BLにハマったときの話は、以前号泣特集のときに書いたので(『水城せとなさんで号泣して放心して立ち直るまで』)、今回はハマリたてホヤホヤのときの話を、いろんな好奇心を胸にお酒を飲みに出かけたときの話を、しようと思う。
BLにハマる前は、ちょくちょく飲みに出かけてたんだけど、それも耐えて久しい。すっかり2次元世界に引きこもり中なのだ。
遅咲きで腐の世界へと足を踏み入れた私は、BLにハマって以来、リアルゲイな人に腐女子的好奇心を満たしてくれるような話を聞いてみたいと思っていた。
ゲイバーやオカマバーは、昔たまに遊んでたけど、BLにハマる前だったからいまいち興味がなくて、どんな話を耳にしても、右から左だったんだよね。
オカマのママさんに、「あらー、ひさしぶりねー。最近どう? 男でもできたの?」と聞かれて、「うーん、うん」と返事した。「ひさしぶりの理由は、2次元ホモにハマってるからです」とは言えない。
「なによ、その曖昧な返事は。どんな人なの?」と聞かれて、「2次元のホモ」とはやっぱり答えられず、「普通の人やでー」と返事した。
よし、リサーチだ!
私の目的は、リアルゲイの世界をリサーチすることにあるのだ!
まずは目の前にいる、このママの攻略からだ!
このママさんも、かつては女装などしておらず、新宿2丁目でウリセンボーイをやってた美少年(本人談)だったらしい。
ちなみに彼(彼女)はとくに女装がしたいわけではないらしい。同性愛者ではあるし、ネコ(受け)ではあるけれど、女になりたいわけではない。「女装のオネエ言葉のほうが水商売しやすい」という、業界の需要と供給に照らし合わせた極めて現実的な理由があるようだ。そのあたり、女になりたいオカマさんとはまったく違うらしい。
ところてんの話もこのママさんから聞いたような記憶がある。ところてんとは竿に触れずに射精することで、ママさんは過去に二回ところてん経験があると言ってた。二回が多いのか少ないのか、それすら分からない。BL世界ではところてんなんて日常茶飯事なんだけど。
「ママに聞きたいことがあるんやけど」と私。
「なーに?」
「えーと、お尻でエッチするのって、気持ちいいん?」(恥ずかしがったらいけないと思って、わざとずばり聞いた。さあ、以前聞いたところてん経験談みたいな話をばりばり語ってくれ!)
「なにアンタ、どうしたのー? 新しい彼氏がアナルセックスしたがるの?」
「ち…ちが…いや…うん、実はそうやねん…」
「ふーん(ニヤニヤ)。やめといたら? 気持ちよくないと思うわよ」
「でもさ、前立腺があるんやんね?」
「女にはないわよ」
「それは知ってるけど…男にはあるやんね?」
「アタシにはあるけど、アンタにはないわよ、アハハ」
「私の話じゃなくて!」
ダメだ、架空の私の彼氏をアナルセックスフェチの変態にしたせいで、話が袋小路だ。
四苦八苦しながらアナルセックスの話を聞き出そうとしてたら、ママは、三つほど隣の席に座ってた女性を呼び寄せた。
「カナちゃんこっち来てー。この子の彼氏がアナルセックスしたがるんだって。相談に乗ってあげてよー」とママ。
ち、ちがう…!!
てゆかこの女性は誰だ。
ママは私たち二人を軽く引き合わせた。「カナちゃん(仮名)とむつこちゃん(仮名)。カナちゃんは、アナルセックス専門店で働いてたことがあるから、私に聞くより適任よ」
ひえー!!
「そうなんやー。むつこさんよろしくねっ」
「えへへ、よろしくねー。そうやねん、新しくできた彼氏がお尻でエッチしたがってて…でも私、怖くて。相談にのってやってください!」(ここで愛想よくノリノリな返事をしてしまう自分がヤダ)
で、出勤しなくても毎日毎日お風呂でほぐしてたとか(そうやって日々努力しとかないと、痛いそうだ)、痛みには個人差があって痛い人は慣らしても慣らしても痛いからやめちゃうとか(カナさんは「私はすぐに慣れた」らしい)、ここには書けないようなもっとスゴイ話とか、聞きたくもない話をたくさん聞いてしまった私。
や、カナさんは人懐こくて、話もかなり面白くて、これはこれで盛り上がって、ついでにカナさんの連れ二人も途中から話に加わってきて、ママさんはどっか行っちゃって、酔っぱらった女同士でワイワイ楽しく会話してたんだけどさ。
だけどさ。
チ、チガーウ!!
私が聞きたいのは、アナルセックス専門店で働いてた女性の話ではなく、前立腺のある人の話なんだ!
つーかリアルに痔だから、私がアナルセックスする確率なんてゼロだよゼロ!ウォシュレット万歳!
もはや私も後には引けず、架空の彼氏とのアナルセックス攻防戦を、必死になって捻り出してしまったじゃないか。
謎は深まるばかりだ。
昔、聞くともなく聞いてた話はあるんだけどさ。
ナマでやると、尿道からバイ菌が入るから尿道炎になりやすいとか。
お尻の穴を舐めると、食中毒みたいな症状になりやすいとか。
結局、腐女子魂にガツンと響く話などまったく聞けず、モヤモヤしたままでお店をあとにした。
とっかかりをアナルセックスの話にしたのが間違いだったのか…。
こうして好奇心いっぱいの初心者腐女子の第一回リアルゲイリサーチは、完全なる大失敗で終わってしまった。
収穫は、男×女のアナルセックスの知識。(役に立たねーよ(涙))
■後日談■
その後また遊びに行き、そのときに、恋バナやら、お客さんとのおもしろ話をも聞いたりして、面白かったには面白かったけど、その話はしない。
なぜなら、初心者腐女子から脱皮するなかで、リアルゲイに萌えを求めるのは完全に方向性を間違っているということに気づいたからだ。
3次元のリアルゲイの話は面白くても、そこには萌えを見つけにくいのだ。
まだ、道ゆく男子高校生がチャリに二人乗りしてるシーンのほうが、萌えを見つけられる。
私は腐女子だ。
2次元もしくは2.5次元(声優)に萌えを感じる、私は完全無欠の腐れ女なのだ。