今回のお題は「ファンタジー」です。 ひとくちにファンタジーと言ってもいろいろありますが、総じて私は「ファンタジー系」は大好き。 しかしどちらかといえば現代に人外が紛れ込むよりも、過去の時代モノや欧風の騎士、オカルト風など、現実とは離れた異世界を舞台にしたものの方がより好みです。 好きなお話はたくさんあるんですがいざ紹介しようと思うと、たくさんあり過ぎて非常に迷ってしまいました。 一番どっぷりハマっているのは椹野道流さんの某シリーズなのですが、内容はともかく巻数が多すぎて、いくら初刊から手に入ると言ってもこれでは敷居が高すぎます(笑)。 なので「これは意外に泣けました」という、お気に入りのひとつを今回はご紹介しようと思います。 吉田珠姫さん「恋獄の獣に愛されて」(ガッシュ文庫)です。 こちらは異世界が舞台の人外ファンタジー。 攻めのソードは「鬼」、受けは高校生、あさぎ・18歳です。 幼い頃偶然異世界への扉を開けてしまったあさぎは闇の奥に異形の者たちに襲われる赤い髪の少年を見つけます。驚いたあさぎは家から日本刀を持ち出し、少年にそれを投げ渡し、叫びます。 「それでたたかって!『ソード』だよ、わかる?」 それが二人の出会い。 そして12年後、あさぎは再び異世界への扉を開けてしまい、向こう側へ落ちてしまうのです。 5人家族の長男であるあさぎは、長兄だということで我慢を強いられ家族の中でその存在はとても薄いものでした。 学校でも優等生だ、まじめだと先生や友人から言われ生徒会長をしていますが、それは名を変えた雑用係。あさぎには、本当の友人は一人もいません。 辛く、爆発しそうな気持ちをそれでも隠して人を不快にしないように、困らせないようにと振舞っているあさぎ。 実はこのエピソードだけで泣きそうです。 異世界に落ち異形の鬼たちに襲われそうになったあさぎを助けてくれたのは、赤い髪を腰の辺りまで伸ばした2m近い身長の筋骨たくましい男。 彼は12年前に出会った少年の成長した姿です。。 彼は自分を「ソード」と名乗ります。あさぎが叫んだ言葉を自分の名とし、腰にはあさぎが渡した日本刀を下げていました。 武器を貰い、名を与えられた男は異世界であさぎのいる世界を守るため闘う「鬼王」となっていました。二つの世界は隣り合っていて、あさぎの世界の乱れによって二世界を隔てる壁が薄くなり、餓鬼や魔物が向こう側へ流れこもうとしているんです。 ソードはあさぎを元の世界に返そうとします。 しかしあさぎは彼といるうちに、彼に恋をしていることに気づきます。 地獄のような異世界で、あさぎは初めて、自分を大事に思ってくれる人がいるという経験をしたわけですから。 あさぎに居場所のない世界を捨てソードと共に生きたいと願わせてしまうほどひどい家族の心無さに結構本気で腹が立ってしまいます。 だからこそ痛いほどわかる、あさぎが異世界で愛する人と暮したいと願う気持ちと、あさぎを愛するからこそ身を守るため元の世界に返そうとするソードのすれ違いが、結構本気で胸に迫ります。 なまじっかな現代BLよりよほど泣けますよ(笑) そして「Hの方はどうなるの?」というところも捨てておけません(笑) なんせ2mの鬼ですから。 人間の匂いは鬼にとってとても欲情を喚起するようです。 あさぎの匂いはソードを狂わせようとします。 しかし必死で我慢するソード。個人的にここは萌えポイントです(笑) 理性と欲望の狭間で狂いそうになる姿って、人間のように取り繕ったりできない分、余計にあさぎへの強い愛情が感じられます。 このお話の結末は「エピローグ」で、あさぎの弟妹の視点で語られます。 ハッピーエンドではありますが、詳しい経緯は実はわからない。 しかしそれでは物足りないという声があったのかどうか、続編「恋獄の獣との愛の日々」が出ており、そちらも読めばバッチリ。 こちらは始終ラブラブ感漂ってます。 一押しは、鬼のソードの男らしさ。 草食男子には絶対ない、「究極の野生」を持つソードに、よろしかったら萌えてみませんか?