★作品発表★ 著者:K-ichi
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「どういうつもりだっ」
学園祭とあって外部からの来客も多く、にぎわいをみせる校舎の片隅で、人の目を気にして声を抑えながらセイヤは目の前の男を睨みつけた。お客にお茶を出していたところを、突然やってきたマサルに強引に連れ出され、人気のない準備室に連れ込まれてしまったのだ。
「委員長がぜんぜん俺の相手してくれないから、ちょっと焼きもちやいちゃった」
セイヤの怒りなど気にもせず、マサルはひょうひょうと笑顔で答える。
「男子校でメイドカフェとか気持ち悪いだけだと思ったけど、委員長だけすごい似合ってて天使みたい」
「そんなこと言われてもうれしくない!」
思わず大きな声が出てしまい、セイヤはあわてて口元を押さえた。クラスの催し物だとしても、メイド服を着て男と二人きりで教室にいるところを誰かに見られるのは嫌だ。
「ねえねえ、このスカートの下ってどうなってるの?」
そんなセイヤの気持ちにおかまいなしに、マサルはスカートをめくり上げようと腕を伸ばしてきた。
「ちょっ、やめろっ」
その腕から逃れようとあわてて体を仰け反らせたセイヤは、机にかけてある白布の裾を踏みその場にしりもちをついてしまう。
「あらら。もう、委員長はほんとあわてんぼうだね」
クスリと笑い、マサルは目の前にしゃがみこみセイヤの顎をとらえた。
「どうしてそんなに俺のこと怖がってるの?」
「こっ、怖がってなんかないっ」
はむかうセイヤへ、マサルは笑いながら唇を寄せた。
「やっ、ちょっ」
「暴れると、グロス剥がれちゃうよ」
拒否しようと抗う細い手首をつかみ、ふわふわしたメイド服を潰すように押し倒す。そのままキスすると、ピンクのリップグロスで飾られたセイヤの唇はつるつるして、しっとりと柔らかかった。
「んっ! んん、んふ……」
舌で薄い唇を割り、歯列を開かせ、ちぢこまったセイヤの舌を誘うようにノックする。何度も繰り返すとセイヤから甘く湿った溜息が洩れはじめ、そのうち恐る恐るマサルの舌へ触れて来た。しんと静まりかえった準備室に、二人の唇から洩れるリップノイズが響く。誰かに気づかれないかという不安が、じりじり湧きはじめた興奮を更にあおって来る。
「かわいい、セイヤ」
唇を離して囁くと、セイヤは頬を染めマサルを睨みつけた。
「誰か来たら、マズいって」
「大丈夫、カギかけたから」
「カギって、何する気だよ?」
「だって、ホントかわいいんだもん。食べちゃいたい」
その言葉に何を連想したか、セイヤは耳たぶまで赤くなった。
――強引に口説かれ、マサルと付き合い始めてから一カ月。相思相愛ではあったけれど、真面目なセイヤはマサルに振り回されっぱなしだ。
しかも今日は学校祭で校舎が解放されているから、いつどこから人が来るかわからない。ビクつくセイヤに構わず、マサルはスカートを掴んだ。
「ダメだって! もう戻らなきゃ」
「他にもメイドいるだろ。一人消えたって大丈夫だって。それよりさ、俺、セイヤを注文したいな」
「ばっ、何言って……」
「イヤなの?」
「イヤじゃ、ないけど」
「じゃあ決まり」
マサルはさらりと言うと、返事を待たずにスカートをめくり上げた。
「や、っ」
「へえ、めくられたら恥ずかしい?」
「べ、別に」
「ふーん。あー、スカートなのにボクサーはいてる。下着もフリフリだったらもっとヤラシイのに」
「バカ、そんなキショいこと、あ、んっ」
少し芯をもち始めたそこを、薄い布越しに弄られる。浮き出た形を指でなぞられ、ますます熱く硬くなっていく。
こんなことをしている場合ではないと頭では分かっていても、体は正直に快楽を求めてしまう。つい小さな溜息を洩らすと、マサルの手が下着の中へ入ってきた。
「マサルっ」
「何?」
「ホント止めて、これ以上されたら、俺……」
「良いよ、もっとキモチ良くなっちゃいなよ」
答える間もなく、下着の中から昂(たか)まりをさらけ出され、くわえられた。
「う……はう」
ぬるぬるした熱い舌が筋をなぞり、くびれから先をまんべんなく這う。柔らかな粘膜の感触と添えられた手の動きが、昂まりのスリットからほろ苦い露をしたたらせる。
つい最近覚えたばかりの快楽に飲みこまれてしまったセイヤは、気づくと下着を脱がされ足を大きく広げられていた。
「すっごいイイ眺め。ねえ、足、もっと広げてみせてよ」
「や、恥ずかしい」
「出来ないの? 俺の言うこと聞けないんだ。悪い子だね、セイヤ」
おしおきしちゃうよ、という声を合図に、昂まりを唇で強く扱かれる。更に後ろの窄まりを揉まれ、浅く指を挿入された。
「いや、あ、ううっ」
「本当にイヤなの?」
「……」
「素直にならないと、パンツ返さない」
「え?」
「ねえセイヤ、ノーパンでメイドして、誰かに気づかれたら大変だよね。委員長はヘンタイだって皆に言われるな」
「なっ……」
「さあ、お願いしますご主人様って、言ってごらん?」
マサルが嬉しそうに言いつけるのを、セイヤは半泣きで見上げた。
慣れないスカートでノーパンは非常に危険だ。恐らくちょっと屈んだだけでも中が見えてしまうだろう。だがこうしてマサルに意地悪されると、たまらなく興奮する。どうしようもなく腰がずくずく疼き、耐え切れず言うことを聞いてしまうのだ。
セイヤはすがるようにマサルの手を握った。
「マサル……お、お願い」
「何を?」
「言うこと聞くから、だから――」
「だから?」
「……お願いします……ご主人、さま」
「良い子だね、セイヤ」
満足そうにくすりと笑いながら、マサルが再びセイヤに覆いかぶさった。
待ちわびて震える昂まりを、口と手で追いこまれる。そして窄まりに挿入された指に奥を苛まれ、セイヤは一気に上りつめた。
「う、はう、マサ……もう、んっ!」
熱い塊が下腹からこみ上げ、膨らんだ昂まりの先ではぜる。すべてをマサルの口内へしぼり出すとともに、腰から足の裏まで稲妻のような快感が走った。
(キモチ、良い……)
覚えたての快楽は自慰よりはるかに強烈で、思考を簡単に奪う。うっとりと余韻にひたるセイヤの乱れた髪を、マサルがそっと撫でた。
「セイヤ、ホントエロいよね。ねえ、今夜メイド服持って帰っておいでよ。続き、ウチでしよ?」
「……うん」
さらりと耳打ちされた内容に、収まりかけた体がまた疼く。恋人のヘンタイじみた要求を受け入れてしまう自分を恨めしく思いつつ、セイヤは目を閉じてこくりと頷いた。
おわり