うーん、私自身は恋をするのに年齢差は関係ないという考えなはずなのですが、なぜかこの作品の2人にはその障壁が大きいように感じてしまって、あまり萌えられませんでした。何が引っかかるのか自分でもはっきりと分からないのだけど。はじめが恋するのはまだ理解の余地があるのですが、それに引きずられてヒロセもすんなり、という所が違和感あるのかな。
なんというか、精神的な繋がりを強く感じている関係性だと思うので、体の関係にまで発展しない方がもっと自然に読めた気がします。最終的にそこに行き着くとしても、それはもっと先で良かったかも。親友且つ同僚の存在を背負いながら、大企業からの圧力を感じながら、落ち着かない生活をしながら、ずっと年下の同性に恋をしてその身体に欲情できるほどの心の余地や変遷があるとは思えないというか。父親に話をつけにいく覚悟や行動力はすごいと思いましたが、そこで許す父親もなんだかリアルじゃないなぁと。共犯者という関係は魅力的でしたが、個人的にすんなり飲み込めない点のある作品でした。
ストーリーを完全に無視すれば、2人のビジュアルも好みですし、濡れ場も可愛らしくて萌えられたと思います。が、最初がレイプから始まるので、それが残りのすべてに響いてきて、普通なら可愛いと感じられそうなシーンも「でもレイプから始まったんだよな……」というのが頭をよぎり、萌えられず。一応最後に大杉が初日をやり直すシーンがあるのですが、相変わらずへらへらしていて本気で反省しているようにも見えませんでした。軽いラブコメとはいえ、初対面でノンケの同性(しかも年下)を無理矢理襲ってまったく悪びれない先輩は嫌ですね。もっと厳密に言えば、レイプ始まりなのにトントン拍子に2人の距離が縮んでいく流れに違和感を感じるのだと思います。
同じ大学の先輩と後輩で、たまたまアパートの部屋が隣同士なことを知る。導入ではそれなりに期待も膨らみましたが、読み終わってみるとあまりにもさらさらと流れるような物語で、良くも悪くも引っかかる部分が何もなかったなという印象が残りました。後半の2人のやりとりは少女漫画でもこんなに初心で可愛らしくはならないんじゃ?と思うほどピュア。
難しいことは何も考えずに攻めも受けもただ良い人で安心できる作品が読みたい、という気分の時にはいいと思いますが、表層しかなぞっていない感じがしてあまり心に残るものがありませんでした。私自身はけっして激しさや濃さばかり求めているわけではなく、濡れ場もないほのぼの系作品の中にもお気に入りはたくさんあります。そういう作品は要所要所でリアルさが追求されているというか、作者さんの人間観察力とそれを描き出す力に唸らされることが多い気がして。この作品からはそういうものを感じませんでした。
武田と長内の関係性は独特で、過去のトラブルのこともあって糖度が高いシーンはあまりなく、時折互いの好意を感じてもすぐにまた冷え切ってしまうのではないかという不安が付きまとうようなものでした。幼い頃、武田が嫉妬心から咄嗟に言った悪口を許してくれた長内。確かにこの歳でそれを許せる器を持っていることはすごいけれど、武田もすぐ後悔していたわけですし、大きくなってほぼ恋人のように過ごしていた蜜月を突然裏切ってその後連絡もしない行為とはトントンにはならないだろう、というのが私の感覚です。ただ、被害者は武田ですから、彼が許せてそんな長内にまだ好意もあるというのなら、惚れた者の弱みで仕方ないんだろうなぁとも思います。私には2人の関係性に萌えが見出せませんでした。
ストーリーはそこまで悪くはなかったのですが、如何せん新人である太鳳の幼さというか、初心過ぎる少女のようなリアクションが萌えを削ぎ落としてくるのでハマれない結果となってしまいました。推しや憧れの人に対してこういう態度の女子って確かにリアルにもいるんですけど、そういう自分の相手への気持ちや相手の理想的な部分ばかり本人の前で並べ立てるだけの人が少し苦手で。
本来の自分とかけ離れたもの、実はあまり大切にしていない部分を褒められても嬉しくないと思うんですよね。本人がいない所でならいくらでも言っていいと思いますが。太鳳が最後までそんな態度だったので、どうしてもチカの前にずっと壁が立てられているような気がしてしまいました。