吾妻香夜先生インタビュー

ドラマチックでカントリー、ハピエンで切ない純愛BL！


オズは、田舎町のバーのウェイター。かつてはニューヨークで、ブロードウェイのダンサーを目指していました。しかし夢破れ、今は夜になると男娼をして日銭を稼ぐ日々。ある夜、バーを訪れた青年・テオを“客”と間違えて部屋に引っ張り込むのですが……。吾妻香夜先生の新刊コミックス『ラムスプリンガの情景』が3月24日に発売されます！ 80年代のアメリカ田舎町という舞台、また日本ではあまり馴染みのない設定のキャラなど、とても興味深いBLです!! それでは、「801 AUTHORS 108」第1558回、吾妻香夜先生どうぞ！

 

夢破れた青年には、純粋すぎる攻めが眩しくて…

 

Q. 作品紹介をお願いします！
舞台は1980年代のアメリカです。
かつてニューヨークでブロードウェイダンサーを目指していたオズワルドは夢破れ、田舎街のバーのウェイターとして、夜はレントボーイ(男娼)として日銭を稼ぐ日々を送っています。
ある日オズはバー店内の隅に佇んでいたアーミッシュの青年・テオドールに出会います。オズはテオを身体目当ての客と思い込み、そのまま自室に連れ込んでしまいます。
そんな冒頭からはじまるお話です。
アーミッシュとは、主にアメリカのペンシルバニア州などで農耕や牧畜による移民当時の質素な暮らしを続けている、キリスト教徒の共同体です。日本では主にアーミッシュ・キルトで知られていると思います。
「ラムスプリンガ」とは、アーミッシュの若者が一般社会を経験するため、様々あるその掟(お酒を飲んではいけない、音楽を聞いてはいけない等)から解き放たれる自由期間のことです。




Q. メインカップルはどんな攻×受ですか？
とにかく純粋無垢なわんこ系テオドール(攻)×擦れているが結局テオの世話をやいてしまうオズワルド(受)です。
成人しても村から出たことすらなかったテオは、おそろしく世間知らずで純粋なのですが、外の世界を教えてくれるオズと出会い、恋して、オズに一気にのめり込んでいきます。
序盤は、とにかく中身の幼いわんこ系というかんじですが、オズに恋し、外の世界に触れていくうちに自我が芽生え、その心境や顔つきも変化してゆきます。
オズはどこか擦れていて、ひとりで過去の闇を抱えているのですが、純粋なテオの存在がそこを溶かしていきます。

 

興味津々な舞台＆設定！ どんなBLが展開されるの!?

 

Q. 当て馬や重要な脇役は？
過保護気味のテオの幼馴染・ダニーと、テオのいとこのお姉さん・クロエ。
ダニーはテオを溺愛しており、彼が村の外へ出かけることを快く思っていない存在です。それには理由があり…。
テオのいとこのクロエは、ダニーとは逆に、テオの想いに寄り添う人物です。彼女もまた、内に秘めた思いがあります。


Q. 今作のこだわりポイントはどのあたりでしょう？
アーミッシュという、あまり身近ではない文化を題材にしていますが、アーミッシュであるテオが自分の出自に悩む話…ではなく、一般人であるオズ側の葛藤がメイン軸になっています。
中身はこどものように見えるテオの方が、純粋すぎるが故に、オズを愛する己の気持ちや行動にブレがありません。
あと、民俗文化の描写も、難しい説明になりすぎない程度に、その雰囲気が伝わるよう心がけました。

Q. 苦労した点、また楽しかった点など聞かせてください！
今回関連書籍など漁りいろいろ調べつつ描きましたが、詳細のわからない部分もままあり…ペンシルバニアには訪れたことはあるのですが、アーミッシュ村にまでは行かなかったので、ちょっと後悔してます。
細かい部分は「このコミュニティ(村)ではそうなんです」ということでお願いしたいです。





Q. 今作にまつわる裏話ってありますか？
最終話60pがまるまるコミックス描きおろしになっているのですが、それを描き終えると今度は昔描いた序盤の絵やコマ割りが気になりだしイチから描き直しはじめ、結果単行本作業で100枚以上描くという、自分から泥沼にはまっていく感じの作業になりました。きりがないので、次からはそこそこでやめとこうと肝に命じました。
あと、出来れば13折(208ページ)内で、という編集の言うことを聞かず結局最大折数の分厚めの本となってしまいました。短くまとめる能力が無く申し訳ないです。

Q. 執筆中の、思い出に残る日常エピソードをご披露願います！
脱稿した翌日、バラエティ番組に出演して何かのゲームに失敗し、罰ゲームでダウンタウンの浜ちゃんに笑いながら家財道具一式を燃やされる夢を見て汗だくで飛び起きました。

Q. 今、何かハマっていることは？
苦手だったはずのパクチーが、何故か突然食べられるようになっており、ハマって毎日食べていたら、また苦手になっていました。
でも昨日食べたらまた美味しかったです。パクチーはそこにいるだけで情緒不安定にさせてくる恐ろしい攻め。

 

描き切った!! ドラマチックでボリューム満点な一冊にハマろう

 

Q. 発売に関して今のお気持ちはいかがでしょう？
1本の話でまるまる一冊、ずっと考えていた展開のとおり描き切れたのが嬉しいです。携わってくださった編集の方々に感謝しております。ありがとうございます。

Q. ちるちるユーザーにメッセージをどうぞ！
あまり馴染みない題材のお話と思われるかと思いますが、宗教にまつわる小難しい説明とかいったものはありません。
少し古いカントリーな雰囲気の純愛BL、ハッピーエンド。でもちょっと切なくなる感じも好き、という方におすすめです。
読んでいただけましたら、嬉しいです。


担当編集より
作風の振り幅が大きすぎる、吾妻香夜先生のセカンドコミックスです！
13折で収めて下さらなかった(笑)ですが、厚みを裏切らない卓越したストーリーで、最初から最後まで「ドラマチック」で殴られます！
シリアスの中に折り込まれるコメディも必見です♪
今まで、アーミッシュのコミュニティで閉鎖的に暮らしてきたテオはとにかく純粋で、“色々なこと”を知りません。逆に“色々なこと”を知ってしまっているオズは、そんなテオが眩しい。
主要キャラ全てに事情や葛藤があり、どの視点になっても切なさに心を掴まれます。
一風変わった舞台で繰り広げられる、純愛ストーリーぜひご堪能ください♥︎

※『ラムスプリンガの情景』封入のアンケートハガキで、吾妻香夜先生描き下ろしペーパー応募者全員サービスもあります♥︎(2018年5月31日消印有効)

コミックス『ラムスプリンガの情景』

特典情報
・協力書店：描き下ろしペーパー
・とらのあな：描き下ろしメッセージシート
・『ラムスプリンガの情景』アンケートハガキ：描き下ろしペーパー応募者全員サービス

※協力書店様はショコラHP、ショコラ編集部(@chocolat_hensyu)と心交社営業(@shinkoshaeigyo)のツイッターでお知らせいたします。


(C)吾妻香夜/心交社