老舗にもいろいろありまして

shinise nimo iroiro arimashite

老舗にもいろいろありまして
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神2
  • 萌×29
  • 萌5
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

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レビュー数
3
得点
62
評価数
18
平均
3.6 / 5
神率
11.1%
著者
花川戸菖蒲 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
秋吉しま 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
価格
¥657(税抜)  
ISBN
9784576190426

あらすじ

わたしにとって、価値のあるもの――春告くん、きみの時間が欲しい

窮地に陥った老舗染物店「染谷」に救済話を持ちかけてきたのは、和菓子の老舗「九露澤」の御曹司・黒澤貴寛。
しかしそれは春告が担保になるという条件付きで!?

春告の実家「染谷」は江戸小紋の老舗の染元ながら家族経営の零細企業。
そんな染谷に大口注文を持ちかけてきたのは室町時代創業の和菓子の名店「九露澤」。
だが両者には江戸時代からの因縁が。
家業の存続かプライドか――春告は専務の黒澤の提案に従い愛人契約を受けることに。
厳格な経営者の反面、私生活では失恋続きのヘタレゲイ・黒澤と、生粋の江戸っ子・春告。
黒澤の一目惚れから始まった老舗版ロミジュリはハッピーエンドとなるや否や!?

表題作老舗にもいろいろありまして

黒澤貴寛,29歳,天下の老舗和菓子店「九露澤」の嫡男
染谷春告,25歳,江戸小紋の老舗の染元の長男

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数3

私が知ってる「借金のカタに」系の受けと、全然違う!

こちら、融資をして貰う代わりに愛人契約をする受けと、もうBLのテッパン作品になります。

が、私が知ってるこれまでのセオリーと全然違う!
私が知ってる「借金のカタに」系の不憫受けと、180度違う!!

何だろう・・・。
二人認識のズレが面白くて仕方ない上に、なんかひたすら健気でヘタレな攻め(!)が可愛くて・・・。
まさかこの設定で、「健気な攻めが可愛い」と感想を持つ事になるとは思いもよらなかったですよ。
これは、男前受けとヘタレワンコ攻めがお好きな方に、ぜひ読んでいただきたいです。


内容ですが、老舗和菓子の名店「九露澤」の次期社長・黒澤×老舗の染元ながら零細の「染谷」の長男・春告による、現代版ロミジュリと言った感じのお話になります。
ラブコメテイストです。

先祖代々の因縁により、和菓子の名店・九露澤に強い敵対心を持つ、染元の「染谷」。
零細である「染谷」の資金繰りに困った長男の春告は、「九露澤」の次期社長・黒澤からの提案に従い愛人契約を受ける事で、資金援助の約束を取り付けますがー・・・と言うものです。

こちら面白いのがですね、このあらすじから想像する攻めと受けのキャラクターが、セオリーと真逆ってトコなんですよ。
まぁ大抵、傲慢な攻めに不憫で大人しやかな美人受けを想像するのでは無いかと思うんですけど、今回に限ってはヘタレワンコな攻めに気っ風の良い男前受け。

そもそもですね、黒澤ですが、ホテルで偶然出会った春告に一目惚れをしてたりするんですね。
で、その後、仕事上で「染谷」に大口注文を持ちかけるも、過去の因縁からけんもほろろに断れる。
そこで、どうしても「染谷」の商品が欲しい黒澤は、銀行に圧力を掛けて染谷を資金難に追い込んだ。
で、困っている染谷にここぞとばかりに「資金の援助を」と申し込むと、何とその染谷の人間はかのホテルで一目惚れした相手だった・・・と言う経緯だったりします。

黒澤の面白い所ですが、仕事面では冷酷で非情な判断も出来ちゃうくせに、一歩仕事を離れると、とたんにヘタレで夢見がちなゲイだと言う部分だと思うんですよね。
出来心から、ついつい「融資する代わりに貴方の時間が欲しい」と言っちゃうんですよ。
これ、春告の方では、「融資の代わりに身体を差し出せ」と言う条件だと理解する。
が、黒澤の方では言葉通りの意味で、一緒に食事したりと共に時間を過ごして欲しいだけだった。

まぁそんなワケで、最初はこの二人の認識のズレに笑えるんですよ。
決死の覚悟で黒澤の元に赴く春告。
しかし、黒澤はやたら嬉しそうに高級料理を奢ってくれ、その後は紳士的に送り届けてくれる。
「あれ?」みたいな。

で、ここから更に面白いのが、春告の潔い行動。
彼はですね、グジグジ悩んだりせず、ド直球で真意を聞いちゃうんですよね。
で、互いの盛大な勘違いに気付く・・・。

またこの後も面白くて、本来の男前な性格を発揮して、黒澤との食事やドライブをストレートに楽しむ春告。
そんな春告に恋心を募らせつつ、嬉しそうに彼の姿を追う黒澤みたいな。
いや、しつこいですが「融資の代わりに~」からこの関係性は全然想像がつかなかったですよ。

ここにですね、黒澤の見合い話だったり、例の「資金難に追い込んだ」件を隠していた事でスレ違いが生じて・・・と言った流れ。

う~ん・・・。
もう、最後の最後まで春告が男前すぎてシビれちゃうんですけど。
あと、相変わらず黒澤はヘタレなんですけど、そこがまた可愛く感じちゃうんですよ。
何だろう・・・。
しょげてる情けないワンコが、なんか愛おしい感じ。

と、いろいろ予想外の展開がとても楽しい作品。
お仕事描写がしっかりされてるのも魅力的でした。

9

謎は残ったまま

花川戸さん、本屋さんシリーズが大好きで全部持ってます。今回は老舗の大手和菓子店の息子×老舗の江戸小紋の染元(零細企業)の息子というちょっと変わった設定。私もちるちる記事での「愛人契約」という単語に興味を持ったクチですが。

結局それはちょっとした誤解だったのですが、2人の店は300年前からの因縁がありロミジュリ要素も入ってるのです。業種は違えど老舗店同士ということで多くを語らずとも話が通じるというシーンはちょっと変わったお仕事BLとして面白かったです。エロシーンも花川戸さんの書く受けはエロ可愛くて萌えます。イラストも可愛かったです。攻めはスパダリで普段の性格は紳士だけど仕事の時はシビアな人でした。

ストーリー・キャラクター共に楽しめる良作でしたが、過去の因縁話で何故昔和菓子店は染元の店にあんな酷いことをしたんだろう?とその原因は最後までわからなかったので気にかかりました。あと攻めが性欲処理でお世話になっていたゲイクラブの専属だったという人も円満に解約してくれたんだろうかとちょっと気になりました。

1

老舗同士の過去の因縁



老舗の跡継ぎ同士のロミジュリ展開かと思いきや、バックボーンとしての老舗の息子というのがあるくらいで、でそれが二人の仲を引き裂くなんて展開にならず、ちょっと拍子抜けしました。


<あらすじ>
春告(受け)は老舗とはいえ実態は零細企業の江戸小紋の染元「染谷」の長男。
営業として販路拡大に手を尽くしているのですが、なかなか大きな成果は上げられていません。
そんな時、因縁の相手である老舗和菓子屋「九露澤」から大口の注文が入ります。
注文は喉から手が出るほど欲しいものですが、春告の父親はけんもほろろに追い返すのです。
実は、300年前「九露澤」からの依頼をドタキャンされた「染谷」は多大な負債を負い、一度廃業せざるを得ない憂き目にあっており、今だに謝罪のないことに心底恨みに思っていたのです。
「九露澤」の御曹司で専務取締役の黒澤(攻め)は「九露澤」が過去にした行いを知り、謝罪に向かうのですが、絶対に受けないと追い返されてしまいます。
どうしても「染谷」に仕事を受けてほしい黒澤は銀行に圧力をかけ「染谷」の融資を止めてしまうという暴挙に出ます。
父親は倒れてしまうし、どうしようもなくなった春告は黒澤の注文を受け、自分を担保に融資を受けるのです。
春告は「きみの時間が欲しい」と言われたため、てっきり愛人契約だと思ったのに、呼ばれても食事だけして帰る日々が続き、決死の想いで受けたのにと拍子抜けするのです。


春告は染元の長男でありながらセンスがないため早々に跡継ぎから外され、営業を一手に引き受けています。
職人気質の父親と違い、経営の観点から過去の因縁とは切り離して行動する理性的なところもあり、染め物のセンスはなかったかもしれませんが、経営者としての資質は持っている人だと思われます。
穏やかそうにみえて江戸っ子らしく短気で、それゆえ男気のある気風の良い性格は好感が持てます。
すぐヘタレる黒澤を引っ張っていく力強さは黒澤には貴重なの心のオアシスになれるのではないでしょうか。
ただ、ちょっとちょろすぎやしないかと思いました。
愛人契約だと思っていたら、デートに付き合ってもらいたかっただけだと聞き、紳士的な態度を崩さない黒澤にあっさりほだされる春告。
ノンケだったはずなのに、全く抵抗なく黒澤を受け入れすっかりはまってしまうのはちょっと不自然に感じました。


黒澤は老舗和菓子屋の御曹司。
長男に生まれながらゲイであるため、後継を作ることができず家族からは仕事で役に立たなければ家を追い出されるという会社でも家でもくつろげるところがありません。
仕事では非常に優秀なのに、恋愛になると好きになるのはノンケばかりで振られ続けているヘタレです。
春告に対しても、初めは融資の代償に「春告の時間」を要求したのに、結局春告が気持ちを寄せてくれるようになったら、自分がした仕打ちがばれるのが怖くなって逃げようとするヘタレ。


話は視点がころころ変わるのでちょっと読みづらかったです。
段落ごとに視点が変わる展開で始まった話でしたが、途中から春告の視点で進みながら間に黒澤や黒澤の秘書・小野塚の視点がと短い間隔で入るので、混乱しそうになりました。
時間が前後してもいいので、段落はまとめてあったほうが読みやすかったのではないかと思いました。

見合い展開でちょっとすれ違いはあるけど、当て馬が出てくることも実家が出てくることもなく、自分がやった卑劣な方法を春告に知られて軽蔑されるのが怖くヘタレるくらいで大きなトラブルはなく話は進んだと思います、
読んでいるときは、これがのちのち大きな禍根になるのではと思っていた黒澤が融資を受けられなくしたことに対しての春告の反応があっさりしすぎていてちょっと拍子抜けしました。
元はといえば「九露澤」のせいで始まった因縁なのに、自分たちの要求を受け入れてくれないからと自分たちの利益だけを優先して画策したことはそんなに簡単に許していいのかと。せめて春告の父親が言う通り、筋を通すなら現社長が謝罪に来るべきだったではないかと。
父親ほど「九露澤」への恩讐にとらわれておらず現実主義な春告だからそれほど気にならないのだろうか。
父親が入院している間に仕事を受けたことを激怒する父親に「300年前の仇を今回500万を無担保で貸してくれたことの恩でチャラだ」って言ってたけど、銀行からの融資が止まったのは黒澤が画策したからであってこれは恩なのか?仇が増えただけじゃないの?と思ってしまいもやっとしました。
このせいで、春告の父親は倒れてしまったんだし、500万は貰ってもいいんじゃないかと思うのですが、ビジネスというのはそういうもんなんでしょうかね。
ともあれ、経営に長けている黒澤のアドバイスで売り上げも伸びてるし、トータルで見ると、春告は恋人を得、仕事の相談相手もでき、売り上げも伸びと万々歳だといっていいのかな。
ただ、黒澤がやったことに対しては罪悪感で黒澤がヘタレるくらいで大したダメージを受けなかったのがちょっと残念でした。
黒澤の実績を示さなければならないという状況は同情しますが、もう少し波風たってもよかったんじゃないかと思って、肩透かしを食ったような気がしてどうもすっきりしない読後でした。

仕事絡みでは思うところはありましたが、老舗同士考え方や悩みが似ていて、お互いいいパートナーが見つかって良かったなと思いました。
もし、春告の父親とか出てきても、春告ならきっと気持ちいい啖呵を切って父親を黙らせるじゃないかな。

後、何故昔の「九露澤」があんなことをしたのか分かったらよかったな。やむにやまれぬ事情があったとかで両家が和解できればスッキリしたのですが。

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