chill chill ちるちる


初心者特集


新しくて懐かしい……恋のブログはいつもハイテンション!
キミログ 高将にぐん
評者:あけみさん
どこにでもいそうな中学二年生の高垣睦は、寝る前にインターネットに繋ぐことが日課になっていた。ある日、睦は同じクラスで近寄りがたい優等生の曽原淳が開設しているブログを偶然発見する。が、そこに書かれている文体は、普段の曽原とは全然ちがう弾けた文体で…
ブログが展開のキーとなる現代的な物語だけど、基本の世界観は甘酸っぱくはじける懐かし炭酸飲料系ストーリー。どうしてそこまでテンションあげられる?って現役中学生の恋の情熱にも思わずキュンキュンしちゃいます。
BLうんぬん関係なく最後まで一気に読みきれる快作。第58回花丸新人賞受賞作。

 BL初心者にオススメするなら、私は『キミログ』を大プッシュ。絡みはなくキス止まりのお話なので、BLを読み始めたばかりの方にも、抵抗なく読めるのではないかと思います。
「キミログ」 でも正直、本を手に取ってから登場人物が“中学生”だと知り、ショタ方面が苦手な私は「どうしよう」と思ったのですが、そんな心配は全くありませんでした。メインカップルが中学生だからこその、この展開だったんだろうと納得がいったからです。
 お話の雰囲気と登場人物が合致していて、また現役中学生のハイテンションさに引き込まれ、気が付いたら読み終わっていました。それほど面白く、夢中になってしまいました。本を読みながら声を出して笑った本は、これが初めてかもしれません。

 どこにでもいるような、ちょっとお勉強の苦手な中学2年生の睦は、ある日、いつものようにネットサーフィンをしていたら、自分のクラスで起こった心霊写真騒ぎのことが綴られたブログを発見してしまいます。管理人は“ソファラ”というHN。写真に足が写っていなかったのは、優等生の曽原。これらのことから、誰のブログかわかってしまった睦。で、遡って読んでみると、クラスに好きな子がいることもわかり、その好きな子というのが、どうやら自分じゃないかってことも。それから、曽原のことが気になり始めて……というお話。
 この曽原の綴るブログが、それはそれは面白いんです。実際、こんなブログがあれば、日参しちゃうだろうなぁ~と思えるほど。学校では生徒会長をしている優等生な曽原と、プライベートで大好きな睦のことをブログで語るときのテンションの高さとのギャップが、何とも可愛いんです。曽原は睦のことを「可愛い、可愛い」とブログの中で連呼していますが、私にとってはソファラも可愛くて仕方がありません。思わず頭をナデナデしてあげたくなるほどです。
 でも、ブログでしか好きだと言わない(言えない)曽原は、ちょっとヘタレ?

 さて睦の方ですが、小さくて見た目も可愛いんですが、性格はそうではありません。

一緒に行動することが増えるたび、だんだんとふたりの間が近くなっていくんですが、曽原の母が再婚することになり、再婚後はアメリカで住むことになることをブログで読み、ショックを受ける睦。自分の気持ちに嘘がつけなくなった睦は、自分から曽原のところに出向き告白します。
 曽原は自分の想いを外に出す場にブログを選びましたが、睦は直接行動を取ります。可愛らしい睦の方が、男前かもしれません。

 ここ何年かで、私たちを取り囲む環境が激変しました。特に、携帯電話を始めとするネット環境は、子どもたちをも巻き込んで、良くも悪くもすごいことになっています。ニュース等々では悪いことしか聞こえてきませんが、どう上手く付き合っていくか(付き合わせるか)も、大事なことだなぁと実感しています。
 私たちの日常と切っても切り離せなくなった感のある“ブログ”という媒体を、非常に上手く取り込み、言葉や行動では表すことが出来ない曽原の気持ちを、ブログを使って、しかもどれほど睦のことを好きなのかをテンション高く書き綴っていることが新鮮で、こんな愛情表現の仕方もあるんだなぁ~と思わされました。
 おまけに、睦のことを書いた記事の後には、読みに来た人たちからの応援コメントも書き入れられているので、非常にリアルなブログに仕上がってるんです。

 また、中学生の日常生活や学校生活を通じて、ふたりがどんな風に惹かれ合っていくのかが書かれているので、どこを読んでも私たちがよく知っている行事だったり、こんな体験したことあるよねと懐かしく思い出したり出来るので、余計に楽しく読めるのかもしれません。
 まさに「ファーストキスはレモンの味」みたいな甘酸っぱい初恋物語を読んでいるようで、微笑ましくてまぶしかったです。

 作者の高将さんのサイトで、10年後のふたりのSSが読めます。でも、それ以上は書かないとおっしゃっているのが残念でなりません。出来たら大人になったふたりが、どんな風に成長し、愛を育んでいっているのか読んでみたかったです。

作品データ
作 品 名 : キミログ
著者 : 高将にぐん イラスト : 室木チカ
媒   体 : 小説 シリーズ : 花丸文庫(小説・白泉社)
出 版 社 : 白泉社 ISBN : 9784592875413
出 版 日 : 2007/12 価   格 : ¥559
紹介者プロフィール
あけみ
周りには腐女子だとカミングアウトしていませんが、
そろそろ家族にはばれているんじゃないか?と、
戦々恐々とした毎日を送っています。
それでも、BL中心の生活から逃れられるのは
まだまだ先のようです。
このコラムに寄せられた感想
2011年03月07日 ねずみ
私もです・・・
私もはらはらとした生活をおくっています~
母には薄々ばれていますが目をつぶってくれているみたいです!
私は友人にばれたら開き直って薦めてています笑
わたしもBL中心の生活から抜け出せる目処は当分ないです~~!



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