<前回までのあらすじ>
ひょんなことから、「BL荘」に迷い込んでしまったBL小説家志望のナルヨちゃん。
そこで、黒いマントをかぶったナゾの管理人と出会う。
管理人いわく、BL荘から出るためには、6つの部屋にある鍵を集めなければいけない。
さらに、それぞれの部屋にはBL小説の真髄が詰まっていて、そのすべてを己のものにすれば、今をトキメクBL小説家になるのも夢ではないらしいのだけど……?
「「キャラクターに関わるジャンル」「ストーリーに関わるジャンル」「受・攻のキャラクター設定」をほぼ同時に考えていくのが、BL小説の特徴ってことだけど、すごい難しいなぁ」
「そうだな。ジャンルを決めるときに迷ったら、以下の2つのどちらに自分があてはまるか考えてみるとよいぞ」
あなたはどっち?
■書きたいジャンルがすでにある
『サラリーマンもの』が書きたい! など、すでに書きたいジャンルのイメージがある。
その場合、ジャンルに合わせてキャラクターやストーリーを考えることになる。
たとえば、「サラリーマンもの」を書くと決め、それに合うよう主人公の職業を「サラリーマン」に設定し、作品の舞台を「会社」にして物語の展開を考えていく、という流れだ。
■書きたいキャラクターがすでにある
頭脳明晰でクールな主人公が書きたい! など、すでに書きたいキャラクターのイメージがある。
その場合、キャラクターに合わせてジャンルを設定することになる。
たとえば、「頭脳明晰でクール」な主人公の特徴を生かせる設定として、職業を「弁護士」とし、「事件」が起こる展開を考えていく、という流れだ。
BL小説が「恋愛感情をメインに描く小説」であるということはたしかだ。
しかし、キャラクターたちがどんな生活を送り、どんな出来事が起こり、なぜ相手を好きになっていくのかを丁寧に描かなければ、小説自体が薄っぺらで説得力のないものになってしまう。そうなれば、いくら恋愛シーンに力を入れても、魅力のない作品にしかならない。
いきいきとした魅力あふれる小説にするには、作者がどれだけキャラクターたちの生きている世界を理解して書くかが重要なのだ。
「なるほど。前回でも言われたけど、作品世界をよりいきいきと描写できるよう、自分の足で取材したほうがいいっていうのは、そういうことにもつながるのか」
「そうだ。ただし、リアリティをもたせることと、実世界の事実をそのまま書くことは違うので気をつけるのだ」
BL小説はあくまでフィクション。調べた内容をそのまま小説に書かないようにすることは、最低限のルール。
会社名や個人名などの固有名詞を安易に使ったり、実際の事件や事故をそのまま書いたりしてはいけない。書き方によっては関係者の名誉を傷つけたり、著作権や肖像権に触れたりするおそれがあるので注意が必要だ。
「調べたことを、ちゃんと自分の中で噛み砕いて、作品として作り上げなければならないのね」 「よし、そこまで理解できればまあいいだろう。「キャラクターに関わるジャンル」「ストーリーに関わるジャンル」そして「書く前の調査の仕方」がひととおり学べたようだから、約束の鍵を授けよう」
気がつくと、手のひらに銀色に輝く鍵が載っていた。
「いよいよお望みの扉が待っているぞ」
やった! ジャンルがマスターできたから、お次はキャラクターでしょう!
「今度こそ、『かっこいい男子キャラを作る』の扉を開けるんだから――!」
管理人を置き去りにして、ナルヨは勢いよく新たな扉に飛び込んでいった。
「待っててね――!!!!」 |