フランク
ame no kaeru tokoro
電子に収録されている番外編です。
明日は千歳の両親に会いに行く日。
東京に前日入りした二人は、秋津先生と居酒屋で食事をすることになります。
気になる点は、千歳は記憶障害を起こしてるらしいんですね。
誰もが知ってる物事をどうしても思い出せない時があるんだけど、先生にバレたら更に傷つけて痛みごと背負わせるだろうと思う千歳は、先生に言わずにいます。
そして毒舌を吐く秋津先生とそれをなだめる能登のやり取りを傍観者として聞く千歳。
記憶を無くした自分は、二人の気心の知れたやり取りに交ざる事もできないと萎縮してるんです……。
そして秋津先生が、「あめちゃん!ばいばーい事件」を例に、能登がどれだけ千歳を好きだったかを暴露するんだけど、当然、千歳は記憶がありません。
自分は忘れたけど、先生は一人思い出を胸に抱え続けている。
それがどれだけ先生の胸を抉り続けているんだろう…と思わず打ちひしがれる千歳に先生は言うんです。
「千歳にまた言うよ これから何遍も、ばいば〜い!って」
それから秋津先生と能登とのやり取りが続き……
(ここのやり取りもいいんです)
そして帰り道。
千歳がお願いをするんです。
「俺のこと、一回でいいから あめちゃん って呼んでみて」
ここ!!!
ぜっったいに本編に入れるべきシーンだったと思うんです。
躊躇いながらも、涙を目に浮かべて「あめちゃん」と呼ぶ先生。
そして、もう一度。
そしてまた「あめちゃん……ちいさん ーーーーー 千歳。 愛してる。」「愛してる。全部全部、ずっと。」
あめちゃんがどう、とか、ちいさんは違うとか、千歳がどうではなく、ちょっとした違いがあっても根っこの部分は同じで、「根っこのところでぴったり合う」のを感じるのは君だけだから、あめちゃんもちいさんも千歳もまるっと愛してるよというのが伝わってくるこのエピソード。
そして、「過去は振り向かなくていいよ これから過ごす時間のほうが長いんだから」と言うの。
千歳は記憶をなくした自分を未だ申し訳なく思っていたけれど、能登はもう前を向いている。
本編でここまでの終着点を見せて欲しかったなぁと思いました。
そして実は記憶障害が起きる時があるというちょい不穏ネタ。
この飲み会の時は、唐揚げを見ても名前を思い出せないという程度だったけど、もしかしたら先生を見て「誰?」状態に絶対にならないとは言い切れない。
「千歳」が消えてしまい、千歳No2にならないとはどこにも保証がない。
でもこのエピソードを読んでいると、例え千歳が消えてしまったとしても、根っこの部分は同じだから、千歳No132になったとしても大丈夫だろうなぁ、もう君は女の子と幸せになるべきだっ!とか言い出すことはないだろうなぁと思います。