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女性ポッチさん

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甘々。

『夜啼鳥は漆黒の虎王の愛を孕む』の続編。
二人の甘々の描写が読みたかったので、発売を心待ちにしていました。

序盤に前作の流れがざっと描かれているので前作未読でも読めないことはない気がします。が、もちろん前作ありきの作品なので、前作を読まれてからこちらを読まれた方が理解しやすいと思いますし話にも入り込みやすいと思います。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




叔父に悪評を流され、味方がおらず孤独だった若き王・アルアクバル。
王子でありながらオッドアイを持ち生まれてきたために「娼婦(プロスティブラ)」と呼ばれ迫害されてきたルスキニア。
男であっても子を成すことができるプロスティブラのルスキニアはアルアクバルの元へ嫁ぎ、そして二人は心を通わせるようになるが。

というのが前作で描かれていたお話。
今巻は、彼らのその後を描いたお話です。

深い愛情をアルアクバルから与えられ、そしてルスキニアもまた、アルアクバルを愛するようになり王の子を身ごもりたいと願ったルスキニア。子を成すために様々な努力をするルスキニアと、相変わらずルスキニアを溺愛するアルアクバルの関係は良好だった。

そんなある日、ルスキニアのもとに一通の手紙が届く。その手紙の主は、ルスキニアが故国で過酷な目に遭っていた時に彼に温かな手を差し伸べてくれた数少ない人物の一人でー?

ベースは甘々。
前作でいい味を出していたセヘルが、今作では登場回数を増やして好々爺のようになっています。

アルアクバルのケモ耳もモッフモフだし、ルスキニアの美貌や妖艶さはさらに艶を増し、全体的に非常に濃厚で甘いドルチェのような展開。その甘々さに、スパイスとして一匙加わるのが、一通の手紙から始まる不穏な空気。

スパダリの鑑のようなアルアクバルに守られるルスキニア、ということでシリアス展開にはなりませんが、ルスキニアの成長っぷりが眩しいです。アルアクバルに愛され、周囲の人たちから愛され、うそ偽りのない愛情に満たされたことでもともと彼が持っていたのであろう聡明さが表面化してきた、そんな感じ。

ただ守られるだけではなく、ルスキニアが愛し大切にしているものを守りたい、守ろうとする、その強さと優しさが眩しかった。

ベースとしては、なんて言うんですかね。ちょっとお耽美な空気も漂う作品なのですが、その空気感と相反するような描き下ろし「刺繍針で愛を刺す」や、香坂さんの描かれた四コマ漫画「寵姫の欲望①②」がコミカルでめっちゃ笑いました。私は電子で買いましたが、電子特典のおまけSSもめっちゃ爆笑。

これぞギャップ萌え。

二人の温かな愛情と優しい空気感にめちゃめちゃ萌える、そんな1冊でした。

斬新なゾンビもの。

初読みの作家さま。
タイトルに興味を惹かれ、読んでみたいと思い手に取りました。
昨今流行りのゾンビBLですねえ、なんて思っていましたが、なんて言えばいいのかな。すごく斬新なストーリーでした。






主人公はリーマンの翔太。
我儘だけれど可愛い恋人と同棲中。が、その恋人は翔太からお金を借りてそのままドロン。傷心の翔太だったが、さらに彼を追い詰める出来事が。愛猫のクロが逝去。クズの元カレはどうでもいい。でも、クロには帰ってきて欲しい。

そう追い詰められた翔太は、ネットで見つけた「死んだペットを蘇らせるキット」なる眉唾物の商品を買い、クロを蘇らせる儀式を行うことに。が、その儀式でよみがえったのは愛猫のクロではなく、知らない若い男で―?

というお話。

「自分はクロだ」と言い張るその青年を家まで連れ帰る翔太だったが、お礼にと言ってその青年に口で奉仕されてしまって…。その青年は史郎と名乗り、愛猫・クロとかけて「シロ」と呼ぶことにした翔太。ゾンビのシロとの生活は意外にも心地よくて。

シロは正真正銘ゾンビです。
ゾンビですが、オカルト風味はほぼなく、翔太×シロのエロがてんこ盛り。そしてほのぼのと進んでいくストーリーで、え、これ、どういう結末を迎えるのかなあ…、と思いつつ読み進めたのですが。

序盤のほのぼのさから一転、シロ、そして翔太の過去のストーリーに差しかかると一気にシリアスさが浮かび上がってきます。死とか流血のシーンがちょこっとありますので、苦手な方は注意が必要かもしれません。

シロの過去、はかなりシリアスなものですが、そこからシロと翔太の意外な関わりとかまで描かれていてハラハラしつつも萌えもきちんと描かれています。シロが翔太に「お礼」と称してご奉仕するシーンは、ああ、ここに繋がってたのね、という感じ。

が、風呂敷を広げ過ぎた感も否めない。
シロを傷つけた人物のその後とか、少年Aの存在とか、翔太のクソな元カレとか。上手にそれらを絡めつつ進むストーリーで惹きつけられる展開ではありましたが、いかんせん、急にはしごを外された感じっていうのかな。え、それでその後は?という感がありました。

終盤に描き下ろし「描き下ろしスペシャルコミック」が収録されていますが、そこでも、え、それでどうなるの?という感じもしました。「彼ら」のその後が読んでみたいです。

「ゾンビ」というバックボーンが必要だったのか…?という感は否めなかったですが、あっさりさらりとしたゾンビもので、痛すぎたりシリアス過ぎたりする内容ではないので痛すぎる作品があまりお好きではない方でも手に取りやすい作品かもしれません。

ダークでシリアス、だが。

ダークな表紙に釣られるようにしてお買い上げ。
初読みの作家さまでして、この作家さんの作風なのか否かちょっと分かりませんが、この表紙に偽りのないダークでシリアスなお話でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






玲央はカフェで働く青年。
働いても働いても生活は良くならない。ろくでなしの父親が遺した借金返済に追われているからだ。自分を愛してくれた母も亡く、母が信じてた「カミサマ」を信じても報われることはない。

そう思った玲央は悪魔を召喚することにする。
そして現れたのは目つきの悪い一人の男。悪魔召喚に成功したと思った玲央は、その男を家に連れて帰るが―。

この目つきの悪い男は天音と名乗る。天音を悪魔だと信じ込む玲央だったが、実は天音は…。

というお話。

玲央という男の子がとにかく薄幸さんです。
父親が遺した借金、自分を愛してくれた母親は逝去、仕事先の上司もクソ、そして学生時代からのいじめ。これでもかというくらい哀しい人生を生きてきた。品行方正に生きたところで自分に何がある?そう思い悪魔召喚にのめり込んでいくその思いに思わず共感してしまう。

そんな彼のもとにやってきた、悪魔(自称)の天音。
玲央の家に住み着き自由奔放にふるまう。挙句に玲央に抱かせろと要求してくる。

いやいやいや。
玲央くーん、目を覚まして!

と思わず思ってしまうのですが。
玲央も、天音も。
どちらも自分ではどうしようもない境遇に翻弄されてきた孤独な男たちなんですね。歪なカタチのまま、けれど彼らはお互いにぴったりと嵌まってしまった。そんな感じがしました。

ベースとしてはシリアス寄りなお話です。痛いシーンとか性的な暴力とか、流血もありますしもしかしたら好みが分かれる作品かもしれません。少なくとも読んでいてほっこりする作品ではありません。そして、痛いお話ではありますが痛すぎるお話ではないのでとことんダークで痛いお話を読みたいと思って手に取ると肩透かしを食らうかと思います。

が、反対に言うと痛さとコミカルさ、そして萌えがバランスよく詰まった作品。

紫さん作品はお初でしたが、凄く綺麗な絵柄を描かれる作家さまで、その綺麗な絵柄で描かれる天音のダークな男の色香が堪らなくセクシーでした。

次巻が楽しみ

初読みの作家さま。
表紙が素敵で思わず手に取り、そしてあらすじを確認してお買い上げしました。






レイは親から虐待を受ける少年。
その日も殴られ、蹴られ、満足に食事も与えられずにフラフラになっているところに買い物に行かされ、その途中で川に落ちてしまう。死んだー、そう思うレイだったが、気が付いたとき、彼は異世界にトリップしていた。

が、そこでも奴隷として扱われ虐げられる日々。
声も出せずガリガリのレイは再び暴力に晒される。と思ったとき、一人の男性にレイは買われることになってー?

自分を買った男に不信感しかなかったレイだったが、その男・ドレイクはレイに温かい食事と寝床を与えてくれる。ドレイクの年の離れた弟たちにも懐かれ、今度こそ幸せになれるかも。そう思うレイだったが、再び彼を悪夢が襲って…。

というお話。

薄幸受けちゃんがスパダリ愛に愛され幸せを手に入れるお話って大好物なのですが、そこに異世界トリップという因子が加わることで王道のそれとは一線を画すお話になっていました。

親から食事も与えられてこなかったレイの身体は華奢でガリガリ。さらに声も出せないというおまけつき。そんなレイを甘やかし満たしてくれるドレイク。良い。めっちゃ萌える。

萌えるんですけれども。
んんー、もう一声ほしいっていう感じ。

なぜドレイクがレイを買い、そして食事を与え優しくし甘やかせてくれるのか。

その部分が描かれていないので話に入り込めない。
レイは身体が透けてしまう、という事態になってしまうのですが、それはレイに与えられる愛情が少ないから。という理由でドレイクはレイを性的に可愛がりますが、愛情ってセックスだけじゃないよなー。理由もわからずレイは愛され、まっさらな身体に快楽を与えられ、ん?なんで?と置いてきぼり感を食らった感じ。

身体つきががっしりしているドレイクと、華奢なレイ、という身体差には萌えるのだけれど、そこに行きつく「理由」がはっきりしていないのでその濡れ場すらも上滑りしている感じがする、と言ってもいいかも。

タイトルに巻数はふられていませんが、続きものです。
これからドレイクがなぜレイに優しくするのか、が描かれていたら感想は変わってきそうな気がします。

親から虐待を受け、やさぐれたような、すさんだ目をしていたレイが、ドレイクに愛され艶を帯びていく展開には目を奪われました。

次巻を楽しみに待っていようと思います。

非常に可愛らしい1冊、だが。

作家買い。
村上さんと言えばリバのイメージが個人的に強いのですが、今作品は「今のところ」リバの気配なし(タイトルに「上」とついているところからも推測できるように続きものなので、リバる可能性は否定できませんが)。





オタクでコミュ障の蛍はオンラインの会員制サイトに自身の絵をアップすることが趣味のリーマン。人と関わることが苦手で引き籠りがちだが、それには理由がある。中学生の時の同級生の相良。リア充で自分とは真逆のタイプの明るい彼に「絵を見せて欲しい」と言われたことがきっかけだ。相良は自分の絵を馬鹿にするつもりなのだろうと、そう決めつけ、それが蛍のコミュ障に拍車をかけたのだった。

年は過ぎ、24歳になった蛍は相変わらず絵が好き。
そんなある日ふとしたことをきっかけに隣人と交流を持つことに。その隣人は、なんと相良で―?

というお話。

相良は売れっ子少女漫画家。
そして蛍は趣味で絵を描く青年。
ということで、相良の仕事の手伝いをすることで二人は少しずつ距離を縮めていくけれど。

両片想いで、ジレジレと、モダモダと進む恋。イケメンに地味っ子ちゃんが愛されるという王道のストーリー。村上さんの絵柄が可愛いこともあって、さらに、相良そして蛍共に女の子の絵を描くということもあるのかな?二人の恋はまるで少女漫画のそれのようです。

可愛いんですよ、とっても。
初恋を引きずった相良のモダモダな感じは可愛いし何より好ましい。
そして蛍の天然っぷりも可愛い。
上巻では、たぶん、挿入までは致してないんじゃないかな?と思われるので、下巻で相良くんの本懐が遂げられると良いなと思います。

が、可愛いだけっていうのかなあ…。ほぼほぼ波乱はないですし、シリアス展開になることもなく、甘々~な空気感で終始進むストーリー展開なのでもう少し捻りが欲しかったな、という感も。まあ、これは完全に好みの問題ですね。こういう甘いお話がお好きな方は多いのだろうと思います。

これ、このまま完結に向かうのであれば続きものにする意味を見出せないので、下巻では波乱が起きたりするのかな?と思ったりもするのですが。どうなるのか、下巻を楽しみに待ちたいと思います。

Grr コミック

みちのくアタミ 

みちのくさんらしいCP、だが。

作家買い。
みちのくさんと言えば圧倒的な画力に支えられた美しいビジュアルと肉体美、そして激しい濡れ場を描かれる作家さまですが、今作品もそのイメージを覆すことのないエロ度の高い作品でした。

ネタバレになってしまいますが、苦手な方がいらっしゃるかもなので初めに書いてしまいます。ネタバレ厳禁な方はここでストップしてください。





リバではありませんが、攻めさんが受けさんになる、というお話です。
苦手な方は注意が必要かもしれません。



不動産会社で若くして部長にまで上り詰めたリーマン・仲秋。
成績もよく客受けも良い彼だが、彼には周囲の人たちに秘密にしていることがある。週に2~3日、彼は「シュウ」という源氏名でタチの売り専をしているのだ。40手前にしてタチでナンバーワンの人気を誇る彼は、その日もいつものように仕事で一人の客とホテルで待ち合わせをしていた。

雪貴と名のる客にいつものように行為を始めた仲秋だったが、いつの間にか手枷をつけられ抵抗を封じられ、そのまま雪貴に挿入を許してしまい―?

なぜこんなことをされているのかもわからず、けれど雪貴は確かな悪意を持って仲秋を責め立てる。今までのタチとしてのプライドをずたずたにされてしまう仲秋だったが。

見どころとしては綺麗なビジュアルをもつ雪貴の非道ともいえる仲秋への行為。
そして、タチとして人気を誇っていた仲秋が、レイプまがいに雪貴に犯され、けれど感じてしまうシーン。

かな?

みちのくさんらしい綺麗な絵柄で紡がれるハードな濡れ場は一見の価値あり。
だとは思うんですけれど、受けさんの意にそわない行為があまり好きではないのであまり萌えず。

そしてストーリーの軸は「なぜ雪貴は仲秋を抱いたのか」という部分になるわけですが、これにもうーん、と思ってしまった…。悪いのは仲秋ではなく別の人なので(個人的にはコイツが好きになれない)何かすっきりしないっていうのかな。そしてそこから二人が想いを交わしていくシーンにもなんだかなあ…、と。

こういう恋の始まりもアリだとは思いますし、全く萌えないわけではないのですが、理解はできても共感はできない、といったところでしょうか。ごめんなさい、完全に好みの問題です。正直に言ってしまうと評価は「中立」なのですが、みちのくさんの画力にひれ伏してしまったのでちょびっとおまけして「萌え」で。

が、序盤、雄味たっぷりで登場する仲秋が、雪貴に抱きつぶされ受けさんとして開花していく、その描写は素晴らしいです。一見受けさんに見える雪貴が実は攻めさんというみちのくさんらしいCPで、お好きな方には堪らない1冊かと思います。

SOTUS 2 コミック

  BitterSweet 

アーティットの不器用さが可愛い

ドラマも小説もある『SOTUS』ですが、今作品はコミカライズ版。
タイトルに「2」とついているところからもわかると思いますが、今作品はコミカライズ版の2巻目です。

工学部のシンボルである「ギア」。
新入生たちは、そのギアを先輩たちから受け取る事ができるのか?

SOTUSという先輩たちが新入生たちをしごきまくるというタイの風習を軸に紡がれていく恋のお話。1巻は怖い先輩(アーティット)と、その先輩に少しずつ惹かれていく有能な後輩くん・コングポップ、の図式が出来上がったところまで。2巻に入り、少しずつ二人の関係は変化していきます。

怖いワーガーだと思っていたアーティットの誠実さや真面目さ、そして可愛さを垣間見るうちに、コングポップはアーティットに惹かれていってー。

1巻はワンコなコングポップという側面は見えていましたが、2巻ではアーティットの可愛さが爆発します。
コングポップを見るとモヤモヤする。
コングポップの言動にいちいち引っ掛かってしまう。
その理由が、アーティットは自分でもわからない。

傍から見ているとアーティットがコングポップに惹かれ始めていることが分かるので、不器用なアーティットが可愛すぎて悶絶しました。この可愛さが今作品の大きな魅力の一つなんだなあとしみじみ。言葉が足りず、少しずつすれ違ってしまうことも多い二人ですが、お互いに惹かれていく過程が丁寧に紡がれていくのでそこも萌えポイント。

終盤にプレームとワードの二人の番外編も収録されていますが、こちらは二人とも雄味が強いのでこちらはこちらで萌える。

あ、あとカバー下。
こちらはワーガーの苦労が書かれていてめっちゃ可愛かったので、カバーをぺらりと外してぜひとも堪能されてください。

バックボーンがてんこ盛り

初読みの作家さま。
タイトルやあらすじに惹かれて手に取りました。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





オシアノス国は竜の血を持つアルファが治める国。
この地では黒い髪に黒い瞳を持つ人たちが住まうが、ユリウスは金髪碧眼で生まれてきてしまった。両親は見た目が他の子と異なるユリウスを守るために家からでないように育てるが、まだ子どものユリウスには外に行くことが羨ましくて仕方がない。

そんなユリウスの秘密を知っているのは、家族以外では幼馴染のカイルだけ。カイルにだけは素の自分を見せることができる。優しく、強く逞しいカイルはユリウスにとって唯一無二の存在の人だった。が、そのカイルは騎士になると言って村を出て行ってしまう。

数年後、一目だけでも騎士になったカイルの姿を見たいと願ったユリウスは両親に内緒で街へ赴くが、そこで見たのはカミーユという名の騎士を束ねる隊長となったカイルだった。名を変え、昔と異なり素っ気ない態度を取るカミルに驚きつつも、自分との関わりを一切断ちたいのだと理解したユリウスは村へと帰るが―。

ユリウスは見た目が他の人と異なる、という薄幸さを持ち合わせていて、そんなユリウスがただ一人信頼したカイルに冷たくされる、というシリアスベースで始まる物語なのですが、すごくいろいろなバックボーンが混ざり合ったストーリー展開のお話でした。

カミルがなぜカミーユという名に変わったのか。
なぜ、再会したユリウスに冷たかったのか。
なぜ、18歳というまだ若い年のカミーユが大国・オシアノスの騎士団の隊長にまで上り詰めているのか。

うんうん、カミーユにはユリウスには告げていない秘密があるんだね?

とか思いつつ読み進めたのですが。
タイトルの、「片翼」、「アルファ竜」「黄金のオメガ」。
これらが端的に物語のバックボーンを表している感じ。カミーユの、ユリウスには告げていない秘密は一体…?という部分を軸に進む物語です。

カミーユって、良いところのお坊ちゃんで、アルファなんでしょ?と、単純に予想していましたが、んー、なんて言うんだろうな。バックボーンがてんこ盛り過ぎる、っていうのか…。

バックボーンのそれぞれ単品は非常に面白いんですよ。カミーユが意外に薄幸だったり、ユリウスの金髪碧眼の理由とかそれに起因した薄幸さだったり。アルファとか、竜とか、そういうファンタジー要素も面白い。面白いのですが、詰め込み過ぎていて、読んでいてちょっとお腹いっぱい、という感想が一番しっくりくる感じ。次から次へといろいろ起こりすぎて一つのことを消化する前にさらなる因子に追いかけられる、っていえばいいのかな。

沢山のバックボーンを孕みつつ、それらがきちんとつながって話に奥行きを与えるストーリー展開ではあるのですが、ちょっと多すぎたかなあ、と。完全に個人的な好みの問題ですが。

が、これだけのバックボーンを上手に生かしつつきちんとまとまったストーリー展開は秀逸でした。ベースとしてはシリアスな雰囲気が終始漂う作品ではありますが、展開としてはシリアス過ぎる事はないので痛すぎるお話が苦手な方にはお勧めな1冊かと思います。

設定は斬新で面白いが

篁さんの絵柄がとっても好きなんです。
しかも新選組を舞台に描いたお話ということで手に取りました。「新選組」って萌えが滾るよね…。と思うのは私だけではないと思うのですが。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






主人公は大学生の総介。
彼は沖田総司の末裔で、沖田家の面々はそのことを誇りに思っている。そして、そのほとんどがアルファ。総介は沖田総司に瓜二つということで幼少期から可愛がられていたが、12歳の時に行った検査でアルファではなくオメガだということが発覚する。それ以降、彼は「オメガである」というだけで一族から疎まれながら生きてきた。

そんな総介に優しくしてくれるのは叔父で医者の響だけ。
その日もヒートを起こしアルファに襲われ逃げてきた総介は、響が処方してくれたヒートを押さえる抑制剤を摂取するが、摂取量を間違い意識を失ってしまう。そして気づいたとき、総介は幕末にタイムスリップしていて―?

総介は、沖田総司に瓜二つ。
ということで、トリップした先で総介が出会う新選組の皆さんは総介を総司だと信じて疑わない。剣豪だった総司のように剣をふるえない総介だったが、そんな彼をサポートしてくれるのが新選組副長の土方歳三。

はじめは土方も総介を総司だと思っていたが、別人だと気づき、そしてヒートを起こした総介を助ける意味合いもあって身体を重ねるようになるが…。

んー。
んんー。

総介は幕末にトリップしてしまいますが、総介と入れ替わるように総司も姿を消す。総司がどこへ行ってしまったのか、という部分はさておきですね。

いや。
いやいやいや。
いくら瓜二つと言えども、別人を総司を間違えるなんてことありますかね。
新選組きっての剣豪と呼ばれた男が剣をふるえないんですよ。
さらに見た目、しぐさ、言葉遣い。色々諸々、全然違うでしょうに…。
いくら何でも無理がありすぎる。

で、何より、土方と身体を重ねる過程が急すぎて話に入り込めない。

土方は総司に恋愛感情を抱いていたんでしょうか?
抱いていたのであれば、他人の総介を抱くのはストーリーとして無理があるし、そうではなくて総介という人物に好意を抱いて、という展開なら話が早すぎやしませんか、とか思ってしまってですね、うーん、ちょっぴりしょっぱい気持ちになりました。総司もオメガであったようで、そしてそのことを土方は知っていたようで、そのストーリー展開が面白かったのですが、突っ込みどころが多くて話に入り込めなかった。

上巻ではこの二人に加えもう一人キーパーソンが登場します。
新選組三番隊組長の斎藤一。
総介が総司ではないと序盤で気づきます。それには理由があってー。

という展開なのですが、この斎藤という人物がとってもドツボに突き刺さる人物でした。飄々としていて掴みどころがなく、けれど新選組の軸を成す人物。彼の存在のおかげで、萌えが供給された感がありました。

総介は元の時代に戻ることができるのか、土方との関係の行方は、そして、新選組の今後は―。

というところで上巻は終わり、下巻へと続きます。
上巻だけでは話は完結しませんので、下巻もまとめて買われることをお勧めします。正直評価は中立なのですが篁さんの絵柄が綺麗なことと、下巻も読まないと評価が難しい、ということでちょっぴりおまけして「萌」で。

壮大なテーマを描いた秀作

木下さんの挿絵に釣られるようにしてお買い上げ。
華藤さんの新刊は、華藤先生らしいヨーロッパが舞台のお話。ヨーロッパ、というかパリなんですけれども。ちょっぴりファンタジー要素が盛り込まれた、華藤さんらしい世界観のお話でした。









時は1900年。
パリで開催された万博博覧会に、日本の舞台芸術作品が公演されることになり、それに伴い能楽の保月流が講演することになっていた。保月流の宗家はまだ若き18歳の若宗家・勇舞。勇舞の異母兄の佳依は長子でありながら宗家に選ばれることはなく、日々勇舞に虐げられていた。

宗家として責務を果たすことなく遊び惚ける勇舞とは異なり、裏方として己のできることを一生懸命にこなそうとする佳依。そんな佳依は、ある日勇舞の無謀な依頼により舞台に立っていた際に舞台装置のアクシデントに見舞われ事故に遭いかけてしまう。そんな彼を救ってくれたのは見目麗しい伯爵と呼ばれる人物だったー。

薄幸受けちゃんがスパダリに愛でられ幸せを手に入れるお話かな?

と、そう思いつつ読み進めました。

が、ああ、そう来る?という予想を斜め上を行くストーリー展開でした。

そもそも佳依はフランス語がそこそこ話せる人物なのですが、それには理由がある。亡き母が遺してくれたフランスを舞台にしたお伽噺。その話が好きすぎて、フランス語を学び始めたという経緯がある。

そして、その伯爵と呼ばれる人物は、まさにその童話の主人公でー?

あらすじにも書いてあるのでここでも書いてしまいますが、伯爵は死神。あの世とこの世を繋ぐ人物、と言ってもいいかもしれません。伯爵の存在を介し、人の死、生きるということ、そして愛するということ。それらを上手に絡ませながら進むストーリー展開でした。

佳依は義母弟に邪険に扱われるというお話なので、さらに保月流の制裁が生んだ長子という身分でありながら宗家には選ばれていないという境遇で、序盤こそ佳依の不憫さが気の毒になりますが、全体としてはシリアスベースのお話ではありません。伯爵に大切にされるから、ということもありますが、それ以前にとある出来事を介し勇舞と和解するからでして。そして何より、勇舞は、佳依を深く愛していたんだなあ、というのが分かるからでして。佳依という男の子は薄幸で不憫ではありますが、非常にガッツのある男気溢れたナイスガイなのです。

佳依という、薄幸な受けさん。
がメインのお話なんだと、途中まで思っていました。が、今作品の主人公は紛れもなく伯爵の方です。

愛を知らず、孤独で、でもそれを哀しいと思う事すらできない、わからない。
そんな彼が佳依と出会い、恋をして、そして彼が望んだこととは―。

シリアスなんだけれどシリアス過ぎない。
ほのぼのなお話かと思いきやかなり切ない。
そんな不思議なバランスを持った作品でした。

生と死。
愛するということ。
壮大なテーマを、シリアス過ぎずコミカル過ぎずに描き切った作品で、読後は心がほっこりと温かくなりました。
その世界観を見事に描き切ったのが木下さん。
木下さんの優しく温かなイラストが、もうめちゃめちゃ素敵でした。