chill chill ちるちる
 
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【第8回】

「萌えるストーリーを考える」
パート2
<前回までのあらすじ>
ひょんなことから、「BL荘」に迷い込んでしまったBL小説家志望のナルヨちゃん。
そこで、黒いマントをかぶったナゾの管理人と出会う。
管理人いわく、BLの真髄が詰まっている6つの部屋にある鍵をすべて集めれば、今をトキメクBL小説家になるのも夢ではないのだとか。
ナルヨは、BL小説家デビューをめざして、いよいよを物語作成に入るのだが……!?



「前回勉強した『起承転結』をもとに、さっそくプロットをまとめてみようっと!」
「いよいよ、小説家に向けての第一歩となる原稿作成だな」
「はい! がんばるぞ!」

【プロットを作るときのポイント】
書きたいジャンルや特に伝えたい内容によっては、転の部分を長くするなど、起承転結のバランスを変えてもよい。
また、書き進めるうちにもっとよい展開が浮かべば、それに合わせて修正していくのもOKだ。
なぜキャラクターたちがそう行動するのか? なぜその感情を抱いたのか? たとえ作中で明らかにしない部分であっても、プロットにはきちんと書いておいたほうがよい。
書きあがったときに矛盾や説明不足が起きないよう、細かく丁寧に書いておくといいだろう。

「では、実際にプロットを作ってみるのだ」
「えーと……話の流れをしっかり作ること、起承転結を意識すること、たとえ文中では描かれなくても大事な設定はここで決めておくこと、がポイントなのよね」


<ナルヨの考えたプロット>

■起
社会人2年目の受は、整った童顔と明るい性格の裏で、だれにも知らせずにあることを続けていた。サラリーマンとして生活する一方で、3年前に起きた父の突然の自殺の真相をひそかに追っているのだ。ある日、会社帰りの夜道で、不審な男たちに襲われる受。そこへ現れた精悍な顔立ちの長身・黒髪の男が、受を助けてくれる。男は受の会社の海外支社から転勤してきた、同僚になる予定の人物(攻)だという。父の死と不審な男たちの関係を疑いつつも、受は襲撃事件を表ざたにせず、攻にも口外しないよう頼む。実は、父の死は、会社の不正経理を知り、公表しようとしたために口封じで殺されたのが真相。襲ってきた男たちは父の自殺の真相を知られたくない会社の上層部が雇った人間で、受を軽くおどそうとした。攻の正体は、父の元部下。亡くなる直前の父から、受に手渡された不正経理の証拠を探すため&父の遺言どおり受を守るために転職を繰り返し、受と同じ会社へ移ってきた。

■承
受は攻の先輩として教育係になる。ふたりで過ごすうち、父の死の真相を探る生活ですさんでいたことや、他人を信じられなくなり友達もいないさびしさを自覚する受。自分に安らぎを与えてくれる攻に、同僚や友人以上の想いを抱くようになっていく。地味な生活に楽しみが生まれ、戸惑いながらも、攻を想う気持ちを抑えられない受。それに応えるように、思わせぶりな言動を繰り返す攻。攻は受と親しくなり、証拠を手に入れることが目的だが、しだいに受そのものに惹かれていく。しかし、ここではまだミステリアスな存在であり、あまり自分のことを話さない。ふたりは友達以上の関係になる。

■転
父の遺品を見直した受は、攻の写真を発見して驚く。偽の書類の記述から、攻が父を自殺させたのではないかと勘違いする。さらに、自分を好きなようなそぶりをしたのも証拠を手に入れるためではなかったのかと疑い、動揺して攻を問い詰める。その間に興奮した受は道へ飛び出し、車に轢かれそうになる。そこを身を挺してかばった攻は病院へ運ばれる。攻がかばったのは、純粋に受への愛から。受はもう一度遺品を調べなおし、誤解だったと気づく。また、父が残した不正経理告発の証拠も見つけ、死の真相をつかむ。

■結
受は自分が深く攻を愛していることを再認識し、もう一度関係を修復するために病院へ向かう。手術室の廊下で祈り続ける受。やがて手術は成功し、受は攻に謝る。攻が退院した後、ふたりは結ばれる。そして父の死の真相を公表し、名誉を回復する。3年越しの目的をかなえた受は、攻とともに会社を辞め、新しい生活を始めるために別の土地へ向かう。

「ふむ、だいたいうまくまとまっているようだな。攻と受の関係性もプロット上でわかりやすく書かれているようだ」
「こうやって改めて書き出すと、自分でも話の流れやキャラクターの言動がわかりやすいかも」
「そう。書き出すことで、自分の頭の中にあるアイデアを整理できて文章にしやすくなる。ここでできる限りしっかり練っておくことが大切だ」
「よし! じゃあこのプロットをもとに、実際の文章に取り掛かるんだから!」


【文章を書き始めるときのポイント】
プロットを作ったら、実際の物語を書き始めよう。途中で迷ったり悩んだりすることもあるかもしれないが、そんなときは、プロットどおりに書き進めているか確認しよう。物語を書くうちに自分が迷子になってはいけない。
順調に書き進めるうちに気持ちがのってきて「キャラクターが勝手に動いていく」のは決して悪いことではないが、最低限書かなければいけないことを見失わないように注意が必要だ。
読者に物語の世界観とキャラクターの魅力を丁寧に伝えているか、出来上がったプロットと照らし合わせて、自分の作品を客観的に見つめることが大切だ。

ところで、キャラクターを設定する際に主人公を「受」「攻」どちらにするか悩んだことはないだろうか。
主人公が受か攻どちらかによって物語の動かし方が多少変わってくるので、どちらの視点で物語を書くのかもいっしょに考えておこう。
多くのBL小説は、受視点で書かれているが、両者の視点をランダムに入れて書かれる場合もある。
どちらの場合でも、物語の中で効果的に作用するように考え抜いて決めなければならない。

「全編攻視点で書くのはよくないの?」
「そんなことはない。ただ、読み手が最初に感情移入するのは視点の主(主人公)だ。ジャンルによっては、視点を誤ると感情移入しにくくなってしまうこともあるので、注意が必要だ。たとえば悲恋ものだとして、受が攻を好きでたまらないのに告白できないもどかしさを描くとする。そのとき主人公が攻視点で描かれていたら、受の細かい気持ちの変化が読者に伝わらなくなるだろう」
「たしかに。ジャンルや内容に合う視点を、ちゃんと考えないといけないのね」



ナルヨ、筆が進む……? 画:赤根 晴





「プロットのコツはなんとなくわかった! もう少し細かくプロットをまとめて、矛盾や書き足りないところを確認してから執筆に取り掛かろうっと! あとで自分で迷子にならないように道のりを考えて……」
「よし、ストーリーの考え方は身に付いたようだから、約束の鍵を授けよう」
気がつくと、手のひらに銀色に輝く鍵が載っていた。
やった! 『ストーリーの考え方』をものにしたんだ!
「どうした? 今までのようにすぐに開けないのか?」
「実は、ラブシーンをどこに入れるかを、まだちゃんと決めてなかったかも……それに、わたしラブシーンをちゃんと書いたことなかったんだった。大丈夫かな……」
「ラブシーンは、入れる場所や回数など決まったマニュアルがあるわけではない。物語の流れやキャラクターの気持ちに合った部分に、効果的に入れてみるのだ」
「うーん。効果的に……」
「これについては、別の扉でみっちり学んでもらうから、心しておくように」
「よ~し、BLマスターの真骨頂! ラブシーンの勉強も頑張るぞー!」
さっそく鍵を使って廊下に戻り、ドキドキしながら扉に手をかけた。

次回は、ラブシーンの書き方のお勉強です。
興奮気味のナルヨちゃんの妄想がスパークするかも!?
あなたもナルヨちゃんといっしょにBL小説家目指して、B-PRINCE文庫新人大賞にレッツチャレンジ!

次回更新予定日:8月2日

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