再読しての感想です。
初読のときはそこまでなかった気がするのだけども、攻めにも受けにもなんだかイライラしてしまいました。
多和田はかっこよくて紳士で落ち着きのある、仕事のできるホテルマン。
なんだけど、恋愛となると全くの赤ちゃん同然。
駆け引きも知らず、ぜーんぶ自分を見せちゃって。
素直すぎピュアすぎ優しすぎ。
よりによってなんで新山と出会ってしまうか。
もともとの人と出会っていればなあ。
和樹がちゃんと間に入れていればなあ。
新山の態度すべてにむかつきました。
とりあえず態度が全部上から!って感じで偉そう。
いいところあるかな?いやない(と思う)
最初から好奇心で多和田に近寄っているし、脚本のネタにしようとするし、すぐ手を出すし、嘘ばかりつくし。
そしてそれを怒らずに許してしまう多和田にもイラ。
人気ドラマの脚本のネタにされてた(しかも、側から見ても似てると思うくらいそっくりな設定て!)こと、新山を避けるだけじゃなくて、がつんと怒らなきゃ。
そして、和樹と3人でもめて飛び出して行った新山を追いかけちゃうところがね、ほんとにね、多和田さん、ダメだよー。
泣いたくらいで許してはいけない。
ふだんの新山からすると、ありえないほどの弱さを見せているのだろうけど…。
「ごめんな」と謝ってはいるけど、それはただ自分の感情を吐露しているだけであって、きちんと多和田に謝罪して反省しているところがみたかったです。
書き下ろしも含めて、その後もなんだか新山の子供っぽい態度が変わらなかったのが残念。
多和田のことを愛しているなら、誠実な愛情を向けてほしい。多和田が安心できるようなかたちの優しさを身につけて欲しい。
だいたい自分が築いてきたテキトーな人間関係は棚に上げて、人に求めすぎなんですよ。
砂原先生は大好きだし、文章がうまいからこんなにむかついちゃうんだってわかってますけど、とりあえず続編をいま読み返すのはやめておこうと思います。
高久先生の描くふたりがまたイケメンで良すぎるから、よけいに新山のイケメンでふてぶてしい表情にムッとしてしまいました。
まず、表紙のふたり(広人と洸)を見れば違うのはわかるのですが、はじめに登場した早乙女が主人公感のあるカッコ良さだったので、受けなのかな?と勘違いしてしまいました。
幼馴染かと問われて、少し含みのある返答だったこともあり。
転生前ミカ→早乙女、みたいに実は中身入れ替わっちゃってて、見た目ミカ(中身ブライアン)が現れたとしても騙されずに真の見る目を問われる攻め、みたいな展開かと変な予測をして、三角関係になるのかもと、自分の中で複雑化しすぎました。
全然もっとまっすぐなお話です。
攻めの広人は前世ではルーク(由緒ある家の嫡男)
早乙女はブライアン(従者)
幼い頃高熱を出したときに、ふたりとも転生前の記憶を取り戻したのでした。
そして広人が探し続けるのが最愛の人、ミカ(配達人)
ようやく同じ大学でミカだったであろう洸を見つけます。雰囲気そのまま、儚げで可愛くてキラキラ。
ただ、洸は前世の記憶はありません。
広人の想いはあふれ洸に急接近しますが、あまりにも洸のなかにミカを見すぎていて暴走に近いものがあり、広人の気持ちが見えてきません。
また、洸も優しくてかっこいい広人に惹かれ、時折よぎるルークの記憶とも重なり、ドキドキ意識するようになります。
一気に身体を重ねますが、このスピード感、これはもう、お互いが運命だとしかいいようがないのですよね。
ただ、冒頭に匂わせられていた通り、前世でのふたりの別れはつらいものでした。
身分の違うふたりが恋仲であったために、スパイの濡れ衣を着せられ、斬首されるという苦しい最期を迎えたミカ。そしてそれを救えなかったルーク。
ルークの立場を考え、斬首を止めに行かせなかったブライアン。
洸もついに高熱を出し、全てを思い出します。
つらい記憶が去来し、洸は混乱し、広人を振り払ってしまいます。
そして前世でミカを救えなかったことを激しく攻める広人。
前世と今が混乱し、どうしていいか分からない広人の背中を押したのは、早乙女の「いまは王子じゃない、広人だ」というひとことでした。
あまりにも前世を追いすぎていた広人。
洸を見つけ出し、ルークであり広人である自分で、ミカであり洸を、すべてをひっくるめて愛していることを告げます。
洸も、最期はつらかったけれど、幸せだったこともルークの幸せを願い続けていたことも思い出し、ようやくまた巡り会えたことで、好きだと伝えられました。
広人(ルーク)は正直、いまいちビシっとしきれない感じはします。
でもその頼りなさを、洸(ミカ)の健気さが支えていく感じのふたりなんだと思います。
洸のために、広人にはもっともっと強くなって欲しい!
早乙女は、斬首を止めに行かせなかった負い目があったから、純粋にふたりの幸せを願っていたんだろうけど、淡い恋心もなかったのかな?
従者モノも好きなので、ちょっと勝手に感情移入してしまいました。
美しい山のふもと、高原にあるオーベルジュが舞台のお話です。
名前がそれっぽいので実在する山や高原なのだと思いましたが、架空とのこと。
それでも作中に出てくる草花の名前を検索しながら読んでいくと、色とりどりの美しい山の景色を思い描くことができて、爽やかな気持ちになれます。
こんなふうに美しい風景をいくつもの作品に遺してくれた夕映先生には、感謝が尽きることはありません。
今回2回目読了での感想となりますが、初読後から残っていた印象とはだいぶ変わった気がします。
穂高が初めて梓を見かけたとき「山の精」のように見えたとありますが、私もなんとなく梓は物静かで、落ち着いたきれいな人というイメージが強く残っていました。
心臓病を患っていて、幼い頃から常に死を隣に感じながら、自分自身がなにかにとらわれたり、また自分の存在を誰かにとって大きなものにしないように、凪の状態で生きてきたというのは確かだと思います。
だけど、本当に好きになったもの。
山や、穂高のことを好きな気持ち、秘めた情熱は意外とダダ漏れだったり、人前でも爆発させたりしているんですね。
中学生の時の友達との仲違いもそうだし。
穂高が山中で音信不通になって、無事戻ってきたときもそうだし。
梓の気持ちを穂高はもちろん、前々からきっとお母さんも分かっていたと思います。
お付き合いを始めてからは、びっくりするほど積極的になる梓。穂高だって、自分と同じようにいつかは死ぬのだと理解してからは、確かに生まれ変わったのかもしれません。
セックスは禁止ではありませんが、心臓にとっては要注意事項。
梓は最後までしないことで穂高に負担をかけていると思っているけど、穂高は心から梓の身体を心配して、大事にしたいと考えています。
気持ちはどちらの立場も理解できます。
医師と相談のもと、少しずつ深く触れ合っていく場面には、ふたりのドキドキや不安や嬉しさが伝わってくるようでした。
穂高の昇進や転居に感化されたり、これまで行ったことのなかった標高の高い山での催しに参加してみたり、不安に思いつつも手術への決意を固めていく梓は、生きることに懸命になろうとしていて、とても応援したくなりました。
手術が成功して、初めての登山で指輪の誓い(穂高は本当にかっこいい!)
そして初めての最後までのセックス。
静かでゆっくりで、でもこれまで抑えてきたお互いを欲しいという気持ちを存分にぶつけ合っていて、ようやく想いが叶った、幸せのひとときを見ることができました。
梓についてばかり書いていますが、やっぱりこのお話を支えるのは穂高の我慢強さや落ち着きだと思います。
山を登る人って自然と身につきそうだけど、穂高は達観してる域でしょう。
片思い数年、両思いになってからも暴走せず、常に梓ファースト。
どんな梓も、いつでもどんとこい。
そして指輪の誓い、完璧すぎます。
誰にでも限りある人生。
ふたりの素敵な生き方を見せてもらいました。