冷徹な獣魔王×生け贄の青年の、幻想的ラブファンタジー!

獣魔王と幸福の白い翼

jumaou to koufuku no shiroi tsubasa

獣魔王と幸福の白い翼
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神20
  • 萌×224
  • 萌5
  • 中立3
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
10
得点
214
評価数
59
平均
3.8 / 5
神率
33.9%
著者
月東湊 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
価格
¥639(税抜)  
ISBN
9784041068199

あらすじ

獣魔王の生け贄として捧げられた孤児のフェイ。しかし獣魔王様に仕えるために勉学に励んできたと主張するフェイに一目置いた獣魔王はフェイを側に置くことに。自分を殺さない彼の優しさにフェイは気づき始めるが…。

表題作獣魔王と幸福の白い翼

統牙,天空城で魔人や獣人を統治する獣魔王
フェイ,18歳,獣魔王への貢物として育てられた捨て子

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数10

読後、イマジンを口ずさんだりして

長い間BLを読んでいると「人生で一番大切なのは恋!私は恋に生きるっ!」と単純に言えたら良いのにねぇ……と思うことがままあります。
でも実際の世の中はそんなに単純ではないですよね?
特に社会の中で『責任』なんていうものを持ってしまったら、なかなかそうはいかない訳です。
で、責任というやつは重くてしんどいものなんですけれども、それと同時に甘美なものでもあるんですよね。誰かの生活を背負って立っているからこそ、自分の価値も信じられる。
だからこそ、背負っている人達と愛する人の存在を秤にかけなければならない事態に陥ってしまった時、登場人物は悩み苦しむ訳ですよ。

私、攻めさんがこの『悩み苦しむ』をやってくれるお話が大好きなんだなー!
この本はまさしく、まさしく、そういうお話でございます。
苦悩する獣魔王……ああ、美味しすぎてたまりません。

もう一つ、このお話が面白いのは『文化の衝突』を描いているようにも読めるところです。
魔人や獣人は、人間や小鳥人のことを『食べるもの』と思っているんですね。
で、人間にとって魔人や獣人は『自分たちを喰らう恐ろしいもの』でしかない。
でも、生け贄として獣魔王に捧げられたフェイは、そして反対の立場に立っている獣魔王や学者魔人は、お互いに交流する中で単に『喰い、喰われる立場』ではないものを見つけていくんです。
互いの中に尊敬すべき点を、愛すべき点を発見していく、という。
これがね、なかなか私の心を大きく揺らしてくれたんですよ。
互いの違いは人間か魔人か(あるいは獣人か小鳥人か)ということではなく『そいつがイイ奴か、嫌な奴か』という点に尽きる訳です。

ハラハラドキドキする展開が続くだけでも面白いのに、お話の後ろに控えているテーマがそんな風なので、読み終えた後かなりすっきりと美しい気持ちになりました。

……いや、攻めさんの悩みっぷり、苦悩っぷりに大萌えしただけなのかもしれませんけど(笑)。

5

甘さと切なさのバランスが絶妙

泣ける感動作なんですよ。
孤独で優しい獣魔王と、生贄として育てられた青年の。
いやもう、あまりに切なくて泣けて、最後は感動して泣けると申しましょうか。
また、すごくロマンティックだったり、心がホッコリする優しいエピソードなんかも多くてですね。特に二人の気持ちが通じ合ってからの甘さと言ったら・・・!!
そんな緩急の付け方の巧みさにも唸らされた作品でした。


内容です。
獣魔王の生贄として育てられた青年・フェイ。18になり獣魔王の住む天空城に送られます。
早速、魔人達に喰われそうになるものの、敵対する小鳥人の文字を読める特技を買われ、期限付きで生かしておいて貰える事に。
そんな日々の中、獣魔王の時折見せる不器用な優しさに気付き、少しずつ打ち解けていく二人。しかしフェイには、獣魔王に隠している秘密があってー・・・というものです。


まず、フェイの秘密ですが、本編ではかなり早い段階で明かされます。この秘密がストーリーに置いてかなり重要な部分になりますが、一応ネタバレなしで。
で、この部分のネタバレを無しにしようとすると、かなりレビューで書ける範囲が狭まっちゃうんですよね・・・。

う~ん・・・。とりあえず、当たり障りない事だけ書かせていただきます。
生贄として魔人や獣人の城に連れてこられてと、最初はかなり痛々しいのです。村人や魔人達の前では気丈に振る舞っていても、実際には酷く怯えているフェイが可哀想で。
が、このフェイ。そんな絶望的な状況でも諦める事はせず、また結構機転も利きまして。その機転によって、とりあえずですが殺される事を免れるワケです。
運命に流される事をよしとしない、その意志の強さが好感を持たせてくれるんですね。

なのですが、本当に萌えるのはここから!!
獣魔王の部屋に閉じ込められ、小鳥人の書物等を翻訳する事になるのですが、ここからがすごくほのぼの、そして甘くなるのです。
一日中、必死で翻訳を続けるフェイ。そんなフェイを、気に掛ける素振りを見せる獣魔王。
実はフェイは、自分の秘密を隠しながら、とある「目的」の為に翻訳を必死にやっています。
「獣魔王様の役に立ちたいのです」と訴えるフェイに対して、どこか一線を引いているような態度の獣魔王。まぁ、誰が聞いてもフェイの言ってる事って嘘くさいので、当然ちゃあ当然ですが。

ここでフェイにとって衝撃の事実が分かり、フェイは一旦絶望します。ただ、ここが転機となり、ゆっくり心を通わせ始める二人・・・。

何でしょうね・・・。二人とも、とても孤独なんです。生贄にされる為だけに育てられ、心の拠り所にしていた事も、ある真実を知って崩れ去ってしまったフェイ。
また、獣魔王にも実は隠している秘密があり、そのせいで心を殺して「恐ろしい獣魔王」を演じ続けなければならない苦悩。
そんな二人が徐々に心を通わせて行く過程が丁寧に綴られ、とてもほのぼのさせてくれるんですね。
孤独な二人が寄り添い合う事によって、その孤独を癒していくのに胸が熱くなるのです。
それと、最初はとても恐ろしい印象だった獣魔王が、フェイのペースに巻き込まれ、調子を崩していく様にも萌えました。
「獣魔王様は優しいですよ」と言われ、「そなたと話していると訳がわからなくなる」みたいな。
ここから虹が出てるからと知らせに来たり、珍しい花が咲くからと、フェイを連れ出して二人で寄り添って鑑賞。やたらフェイにキスをしたがるのも可愛いんですよね。
溺愛系に変貌じゃないか・・・。

と、ほのぼの&甘々エピソードですっかり油断させられた後、かなり切ない展開が来ます。
最初は自分がとにかく助かる事を第一にしていたフェイ。それが自分を犠牲にしてもと言う、気持ちの変化に泣かされました。
ここでの、自分が居なくなることで、獣魔王をまた孤独にしてしまうというフェイのモノローグにも涙でした(´;ω;`)


ところでその獣魔王ですが、不器用なりの愛情表現に萌える部分が多々あるのですが、ただ詰めが甘い!
そもそもフェイが殺されそうになったのも、彼の浮かれた行動がキッカケと言えばキッカケだしね。
あと、フェイが捕まったシーン。あのー、ここは颯爽と助けてくれないと!! そうなると話が成り立たなくなるのも分かりますが・・・。
ここらへんで若干攻めにイラついたので「萌2」です。

ただ、全体的にはとても練られたストーリーに、甘さや切なさと言うバランスの良さ。そして魅力的なキャラクターで、とても素敵な作品でした。学者魔人とか、こっちが攻めでもいいくらい。彼もホントいいキャラでした。

やたら長ったらしい上に、要領を得ないレビューで申し訳ありません(^^ゞ




8

シリアスそうに見えて、実は甘々

みずかねさんの美しい表紙に釣られて購入。

内容はすでに書いてくださっているので感想を。





魔人たちを統べる獣魔王と、その獣魔王に生贄として捧げられるために育てられた青年の恋のお話。

魔人たちと人間との過去の軋轢とか、そこから獣魔王に生贄が捧げられることになった経緯とか、生贄は金髪で緑色の瞳を持つ18歳の子どもである、とか。

そういった背景が読みやすい文体でつづられていて、ページを捲る手が止められませんでした。

生贄として獣魔王に捧げられたのはフェイ。

孤児で山で弱っていたところを救われ、村人たちに大切に育ててもらうが、すべては「獣魔王への生贄」として育てられただけだった。
という過酷な過去を持ちながらも、いつかここから逃げ出すという強い意志を持ったなかなか逞しい子でした。

そして、フェイが、「逃げることができる」と思うのにはある理由がある。

フェイと、そして獣魔王さまが抱える彼らの「秘密」がなかなか面白く、そこかしこに撒かれた伏線を回収しつつ二転三転するストーリー展開で非常に面白かった。

ただ、獣魔王として怖く、威厳のある存在でいようとする獣魔王に、フェイが「獣魔王さまは優しい」と告げるシーンがちょっとくどかったように思います。

生贄を食べ、魔人や獣人たちのトップであり続けなくてはならない獣魔王と、彼に捧げられた生贄の存在であるフェイとの、少しずつ寄り添っていく気持ちを描きたかったのかなと思いましたが、その件が多すぎた感が。

また、魔人たちに棲家を追われた小鳥人たち、という事で、薄幸で儚げなイメージがある小鳥人たちですが、実はしたたかで残虐な性格だという所も描かれていて、そこが非常に面白かった。なので、小鳥人たちがいまどうしているのかとか、小鳥人と獣魔王そしてフェイとの関わりをもう少し描いてくれたら、ストーリーにより厚みが出たのでは、と思うのです。

あと個人的にめっちゃ好きだったのが獣魔王の弟の奇顎。
フェイはある理由から獣魔王の部屋に閉じこもっているので、他の魔人たちとのかかわりがなかったのが非常に残念でした。そんな中、唯一接点があったのが奇顎なのですが、彼がナイスガイ。

ぜひとも彼のスピンオフ作品を書いてほしいです。

フェイや獣魔王さまのバックボーンがかなりシリアスなのですが、ストーリーとしては甘々。特にフェイと獣魔王さまがくっついてからはめっちゃ甘いです。

シリアスな話が読みたい、と思う時はやや不向きかもしれませんが、 スーパー攻め様に愛され幸せを手に入れる薄幸受け、のストーリーがお好きな方にはお勧めな作品かと思います。

5

血の中に潜む秘密を隠して

今回は魔人や獣人を統治する獣魔王と
獣魔王への貢物として育てられた捨て子のお話です。

出生の秘密を持つ受様が幸せな未来を掴むまで。

受様の住む村は
湖の周囲を囲む7つの村の一つです。

その湖の真ん中には
獣人と魔人が住む「天空城」が聳え立ち
3年おきに貢物を要求されます。

獣魔王が求めるのは
かつて獣人や魔人を苦しめた小鳥人で
人間が小鳥人を捕えて捧げる事を
獣魔王への忠誠の証としたのです。

しかし、小鳥人が激減した今、
持ち回りで貢物の当番なった村では
金髪で緑の目の18歳の子供を
代用として捧げています。

受様は湖の周辺の森で疲弊していたところを
見つけられた金髪で緑の目の捨て子で
村長からいずれ獣魔王にお仕えするのだと
言い聞かされて育てられます。

長じて受様は「お仕えする」事の
本当の意味(生贄になる)を知りますが
そのために育てられた身には
選べる未来などありません。

そして獣魔王との約束の日、
小船で辿り着いた天空城で受様は
偽の小鳥人なら早々に喰われて
役に立てと迫られますが

受様は獣魔王に仕えるために
色々な事を学んできたのだからと
ソレで役に立てると反論します。

そんな受様を玉座の上から
不機嫌に睥睨していた獣魔王こそが
今回の攻様になります。

攻様は黒々とした立派な角を持つ
恐ろしく整った顔を持つ美丈夫でした。

受様は震えを抑え込み
もてる知識を披露し続け、
小鳥人の文字の研究している事を告げると
学者魔人と呼ばれた男が興味を示し
次の食貢の宴までの延命が許されます。

実は受様は正真正銘の小鳥人で
天空城にある小鳥人の文献から
仲間の手掛りを探そうとしていたのです。

受様は学者魔人の助手として
小鳥人の文献の翻訳に着手しますが
受様が探し当てた記載には
小鳥人の残酷な所業が書かれていて…

受様は獣魔王の贄になるしかないのか!?

受様が知った小鳥人の慣習は
受様の望んだ未来への希望を失わせます。

しかし、受様は
残った時間で魔人学者の役に立って
村人の役に立って死のうと思います。

そんな受様の姿に
獣魔王である攻様のほうがほだされて
受様のために心を砕くようになります。

実は攻様もある秘密を抱えて
2人はそれぞれが秘密を抱えたまま
惹かれ合っていくのですが

攻様の秘密がバレでたことで
受様が処刑そうになったり
攻様が罪人として島から追い出されたり
2人を巡る状況が一転してしまいます。

切なさ多めのシリアス展開で
辛い展開も散在しますが
2人がハッピーエンドを迎えるまで
たいへん楽しく読めました。

受様は自分の生をあきらめませんが
自分の死で誰かが助かるのならば
それで良しとする潔さがあります。

自分の運命を受け入れながらも
できる事をし続ける姿が攻様を魅了し、
変えていったのかなと思いました。

コミコミスタジオの特典ペーパーも
合せて読むと更に幸せ感が倍増です (^_^)v

今回は切ない系ファンタジーくくりで
月東湊さん『月下の涙~鬼と獲物の恋~』
をオススメ作としてみますね。

3

月東先生テイストではないかと

どこかぷすっと刺されたように感じることが多い月東先生のお話。みずかね先生の挿絵なのでマストバイなんですが、あらすじに「生け贄」なんておっかないワードが。「月下の涙・・・」の再来か・・・とびくびく読み進めましたが、無事読了。はあよかった。月東先生のテイストだなあと感じたファンタジーでした。本編のみ230P超+先生のあとがきです。

大好きなみずかね先生挿絵話から。カラー1、モノクロ8。一番好きなのは夜空に広がる「虹の羽衣」(=オーロラみたいな現象)を獣魔王と二人見上げている図。獣魔王様に背中から抱っこしてもらって、ふふっと笑っているのですが、実は話している内容がちょっと怖い。その虹の羽衣が天空いっぱいに広がった日に生け贄は食べられてしまうのですが、その日はいつ頃か なんてことを話してます。怖いものは怖いという子なんですが、やっぱこの子、なかなか肝っ玉が据わってるとしか思えない。なかなかおっかない状況が続くのに、それに耐え続け、最後の方のあまあまシーンでは可愛らしい白い翼♡♡♡感じている時にふるふるパタンパタンするなんて、獣魔王さん、もう理性がぶっ飛んでいいと思います。はい。

かたや獣魔王様はおっかない角とかはやしているのに、すごく可愛らしい愛撫をするんですよ!!!!ここ激萌え!インコとかを飼ったことがある人は脳内再生できると思います。めちゃくちゃ愛らしい、ああ求愛行動よね!というしぐさの数々。たまらん頁でしたw
また最後、彼自身が色んな感情をmixして乗り越えて、二人で生きていこうと思うシーンも「ああ良かった」と思いました。
とピンポイントで激萌えする頁はあれど、何かが足りず、神には至りませんでした。ドキドキ感たっぷりな記述にびくびくしたからかな。残念。

それはともかく、二人でお幸せに な終わり方で良かったです。
最後に獣魔王様。爪は短くしてね♡大事なことだから♡

3

健気な受けに泣きまくり





魔人と人間と獣人と獣と小鳥人(翼の生えた人族)がいる世界。

魔人と獣人を束ねている獣魔王(攻め)への貢物として育てられた捨て子のフェイ(受け)。
人間は忠誠の証として3年に一度獣魔王に貢物を出さなければなりません。
貢物には小鳥人という獣魔王に逆らったという種族を差し出す決まりなのですが、激減した小鳥人のかわりに、今では18歳の人間(金髪翠眼)が選ばれています。
それを獣魔王の島・天空城のある湖のそばの7つの村で順送りで担当することになっています。
今年はフェイのいる村です。

フェイは貢物にされるために村の外から買われてきた子供でした。
いずれ獣魔王にお仕えするためにと大切に育てられていたフェイですが、10歳の時その真意を知るのです。
その時のフェイの絶望は想像するに辛い。
それでも、フェイはとても強い心の持ち主でした。
どんな時でも自分が生きる道を探すのです。
自分が実は小鳥人だと気付いたフェイは、親がきっと探しているはずだと、小鳥人との交信方法を探し、貢物となってもすぐには食べられないように様々な知識を蓄えながら貢物になる恐怖に耐えるのです。

恐ろしい獣魔王の前に連れ出されても、勇気を振り絞り自分の知識を披露しまふ。フェイの知識が欲しい側近の学者魔人のとりなしもあり猶予がもらえるようになってからは、助かる道が閉ざされてからも、自分のことを心配してくれる学者魔人や獣魔王のために命の限り役に立とうとする姿には、涙が止まりませんでした。

貢物になることが決まっていたフェイは誰からも心から心配されることがなかったのですが、
自分を食べる存在であるはずの魔人に世話を焼かれたり心配されたりする姿は、なんとも皮肉でした。

フェイは物事を俯瞰でみれる公平な人物です。すべてに対して善人など存在しないと断言し、村人たちは自分たち捨て子にとっては貢物にしたり売春させたり酷い人たちですが、本当なら死んでいた自分を育ててくれたと感謝し、家族や村人たち身内にとってはいい人だと、それぞれの立場の違いからくる行動を肯定できます。
これはなかなかできることではありません。

そして、その広い心で獣魔王の孤独で優しい心を読み取り寄り添いずっと一緒にいたいと獣魔王に言わせるくらい心を開かせるのです。

また、フェイがすぐに食べられないように進言してくれた学者魔人はとてもいい人で、フェイを助けるために敬愛しながらも怖くて仕方がない獣魔王に対して意見したり、具合が悪くなったフェイを無理して看病したりと、生まれて初めてフェイ自身を気遣ってくれるのです。



時間をかけて獣魔王の心を開かせたフェイが獣魔王と両想いになってからは幸せな日々が続きます。
今まで辛い日々だったフェイの幸せがいつまでも続くようにと祈りながら読んでいましたが・・・

獣魔王が両想いになったうれしさから、注意を怠り二人は再びピンチに陥ります。
その後は互いがお互いを想いあい、命を捧げようとする気持ちは痛いくらいでした。


不思議に思ったのは二つ。
フェイを助けるための獣魔王の決断には心が痛かったですが、もう少しうまく立ち回ることはできなかったのかということ。
獣魔王の弟はとても理知的な人であったのに、何故周りに相談するという手段をとれなかったのか。そうすれば、もう少し優しくエンディングへと着地できたと思うのです。
そしてもう一つは、生き別れになった二人が再会してから数年ぶりの幸せな一晩を過ごした朝、
「奥さんが戻ってきたら・・・」といったフェイのセリフ。
これはいらなかったな、
獣魔王が新たな番を持っているかもしれないと心配しているのであれば、最初に確認するべきだと思うし、再会してからの獣魔王にそんな気配なかったのに。


できれば、獣魔王の出生の秘密とかこの世界の仕組みとかもう少し詳しく知りたかったですが、お話としてはいっぱい泣いて、最後は大団円で心穏やかに読み終われたので、神よりの萌×2で。

3

絶妙なタイミングが生む感動

泣いて泣いて目が痛いです。

今ものすごくしたいことは、ホワイトボードかノートにこのお話のキーポイントを書き出して、そのタイミングのズレを矢印で合わせて、どうすればより平和で甘々になったかの検証です。

なぜなら絶妙なズレがあるのです。
今わかるか!なぜ今ばらす?なぜもっと早く明かさなかったの?そうすればもっと平和に決着しただろうに…と。

しかしそれこそがこのお話がここまで感動して泣ける所以なのです。

なにしろまず最初の1/3は受けフェイと攻め獣魔王がほとんど言葉を交わさず交流もありません。

そして段々とお互いのことをわかるにつれ心あたたまり。獣魔王の不器用な優しさ、フェイの健気さにお互い好意が恋情やがて愛情に変わり…。これが途中の1/3。

計画が破れたフェイの絶望。
それでもこの獣魔王のためならと頑張るフェイ。
そんなフェイを必死にかばってくれる学者魔人。生まれてから初めて人にがばわれるフェイ。
実は獣魔王はこれまでの生贄を…。
そして獣魔王の真の姿とは…。生まれた目的とは。

不器用に愛し合う二人。けれどそんな蜜月は突然終わり。
獣魔王を庇って一芝居うつフェイが!それを見守るしかなかった獣魔王が!
フェイの処刑の場で獣魔王が!フェイの命だけは助けようとするその気持ちは泣けるのです。
ですが、なぜ先に手を回しておかなかったの?
そうすればあんな別れ方にならなかったのに。

2年後…。獣魔王は北の湖畔の村でボロボロの毛皮を羽織って薪拾いをしていて…。

だから!上手く手回しすればこんなことにならなかったのでは?と不粋にも考えてしまいます。

無事にフェイとも感動の再会ができて。良かった。
生涯たった一人の番。二度と会えないとしても他の人に心を動かすことはなかったと獣魔王。泣ける!

小鳥人の知恵のあるフェイと魔力のある獣魔王が村を平和に、魔人も訪れるようになったとさ…。

え?魔力まだあったの?ならなんでボロ着きて薪拾ってたの?

ツッコミだらけですみません。でも気持ちのいいツッコミです。

あれをここに、それをあそこに、とタイミングをずらしたい!とウズウズしますが、いやいや。
これが完成形なんです!

2

小鳥人が謎

なぜに小鳥なのかしら?
弱々しい風を感じさせる為かしらね。
狩られる側だったという事はわかるけど、なんで獣人と魔人とそんなに敵対してしまったの?
割と強く強かな種族そうに思えてしまうの。
猛禽って感じしちゃいました。
ま、そこはどうでもいいか 笑

獣魔王様が一番人間くさいよねー。
こんな上司がいたらいいなぁと思う。
フェイの育った村の人達もちょっと人間離れした感覚だった。
魔人さん達の方が人間くさい感じ。
この世界的にはそうなんだ。と思って読んだ。

主要な登場人物はみんな好感が持てるキャラだったので、すごく楽しく読んだ。
主要人物に好感が持てるって私的にはすごく重要なのよね。



0

甘過ぎる

設定や世界観もよく練られていて、テンポ良く楽しめました。
ただ思ったよりハードな内容ではなく、むしろ甘々でした。
残酷な背景もあるにはあるのですが。。
辛い過去を背負っている割に受けがかなり前向きで良い子過ぎて、逆に私は若干のあざとさすら感じてしまいました。
攻めも攻めで良い人なんだろうけど、せっかくなら王様らしくもう少し強引なところとかもっと男らしく受けのこと守ってほしかったなー。
ファンタジー好きな方には良いと思います。

3

行動力のある受けです

過去の争いにより、獣魔王へ貢物として人間を送らなければいけない世界です。受けであるフェイは幼いころに捨てられていて、外見が獣魔王の求める”小鳥人”に似ている事から村人に貢物として育てられてきました。
幼いころこそ「獣魔王へ仕える」と教え込まれていたフェイはそれが名誉な事と思いますが、ある事件をきっかけに誰もやりたがらない事を、身寄りのないフェイに押し付けているという事に気づきます。村人も逃げられず、また攫われないようにと首輪をつけて監視するような行動をとり始めます。

そんな環境でも逃げ出さず(逃げ出せないという方が正しいのか)、恐怖にかられながらも獣魔王の貢物として捧げられます。着いた先で、自分には小鳥人の文字が読めるという価値があるという事を証明し、小鳥人の文字の解読の為に行動の制限などはあるものの生き延びることに成功します。

解読の際に監視の意味もあり一緒にいる学者魔人ですが、彼がなかなか良いキャラです。魔人としては褒められるべき事ではないのですが、優しくて忠義や恩義を大切にする良い人です。それでも当て馬になるとかそんなでは無く、フェイにとって生活するうえで良いという名脇役なのが良かったです。
本来ならばかなりシリアス重い展開になってしまうのに、この学者魔人との会話が結構ほのぼのとしていて、癒される感じでした。ただ、この学者魔人の名前が最後まで分からないのは残念でした。

獣魔王と同室であるので、次第に優しさに惹かれていきそんなフェイから紡がれる言葉や行動により獣魔王もフェイに惹かれていきます。ファンタジーなので同姓だろうが構わないというので、その辺の葛藤は無かったです。
人の前では傅かせるような存在ですが、フェイの前では優しい一面を隠さなくなり彼の秘密さえ漏らしてしまう程です。獣魔王の傍にいるという事が、フェイの幸せでもあり獣魔王の幸せにもなるというので、フェイが問題なく暮らせるようにしようというくらい甘々な日々になります。

このままでいかないのが、月東さんらしく良いなと思いました。ただ、獣魔王よ…もう少し考えて行動してくれと思ってしまいました。良い人なのは分かりますが、行動が裏目に出ている事もありました。
ほぼ登場なしの獣魔王の弟である奇顎が機転をきかせてくれます。後にもっと前に相談してくれていればと言っていたようですが、全くその通りだよと同じことを思いました。
また、フェイが小鳥人という事が分かった後の獣人たちの反応もちょっと不思議でした。確かに悪役をかってでたのではありますが、その羽はかなり貴重なものなど最初の時に存在理由として小鳥人ならと言われていたのもあるので、逆に彼を殺さずに監禁し続けるとかではないのかなと疑問に思いました。

時代も少し昔な感じなので仕方ないとは思いますが、フェイの育った村の異質さ(貢物として人買いや誘拐、売春行為など)にビックリしました。更に小鳥人という名前や美しい羽とは違い、劣勢の子は捨ててしまうなど無慈悲な種族でした。
ただ、そういう闇の部分も含めてこの作品の良い所だと思いました。

情事のフェイの小さい羽がふるふると揺れているというシーンが可愛いので、シリアスも求めつつ、でも甘さも欲しいという方にはオススメです。

3

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