を送れるのかとても心配です。
いつか、ベッドから出られなくなる日がくるのではないでしょうか。
聡介が気が付かないように、幸せだと思えるように、うまく菖蒲の掌の花にしておいてほしいものです。