chill chill ちるちる
 
バックナンバー
【第7回】

「萌えるストーリーを考える」
パート1
<前回までのあらすじ>
ひょんなことから、「BL荘」に迷い込んでしまったBL小説家志望のナルヨちゃん。
そこで、黒いマントをかぶったナゾの管理人と出会う。
管理人いわく、BLの真髄が詰まっている6つの部屋にある鍵をすべて集めれば、今をトキメクBL小説家になるのも夢ではないのだとか。
ナルヨは、BL小説家デビューをめざして、いよいよを物語作成に入るのだが……!?



「これまでマスターしてきたことをふまえて、全体の流れを固めていくときがきたぞ」
「好きな萌えキャラで萌えストーリーを作るのね」
「そうだ。書きたいジャンルで魅力的なキャラクターを動かすために、どういった流れで最後まで物語をつないでいくかを整理しよう」
「いろんなことを同時に考えていくと、混乱しそう。流れといっても、具体的にはどうやって考えたらいいの?」
「ふむ。そこで重要なのは『プロット』だ(※第3回「小説を書く基本」の「③プロットを立てる」を参照)。起承転結に従って、話がどう展開していくか、細かく組み立てていくのだ」
「でも私は、書きたいことも最後のオチも決めてるから、すぐに書き進めても迷ったりしないと思うけど」
「そうかな? では、ここが物語のスタート地点で、遠くにゴール地点があるとしよう。だが、ゴールまでどういった道のりで進んでいくのだ? まず右からいくのか、左からいくのか。そのあとは? 突然川が立ちふさがるかもしれない。その川をどうやって渡るかにもたくさんの選択肢がある。ゴールまでの細かい道のりを決めるのが作者の仕事。この道のりを決める作業が、『プロットを作る』ということだ」

それでは、プロットについて詳しく学んでいこう。


■起……物語の導入部分。キャラクターを紹介したり、世界観を説明する。
「読者を引きつけられるかは、出だしで決まると言っても過言ではない! なにか考えているかな?」
「冒頭からいきなり受が襲われているところに、攻が助けに入るの!」
「インパクトはあるが、主人公と彼が置かれている状況についてちゃんと説明をしなければだめだぞ」
「どうして?」
「そもそも主人公自体、書き手が決めたものもの。読者にとっては初めて見るキャラクターなのだ。なんの説明もなければ、襲われているのが主人公か脇役かさえも判断できない。誰が主人公で、彼がどんな容姿と性格をもつのか、最初に読者にわからせることが大切だ」
「主人公を印象づけないといけないのね」
「それだけではない。襲われた理由は後で説明するにしても、なぜ攻が助けてくれたのか? 助けなければならない関係なのか、状況なのか、性格なのか、それも説明しなければ」
「スタート地点から、そんなに考えておかなきゃいけないの?」
「キャラクター設定を固めた段階で、書き手の中ではもちろん、主人公の容姿や性格ができあがっているはずだ。しかし、読者にとっては主人公と初めて出会う場面なのだから、のちのち判明していく事実があるとしても、最低限の説明が必要だということは意識しておこう。ナルヨは、なんの情報もないキャラクターに魅力や興味を感じないだろう?」
「うーん、その人物がどんなキャラクターかわからないと、たしかに惹かれないかも。そうか、誰が主人公で、どういう人物なのかってことくらいは、きちんと書いて読者に伝えないといけないのね。じゃあ、会社員の主人公が、亡くなった父の死の真相を突き止めているところで、不審な人たちに襲われて……ブツブツ」
「うむ。それらの内容を説明した上で、印象的な出だしを作り、恋の相手との関わりなどを徐々に膨らませていくことが大切だ」

【『起』のポイント】
・主人公の説明
・主人公を取り囲む状況を明らかにする
・恋の相手との出会い

決めたジャンルやキャラクター設定をもとに、読者の興味を引くような始まりを考えよう。
キャラクターの言動や、環境・状況の変化から気持ちを動かすきっかけを作るのが「起」となる。


■承……導入部分からの流れを受けて、ヤマ場に向けてキャラクターや事柄を動かしていく。
「読者はキャラクターを理解し、しだいに作品に引き込まれているところだ。ここから物語をどう展開する?」
「受は助けてくれた攻をだんだん好きになるの。だけど2人の行く先には大きな障害が……!」
「その例で説明すると、『起』で描かれた出会いがきっかけで、受が攻を「だんだん好きになる」部分が『承』だ。ここでしっかりと描写しておくと、後の『転』での物語最大のヤマ場がより引き立つ」
「でも、スタートやヤマ場は書きやすそうだけど、間をつなぐのって地味だよね」
「地味なものか。たとえばヤマ場で2人に悲劇が待っているとしたら、ここで2人の幸せな様子をちゃんと描写しておくほど、後の展開で落差が引き立ってよりドラマティックに盛り上げられるぞ」
「逆に、ここで適当に話を進めると、ヤマ場の感動もイマイチになっちゃうってことね」
「そうだ。『承』では、『起』でまいた種を育てるイメージで、しっかりと流れを考えよう。育て方しだいで、『転』で花開くかどうかが決まるぞ」

【『承』のポイント】
・恋の相手が主人公の日々に関わってくる
・主人公の周囲の状況が変化していく
・主人公の気持ちが動き、相手に良くも悪くも惹かれていく

導入からからヤマ場までをつなぐ。ヤマ場へ向けての仕込みを入れるべき部分。


■転……物語のヤマ場。それまでと大きく展開を変え、ドラマチックに盛り上げよう。
「じつは、攻が受の父親を自殺に追いこんだ人物だと判明するの! 本当は誤解なんだけどね。 受はそれを知って愛と憎しみで混乱して……ショックのあまり道路に飛び出して車にはねられそうになったところを、身を挺してかばう攻!」
「その流れなら、『承』では2人の仲よさそうな様子を描写しておくと、『転』での切なさがより引き立つかもしれないな。さて、物語の流れが大きく転換するのが『転』だ。この例だと、せっかく両想いになったのに、相手の秘密が発覚して2人の関係が危機に陥る部分がそうだな」
「ここがクライマックスなの!」
「そうだな。それまでと大きく状況が変わると、話にメリハリがついて面白くなる。『承』では受が攻を愛していたのに、『転』では憎しみという真逆の感情に変わる。変化が大きいほど、読者はハラハラドキドキするだろう。「車にはねられる」と言ったが、事件や事故を絡ませるてもドラマティックな展開にしやすい」
「なるほど、じゃあ、さらに攻のバックに大きな黒幕がいて、そしてそして、攻は不治の病で……」
「待て待て! やりすぎは禁物だ。あまりにも現実味がなかったり、ご都合主義な展開では、読者の興味が薄れてしまうぞ」

【『転』のポイント】
・主人公が恋の相手に抱いている気持ちが、さらに変化する
・アクシデント・事件などが起こる
・攻の助けや状況の変化・主人公の努力などで、アクシデントや事件が収束に向かう

『承』でさらに動き始めたキャラクターの気持ちや、状況が大きく変わる。


■結……物語の終わり。ヤマ場で起こったことの結末や、その後の展開を描く。
「『転』で起きたアクシデントが解決して話がまとまるのが『結』だ。それまでに広げた風呂敷(ネタ)はちゃんと畳めているか?」
「攻のおかげで命を救われた受。父の件も誤解だとわかって、病院で手術を終えた攻を、やっぱり愛していると気づいて2人はようやく結ばれるの」
「この場合、『転』で起きた『2人の愛の危機』と『攻が事故にあう』というアクシデントが、解決するわけだな」
「そして2人は前よりもラブラブにっ!」
「主人公が攻への愛を再確認するのもポイントだな。それにより、読者も『転』で動いた主人公の気持ちを、ちゃんと掴むことができる」
「最後に2人は熱いラブシーンを……!」
「ラブシーンはBL小説には大切な要素だ。だからできるだけ丁寧に描くように。BL小説では、ラブシーンを期待している読者も多いぞ。ちなみに、ラブシーンは必ずしもラストにだけ入れるとは決まっていない。本編のいたるところでラブシーンを繰り広げるような物語作りでもBL小説では問題ないのだ」

【『結』のポイント】
・アクシデントや事件が解決する
・主人公が自分の気持ちを整理し、決断する
・ラブシーン(必ずしもラストだけではない)

「転」から状況が解決し、主人公と恋人が結ばれる。



ナルヨ、プロットの重要性を知る 画:赤根 晴





「プロットを書くなんて面倒だなって思ったけど、ここでちゃんと作りこむことが大切だったのね」
「うむ。これがあるから、最後まで迷わずに書き終えることができるのだ」
「じゃあ、わたしもさっそく今考えた物語をプロットにおこしてみよう!」

次回は、プロットの書き方をナルヨの例題を出して説明していきます。
あなたもナルヨちゃんといっしょにBL小説家目指して、B-PRINCE文庫新人大賞にレッツチャレンジ!

次回更新予定日:7月16日

■ご意見・お便りはコチラ : bp-info@ml.asciimw.jp



Page Top