12/04 もりもより先生インタビュー 孤独に生きる寡黙な竜×居場所を探す人間の人外嫁入りファンタジーBL♥コミックス『イグナートの花嫁 1』
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2024/07/22 17:00
BL作家インタビュー「801 AUTHORS 108」第○○○○回
マンゴーベア・作 /加藤智子・訳/Kanapy・絵/すばる舎/プレアデスプレス
小説『ハーフライン 2』7月22日発売
1巻サイン本プレゼントあり! 詳しくはインタビュー後に!
STORY
韓国の電子書籍プラットフォームRIDIBOOKS「2019年BL小説大賞」最優秀賞受賞作がついに日本上陸! 韓国サッカー界のエースでありトラブルメーカーでもあるワールドスターサッカー選手--キム・ムギョン。チームメイトに女癖の悪さを注意され、性欲を発散できずに悶々とした毎日を過ごしていたムギョンは、とある出来事をきっかけに新人コーチのイ・ハジュンとセックスパートナーになることに!? 実はハジュンにはある秘めた思いがあり……。俺様スター選手と純朴な新人コーチの、とことん激しく、そして甘く切ないセックスライフが幕を開ける!
――作品紹介をお願いします
マンゴーベア 『ハーフライン』を書いたきっかけは2018年ロシアワールドカップの時でした。韓国がドイツ戦であのドイツに勝つ異変が起きたのです。しかも延長戦で2ゴールを決めて勝利したという奇跡のような試合でした。韓国の16強進出は叶いませんでしたが、その出来事が嬉しくて嬉しくて、その日早速サッカーをテーマに小説を書きました。当時、既にサッカー以外のスポーツが舞台の作品を書き終わった所でしたので、続けて新たなスポーツをテーマにした作品を書くつもりはなかったのですが。
ドイツ戦で勝った日、興奮状態でプロットを少し書いた『ハーフライン』1話分をその後すぐ完成させ無料連載サイトにアップロードしたのが始まりでした。幸い、楽しく読んでくださった読者さんの反響のおかげで、詰まることなく3ヵ月間最後まで書くことができました。
元々ヨーロッパサッカーのファンです。でも正直『ハーフライン』の設定はかなり無理があります。世界的に活躍しているスーパースターが突然韓国に戻ってくるということはまず現実にあり得ません。
ですが、どうしても舞台を韓国にしたかったので、韓国に戻る設定にこだわりました。サッカーファンの読者からみると「これはあり得ない」というご感想が多かったと思います。
余談ですが、最近マンチェスター・ユナイテッドFCで活躍していたジェシー・リンガード選手が、まだ若い年なのに24年2月から韓国のKリーグに合流したニュースがありまして。実際にこういうことが起こることもあるんだ、と驚きました。
――主人公たちはどんな攻×受ですか?
マンゴーベア ハジュンは片思いをしている受けですが、元サッカー選手だったこともあり、意志が強いキャラクターです。受けを弱い性格にするためには攻めを強い性格にしなければバランスが合わないですが、ムギョンもそういう性格にならなくて。ハジュンがもっと強い性格になるしかありませんでした。
――当て馬や重要な脇役は?
加藤 ジョンギュが大好きです。彼が出てくると会話がすごく面白くなるので。
マンゴーベア 作品のギャグ担当ですよね。私も結婚相手ならジョンギュが良いです。あとマルコも執着する年下攻めということで読者さんから反応がありました。その中にはウーチェン(ハジュンの台湾人の友達)とマルコのカップリングを推してくれた読者さんもいらっしゃいまして。ハジュンを間にしてお互い惹かれる展開も面白いかも! と思いましたね。
――作品のこだわりはどのあたりでしょう?
マンゴーベア Hシーンが長すぎるというコメントも、たまに頂きます。人物の動きを想像して描写する作業は大変な作業ですが、私はそれを楽しむタイプです。商業BLは作品のHシーンを楽しみにしている読者さんもたくさんいらっしゃると思いますので出来る限りその期待に応えたいと思います。何よりも書く時に私自身が楽しまなければ。
日本語版の紙書籍の帯に「セックスライフ」を全面に出したのがカッコいいと思いました。
実話を参考にした部分もあります。ある韓国のサッカー選手がインタビューで、海外チーム所属になって一人暮らしを始めたとき、何を食べたらいいかわからなくて一週間ずっとインスタントラーメンばかり食べたという話を聞いて、海外で一人暮らしを始めた選手たちは、そういう生活から始まるかもしれないと思いました。ムギョンも最初は慣れない環境で試行錯誤しながら、少しずつ料理ができるようになったんじゃないかなと思います。
サッカーは、あまり恵まれてない環境で自分の手で何とか頑張って成功する選手が多いスポーツでもあるので、そういう描写も入れたいこともありました。
――苦労した点、また楽しかった点など聞かせてください。
マンゴーベア 作品を書くときに、考えていた以上の描写ができた時にすごく楽しいです。『ハーフライン』の場合、ハジュンの告白シーンがそんな感じでした。私としては理解できない心理でも、キャラクターの立場を考えて書いたら人物が意志を持って勝手に行動するときがあります。その時は楽しいですね。ハジュンにそんな時が多かったような気がします。
加藤 脚注を入れるタイミング。作品の流れを重視してできるだけ注なしで解決できるようにしたいですが、脚注を入れた方が理解しやすいかなと思うところは悩みます。文化の差、環境の違いがあるところが特にそうです。
あと、半地下、屋塔房などの日本にはあまりないタイプの住居の違いとか。韓国の数え歳の概念も日本ではない概念ですので読者さんに説明を入れるようにしています。カルビチムなど韓国の料理名についても同じように悩みました。
嬉しかったことは、マンゴーベア先生にX(旧Twitter) でDMをいただいたことです。普段サブカルチャー作品翻訳者としては、翻訳者の名前が言えない契約が多いので作品のファンであることを打ち明けられるチャンスが少ないですが、今回は作家さんにフォローまでしていただけてとても光栄でした。
そして、20年前に私に韓国語を教えてくださった先生に『ハーフライン』1巻を差し上げましたが、これも嬉しい経験でした。
――今作にまつわる裏話はありますか?
マンゴーベア 『ハーフライン』はデビュー作の設定を真逆にしてみた作品です。当時はまだBLジャンルに慣れていなかったときでしたので、BLにあまりない、先に別れを告げる攻めと、冷たい態度を後悔する受けのキャラクターにしていました。攻めが引退した選手で、受けが現役選手でしたし。『ハーフライン』ではそれを逆にしましたね。
タイトルを『ハーフライン』に決めた時に考えた韓国の言葉遊びもあります。韓国ではサッカー試合が退屈な展開になった時に「ボール(韓国語の発音はコン)がハーフラインを超えない」という表現をよく使います。ですので、韓国の攻め(コン)とボール(コン)の発音が同じという面白いタイトルになったなと思いました。ムギョンがずっとハーフラインを超えないのが小説の内容ですので。
また、少し設定が変わった点もあります。もともとハジュンはムギョンと言い争いになった時、コーチの仕事を辞めて、地方にあるチームに行ってしまう展開にしようと思いました。女性の紹介も受けさせたかったです。ですが、いざとなったらハジュンが全然行きたがらなくて(笑)。自分の場所をずっと守り、元の場所に戻ろうとしようとする性格のキャラクターになっていました。そして、そんな失礼な接し方で女性に会ったりもしなさそうな気がしましたので、途中で辞めました。
――執筆中の思い出に残る日常エピソードなどうかがえますでしょうか
マンゴーベア とにかく3ヵ月間、1つの作品を突っ走って書きました。こんなに集中して書いた経験は、この前にも先にもありません。書く速度が速かっただけに、連載の間は読者さんも一緒に疾走してくれた感じがして楽しかったです。
――BL作家になったきっかけを聞かせてください
マンゴーベア もともとゲームやマンガの二次創作活動として、BLを書き続けていました。オリジナルストーリーを書きたいという気持ちもあったのですが、韓国にはオリジナルBL小説を販売する商業的な販路がない状況でした。
2016年頃から電子書籍プラットフォームが軌道に乗り、商業BL市場も活性化され、その頃からオリジナルBL小説を書き始めました。特別なきっかけがあったというよりは、出版環境の変化が影響したと言えますね。
ペンネームについては、深く考えて作ってはないです。友達がゲームIDとして「マンゴーベア」というキャラクターを作っていて、そのまま拝借しました。マンゴーかベアーが好きとかそういうことも関係なく。韓国語の発音で「マンゴーコム(熊)」ですが、他の作品『セコンドピアット』のウェブ漫画が先に日本で公開されたときに「マンゴーベア」になったこともありまして。合わせて「マンゴーベア」にしました。
――今、何かハマっていることは?
マンゴーベア ランニングにハマっています。走りたいときにランニング友達と5キロぐらい走ったり。まだ10キロまでは走れません。去年までは韓国芸能番組の影響で女子サッカーにハマっていましたが、肋骨を折るケガをしてしまいまして今は休んでします。
元々体力がある方で登山ももっと挑戦したいと思っています。去年カンウォン道の山を登った時、楽しかったことが忘れられなくて。
最近は友達が編み物にはハマっているので一緒にしたいんですが、そちらの才能はなさそうです。
――発売に関して今のお気持ちはいかがでしょう?
マンゴーベア 日本の読者さんにムギョンがどういう風に受け入れてもらえるか気になりました。韓国では「作家(妄想が激しい豊かな想像力)」タイでは「科学者(実験をしているという意味)」というニックネームがありましたが、日本では「ムギョン劇場」という表現があるようですね(笑)。
あと、素敵なkanapyさんの絵も大好きです。BL読者として日本のBL漫画をたくさん読ませていただきましたので、日本に私の作品が公開されると聞いたときには不思議な気分でした。
――ちるちるユーザーにメッセージをどうぞ!
マンゴーベア 『ハーフライン』を読んでくださってありがとうございます。テーマがサッカーだからなのか、国境を越えても読んでくださる方が多いようで嬉しいです。やっぱりボールは丸いので(笑)。完結までよろしくお願いします。
担当編集より
――甘くて濃密な韓国BLの世界へようこそ。
最初はサッカーにはあまり興味がなかったので、題材に少し抵抗感がありました。でも、実際、サッカーをするシーンはあまり出てこないので(笑)。
多くの韓国BL作品は性描写が長いのですが、この作品は特にそうで、ほぼ全てのキーワードのシチュエーションを網羅している多様性がありますが、それでもただ性描写だけで終わらせず、感情や状況が交錯するため、さらに没入感があります。最後までご期待ください!
――韓国BLと言えば「後悔攻」!
初読みの方は、ハジュンにひどいことをするムギョンが痛い目に合う日をずっと期待されると思いますが、後半になると徐々にムギョンを応援したくなると思います。そんな気持ちになるのも納得の愛しいキャラクターでした。
自分のすべてだったサッカーを早く諦めなければならなかったハジュンの潔さと、それでもサッカーを辞めずにコーチを続けるという芯の強さ、過去の傷をそのまま受け止める真っ直ぐな性格も魅力的です。
皆さんの感想が先生に届きます♥
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(C)マンゴーベア/Kanapy/すばる舎 プレアデスプレス