ポッチさんのマイページ

神作品

PREMIUM レビューアー

女性ポッチさん

レビュー数135

ポイント数2826

今年度16位

通算--位

  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

笠井画伯の表紙にKOされ、本編の面白さに萌えが滾る

「ニライカナイ~永遠の道連れ~」→「ニライカナイ~此岸の徒花~」→「ニライカナイ~永劫の寵姫~」に続く『ニライカナイ』シリーズの4作目。

前2作は白泉社さん(花丸文庫black)から刊行されていてレーターさんは班目さん。
その後の3作目以降は幻冬舎コミックスさん(ルチル文庫)刊行で、笠井さんが挿絵を担当されていますが、同シリーズの作品です。

4作目となる今巻は、閻羅王の使い狗のお話。
『ニライカナイ』シリーズはシリアスで痛い描写も多いシリーズなのです。なのですが、みてください、この笠井画伯の描かれた表紙を…!

可愛い…!

獄卒たちにいじめられる可哀想なワンコちゃんなのですが、いやいやいや。
こんなん、どこをどういじる部分があるっちゅうねん!
という可愛いワンコちゃんが描かれています。

で。
あらすじを拝見したときに、てっきり病弱な琳くんが受けちゃんだと思ってですね。あら、可愛いワンコちゃんが攻めなん?とか思いつつ手に取ったのですが。
以下ネタバレあります。ご注意ください。






閻羅王の使い狗。
醜い見た目で仕事も遅い「吾(われ)」は、獄卒たちの格好のうわさ話の的。
敬愛する兄はしっかり者なのに、自分は不出来。そう自覚している「吾」。が、ある日、閻羅王からの任の途中で失敗し、兄は重傷を負ってしまう。兄を地獄へ送っていくのが精いっぱいだった「吾」は、力尽きてしまう。

その「吾」を拾ってくれたのは生まれつき心臓が弱い青年の琳だった。

琳に本当の自分と、人型の姿を見られてしまった「吾」は琳を滅そうとするが、人懐っこい琳に毒毛を抜かれ、身体が復活するまで琳のアパートで世話になることになってしまいー。

名前を名乗らない「吾」に、琳は「ウメ」と名付け、ウメにくっついて離れない。そんな琳を疎ましく思う一方で、ウメは少しずつ琳に心を許していく。

『ニライカナイ』と言えば、クールでカッコいい攻めさん×受けさん、のイメージでしたが、今巻はどちらもめちゃんこ可愛いです。が、受け×受け、のCPでは決してない。今巻の攻めさんも受けさんも一本筋の通った好青年ですし男気に溢れている青年たちなので。可愛いのにカッコいいというバランスの良い男の子たちで萌えがギュギュ―と高まりました。

『ニライカナイ』シリーズは人の世と地獄を繋ぐストーリーだからでしょうか。人の死が凄く身近に描かれています。今巻ですと、琳という青年は生まれつき心臓が弱く早逝してしまうと言われ続けてきた。その彼とウメとの繋がりが、過去と現在という時空軸をベースに無理なく紡がれていく。そのストーリー展開はさすがベテラン作家さまといったところか。

花丸文庫blackさんから刊行されていた時は、時代の流行ということもあったのかな。とにかく痛いしハードな描写が目につきましたが、ルチルさん刊行の2冊はハードさはやや鳴りを潜め(とはいえ若干はあります)甘さが際立つ。これは完全に好みの問題で、どちらが良い・悪いではないのですが、個人的にはルチルさん刊行の2冊の方が好き。反対に言うと、今シリーズのハードさがお好みだった方には若干ぬるいと感じてしまうかも。

病弱×ネガティブの二人のお話なので二人の恋の行方も非常にゆっくり。
そもそも「ニライカナイ」シリーズは出会ってすぐに恋に落ちて、セックスして、という昨今のBLとは一線を画していて、時間の流れも人のそれとは違うこともあるのかな?お互いに一途に想うその時間の長さもまた今作品の味の一つかと思われます。今作品も、え、ハピエンだよね?と何度思ったことか。

が、くっついたその後は甘々でコミカル。
閻羅王をはじめとする地獄の仲間たちもみんな優しくって、巻数が進むごとに甘さが引き立ってきた感じ。

まだまだ気になるキャラもいますし、これからも続いていって欲しいシリーズです。

読み手を選びそうな作品ではあるが

『蟷螂の檻』の5巻目にして完結編。

ドロッドロのドシリアスなシリーズで、これ、どういう完結を迎えるんだろう…、とヤキモキしながら追いかけてきましたが。いやはや、こうきたか…!甘々でほのぼのなお話を読みたいときには回れ右。最後の最後まで痛さも闇も途切れることなく描かれている。どこまでも人の心の闇を追いかけた、そんな1冊。

屋敷に火をつけた育郎。
会社を辞任し、さち子とも離縁し、典彦と共に火に飲み込まれそのまま…、というところにやってきたのは蘭蔵だった。

蘭蔵は、育郎の手を取り燃えさかる屋敷から逃げ出すが―。

というところで終わっていた4巻。5巻はその続きからスタートします。

国会議員の汚職事件を追うブンヤさんの飯田くん。
国会議員で、tnkに真珠の入った変態オジサンの本多を追いかけ、そしてそのつながりで育郎のもとに何かしらの手掛かりを求めてやってきた。その飯田に救われる形で兄弟そろって飯田くんのもとに身を寄せることになるけれど。

さち子と共に過ごすうちに少しずつ心が成長していった蘭蔵がとにかく可愛いの。
弟が可愛くって仕方がない。
弟を守りたい。
子どもの時から、蘭蔵は育郎のお兄ちゃんだったんだなあ、と。そんな彼の純朴さに心が洗われるのだけれど、それと相反するように彼の出生の秘密も描かれていてなんとも哀しい。

そして育郎。
今までどんなに過酷な目に遭おうとも人前で涙を見せることのなかった育郎が、憚ることなく泣き続ける。それは、典彦を喪ったからなのか。あれだけのことをされてなお典彦を求める育郎の姿は、賛否両論ありそうではあるが心揺さぶられる。

さち子。
飯田くん、そして西浦くん。
彼らは典彦と接点を持たなければこれほど哀しい目に遭うことはなかったのではないかと。典彦恐るべし。

で、今作品のキモと言えるんじゃなかろうか。
典彦の、坊ちゃんへの執着心は一体どこから来ているのか。

典彦はねぇ、なんて言うんですかね。哀れな人物でしたね。
彼は愛することも愛されることも、そして人との温かなやり取りも、何も知らない。だから人を信じることもないし、傷つけることにためらいがない。坊ちゃんもまた、典彦にとっては駒の一つでしかない。いや、なかった、といった方が正解か。

典彦が持ち続けていたナイフ。
あれは、彼にとっては坊ちゃんと自身を繋ぐ、最後で唯一の「もの」だったんじゃないかな。愛することを知らなかった男が、最後まで執着したもの。それは坊ちゃんだった。それを表現するツールとしてあのナイフが描かれていたのではないかと、そう思えて仕方ありませんでした。

『蟷螂の檻』。
タイトルがまた素晴らしい。
人はだれしも、自分を自分たらしめる何かを持っている。枷、という言い方でもいい。一般的な幸せが、自分にとっての幸せとイコールなのか。典彦にとっては育郎が、そして育郎にとっては典彦が、自分を繋ぎとめる存在だったのかなあ、と。

育郎は、まるでカマキリが餌を狙うように、喰い尽くすように、典彦に喰われた。けれど、それは育郎にとっては幸せだったんですね。幸せのカタチとは、人が図れるものではないんだなあとしみじみ思いました。

さち子さんは最後までカッコよかった。
BL作品で、これほどまでに心惹かれる強く逞しい女性って、そうそういない気がします。

典彦って、かなり外道な人物ではありますが、今作品の一番の悪は、蘭蔵と育郎の父ちゃんだよなあ…。彼があそこまでクソでクソな父親でなかったなら、彼ら兄弟の未来ももっと違ったものになったであろうと思うとなんか哀しい。

痛い描写も、無理やり描写も、流血シーンもてんこ盛りの今作品。
けれど、甘いだけではなく、人を愛するということの奥深さをきっちり描き切った衝撃作。読み手を選びそうではありますが、個人的に文句なしの神作品です。

これだけドシリアスな作品ですが、fromRedで電子限定で『蟷螂の檻の中の人』が始まるとのこと。これだけ温度差のある作品もなさそうですが、そちらも楽しみに待っていようと思います。

深潭回廊 3 コミック

永井三郎 

読んでいてしんどい。だが。

『深潭回廊』の3巻目。

永井作品の中でも人気の高い『スメルズ ライク グリーン スピリット』のスピンオフ作品。『スメルズ~』を未読の方には、まず『スメルズ~』を読んでからこちらを手に取られることをお勧めしたい。

ペドの性癖を持つ山田。
山田と身体の関係を持つ中学生の渚。

1、2巻を読んでシリアスな話だと分かってはいましたが、3巻はさらにそのシリアス度を上げてきました。子どもが性的な搾取に遭う作品なので、苦手な方は回れ右。痛く、しんどい話を読みたくない時にもお勧めしません。けれど読んでいてこんなにもしんどく、けれど読むことを止められない作品はそうそうない気がします。

渚が貸してくれた本を読み、そしてかつて恋焦がれた南條くんの死を知った山田。
そして、その事実を介して、彼はかつての己の自己中心さにやっと目を向け、そして自身を恥じ自らの死を選ぼうとするが―。

というところで終わっていた2巻。
3巻はその続きからスタートします。

自死を望んだ山田にストップをかけたのは渚。
時に辛辣な言葉で、けれど山田の心に深く問いかけてきてくれたのは渚だった。
常に「自分」の内に籠ってきた山田は、やっと「渚」という少年と向き合うがー。

3巻に入り、少しずつ渚の置かれている状況が見えてきます。
彼が、大人たちにウリをしていることが。

「渚」という、その男の子の中身ではなく、周囲のゲスな男たちは「娼婦の息子」という虚像を彼に見ているんですね。「娼婦の息子だから」、渚は淫乱で男を欲しているのだ、と。

ゲスな男①が、渚とはじめて身体の関係を持った時の状況を山田に話すシーンがあります。あれはゲス男①の嘘なのではなく、彼はそれが真実だと信じているんじゃないのかなと思いました。

それはゲスな奴らの望みであり、都合の良い願望でしかないのに。

その虚像を破って初めて「渚」を見てくれたのが、山田だったのだと。
そう、読んでいて思いました。

けれど、渚は渚で、男たちの欲求のはけ口にならざるを得ない「何か」がまだある。ように見える。ラスボスはあいつなのか…?と思う人物も登場していて、続きが気になって仕方がない。

山田が、いや、柳田先生が渚と出会い、やっと己と向き合い救われたように。
渚もまた、柳田先生との出会いによって救われて欲しい。
渚には良き友人もいます。彼らの動向にも注目したい。

まだまだ完結ではなく一波乱も二波乱もありそうな流れではあります。早く二人に幸せになって欲しいな。

と思いつつ、次巻を楽しみに待っていようと思います。

シリーズの中で一番好きかも。

『華は褥に咲き狂う』シリーズの7巻目。
シリーズものなので前作未読だと理解できません。未読の方は1作目から順に読まれることをお勧めします。

さて。
前巻で、純皓の腹違いの兄・麗皓が登場しましたが、今巻は麗皓たちの陰謀に巻き込まれた光彬、というシーンからスタートします。

権力を手に入れたい志満津藩当主の志満津隆義。
隆義と手を組み「何か」を企てている純皓の兄の麗皓。
そして、彦十郎に執着するあまりに光彬の実子を欲している妖刀・玉兎。
この三者の利益が一致したために起こる騒動を軸に、光彬、純皓そして麗皓の過去が少しずつ見えてくる、そんなストーリーでした。

勢力を拡大するために隆義は己の義妹を光彬に輿入れさせようとしたが、それは失敗し―、というのが前巻で描かれていましたが、隆義は諦めない。別の義妹を、再び光彬のもとに送りこもうとする。それは朝廷まで巻き込んでの陰謀で―。

将軍として、国を、民を守るために自身の純皓への想いは封印し、穏便に側室を娶るべきではないのか、という光彬の葛藤から始まり、純皓の執着心へとつながるお話かな?と思いつつ読み進めました。が、今巻はとにかく切なかった。

光彬と純皓の二人がカッコいいのは当然なのですが。

正家で疎まれつつ過ごしてきた純皓。
妾腹の息子で、さらに母親は男と駆け落ちしてしまった彼は、周囲の人たちにとっては侮蔑の対象であり愛情を受けることはなかった。そんな中で唯一純皓に優しくしてくれたのは腹違いの兄・麗皓だけだった。その麗皓と、今は敵対する立場になってしまっていて。

が、そこから見えてくる二人の過去、そして事実が読者の胸に迫ってくるっていうのかな。今シリーズは表紙がいつもとっても煌びやかなのですが、今作品はちょっとダークな色で描かれています。その中でひときわ色を放つのが椿の花なんですけれども。

いやー。
この表紙を読後にじっくり拝見するとほんとに泣ける…。
小山田さんの才能にひれ伏します。素晴らしい表紙です。

純皓は闇組織「八虹」の長で、その組織の力を持って探しても見つけられなかった麗皓。その理由も、かつて麗皓が純皓に優しくしてくれた理由も、今巻できっちり描かれています。さすが純皓の兄ちゃんです。愛情の深さ、執着心の強さ、そして、実行するその強さと賢さに満ちています。ナイスガイだったので光彬の味方になってくれればいいなあ、と思っていましたけれども。

麗皓に萌え滾りながら読みましたが、今巻は妖刀・玉兎との対決も描かれていて、そちらも手に汗を握る怒涛の展開でした。光彬たち、絶体絶命のピンチ!というところで…、

と、これ以上書くとネタバレになりすぎてしまうので、ぜひとも手に取って読んでいただきたい。もう「彼」がカッコよくって、小山田さんの挿絵もとっても素敵で萌えが滾る!

良いところで終わっていて、もう早く続きが読みたくて仕方ない。
今シリーズ、大好きなのですが、その中でも一番好きかも。文句なしの神作品です。

新シリーズ、開始。

大人気作家さまの丹下さんの新刊。
「恋イン」シリーズ以外では初となるコミックスが刊行されると知って発売日を心待ちにしていました。「恋イン」はもちろん大好きですが、今作品はケモ耳。ということでどんなお話かな?とテンション高く読み始めました。

丹下さんというと、その独創的な世界観に惹きつけられますが、今作品は人外モノ。雑誌『花音』で連載されていた「エンシェントジャパン」。雑誌は定期購入していないので1話読んだだけだったのですが、んん?これとは別のお話?と思ったらですね、どうやら世界観を再構成しなおし、タイトルを変えての作品になったようです。『ペディグリー (1)』は「エンシェントジャパン」の二人のお話ではなく新キャラなので「エンシェント~」を未読でも問題ないと思います。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






人と、動物たちの両方の血を持つ家がある。
それぞれ名家として名を馳せているが、そのうちの一つ・遠呂智家の三男、朱允が主人公。遠呂智家は蛇の血を引いていて、そして朱允が類まれなる美貌を持ちさらにつんと澄ました態度を取ることが多いためか色事に長けている、と思われている。

が、実際の朱允は31歳にしてまっさらさん。過去のとある出来事がトラウマとなり人を信じることができず家を保持することに手一杯の初心っ子さんだ。

彼らは己の「血」を継ぐために子を残すための手段としてペアリングと呼ばれる行動をとることがある。お見合いみたいなもの?なのかな。そして、朱允にペアリングのお相手としてマッチングされたのは、かつて朱允の許婚であったアムールトラの血統を持つ摩宗でー?

というお話。

彼らは子どもの時にペアリングで出会い、お互いに気に入り許婚になったという過去があった。朱允は摩宗を気に入りこのまま結婚する、と思っていたのに一方的に摩宗から婚約破棄されていた。その摩宗と、今またなぜペアリングしなくてはならないのか?と憤る朱允だったが。

朱允視点で物語はスタートしますが、途中摩宗視点に切り替わることで二人の感情が分かりやすい造りになっています。

なんて言うんですかね、バッサリ言ってしまうと「恋イン」とベースは同じ感じ。
ハイスペック男子同士の恋のお話。
すれ違い、勘違い。
スパダリの攻めさんに、一見冷たくも見えるほどの美貌を持つ一途健気受けさん(しかもそのハイスペックさとは裏腹にまっさらさんときた)。
こういうCPが丹下さんはお好きなんだなあという感じ、っていうのかな。既視感がある。

が、そこにケモ耳や特殊な設定が加わることで「恋イン」とはがらりと異なる色がつくのはさすが丹下さんといったところか。丹下さんは耽美って言うんですかね。綺麗な絵柄を描かれる作家さまですが、その綺麗な絵柄で描かれるちびっこちゃんやケモ耳の破壊力の凄さよ。可愛いのに色気がある。

彼らは蛇やトラの血を継いでいますが、そのバックボーンがきちんと生きているのも素晴らしい。そこかしこに見える彼らの身体の特徴がエロいし綺麗で、しかもそれらが二人の魅力を増すツールになっている。朱允の、体温が低くて色が白くて、ちょっとしっとりした感じの肌質まで伝わってくるようでそれも美味しい。

丹下さんと言えば純愛×エロの高さが魅力の作家さまですが、今作品はお互いに勘違いしているからなのか?恋インと比べると(比べると、です。あくまで)ちょっぴりエロ度は抑えめ。が、この濡れ場がとっても綺麗でエロくって最高でした。

今作品もシリーズ化されるようでそれも嬉しい限り。『ペディグリー』というタイトルも素晴らしい。次回作も楽しみに待っていようと思います。

BL作品、というよりは

不穏なタイトルと、それに相反するような鮮やかなブルーの背景とはじけるような笑顔を浮かべる「彼」に惹かれるようにしてお買い上げ。

んー。
タイトルですが、ちょっと弁明させてください。
「BLじゃないじゃん!」という意味ではありません。オカルトとか、ホラーとか、そういうジャンルに分類されるんじゃないかな?と思ってですね。可愛いお話とか、萌えてんこ盛りとか、そういうお話を求める方。あるいはホラー系が苦手な方には不向きなお話かと思ってですね、こういうタイトルをつけたわけですけれども。

個人的にはとっても面白い、と言うと語弊があるかな?刺さる作品でしたが、好みが分かれる作品かもしれません。







小さい村に住む高校生のよしきには幼馴染で親友の光がいる。
が、光に、違和感を感じるようになったよしきは、思い切って光に自身の違和感を告げることにするが―。

あらすじにも書いてあるのでここでも書いてしまいますが、以下激しいネタバレがあります。苦手な方はここでストップされてください。








光はある日山に行き、その後1週間行方不明だった。
そして帰ってきた時、光の中には「何か」が入り込んでいて―。

入れ替わりもの、ってBLではさほど珍しい展開ではありませんが、光の中に入っている「もの」。これがホラー要素なのでちょっぴり怖い描写があります。

モクモクれんさん、今作品がデビュー作なんですかね?それともBL以外のジャンルでは描かれていた作家さまでしょうか?とにかくお上手です。ストーリー展開も、その魅せ方も。ちょっとした仕草とか表情、言葉の端々。詳細を描き込んでいるわけではないのに、彼らの奥にあるものがきちんと読み取れる。素晴らしいです。

彼らが住まう村は小さくて、閉鎖的で、人のうわさ話があっという間に広がってしまう、そんな閉鎖的な地であること。
光とよしきが昔からニコイチの仲良しさんであったこと。
そして、よしきが光に淡い恋心を秘めていること―。

光はよしきにとって唯一無二の存在。
だからこそ中身が変わっても自分の傍にいてくれるだけで良いと思う。
だからこそ、中身が光ではないのに入れ物だけの「光」を受け入れていいのかと悩む。

よしきが光が「光ではない」ことに気づいたのは光のことが好きでいつも傍にいたから。癖やしぐさ、そういったもので光が光ではないことに気づいた。けれど、光の中身に気づく人が、他に登場してきます。それぞれ事情も状況も違う彼らが見えている、知っていることは一体何なのか、それも気になる。

そして光も。
彼は「経験」あるいは「知識」としていろいろ知っていますが、彼が今現在確かに感じているのは、「よしきのことが好き」という執着心、だけに見える。本物の光が、彼自身気づいていなかっただろうよしきへの執着心。このジレジレな2人の想いが可愛いのに切ない。この二人のお互いを想う感情ゆえに今作品はBLに区分されているのかな。

甘いお話ではありません。
よしきと光、二人の淡い恋心も透けては見えますが、でも性的な接触は一切ありません。
濡れ場が無ければBLではないと思う方にはお勧めしづらい作品です。甘々で優しいお話を読みたいときにも不向き。

が、グイグイ引っ張られる不思議な魅力を孕む作品です。
怖い描写を前面に出した作品ではありませんが、擬音の描き方とか「何か」を魅せる描き方とか、じわじわと怖さが染み渡ってくる。

光とよしきの恋の行方も気になりますが、それ以上に、これからどうストーリーが動いていくのかめちゃめちゃ気になる。萌え、という点では評価しづらいのですが、一つの作品として読んだときにこんなにも惹きつけられる作品もそうそうない。ということで、作品の面白さという点で、神評価しか付けられませんでした。

今作品、pixivや他サイトで読めるんですね。ずっと追いかけていた方ですと既読になると思うのですが、終盤に「特別篇」として描きおろしも収録されていますのでぜひとも手に取っていただきたいなと思います。

次巻が待ち遠しいです。

「色」の持つ意味が素晴らしい。

「鴆」シリーズの3冊目。
順番としては『鴆 -ジェン-』→(『極夜』→)『鴆 比翼の鳥』、で、今作の『鴆 天狼の眼』と続きます(『極夜』がカッコつきになっているのはメインのお話は違う作品で、終盤に短編として番外編が収録されているから)。

シリーズものですが、読もうと思えばこれ単体でも読めます。
読めますが、一作目の『鴆 -ジェン-』は読んでいた方が良いかも。なぜなら、1作目に登場した鴆飼さんの存在が大きいからでして。また今シリーズに登場している鴆たちも出てきますので、そちらを読まれてからの方がよりこの作品の持つ世界観に入り込めると思います。

鴆シリーズはそこはかとないシリアスさが漂う作品ですが、今作品も切なかった…!が、シリアスさとか健気さだけが前面に打ち出された作品ではありません。相手のために。それだけを願い行動する彼らの想いや優しさ、愛情に萌えが滾る、そんな1冊。

ということでレビューを。『鴆 -ジェン-』のネタバレも含んだレビューになりますので、苦手な方はご注意ください。



鴆という妖鳥がいる。
彼らは毒を好んで食し、そしてその毒によって体の羽が綺麗に色づいていく。が、その美しさは毒の強さを示すものでもあった。ゆえに鴆たちは人とは関わらないように管理されている。

そんな中、毒を抜く鴆たちが現れるように。白いその羽は、毒を持たないということを意味していて―。

という世界観のお話。

鴆は、基本的には鴆飼と呼ばれる人間に世話をされている。が、ティェンランという鴆は、鴆でありながら鴆飼でもあった。「天眼」と呼ばれる目を持ち、何を食べさせればより美しい羽を持つことができるのか、一目でわかるのだという。そのために天眼を持つティェンランは、常に攫われる危険性を孕んだ鴆。

そしてある日、一人の盗賊が、ティェンランを攫うために忍び込み、そして拿捕され―。

ティェンランという鴆はですね、非常にストイックというか他人には優しいけれど自分には厳しい人物。それには理由があって。かつて彼は最高と言われた鴆だった。深紅の羽はそれは美しかったのだと。その羽に色を付けた鴆飼のことを、ティェンランは今も深く愛している。その鴆飼は…、と書くとネタバレになりすぎてしまうのでここでは書きません。ティェンランの鴆飼は誰なのか、その鴆飼の今は、という部分はぜひとも読んでみて欲しいです。

そして、そのティェンランのもとに忍び込んだリュイ。
彼がまた良い…!
鴆に魅了され、鴆に懐かれ素晴らしい鴆飼になるだろうと嘱望されていた少年がなぜ盗賊に身を落としたのか。

二人の抱える過去、秘密、望み。
そのすべてが切なく、けれど美しい。

ティェンランのとある思惑で、リュイは鴆飼として働くことになり一時の安寧の時間が過ぎるけれど、けれどリュイの過去は、彼を自由にはしてくれなくて。

文善さんの描かれる耽美な絵柄とこの切なくも美しいストーリーがぴったりで、萌えが滾る。元盗賊という枷を嵌められたリュイと、過去に囚われたままのティェンラン。二人の恋の行方は…。

鴆シリーズはすべて読んでいますが、今作品が一番好きかも。
ティェンランの鴆飼だった「彼」。
彼の話も読んでみたいな。

鴆シリーズは「美しい色」がベースにありますが、今作品は今までのそれとはちょっと一線を画す作品です。けれど、その「色」の持つ意味がまた素晴らしかった。

文句なしの神作品。
素晴らしい1冊でした。

堂々完結。

コミカライズ版『言ノ葉ノ星』の下巻。

急に人の心の声が聞こえなくなってしまった余村は―。
という、上巻からの続きになります。

心の声が聞こえなくなったことで長谷部のことも信じられなくなってしまった余村。そんな余村に長谷部は言葉を尽くして自分の想いを告げてくれて―。

寡黙で言葉が上手くない長谷部。
そのことが原因で過去に心に傷を負ったこともある。でも、余村の手は放したくない。その一心で、懸命になりふり構わず余村を追いかける長谷部がカッコよくて萌え禿げる。

人を思いやる気持ちとか、愛する気持ちとか。
自分の想いを伝えるための努力とか。
目に見えるもの、聞こえるもの、それだけに頼らずにお互いの努力も必要なんだと。その努力は、どんな相手であっても「伝えたい」、「わかりたい」と思う気持ちが軸になってるんだなあ、と。

己の感情だけで行動するのではなくって、それが相手を尊重することだし、大切にすることなんだなあとしみじみ。砂原さんの原作も素晴らしいですし、三池さんのコミカライズもとっても良かった。

『言ノ葉ノ花』はほぼ濡れ場なし。一転、この下巻は二人が想い合うセックスシーンがそこそこあります。エロい、ことはエロいのですが、即物的な快楽ではなく二人の愛情が流れ込んでくるような、そんな温かで優しいシーンなのも良かった。

今シリーズは他にも何作かありますが、そちらもぜひコミカライズして欲しいな。

優しくて、でもそれだけではない様々な兄弟たちの「カタチ」

2020年6月に刊行された『ブルーム・ブラザーズ』の2巻目にして完結編。
続きものなので前作未読の方はそちらから読まれることをお勧めします。

志村作品はなんて言うんですかね。
キラキラな恋のお話ではなくって、ほっこりだけするお話でもなくって。
読み手によっては時々しんどくなる。それは人の上っ面だけを描いていないからかな。ドロドロで、汚い部分も奥底に秘めた欲望も、きちんと描いているから。すごく可愛らしい絵柄で、なのにさらりとこのドロドロを描けるその手腕に脱帽。2巻目ということで前作に登場していた兄弟たちのその後を描いたストーリーです。


「case.6 case.1のその後」
1巻のcase.1に登場していた晴臣×健人のお話。
健人の元カレ・正臣は晴臣の兄。しかも女性と結婚し健人を捨てたという過去がある。
一方の晴臣はずっと健人のことが好きで―。

という二人。
晴臣の兄ちゃんがクソでしてね。まあ、とんでもないクソでしてね。
晴臣と付き合うことで健人の傷が少しでも癒されればいいなあと思うわけですが、晴臣からしたらやっぱり複雑な胸中ですよね。

そして、この二人のお話の味わい深いところは、「正臣」という人物の存在がなかったことにはされていないところ。健人と晴臣を深く傷つけた外道な人物なわけですが、でも、正臣がいなければ二人が恋人になることもなかったわけで。彼らにとっては一度は深く愛した恋人であり、大切な兄なわけで。こういうストーリー展開が秀逸だなあとしみじみ思ったりしました。

「case.7 家では兄である友人」
1巻のcase.2に登場した陸のお話。
同級生の本田くんを意識するようになって―。
1巻ではちょっと不憫だった陸が幸せになってよかった。本田くんは陸の同級生なわけですが、このストーリーでもきちんと「兄弟」という設定が生きているところが素晴らしかった。

「case.8 兄の恋」
こちらは陸のお兄ちゃんの廉のお話。
畑野くんと無事おつきあいを始めることになったけれど、男同士のセックスはなかなか難しくって…。
えー。
非常に可愛いです。暴発してしまう廉が、声が出ちゃう畑野くんが、可愛いのなんのって。今作品はエロ度はあまり高くないですが、この二人のお話はエロ可愛いお話で萌えしかない。

「case.9 仲良しな兄弟(その後)」
1巻の「case.4 仲良しな兄弟」のその後のお話。
兄ちゃんの元カレがクズで。でも、そのクズを介しても兄弟は仲が良い。兄ちゃんが良い男なのに男を見る目が無いのが可愛いなあ…。
兄ちゃんにも、弟くんにも春がやってきてよかった!

「case.10 同じ人を好きだった兄弟」
case.6の晴臣の兄ちゃん・正臣のお話。
んー。
正臣はね、めっちゃクズなんですけれども。
昔っから、そして今も変わらずクズ、という。でも彼は人をひきつけてやまない何かを持ってるんだろうな。
弟と元カレの2人を見て、何かを感じた、のだったら嬉しいな。

終盤に12Pの描き下ろしがありますが、こちらは非常にコミカル。ほのぼので優しいお話でした。

兄弟って不思議な絆だよね。
自分の意志で繋いだ絆ではないし、切ろうと思っても切ることはできない存在。
色々なカタチの兄弟がいるのだろうけれど、いろいろな角度から、様々なタイプの兄弟たちを描いた今作品。甘いだけでも切ないだけでもないストーリー展開が秀逸でした。

あとがきで志村先生が「彼らのその後を描くかも」と書いてくださっていて嬉しかった。正座して、お待ちしております。

ページを捲る手が止められない

作家買い。
小中さん×笠井さんという神タッグの作品で、発売前から楽しみに待っていました。
実際に手に取り、笠井さんの描かれた美麗表紙にうっとりし、そして今作品の厚さにびっくり!普通の小説の1.5倍ほどはあろうかという超大作。ページ数にして443ページ。

で。
この厚さをフルに生かした非常に濃厚なストーリーでした。さすが小中先生。
ページ数はあるのに一気に読んじゃう。最後の最後までハラハラドキドキしつつページを捲る手が止められませんでした。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






ルスキニア王国の王太子・エセルが主人公。
金髪に白い肌、見目麗しいビジュアルを持つ彼はさながら天使の様。側室を何人も持つ父(国王)ではあるが、エセルは正室の生んだ王子。しかも、母親も良家の出自ということで彼の立場は安泰なものだった。

が、彼の美貌も生母も関係なく、エセルは間違いなくルスキニア国の「王子」であった。それは彼の生まれつき持った身体に刻まれた痣によるものだった。

ルスキニア国には古い言い伝えがある。
国を建立した王がいた。その偉人の王には薔薇の花の痣があったのだと。そして王と共に国を興した側近には刺草の痣が。

エセルには胸元に薔薇の痣を持って生まれ、それ故にエセルは賢王の生まれ変わりだと言われ、彼が次期国王になることが子どもの時から決まったのだった。蝶よ花よと育てられたエセルは、その期待とは裏腹に我儘で怠惰な、そんな若き暴君と化していた。

そんなエセルにただ一人忠誠を誓ってくれているのは子爵のオズワルトだけだった。オズワルトは刺草の痣を持つもの。エセルはオズワルトと共にこの国を担っていくのだと信じ、彼だけを妄信的に信頼しているが―。

健気受けとか、薄幸受けはBL作品においてテッパンと言える存在ですが、今作品の受けさんはまさかの愚王(まだ王じゃないけど)です。我儘で気に入らないことがあるとすぐに癇癪をおこすというとんでもない王子サマです。生まれ持ったビジュアルも深酒や不摂生に伴い少しずつ損なわれていっている。

そんな愚かな受けさんを救い導くのは、もちろんスパダリの攻めさんよね?

という推測を見事に裏切り、オズワルトというイケメンな男はまさかの腹黒さん。自身の出世のためにエセルを掌で転がすという、こちらもまたBL作品においては異色の、びっくりする攻めさんなのです。

攻めさんも受けさんもこんな感じで、どういうストーリーになるのかなあ。
と思いつつ読み進めたのですが。

いやいや。
なんじゃこれー!

という、めちゃめちゃ面白いストーリー展開でした。
エセルはとあることをきっかけに自分の愚かさを認識しますが、これがちょっとファンタジーっていうのかな。不可思議な展開を見せますが、このファンタジーさをきっちり描いているのが笠井さん。摩訶不思議、でもそこはかとなく漂う耽美感だったり美しさだったり、儚さだったり。笠井さんの挿絵が加わることで小中さんの文章に一気に色がつく感じがしました。

エセルは大国の王子という高い身分の青年ではありますが、その環境ゆえに孤独で心が休まることがない。彼を貶めるために様々な手段が駆使され、それ故にエセルは追い詰められていく。

そこを救ってくれるのは不思議な出来事なわけですが、実際に自分で己の状況を把握し、あがきもがいて国のために何とかしようとしていく。そんなエセルがめっちゃ健気で可愛いの。

エセルには味方はいない、と彼自身は思っていましたが、曇った目を拭ってみれば、敵だけではない。エセルを信じ見守ってくれている人がいることによって、シリアスな設定のお話なのですが、希望がちらちらと見えているのでドシリアス過ぎないのも良かった。

一方の攻めのオズワルト。
彼もねえ、めっちゃ腹黒って言うんですかね。
エセルを馬鹿にし、自分の出世の道具としてしか見ていない。女性との関係も透けて見える攻めさんなので、序盤、彼に対して良い感情が持てなくってですね。が、オズワルトがエセルに偏見を持っているのにもきちんと理由があるので、読み進めていくうちに彼がナイスガイにしか見えなくなる。まさに小中マジックか。

序盤で書きましたが、今作品はかなりのページ数を持つ作品です。
が、この長さが全く苦にならない。この長さが存分に生きた、そんな奥行きのあるストーリー展開なのです。

ルスキニア王国に伝わる、賢王の徴である薔薇と刺草の痣の秘密。
エセルが己の間違いに気づくことになった不思議な出来事。
欲望渦巻く、相手を出し抜こうとする駆け引き。
そして、オズワルトとエセルの関係。
そういったことを軸に進むストーリー。終始惹きつけられる、そんな1冊でした。

エセルに手を貸す学者のマルジン。
彼がまたカッコよ!ていう好青年(笠井さんの描かれたマルジンの飄々としたビジュアルがこれまたクソほどカッコいい)。
オズワルトじゃなくてマルジンにしなよ、エセル。と何度思ったことか。

けれど、オズワルトにはエセルが、そしてエセルにはオズワルトしかいなかったんだねえ…。キラッキラの恋のお話ではありません。間違い、勘違いし、すれ違い、お互いに傷つきながらも手に入れたかった人は。

めっちゃ深い愛のお話に萌えが滾って仕方ありませんでした。

エセルに、「気づき」を与えたあの人は結局誰だったのかなあ…。個人的に、あの人かな?と思う人がいるのですが、これは読み手によって変わるのかもしれません。

小中作品はほぼほぼ読んでいますが、一番好きなお話かも。
文句なしの神作品。素晴らしい作品でした。

あ、あとマルジン。
彼にも素敵なお相手が見つかるといいなあ…。ということで、マルジンのお話をぜひとも描いてほしいと絶賛切望中です。