今年もいろいろな動きがあったBL業界。ちるちる記者は毎日そのBLムーブメントを追ってきました。オメガバースのさらなるヒート! そしてカップリングの成長を追うボーイズライフBLの勃興。メスお兄さん、女装BL、江戸BLさまざまなBLが乱舞した2017年。2017年のキーワードはこれだ!ちるちる記者たちがBL業界2017年を熱く語ります。
■メスお兄さん、キテル
昨年も数多くのヒット作品が生まれましたが、ちるちる記者が印象に残った作品はありましたか?
お塩:おねえお兄さん、聖母系、SNSで話題になり連載スタート作家など印象的な一年でした。男性向けにある近所の綺麗なお姉さんキャラの男性バージョンです。別にオネエというわけではなく、そこはかとなく女性らしい部分があり…という。包容力や母性がある感じです。
みかん:いわゆる「メスお兄さん」系、大柄で、筋肉もあるのにエッチなお姉さんみたいな雰囲気がある、いわゆる「バブみ」がある、みたいなキャラクターですね!
新しいキャラクター性でとても新鮮ですし、とにかくエロいのが良いですね! エロの世界もキャラの多様化によってバリエーションが広がっているなと感じます。
神谷浩未:私もSNSから注目されて、というのをよく見かけました。またweb発の作品も次々コミックス化していて、やはりネット系に流れがあるなぁと感じます。それと同時に、誰でも目にできるSNS系、BがLするか微妙なラインで一般作品に交じっていたりするweb系と、年々BLと一般作品の垣根が低くなっていっている印象が強いですね。
■オネエ攻めは地味にキテた
salad:2017年はオネエ攻めや女装攻めがプチブームを起こした印象があります。アンソロが出たりみちのくアタミ先生の『真夜中ラブアライアンス』がドラマCD化されたり、性癖な私にとっては最高の1年でした。
馬子:オネエ・女装攻め増えましたよね! 私も好きなので最高の年でした。受けがノンケの強気系で、調教されていく感じがたまらなく好きです。
白米:攻め受け問わずロン毛大好きなので非常にありがたい! 現実世界では少数派だからこそ萌えるのかもしれません。ただ女っぽいのは苦手なので、ちゃんと男らしさを残した上でのロン毛男子を所望します!
うら:ロン毛は2次元になると絶対に清潔感のあるロン毛キャラになるので受け入れられやすいのかも。女性っぽいロン毛キャラ、男性らしいロン毛キャラでもうける層が全然違いそうです。
salad:私もロン毛好きなのでありがたい年でした。特にロン毛受け作品が豊作だったように思います! 特に『赤のテアトル』の受けがロン毛ハイヒールと女性要素強めなのにちゃんと男性っぽく描かれていたのが印象的でした。
ユメ:女装攻めといったら山本アタル先生!『偽×恋ボーイフレンドlovely』の発売はすごく嬉しかったです。思えば、小・中学生の頃好きだった雑誌『マーガレット』連載の『うそつきリリィ』という作品も女装の話でした。昔から女装好きだったのかも(笑)
■さらに進化するオメガバース
ゆいお:今年もオメガバースはコンスタントに発刊されていましたよね。『かしこまりました、デスティニー ~Answer~』『狂い鳴くのは僕の番;β 1』『レムナント 1 -獣人オメガバース-』『ただいま、おかえりーかがやくひー』など、人気シリーズの続編やスピンオフが多く、オメガバースが一時のブームではなくジャンルとして定着したことを実感する一年でした。みなさんはオメガバース、どうですか?
うら:オメガバースはオメガバースという大きなルールがある世界なので男体妊娠が珍しい!といったくだりを省ける…のでBLの醍醐味である男×男葛藤BLよりか人の格差BLに集中できるかも。
こばやし:性別による葛藤ではなく、体質・型(血液型のような)によるカーストの葛藤ですよね。オメガバースに関しては設定がしっかりしているからこそ、BL的葛藤がなくてもBLとして成立しているし今までとは違った角度で攻めていける奥の深さが面白いジャンルだと思います。王道ももちろん好きでその中でも『さよならアルファ』が大好きですが、それだけではなく森世先生の『ロマンティック上等』や『あいとまこと』のような、亜種もののオメガバースも好きです。可能性は無限大。
大福:この前行かせていただいたBLカフェ「池袋男子BL学園」のオフ会で、オメガバース好きな方がたくさんいらっしゃってすごくびっくりしました! 確かに、「妊娠」という要素よりも社会の身分差を描いたり、番の設定を逆利用し「運命に打ち勝つ恋」というロマンを描いたりという作品が多い印象です。オメガバースが輸入されて二年ほど経ったので、オーソドックス(α× Ω)なオメガバースは二次創作メインで扱われそうな予感がします。
ゆいお:最近はオメガバースもかなり多様化してきましたよね。リアル系で言うと akabeko先生の『少年の境界 1』は、ある日突然Ωとしての人生を突き付けられた少年が男の自意識との間で揺れ動く様を痛烈に描いていて印象的でした。学校で行われる性別検査を境に交友関係が崩れてしまうのがリアルで痛々しい……。オメガバースが苦手な人にもオススメしたい作品です。
獅子舞:思えば、それぞれの物語でそれぞれのオメガバースの世界が確立されつつあるので、もう一概にオメガバースで一括りにできないくらい可能性は広がってますね! これからもどんどん新しいオメガバースの物語が生まれてくると考えると、今後も楽しみで仕方がないですね!
■モブへの温かい眼差し
白米:『モブ山A治とモブ谷C郎の華麗なる日常への挑戦』は印象的でした。モブ視点のBLはあれど、モブ同士をくっつけるという発想が斬新で良かったです。コミカルな表題作と反対に同時収録はめちゃくちゃダークで、著者のふり幅の広さに驚きました。
馬子:私も凄く好きな作品です。モブに焦点が当たる日がくるなんて…!…(笑) 一方で、同時収 録 作 は ダ ークな 感じ が 漂って い て、そ のギャップにやられてしまいました! 短編集って作家さんのふり幅が存分に楽しめますよね。
■江戸BLが来るとは!
白米:『百と卍』はセリフも江戸らしさが満載で本格的でした! にしても、漫画だとありそうで意外と江戸BLって少ないんですよね……。需要はあるはずなのでもっと増えてほしいです。
みかん:『百と卍』は「ちょんまげは萌えない」という固定観念を覆した画期的な作品だと思います。江戸BLといえば、青年漫画出身の高橋秀武先生による『雪と松』も話題になりましたね!二作とも本当に細かいディテールまで表現されていて、江戸の世界に浸れるのがたまりません。BLの外側でも、時代モノとBLのコラボが広がっている気がします。
菅波:江戸なら『雪と松』にも注目しました。さすが青年誌で連載していた先生というだけあって画面の密度もすごければ設定も作り込んでいて時代モノっていいなあと思わされました。着物っていいですよね。色気があって。
大福:今までは近代をテーマにした作品が多かった 気 がしますが、2 0 1 7 年 に入って『百と卍』『雪と松』と江戸BLが唐突に台頭してきた印象。絵柄も浮世絵っぽい(BLらしくない)ものだったので、新しいタイプの作品を求めている層から支持を得たのでは。
■仮面受け! シュールとエロのバランスがよい作品
ユメ:『仮面越しに、キス』は「仮面受け」という新しいジャンル。記事を書くためにパラ読みしようと思ったら、面白くてつい読み込んでしまいました。最後まで読者には顔を明かさないのがとてもよかったと思います!
神谷浩未:昨年のデビューコミックスで一目惚れしてしまった、S井ミツル先生の『世界はそんなに悪くない』。S井先生はとにかく笑いと色恋とエロのバランスが素晴らしく、声を出して笑いながらガッツリ萌えられるなんて、こんなハッピーな世界あっていいの……。ツイッター発のオメガバース作品も連載が始まったようで、今後がさらに楽しみです。
■エロなしピュア作品が人気の年だった
みかん:エロなしも作品増えてますよね…! 昨年はエッジの効いたディープなエロが席巻した印象で、今年もその流れは続いているのかもしれませんが、一方でエロなしのほのぼの日常系やとことんピュアな青春系の作品も続々登場していると思います。ということで、今年の傾向は二極化、なのかも…?
神谷浩未:ymz先生『ハイ・ファイ・ランデブー』、古矢渚先生『君は夏のなか』、春園ショウ先生『佐々木と宮野』など、エロなしのピュア系作品にどっぷり浸かった1年でした。先に挙げた先生は元々あまりエロを描かれない方々ですが、それ以外にもここ最近エロなし作品増えている気がしませんか? 個人的には大歓迎です!(エロも大好きです)
菅波:高校生モノでは『冬知らずの恋』もとてもよかったです。いとこ同士なんですけど、だからこその関係性というか、読んでいて胸が痛くなる作品でした。女の子も出てきて、リアリティもあり、若さゆえの片思い青春BLとしての醍醐味がすごかったです!
ユメ:エロなしと言うわけではないですが、『ただただ好きというだけで』もオススメです。帯に書いてあった「こう見えてひんひん鳴きます」というフレーズに惹かれて買いました。受けが攻めと付き合った事でクラスメイトと話すようになったりなど、成長する姿が印象的です。
こばやし:エロなしピュア大好きです……! もちろんドチャドチャにエロいのも大好きなんですが、読み終わったあとに心が洗われるような、なんだか善人の心を取り戻したかのような気持ちになれる作品が大好きです。それにエロなしピュアものって、「ああ、明日からもっと人に優しくしよう」とか、「いつもより少し明るく挨拶してみよう」とか、日常においての気持ちも前向きに変化させてくれるところがありますよね。そういう、読後の影響も含めて大好きです。
■二人の行く末を見届ける! ボーイズライフBL
菅波:2017年に一番印象に残ったのは『被写界深度』。男子高校生から大学生というわずかな期間の成長を描くのですが、多感な時期だけに時間の流れが濃密なんです。男同士だからこその葛藤などをじっくり上下巻にかけて味わえるので、満足感もあり、ストーリーに深みもありました。夢や挫折、様々なものも胸に刺さります。再会モノでもあるので、感動します。
白米:時間の流れといえば『Life 線上の僕ら』『SUPER NATURAL/JAM』『日常クライマックス』など成長して年取るモノが流行ったように思います。1組のカップルの行く末をじっくり追えるので読後の充足感がスゴイです。紆余曲折ありつつハッピーエンドで収まる作品が大半なので安心して読めるのも◎ 今後は、小説の方も開拓していこうと思います。
神谷浩未:『Life 線上の僕ら』は胸に迫るものがありました。今までにも「その後」を描いた作品はありましたが、書き下ろしで数ページなど、メインで描かれることは少なかったように思います。BLのラストは婚約・同棲・両家挨拶あたりまでだと思い込んでいましたが、この作品で新しいBLの形を考えさせられました。
salad:成長して年を取るモノは死を連想させるところがただのハピエンじゃない感じで心を動かされるのでよかったです。『YOUNG GOOD BOYFRIEND』みたいな年の差要素が入ってるとどちらかが先にいなくなるんだろうなとか考えてしまって後半は読んでて胸が苦しくなりました。
大福:今までカップルの成立過程を描く作品が多かったのに対し、その後の生活を見たい! と思う読者が増えたのかも。私も『日常クライマックス』始め熟年夫婦のようなBLが好きなので、 2017年は豊作でした。
みかん:カップルの一生を追いかけていく作品は確かに今年の大きなトレンドの一つだと感じます。BLが成熟したともいえるし、90年代の作品に目を向けると逆に一周回ってきたとも言えると思います。男同士のカップルの人生というものが、一般的にリアリティを持って受け止められる時代になったという面もあるのではないでしょうか。どの作品も「幸せってなんだろう?」と考えさせられる作品ですね!
みなさんありがとうございました。2018年はいったいどんなBLが流行して、定着していくんでしょうか。来年のこの時期にみなさんまたおあいしましょう。
大福
バディ、ライバル、近代モノをこよなく愛する腐女子。最近になって年下攻めが大好物だと気付く。
お塩
2次元、3次元どちらでもイケます。好奇心旺盛で好き嫌いのない雑食腐女子。
みかん
三度の飯よりリバが好き。男同士の感情の縺れとそこはかとない狂気を感じるBLを探して今日も邪道を爆走中。
ユメ
甘々で終始イチャイチャしてる作品と、猫目で生意気な子の泣き顔が大好き。日に日に地雷が減っていく。
salad
はらだ先生と木原音瀬先生を愛してやまない新人腐女子。最近は新人・90年代BL小説開拓に勤しんでます。
白米
飄々とした長髪受に滅法弱い。iPodはBLCDだらけで「遊佐さん受やって…」が口癖。FGOに課金中。
獅子舞
好きなジャンルは平凡やヤンキー受けの作品と、闇の腐女子作品です。声優は立花慎之介さんが大好きです。
ゆいお
ケモノ受 けが 好きです 。 2018年はケモノ受けブームが来ると…いいな…。
こばやし
同人も商業も読みます。紙もネットも読みます。あえて古の表現をするならば、好きなジャンルは切甘です。
菅波
いわゆる闇の腐女子。人を殺して埋めるのが好きだが高校生青春BLも好物。最近はアイドルゲームに夢中。
神谷浩未
攻が受を愛しすぎているCPが性癖。黒髪美人受けだとさらにど真ん中。最近エロなしピュアBLに目覚めた。
馬子
どうしようもないクズや読後モヤモヤするメリバが大好物。現在は積んでいるボブゲの消化に励む日々を送る