Sakura0904さんのマイページ

神作品

女性Sakura0904さん

レビュー数19

ポイント数153

今年度23位

通算--位

  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

偏見のない人なんていない。せめて思考停止しないことが誠意

 いや〜、潤いました。恋愛の楽しさを教えてくれる良質な作品がまた1つ増えて嬉しいです。40歳間近の上司、十条。下の名前が雀で、部屋には雀のグッズがいっぱい。部屋着まで着ぐるみなのは最初はちょっとあざと過ぎかなぁとも思いましたが、可愛いもの好きなおじさんも、干物や焼酎が好きな女子も、各々の好きなものが否定されない世の中であって欲しいから、そこにどうこう言うのはナンセンスだなと思い直しました。

 節目の歳が目前に迫ってくると、なぜか焦ってしまうものですよね。海外ではどうなんでしょう。年齢を気にする日本人に染みついたものなのかな。本当は39も40も数字以外はきっと変わらない。29歳の慶司の行動力に十条は圧倒されてばかりだったけれど、体力以外は何も劣らないはずなんです。食べたいものを食べ、好きなものに囲まれ、一緒に過ごしたい人と過ごして欲しい。その権利は何歳になっても持っていて、誰にも奪えないもの。一途で自分のやりたいことに真っ直ぐな慶司にこれからも十条が良い刺激をもらえるといいなと願います。

好きな人といるために必要なこと

 本当に良い作品を読んだなぁ、というのが第一の感想。仁科と矢井場というメイン2人に対しての児島先生の理解がとてもしっかりしていて、どのシーンでも2人の気持ちに共感できました。私自身はどちらかというと仁科タイプで、周りを気にせずどんな場面でもありのままの自分を保っていたい性格なのですが。それってもちろんその人自身が強いという場合もあるだろうけど、今まで接してきた家族や友人に理解があったり、自分が見てきた人に自由な人がいたりと、たまたま環境に恵まれていたという場合もあると思うんです。

 田舎で育って、別に悪気はないけれど同性愛者の存在などそもそも頭にない家族と過ごしてきた矢井場。初めての都会で初めて彼氏ができ、周りにゲイの友人もいない中、初めてのお付き合いをする。仁科もけっして経験豊富な人ではないけれど、矢井場は彼以上に、いろんな状況で何をどうしたらいいのか分からなかったと思います。家族と良好な関係だからこそ、自分の好きな人のことでその関係が拗れることはあまりに辛い。友人や家族への紹介というデリケートな場面で、心の準備をする間もなく仁科に行動され、焦り、怒る彼の気持ちも理解の余地は多分にありました。徳島まで訪れた仁科を怒鳴った矢井場の台詞。相手を好きだから故の行動でも、一方的であれば良いこととは限らないのだと、刺さりました。

 そして、そんな言葉を静かに受け止め、いつまでも待つと決めた仁科に、上巻の冒頭からこんなにも矢井場への気持ちが大きくなっていたんだなぁと胸が熱くなりました。仁科が進んでいて、矢井場が遅れているとか、覚悟の決まった人となかなか決められない人とか、そういうことではないんだと思います。好きな人とこれからも生きていくために、相手の立っている場所に寄り添ってみること。きっとどんなカップルにも必要なことですね。萌えや濡れ場の濃さと、リアルで繊細なストーリーが上手く絡み合っていて、何を求めて読んでも満足できる作品だと思います。

10年分の不安と愛に改めて向き合って

 可愛い! エッチ! 切ない! 尊い! どれもが最大限に詰まった素晴らしい作品でした。受けが10年前の自分と入れ替わるというファンタジーな要素を含んでいますが、ストーリー展開はあくまで2人の現実に寄り添ったもの。セックスレスまではいかないけれど、長く一緒にい過ぎてお互いの素も知り尽くし、羞恥心も何もなくなったからこそ、今更セックスでどう反応していいか分からないという桔平。何年も連れ添うカップルや夫婦が必ず通る道だと思います。

 今の桔平は10年前の圭太と会って、今の圭太がどれほど自分を知ろうとしてくれていたか、好意を真っ直ぐ伝えていてくれたかを知る。そして、いつも自分のことを何でも受け入れてくれる穏やかな彼の、心の内に巣食っている深い孤独と不安も。10年共にいても、こうして相手の一番肝心なところを知らないってこともあるんだなぁと。でも、それを聞いて教えてくれなかったことが寂しい、悲しいと自分の気持ち優先になるのではなく、圭太の同情されたくなかった気持ち、自分と対等に何の気兼ねもなく一緒にいて欲しかった気持ちを尊重して、現代に還ってから今までもらった愛を返すように前向きに圭太に向き合った桔平に、とても温かな気持ちになれました。相手が嬉しいと自分も嬉しいと思えるようなセックス、まさに理想ですね。

桐島LOVE

 週末たまたまファインダーシリーズを読み返していて、やっぱり麻見×秋仁は最高だなぁと思っていたところ、最新巻が出ていることを知り喜び勇んで買いました。前巻の衝撃ラストにここからどうなるの!?とワクワクでしたが、秋仁を拉致した輩は想像以上に悪質なようで…。あとがきにもあるように、今まではなんだかんだピンチから元気に生還してきた秋仁も、記憶を失い洗脳されていてはそれどころではなく。それでも彼の前では変わらず接し続ける麻見に切なさと同時に無償の愛の深さを感じて萌えたり、忙しい巻でした。

 薬を使った強力な洗脳といえど、たった数ヶ月では麻見と過ごした濃厚な日々の記憶をすべて奪うことなどできない。1巻からずっとマフィアの蔓延る裏社会で麻見と共に生き延びてきた秋仁です。麻見といると、ふとした時に自分の内側から抑えきれない彼への想いが滲み出てくる。そんな秋仁を見ていると、麻見と同様、ああどれほどの時間がかかっても、元の彼が戻るまで待ち続けよう、と思えます。

 何度レイプや拉致監禁されても麻見を信じてへこたれず、敵と味方を簡単に二分せず必ず自分の目で相手を見極め、仕事と私生活、表社会と裏社会の間で葛藤しながら自分らしい生き方を掴もうとする、そんな秋仁を麻見も飛龍も愛しているのだと思っています。記憶を取り戻した時、自分が麻見に銃やナイフを向けたことも思い出したらどんなに秋仁が辛いかだけは不安だけれど。麻見はきっと時間をかけて彼の傷を癒してくれるでしょう。たくさんの人が待っているから、早く大切な人たちを思い出せますよう。

もう手を離さないで

 たくさんのカップルを登場させてきたこのシリーズを、全集としてどのように纏められるのかドキドキでしたが、最後を飾るに相応しい収録の数々だったと思います。高宮と蒼江が時折口にしていた史貴という男の生涯。高宮と2人3脚で耐え難い孤独の中を必死に生き抜き、高宮と蒼江を結び付け、今まで持ち得なかった関係を蒼江と築こうとしていた史貴。そんな彼に本当に予想外のところから呆気なく最期が訪れて。

 高宮も蒼江も年齢以上に大人びて感じたのは、2人がこんな唐突過ぎる死を経験したからなのかなとも思いました。後悔するなと言われても、蒼江が後悔しない日などなかったでしょう。高宮も自らの半身を失うような思いをしたはずだけど、そんな蒼江を前にしてはその辛さをぶつけることもできなかったでしょうね。

 そして、年月を経て、一足先に高宮が真っ直ぐに自分に向かってくる和泉に出会い、幸せを掴んだ彼に後押しされる形で、蒼江も自分を一心に慕う年の離れた直也を求められるようになった。2人が思いきれたのは過去の経験があってこそでしょうから、史貴の存在も今の幸せに生きているのだと思います。直也に大人げなく積極的に迫る蒼江を見て、萌えると同時にそこまで本気の恋ができるようになったことを嬉しくも感じたり。そんな蒼江の熱愛を受けて、色っぽく美しく成長していく直也からますます目が離せなくなりました。

 最後に収録されていたのは『LOVE MODE』シリーズとは交わらない作品である『レシピ』。この作品の攻めであるカイヤの性格、攻め方がドンピシャで好みでした。単なるドS、腹黒ではなく、受けである洸にはあくまで穏やかな口調で、年上らしく諭すように接していながら、その実、裏では洸の方から己の手に堕ちてくるように周到に策を講じている男。腹黒攻めはたくさん見かけても、それを受けに気取らせない攻め、あえて自分の風評を落としたり受けを放置したりするところまで思い切れる攻めは案外少ないので、志水先生の美麗なタッチで読めて大歓喜してしまいました。もっと読みたいカップルです。

愛に奔走する男たち

 序盤では新しくカップルが登場しましたね。凛の黒髪和服のビジュアルと、お淑やかそうな見た目に反してすぐ手も出る気の強さがとても好みでした。元来プレイボーイだろうに、凛には振り回されてばかりのイアンには同情してしまいます。下手に出てくれていても、あくまで客であるイアンの方が立場が上だという陣内の台詞は尤もです。が、ホストと客という立場を越えて考えているからこその凛の態度は、イアンにとっても悪くはないでしょう。また、2人の楽しい攻防が見たいです。

 陣内というまったく喰えなそうな男を必死で追いかける香月も最高でした。軟派でバリタチそうな彼が、段々健気な思考になっていく過程に萌えますね。陣内には今後もたっぷり可愛がってあげて欲しいです。お目当ての蒼江と直也については、3巻まで本当に波乱ばかりだったので、この巻でやっと何も危険なことが起きない甘いだけの日常を見せてくれて大満足でした。蒼江によって恋人に愛される幸せを知ったのはもちろん、蒼江の兄である葵一も直也を可愛がってくれるので、直也が家族の和にいるような幸せも味わえているところが尊いなぁと思います。年の離れた弟に接するように楽しそうな葵一を見ていると、こちらも嬉しくなります。蒼江家でたくさん大事にしてもらって欲しいですね。

いずみは髪を切った方が好き

 いずみは1巻では直也を危険な目に遭わせたようなキャラなので、メインになったらどう印象が変わるか楽しみにしていました。結論から言うと、正直もっと女々しいキャラかと想像していたのですが、案外そういう面は少なく、ただただ起きることを淡々と受け入れていくようなキャラでイメージが変わりました。もちろんそれは、彼の経験に基づいた諦念から来るところも大きいのだけど。そういう彼には、とにかく穏やかに構い倒してくれるような嵐のような人間がぴったりでしょうね。年下であることをほとんど感じさせない大きな器を持ち、いろんなことを経験してできた今のいずみを真に好きでいてくれていることがよく分かる、本当に気持ちのいい攻めでした。

 後半は今のところ最も好きなカップルの、蒼江と直也の話もたっぷりで大満足でした。執着攻めや傲慢受けが大好物な私ですが、志水先生作品では『花鳥風月』の陽明×火弦のように、大人な攻めに拾われて懐く健気受けという組み合わせになぜか惹かれてしまうようです。小説だと珍しくないかもしれませんが、こういうカップルって案外漫画では少ないからかもしれません。普段は滅多に甘い顔を見せないものの、直也を常に案じていることが分かる蒼江のちょっとした言動や、彼にどんどん心酔していく直也のいじらしさに萌えました。この巻でさらに辛い目に遭った直也。でも、今は彼には蒼江がいますから、今までと違った健全な乗り越え方ができるだろうと思います。

性欲もまた情なのだ

◆痛い靴
 その後の2人がとても気になった作品。サイズの合わない女性用の靴に無理矢理足を入れさせられ、窮屈に縮こまって悲鳴を上げる日高の足。男性にハイヒールを履かせて美脚を愛でるというシチュエーションはさほど目新しいものではないかと思いますが、久我はその靴擦れによってできた皮むけ、傷に色気を感じるという。最初は偏執的に感じたけれど、読み進めるうちになんとなく理解できてしまったり。日高がどんなに痛がっていても脱がせず、その痛がる様、泣き言を漏らして自分に縋り付く様、心底嫌なら投げ出してもいいのに、相手に従順な自分に倒錯した悦びを感じている様を愛でる、徹底された久我のサディズムの描写が素晴らしかったです。

◆クリスタル
 黒髪眼鏡でスーツをきっちり着込んだお堅い年上秘書に失禁させる、背徳。相手が普段隙を見せない人であればあるほど、恥ずかしいことをさせた時に興奮するのは人間の性で、そんな作品は山ほどあるわけですが。ただのギャップ萌えでは終わらせない榎田先生の構成力がまた素晴らしい。芳原が溲瓶扱いしてしまった花瓶の送り主を知って、真摯な愛が汚された悲痛さに切なくなったり。気持ちが通じてからは一転して年上の色気で篤樹を翻弄する芳原に、くらくらさせられたり。最近初めて「攻めフェラが地雷な人がいる」というのを知りましたが、自分は地雷じゃなくて心底良かったと思いました。自ら攻めの口に性器を運んで、美味しいでしょ?と言わんばかりにしゃぶってもらい、口内で射精する受けのエロさを堪能させてもらいました。

◆書生の戀
 ここまですべて文句なくエロエロでしたが、最後に昭和の文通恋愛を持ってきてさっぱりした後味に仕上げているのも粋ですね。もちろん、まったく色がないわけではなく、作家先生を一途に慕う学生の劣情がところどころに感じられます。紙切れ一枚で生死を左右する場所に問答無用で飛ばされるしかなかった時代。それまでお互い相手の反応を気にしながらのやりとりだったのに、最後に学生が先生に宛てた手紙には遠慮も嘘もない、彼の魂の叫びが書き殴られていたことに胸を打たれました。月並みですが、定期的にこういう作品を読んで、生きることの尊さ、歓びを噛み締めたいと思っています。

宙を見つめるてっちゃんの瞳が好き

 最終巻を読んで、やはり木下先生の繊細な心情描写が好きだなぁと感じました。シリアスな雰囲気ではあるけれど、どこかにずっと仄かな甘さが漂っていて、終始湿っぽい雰囲気ではないんですよね。穏やかに、リアルな展開が続いていく。2度目の別れを経て偶然の再会を果たした2人は、お互いに今度はどういう風に相手に接するべきか悩みます。ずるずると曖昧な関係を続けていくくらいなら、拒絶し綺麗さっぱり忘れて新しい一歩を踏み出そうと考えるてっちゃん。真っ直ぐ想いを伝えてくれていたてっちゃんに、今度は自分から積極的に行動して簡単には諦めないようにしようとする宙。

 最初はお互いの方向性がずれていてすれ違ってしまいますが、やはりこの2人は出会えば相手に惹き付けられる運命のようですね。彼女がいても、相手のことはけっして忘れられない。離れていた期間で、宙はすっかり自立し、てっちゃんは宙の自立心を受け入れる心の余裕が少しはできていて。自分の駄目だった所、相手と一緒にいるのに必要なことを、きっとお互い何度も考えただろうと思います。2人にとっては必要な時間だったのでしょう。恋人として、穏やかな愛も性的な愛もようやく噛み合って、どの面でもどちらかがどちらかに寄りかかっているのではない関係性になれたことが嬉しかったです。てっちゃんにしてもらうのが好き、と言った宙が本当に可愛かった。これからは安定した甘い生活が築けそうですね。

己がブレないさち子も好き

 最後の最後まで腐敗した空気を緩めることなく、1巻から続く重苦しさを保ったまま描き切ってくださった先生には大感謝です。序盤で病んでいても、あっさりした結末を迎えたり狂人キャラの皮が剥がれたりして拍子抜けしてしまうような作品が多い中、各々の抱える負の感情が簡単に昇華されるのではなく、その人の中にわだかまり続けて激しい未練を残している描き方に非常に魅せられました。

 典彦という檻を求め、その檻の中で暮らせないなら生きていても仕方ないと思うまでこの世に生きる価値を見出せなかった育郎。空虚な心を抱え始めていた時分に与えられ、己を慕うようになった育郎に妄執を注ぐことでようやく悦びを感じられた典彦。常識人としての仮面を捨てられなかった飯田。弟を人並みに可愛がる間もなく壊され、それでも兄という自分の役割を果たしたいという想いを持ち続けていた蘭蔵。當間という1つの腐った家の中で、歪な形で大人になった者達が歪なまま足掻き、掴み取った結末。最終的には蘭蔵も、育郎も典彦も、得たいと思った人を得たのですから、私にとってはハッピーエンドでした。その人がいるから生きていたいという理由は、愛でも、単なる執着でも、生き甲斐でも何でも構わないと思っています。