みみみ。さんのマイページ

神作品

女性みみみ。さん

レビュー数0

ポイント数13

今年度154位

通算--位

  • 神0
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0
  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

変わったもの。変わらないもの。

待ち遠しかった8巻!
7巻と対のカバーデザインが素敵で目を惹きます。
最初ではなく、ここで急に対の表紙を出してくるなんてズルすぎませんか?
中身のストーリーも7巻のアンサーのように感じられ、延いては「矢代」というキャラクターの変化が幾らか垣間見えた気がする巻だったなと思います。
5巻で訪れた百目鬼の転換点からじっと待ち続けること約5年、ついに兆しが見え始めたかと心ざわつかせながら読み終えました。
この1冊から読み取れることがあまりにも色々あって、伏線掘り起こしのために1巻から再読したくなること必至です。

私は本作をBLというより矢代の物語として読んでいる節があって、百目鬼と出会ったことで矢代という矛盾で溢れたキャラクターがどんなふうに変わっていくのかが丁寧に描かれていくストーリーを矢代の人物像を少しずつ紐解いていく気持ちで面白く感じながら読んでいます。
今回、矢代が思いもよらないワードをとても自然に口にしたことに何よりも驚かされました。
とはいえ、読者としてはああやっぱりなという気持ち。
ああいう行為を心のどこかではそう感じつつも自分を「ドM」で「淫乱」というカテゴリーに入れることで心を誤魔化して生きてきたんだろうなとストンと落ちる発言でした。
そしてそれはきっとこれまで読者向けに描かれてなかっただけで、矢代本人は心の中できっと普通に使っていたワードなんだろうな、とも。だからあんなふうに自然にモノローグに出てきたんだろうな。
同じシーンで明かされるとある事実も矢代に確実に変化が起きたことを教えてくれます。
こちらもああやっぱりかという気持ち。
5巻のレビューに「きっともう矢代は今までのようなエッチは出来ないだろうなぁ。」と書いたのですが、その結果を5年越しに答え合わせ出来た気分です。
だって矢代の本質は「漂えど沈ます、されど鳴きもせす」に最初から描かれているんですもの。
人は変わるけど、変わらない。変わらないけど、変われる。
私はそんなふうに思っています。

他にも色々と矢代の発言やモノローグに矢代の変化を思わされるものが続きます。
だけどそのことに矢代本人は多分まだ半分くらいしか気付いていないであろうもどかしさ。
百目鬼に至っては全く気付かず、矢代は変わっていないと思っているもどかしさ。
それゆえに起こり、起こるたびにどんどんとこじれていく、出口の見えない2人のすれ違い。
トライアンドエラーのように繰り返されるすれ違いに今回もダメか、今回もダメかと何度も打ちのめされて読んでいる間本当に辛かったです。
百目鬼がいまだに1巻で矢代から言われたことを引きずって優しい普通のセックスをしてはいけないと思っているところが何よりも切ない。
矢代(の身体)は「優しく普通に愛してほしい」とあんなにも全身で訴えているのに……!泣
矢代は4年間一体どれほどの行き詰まりと絶望を心のうちに溜め込んで生きてきたんだろうね。。。
齧られて転がった林檎が象徴するものは「知ってしまった愛の味」でしょうか。
井波ってクソ野郎だけどさすが刑事、案外矢代のことをよく見てるんだなと思いました。

はぁ、、、8巻も読み終わってしまった。
またじっと待ちます。

キリキリとした空気感が続くなか、七原と杉本の麻雀シーン唯一和みました。笑
杉本が生意気になってる〜笑笑笑

BLCD初主演同士のお二人が丁寧に演じてくださっている良作

去年リミット全3巻が一気に音声化された時に目に止まって、試しにこの1作目を聴いてみたらめちゃくちゃ良くて、速攻で全作揃えました。
ゆっくりと進むストーリー重視の原作の良さを損なわない丁寧な作りで最新巻まで続いている貴重な良作長編CDだと思います。
クレジットを確認すると、脚本も音響チームも途中で変わることなくずっと同じ方々が作ってくださっているようですね。

本作について私が真っ先に推しておきたいのは、主演お二人の初々しさが原作の雰囲気にとてもマッチしているところ。
BL出演にこなれている声優さんではなく、若手の声優さんが不慣れながらも丁寧に演じてくださっているのが逆に功を奏していると感じます。
リミット1の特典トークCDによると本作の収録は2015年で、榎木さんも古川さんもBLCDで初めてメインを演じたのが本作だったとのこと。
「声がすげー若い」「溢れ出る新鮮さ」「爽やかな成分があった」などの感想が出ていましたが、そんな7年前のお二人だからこそ作り出せているピュアな空気感がすごく原作にハマっていて素敵です。
2022年現在のお二人の声やお芝居のイメージで聞くと結構ビックリします。

CDを聴くようになってから目で読む良さとは違った良さに気付くことが多いのですが、本作は難聴の航平の世界が分かりやすく表現されていて、航平が感じているストレスや、太一を“ひだまり”と感じる気持ちが原作以上にしっかりと伝わってきました。
途切れ途切れの聴き取りにくい声が飛び交う世界にハッキリと聴き取れる声が側にある安心感と、太一の根っからの太陽のような性格にどれほど心が溶かされ、あたたかい気持ちをもらえるか、耳から聞くとより一層説得力がありました。
そして、第4話で航平が言う「好きだよ」の声にこもったなんとも言えない切なさ。
あぁこんなふうに言ったのか、と。
恋愛の好きなのかそうじゃないのかなんてもうどっちでもいいじゃんて思ってしまうくらい、純粋で、切なくて、グッとくるワンシーンでした。


本シリーズは、
「ひだまりが聴こえる -幸福論-」
「ひだまりが聴こえる -リミット- 1」
「ひだまりが聴こえる -リミット- 2」
「ひだまりが聴こえる -リミット- 3」
と続きます。
現時点でCDになっているのはここまでですが、原作はまださらに続いているのでCDも続いてくれるといいなと思います。


それにしても古川さんの声が高い。
トークCDの地声からしてもう今と全然違いますね。

遥か遠き家 コミック

八田てき 

このラストがハッピーエンドであってたまるか!

BLアワード2022の受賞作品から真っ先に買いに走った1冊。
こちらがデビューコミックスということで、素晴らしい得票数でのランクインおめでとうございます。
複数のレビュアー様が「映画のような」と評されている通り、表紙をめくった瞬間から主人公の語りが肉声を伴って美しい海と空の映像と共に頭の中に流れ込んでくるような作品でした。

どんなお話なのかざっくりと察した上で読みましたが、まんまと泣きに泣かされました。
時代は1990年冬。
狂信的なカトリックの両親の歪な祈りが充満した家で息苦しさを感じながら生きている〔アラン〕と、根無し草のように街から街へ放浪しながらも家に囚われ続けて生きている〔ヘイデン〕。
アメリカテキサス州の街ダラスで出会った青年2人が一台の車で旅に出るロードムービーもの。

普遍的なテーマだからこそ、彼らは果たして何処に辿り着けるのか、完璧な楽園でなくとも彼らなりに息がしやすくなれる場所が見つかればいい、安らげる場所が見つかればいいと願いながら読むのですが、描かれていくストーリーはリアリスティックで辛いものでした。
家を捨てたところで「家」から出られるわけじゃないということ。
そういう人種が2人で一緒にいても本当の意味でお互いを自分の居場所とするのはとても難しいということ。
きっと解る人には解り過ぎるほどに解るでしょう。
そのことに気付きながら旅を続ける2人の旅路の心許なさが胸を抉ります。
作者曰く「主人公たちに赦しと罪を同時に与える役割」のマリアというキャラが中盤に登場するのですが、彼女が私達読者にもたらす光から絶望感への叩き落とし方といったらなかったです。
救われたいと願う人間の救われ難さ。
真摯に生きようとする人間ほど苦しめられる罪と罰と赦しの問題。
涙なしにはとても読めない、重く、苦しい物語でした。

この結末が彼らなりのハッピーエンドだとしても、私は全否定でこう思っています。

「「「このラストがハッピーエンドであってたまるか!」」」