chill chill ちるちる
 
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【第5回】

「かっこいい男子キャラを作る」
パート1
<前回までのあらすじ>
ひょんなことから、「BL荘」に迷い込んでしまったBL小説家志望のナルヨちゃん。
そこで、黒いマントをかぶったナゾの管理人と出会う。
管理人いわく、BLの真髄が詰まっている6つの部屋にある鍵をすべて集めれば、今をトキメクBL小説家になるのも夢ではないのだとか。
ナルヨは、BL小説家デビューをめざして3つ目の扉をあけたのだが……。



「さて、ついにもっとも重要な扉にきたぞ」
「長かった……これでやっと萌え男子が作れる~」
「おまえは初めから萌え男子のことばかりだな。まあいい。まずはメインになる人物(主人公)とその相手について考えていくことにしよう」

ここでは、名前や容姿はもちろん、読者がその人物をはっきりとイメージできる要素を固めていく。もちろん、主人公が『受』か『攻』かについてもだ。
主人公がどんな人物かという要素こそが、読者に物語を読む気を起こさせるかどうかを決めると言っても過言ではない。魅力的な主人公を作りあげるためには、細かくていねいに描写する必要がある。また、設定をきちんと作っておけば、そのあとに文章で書くのも楽になり、書いている途中で主人公の性格がブレたりありきたりになったりするのを防げるのだ。

「ふーん。考えなきゃいけないことがいろいろあるのね。でも大丈夫! じつはもう受の家庭環境や生い立ちまで決めてあるから! だけど、生い立ちをストーリーでわざわざ書かなくてもいいか……」
「直接文章には書かない部分まで設定しておくのもよいことだ。ただし、作者の決めた設定は、作者だけが理解しているということを忘れないように。読者は文章を通してしか、設定を知ることができない」
「そうか、作者の私だけがわかっていてもだめなんだ。説明不足にならないように気をつけないといけないのね」
「そのとおり。読者にちゃんと伝わるように描かれているか、いつも意識しながら書くようにしてほしい」

では、主人公のキャラクターについて考えていくことにしよう。
BL作品では基本、恋人同士になる2人のどちらか、または2人ともが主人公になる。たいていは『受』となる人物が主人公になるが、『攻』が主人公になる場合もある。


<受・攻のキャラクター設定>

・名前
キャラクターのイメージに合ったものが好ましい。たとえば、「繊細」「女の子みたいな顔」「読書好き」などの特徴を持つなら、やわらかい響きの中性的な名前がふさわしいだろう。

「繊細な受に、男らしい名前っていうのが好みなんだけどな~」
「あえて逆のイメージの名前をつけてもいいが、その理由を明確に作品に描けなければ意味がない。繊細で女顔の少年に『長太郎』とつけたとして、読者が納得できる理由を持たせられるか?」
「理由? うーんと……」
「たとえば、姉が3人もいて待望の長男だったからとか。これなら、かわいがられて育ったため繊細な性格になったという設定にも生かせるだろう」


・容姿
どのような見た目か。髪型、目の色、背の高さ、体型など。普段から好みの萌える男子を観察し、特徴を書き出していくのも練習になる。

「とにかく、攻はカッコイイの!」
「カッコイイって、背が高くて脚が長いのか? 小柄だがバランスのとれた体をしているのか? <カッコイイ>の定義は人それぞれ。できるだけ具体的に決めておこう」
「じゃあ、赤く染めた髪が腰まであって、左右の目の色が違うの!」
「……前に会社員が主人公で書きたいと言ってなかったか? そんな会社員がいるか? あまりほかの設定とそぐわない要素を盛り込むと、リアリティが薄くなりすぎて読者がついていけない可能性があるぞ」
「ほかの要素とのバランスを考えて決めないといけないのね」


・年齢
何歳か。相手の人物とのバランスで考えよう。たとえば「年下攻」ジャンルなら、当然、受が攻よりも年上という設定になる。また職業を持っているなら、矛盾しない年齢に設定するよう注意しよう。

「仮に<国会議員>だとして、衆議院議員なら満25歳以上、参議院議員なら満30歳以上と法で定められている。つまり、<18歳の国会議員>など存在しないわけだ」
「少年議員なんて、面白い設定だと思うけどなー」
「あえて架空の世界を舞台にしてストーリーを作るのであれば、現実世界の常識に無理に合わせる必要はない。ただし、あまりに非現実的な設定だと、初心者ほど作品に齟齬が出やすくなる」
「だったら、たとえば<雑誌のライター>とかなら資格はいらないわけだから、<18歳の超売れっ子ライター>がいてもおかしくないよね」
「そう、逆に制約の少ない職種を選べば、年齢の選択肢は広がると言える」


・性格
どんな性質を持っているか。やさしい、おっとり、気が強い、天然系、オレ様、無愛想など。

「受はね……内気でトラウマを抱えているの」
「ならば、なぜそういう性格になってしまったのかが物語の軸になるだろう。性格を決定した理由・要因を物語に生かそう」


・職業
どんな職業についているか。第2回、第3回の「ジャンルやコンセプト」に合わせて決めていく。

「そっか、あのとき決めたことが、キャラクター設定とつながるんだ」
「前にも言ったとおり、キャラクター設定部分もジャンルなどとともに合わせて決めなければならないことなのだ」


・服装
どんなファッションをしているか。職業により、制服など固定される場合がある。

「攻は会社ではスーツだけど、週末はストリートファッションなの!」
「職業上は制服、私服はカジュアルという設定は、キャラクターに個性をつける要素としても利用できる」
「ファッションには性格が出るっていうもんね」
「そうだ。パンツを腰ばきして靴のかかとを踏んで歩くような人間が、几帳面で繊細な性格とは考えにくい。ファッションから性格や好みを表現することができるのだ」
「性格に合わせてファッションを決めないといけないのね」


普通、読者は主人公の目線で物語を読み進める。だから、わかりやすい人物設定にすると感情移入しやすい。とはいえ、すぐには受入れがたい特殊な性格の主人公や、個性的なキャラクターが悪いわけではない。その性格にしたことにちゃんと意味があり、きちんと読者に伝えられれば、より個性的で魅力あふれるキャラクターを作ることができるからだ。

「う~ん、性格や容姿などが決まると、主人公の姿がイメージできるわ」
「ジャンルを決めるときにも説明したが、最初にきちんと設定しておかなければ、書き始めてから矛盾が出たり、魅力のない作品になったりしてしまう。特に主人公は物語の中心になる大事な人物だけに、ここでしっかり考え抜こう」
「よ~し、年齢やファッションもしっかり決めたし、これで攻と受のラブラブシーンに……」
「待て待て、次はサブキャラクターを設定するのだ」
「あっ、……忘れてた」
「世界は攻・受2人で回ってるんじゃないぞ……。魅力的なサブキャラクターを出せれば、作品がもっともっと面白くなるのだ!」



ナルヨ、主人公が決まる……!? 画:赤根 晴




とっても魅力的な受キャラ(?)が誕生したナルヨちゃん。。。
次回は、サブキャラクターの作り方です。
あなたもナルヨちゃんといっしょにBL小説家目指して、B-PRINCE文庫新人大賞にレッツチャレンジ!

次回更新予定日:6月18日

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