2003年刊行の名作BLが復活! 書き下ろしショートショートも収録
愛人の子として生を受けた陽は、不幸の連続の中で天涯孤独となります。貧しいながらもひたむきに生きる彼に目をつけたのは、名門に生まれ、華族出身の妻をも持つ大富豪の御倉。「月百万で君を飼う。なに一つ不自由はさせないが、自由はない」という御倉に陽は……。2003年に刊行された、鹿住槇先生の名作BL小説『ひかげの薔薇』が12月25日に復活! “所有物”としてマンションの一室に繋がれた陽と、御倉の間に愛は生まれるのでしょうか!? それでは「801 AUTHORS 108」第505回、鹿住槇先生どうぞ!
Q. 新刊の紹介をお願いします!愛人ものです。作品自体は今から11年も前に、ビブロスさんから刊行されたものの復刻なのですが、久しぶりに彼らのショートショートを書き下ろしました。
あまりにも年月が経ってしまっているので、別人になっていたらどうしようかと心配していたのですが、担当様からは「ちゃんと彼らでした!」と言ってもらえて、ホッとしました。
書いた当時のことは、さすがに10年以上昔だと覚えてないんですが(笑)、ちょっとアダルトチックなものに挑戦したかったのかもしれません。たぶん、私の作品の中では、淫靡な雰囲気なのではないかと(あくまで当社比ですが/笑)。
スマホもLINEもツイッターもない時代の話ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
Q. メインカップルはどんな攻×受ですか? 金持ち傲慢攻さま×貧乏小市民受ちゃん……でしょうか(笑)。
財閥系の超エリートで、幸せな家庭で順風満帆に見える攻さまが、実は心に渇いたものを抱えていて、貧しいながらもひたむきに生きている受ちゃんに心惹かれて執着し、金の力にものを言わせて囲います。受ちゃんは生活レベルの差に、イライラしたり戸惑ったり、攻さまの愛情表現が信じられなかったりしつつ、次第に受け入れる感じです。
Q. 当て馬や重要な脇役は? 攻さまには奥さんがいます。彼女の設定は、発表当時は「ひどーい!!」と非難囂々でした。……でも彼女なりに現在幸せなので、許して…(笑)。
Q. 今作のこだわりポイントはどのあたりでしょう?……なんだろう……人生まるごと買われちゃったとこでしょうか(笑)。
なに不自由のない生活なんだけど、それは全部攻さまの胸一つというか……基本的に支配されていて、対等でない関係というか。
受ちゃん的には対等に恋愛したいんだけど、それは成り立たなくて、でも実際のところは、惚れたもん負けで、攻さまのほうが受ちゃんを中芯に回っている感じなんですが、受ちゃんはそのことにまったく気づいてないところが自分的に好きです(笑)。あー……でも基本的に私の書くものってたいていそんな感じなので、特に力を入れたわけでもないですね、すみません。
Q. 苦労した点、また楽しかった点など聞かせてください! 古い話なのでほとんど記憶にないんですが(苦笑)、今回の刊行に限って言うなら、そんな大昔の原稿を読み返さなければならなかったことが一番大変でした。
えーと……若い頃に書いたラブレターを読み返すような……しかもその相手にはすでにこっぴどく振られているような、そんなほろ苦さと気恥ずかしさに似ています……。
楽しかったのは、4年ぶりのノベルズで、挿絵をつけて頂く嬉しさ等を思い出しました。ラフが送られてきた時は、一人でキャーキャー騒いでしまいました(笑)。
あ、でも昔はラフはFAXで送られてきたんですが、今はメールで届いて、ちょっと離れている間にすっかり浦島太郎状態で戸惑うことしきりでした。
Q. 今作にまつわる裏話ってありますか? 基本的に、不倫とか愛人とかがあまり好きではなくて(愛人という言葉の響きは好きなんですが)、他人の持ち物を欲しがったり略奪したりというのが苦手なのですね……実は。
だから、一番最初――雑誌に掲載された原稿を書いている時、受ちゃんが必要以上に卑屈になってしまった覚えがあります。妻に対しての罪悪感みたいなものが大きすぎて、恋愛が成り立たないのですね。
当時の担当様が「この際、罪悪感はパーッと捨ててしまいましょう!」とアドバイスを下さって、愛人側のとてもワガママで勝手な立場から書き直したんじゃなかったかな……古い話なのでうろ覚えですが(笑)。
Q. 執筆中の、思い出に残る日常エピソードをご披露お願いします! 当時はちょっと疲れていて(笑)、〆切をガンガン破って、謝って、反省して、でも書けなかったり、進まなかったり、滞ったり――の毎日でしたねー。なんでしょう……身の程知らず的な。
でも、今思うと、あの頃の自分、頑張っていたなーと。当時の自分が、今の私を見たら、この怠けっぷりと駄目駄目さに怒りまくるんじゃないかと思います。きっと小一時間叱られますね。
Q. 今、何かハマっていることは? 相変わらず観劇が趣味です。
宝塚からはちょっと離れてしまったんですが(でも今年は100周年記念でいろいろイベントがあったので、少し復活してまた見るようになりました)、帝劇等のミュージカルを観にいくのが楽しみです。
あとは……少し前から、パステル画教室に通ってます。和アートという、絵心がなくても楽しめる、型紙を使って描くものなんですが、1時間半無心に絵を描くのなんて本当に久しぶりで、すごく楽しいです。もうちょっと上達したら、愛猫の絵を描きたい……というのが目下の夢です。
あと、今年はパンケーキにハマってしまい、たぶん人生最大に小麦粉を食べた!(笑) ダイエット台無し!
Q. 発売前の今のお気持ちはいかがでしょう?ドキドキしています……。前にも書きましたが、ノベルズを出して頂くのは4年ぶりなので……初めての時よりももしかしたら緊張しているかもしれません(初めての時は、もしかしてドッキリなんじゃないの? 私騙されてるんじゃないの? という気持ちのほうが強かったです/笑)。
Q. ちるちるユーザーにメッセージをどうぞ!はじめまして、もしくはお久しぶりです。こんな古い作品に再び日の目を見させて頂き、感謝しております。読んで頂ければ幸せです。ああ、こんな時代もあったのだなあと、寛大なお心でお楽しみ頂けますように。よろしくお願い致します。
ハーレクイン・ラブシック担当編集より読者さんの多くは、鹿住槇先生というと、ウブで天真爛漫な学園BLといったイメージが強いと思いますが、意外にもそうでない作品も多く描かれています。
児童書的な“明”と、とくに新世紀になってから描かれるようになった、陰鬱さが漂うアダルトな“暗”と。光と影の両翼をお持ちになる方、と思っています。
溺れそうに甘い愛人関係の果ての、感情のズレ、二人の距離感が狂っていく葛藤。いわばBLの王道設定のなかで、主人公の繊細な心の動きまで描くから、ぐっと引き込まれます。心を伴わないエッチは切なくて……。
葛西リカコ先生の美しすぎる挿絵も見どころのひとつの『ひかげの薔薇』。今宵は、甘美な裏・鹿住槇に溺れてください!!!
特典情報共通:
全国特約書店に鹿住槇書き下ろしショートストーリーペーパー封入
コミコミスタジオ様限定:葛西リカコイラストカード(裏にショートストーリー付)
ラブシックツィッターにて告知を致します。
※詳しくは
公式ホームページへ
(c)鹿住槇/葛西リカコ/ハーレクイン