雪の下のクオリア

yuki no shita no qualia

雪の下のクオリア
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神117
  • 萌×244
  • 萌34
  • 中立10
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
26
得点
873
評価数
212
平均
4.2 / 5
神率
55.2%
著者
紀伊カンナ 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics CRAFTシリーズ
発売日
価格
¥657(税抜)  
ISBN
9784813031147

あらすじ

草木が好きで人嫌いな小林明夫。同性と一度きりの関係を繰り返す大橋海。
二人は同じ大学で同じ学生寮だった。
海が明夫に懐き、明夫も少しずつ海に気を許すようになっていく。
だが、ある日、海は明夫に「先輩は寝なくても一緒にいてくれるから優しいです」と言う。
明夫はそんな海のことが理解できなくて……。

好きになった相手に愛されたい。そう思っているのはどちらだったのか?

表題作雪の下のクオリア

小林明夫,草木が好きで人嫌いな大学の先輩 ?
大橋海,同性と一度きりの関係を繰り返す大学2年 ?

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数26

雪の下には、あたたかい春が眠る

-雪が溶けたら何になる?
-水
-雪が溶ければ春になりますよ

これは、作中の主人公たちの会話なのですが
この作品を表すのにぴったりな、とても好きなシーンです。

男にも女にも興味がないと言い切る草木・花好きの明夫と
ゲイで、恋愛において一度限りの関係しか築こうとしない海は、
それぞれの過去に、暗く寂しい影を宿していた。
そんなふたりが出会い、少しずつ心触れ合っていく内に
根雪のように覆われた冷たく悲しい傷が心地良く溶かされ、
次の季節、春へと向かっていくお話。

紀伊さんご自身はこの作品について
”話も萌えも地味”だと、インタビューで仰っていますが
(加えてとても難産な物語だったようですね)
わたし個人としては、すごく好みのお話でした。

物語の舞台が北海道がということで、
長くつめたい雪国の季節感と日常を交ぜながら
雪の下にしっかりと宿っている春を
ふたりの主人公の心情と共に丁寧に描き綴られています。

はじめはへらへら笑顔が目立つ奔放な海が
明夫と関わるうちに、ふてくされた顔を見せたり
明夫の心境の変化に驚き顔になったりする姿や、
眉間の皺が定位置(笑)の明夫の表情が
少しずつ解されるように柔らかくなっていく過程が
ごくごく自然で、非常に好感が持てました。

草木や花、動物、食べ物等の描写もたくさん出てきますが
さすが紀伊さん、画力に関しても言うことなし。
又、脇役たち、殊に毎度ながら女性キャラたちの逞しい、
男気溢れる感じも健在で、紀伊さんらしくてポイントが高い。

萌えに関しては、やはり明夫の表情や仕草の軟化でしょうか。
実家に帰る明夫が、鳴き止まない猫にキスをしたり
クライマックスで見せる、海に向けた優しい表情と笑顔には
胸に温かさが広がるようなキュンの連発でした♡
ふたりがキス止まりなところもイイ!

又、『雪の下のクオリア』というタイトルが
物語や作画と同じくらい素晴らしい。
あとがきによれば、紀伊さんは”クオリア”を、
”箱庭”の意味でつけられたそう。
調べてみると”クオリア”には、”~のようなあの感じ”という
心象的な感覚を表す意味があるようです。
”雪の下で眠る春のようなあたたかい、あの感じ”
といったような意味にもとれて、とても素敵です。

評価は、タイトルを含めひとつの作品として素晴らしかったこと、
草木や花、雪といった個人的に大好きなモチーフが
ふんだんに使われていることから、持ってけハート泥棒の”神”評価です!

19

深くて繊細で優しいお話

最初読んだ時「かわいいけど…どういうこと⁈」ってなりました笑
紀伊カンナ先生、海辺のエトランゼでもだったんですが何回か読んでセリフとセリフの意味をつなげないと最初は全然わかりません‼︎笑 でも、ちゃんと読めたときの心に沁みる感動はこの人しかかけないんじゃないかなーと思います。

なんか、先生にひどい振られ方してショックなら逆に他の人と誠実に付き合おうとしろよ!みたいなこと言ってる方いますが、海くん(受け)自身が「不誠実だと思ってても1人じゃいられなかった」って言ってますよ。
好きだった人になにも言われず裏切られたと知ったら、きっと誰かを好きになることは怖くなるでしょうね。純粋だったからこそ海くんは裏切られたショックで恋愛に対して不誠実になっちゃったんですね〜でもほんとはさびしい…っていうのが垣間見えてきゅんきゅんしました!

先輩(攻め?)も男らしいというか、ばっさりして、でも優しくてかっこいい。古風な考えの男!って感じですね。これからもっと受けにほだされてほしい……

深読みしたくない人、エロ目的には向きません。ほんわか、男の子の切なげな表情、セリフと表情からキャラクターの心情の機微を読み取るのが好きな人にはとってもおすすめです!エトランゼもクオリアも続編出てほしいなー(*^^*)

12

じっくりゆっくり読んで感じる作品

心に沁みる優しい作品です。

紀伊先生の作品はどれも1ページ、1コマの絵の描き込みが多く、映像美が素晴らしいという印象です。とても柔らかく、優しく、どこか懐かしい気持ちになる、そんな温かみのある絵です。

内容ですが、ものすごく大きな起伏があるお話というわけではなく、エロもありません。しかし、繊細な表情や台詞の意味などを感じながら読んでみると、映像美も相まって、読み終えた時に映画を一つ見終えたかのような幸福感を感じることができました。
この一冊ですとんと腑に落ちる感覚と、素敵な作品を読むことができたという幸せを感じることができ、読み終えた後は心穏やかな気持ちでした。


流し読みしてしまうには勿体ない作品だと思います。一冊この本を手に取って、夜にゆっくり読んでみてほしい、そんな作品でした。

6

癒されるw

がつがつしてないところがいい。
しっかりBL!主張する作品ではないのですが
それが逆に心をほっこりさせてくれました。

トラウマを抱えつつ険悪するのにそれを捨てられない。
好きな人を作るのを恐れているが一人ではいられない。
そんな二人がじわじわ近づいている距離感がすごくいい。
春夏秋冬季節が流れて、いつの間にか。
自然と笑顔がこぼれ、自然と唇を重ねる。
驚いた表情がすごくかわいくて、その先に見える未来を想うと
ほおが緩んでしかたがない。
もう少し先の未来、ずっと先の未来。
もうすこし見ていたいと思うお話しでした。

5

あまあまだけどどこかせつない

きれいな表紙にひかれて購入しました。
あっさりした絵柄ですが、線がとても綺麗で、読みやすかったです。
本サイトのインタビューや、あらすじなどを見て、ちょっとエロイのかなあなんて期待したのですが、いい意味で期待を裏切られました。Hはしてないのに、ひとつひとつの仕草がなんかエロくて、バタバタしながら読んでいました。とても楽しかったです。
異性も同性も興味ない主人公の小林君が、ゲイでいろんな男と一夜限りの関係を築く大橋君になつかれ、最初はそっけない態度をとるも、どんどん大橋君にひかれていき、最後は…という話です。
最初から最後まであまあまなのに、なんかせつない、一回読んだだけじゃよさが、あまりわからない。そんな感じで、誰にでも進められる感じではないです。
癒されたい、という方にはあまりお勧めはできません。
でも、私はめちゃくちゃドストライクでした。久々に当たりの本に出会えてうれしいです。

4

「友情」?それとも「ずっと離れない」?

ジブリ映画や細田守監督作品のような雰囲気の作画に、心温まるストーリー。
大好きな作家さんです。

愛に奔放すぎる父と、そんな父を愛するがゆえに追いかける母。
愛に翻弄される両親のせいで、人と距離を置くように生きてきた明夫。
そんな彼が出会った同じ下宿に住む海は、誰とでも寝るような子で…。

紀伊さんの絵で見ると、ビッチもピュアっ子に見える不思議。
明夫が植物を扱うときのエプロン姿にも萌える。

下宿のお向かいさんで、同じ大学の院生(たぶん)と学部の2年生。
緩い接点しかないところから、一緒に住むようになるまでの時間をゆっくりじっくり描いてあります。

2人とも心に傷があって、人付き合いに難あり。
両親に置いて行かれた明夫は教授に心配されるほど植物にしか興味がなくて、でも父が吸っていたのと同じ銘柄の煙草をもくもくと吸っています。
父の置いていった煙草は、明夫にとってもらえなかった父の愛の残り滓のようなものだったんだろうなあ。
かなりのヘヴィースモーカーなのは、それだけ愛に飢えていたからという風に読めました。
だからこそラストの一言で、「ああ、もう飢えてないんだな」って思える。素敵。

海は行きずりの相手と1回だけの関係を繰り返している子。
本当の名前は教えず、姉の名前を語っては、次を望む相手を袖にする。
そうなった理由は初恋にあって、深く1人と関わってしまうとまた裏切られるのが怖いから。
初恋相手には「中学生相手に何やってんだー!?」と思うけど、心と体全部で恋をした出会いがあって、恋なんて…と思った時期があったからこそ、海の「好きだけどしなくていい」という台詞が重みを増すように感じました。

明夫にとって因縁のあった海のお姉ちゃんや、明夫のお姉ちゃん、教授もみんな優しい。
そんなひとたちに囲まれた中で、無理に相手を変えようとか、自分を変えようとしないで、自然な流れで少しずつ気持ちや考え方に変化が出てくるのが良いんです。
そうやって一緒にいるのが当たり前になっていくのが素敵なんです。
そんな2人を見ていると、明夫のお姉ちゃんが言う「人の事はひとりでいちゃわからない」という台詞がじんわりと沁みてきます。
海を宥めるために、父親が自分にしてくれて嬉しかったことを明夫が海にしてあげるのもいい。

簡単に言ってしまえば、全部いい。

最後に出てくる「ニリンソウ」。
花言葉を調べてみたら、レビューのタイトルの2つが出てきました。
明夫の父親の「好きな子が出来たら…」という台詞からして、きっと「ずっと離れない」という花言葉をimplyしてるんだろうなあ。にやにやしてしまう。

優しい気持ちになりたいとき、誰かに優しくしてほしいとき、ぜひこの本を開いてみてください。
温かい優しさに包まれますよ。

4

何度も読み返したくなる作品でした!

クオリアってどんな意味なんだろうと、手に取った時に思ったのですが、日本語だと感覚質と呼ばれ、とても言葉で説明するのが難しい人が感じる感覚の意味らしく、意味を調べた時に困惑したのですが、あとがきにさらっと箱庭という意味と書かれていて、ちょっと拍子抜けしたのが1番の私の感想です(笑)
エッチシーンがないので思ったよりも、受けの海くんが一度きりの関係を繰り返す割には淫乱っぽさがないところや、キャラの個性や、動物たちの可愛さ、ご飯がとても美味しそうで紀伊カンナ先生おなじみのほのぼのだけど、ちょっとしんみり感が出ている作品でした。
どちらも、それまでの人生で心に闇を抱える経験をしており、過去を思い出し、涙する海くんを明夫くんが抱きしめ、優しく言葉をかけてあげるシーンでは思わず、うるっときてしまいました…。そして、一度寝た相手に無理矢理トイレに連れ込まれたシーンで海くんを明夫くんが殴ったりするような荒々しく、心の動きが表れてる描写がすごく好きでした。
この2人は、これからも体の関係を持つことなく、2人で寄り添い生きるんだろうなと思わせるような終わり方で、恋人でも友達でもない2人の関係にひたすら、暖かい気持ちになりました。
これからも2人が仲良く暮らせたらいいな〜と思います…!!

2

人情の機微が丁寧に描かれた作品

エトランゼが好きで、こちらも購入!
正直、エトランゼよりも好きになりました(╥Д╥ )

他の方が言ってるように、BLって感じは少ない…かな?
痛みや傷を抱えた者同士の優しい触れ合いです。

私は明夫の抱える痛さに引っ張られる部分も大きかったから、海に対する感情の揺れとか変化を暖かい気持ちで読めたけど、そういうのがわかりにくい!ってコメントも納得は出来ます。

直木賞よりは芥川賞にノミネートされるような作品…。
エンタメ、というよりは純文学!

途中、涙が出たりもしたけど
痛い・苦しい。じゃなくて、
自分の内にある硬くなってる部分が許されて解けていくような、
浄化の涙?が流れました。


BLの設定にありがちなアダルトチルドレンだけど、だからこそ痛みに覚えがある方には是非に…とオススメしたいです

2

閉ざした「箱庭(情景の記憶)」と「赦し」

★過去の書評は好き嫌いの二極、「エトランゼシリーズ」より辛目評価が多いです。
「分かりにくい」と嫌う書き込みが多いのが、残念過ぎる。心理療法を意識して書いたとしか思えない作品。

▶あとがきに「クオリア」とは、箱庭の意味、と作者が描いています。
著者が選んだtitle「雪の下の箱庭」の意味を掘り下げると、筋書きを追いやすくなると思います。
「雪の下のクオリア」:「雪の下の箱庭」
=「閉ざして見えない情景(記憶)」
「潜在意識の中の忘れたい情景」を思い出して「赦す」浄化の一連を雪解けの自然描写に沿って描いた作品。

★閉ざしていた箱庭(古い情景の記憶)を観て、「その時の「その人の精一杯の愛」だった」のだと「赦す」。
これが、他人の観察を介して無意識のうちに自発的に行われていく。←ココ大事。
同居人の観察から 自分自身の内観を無意識に行う。
過去の記憶が氷解して記憶の中の情景が浮かび、俯瞰する。故意に触れなかった古い辛い経験の捉え方が変る。
二人の無意識に起こる心の変化が、秋~冬~春、景色が春に向かい雪解けしていく情景の変化に合わせて描写されています。

▶二人は「好きになった相手に 愛されたいって思ってる」のが共通点。
他人に関心を持たないアキが、一人で寝られない海に興味を持ち、海のトラウマを癒そうと行動していく。
★先輩:草木が好きで人嫌いな小林明夫は、家出した大嫌いな父が吸っていたタバコ、エコー(やまびこ)を何故か愛飲する。
★後輩:同性と一度きりの関係を繰り返す大橋海。本気で愛した人が居た。辛くて一人で寝られない。「先輩は、寝なくても一緒に居てくれるから 優しいです。」と言う。

▶結末
桜の樹の下で寝転ぶと、アキは父に肩車されて散歩をした時の言葉を思い出します。この日の後、父は戻らなくなった。
花を海が摘んで来て、寝転ぶアキに名前を尋ねます。
海の耳元でそっとアキが教える。・・花の名前は「ニリンソウ」4~5月に白く可憐な花を咲かせる多年草。
花言葉は「友情」「協力」
明るい未来を感じる場面で終わります。

▶この作者の描き方は、履歴が示す通り他の漫画と少し違います。アニメ化を意識した、と書けば分かりやすいかな。アニメの絵コンテ/コマ送りの手法と似ています。
アップテンポのイケイケ作品の後に読んだら、焦れて本を投げたくなるかも。

私は、面白いと思ったので、神評価。
---
▶深読みしすぎかも?・・「箱庭療法」
景観を構成する様々な要素のミニチュア庭園=「箱庭」には、心理療法の一技法「箱庭療法」
=遊ぶことを通して行う心理療法があります。
作者の言う「クオリア」は、この心理療法の箱庭も指しているのかも。
独: sandspiel therapie、英: sandplay therapy

★★内容濃い作品のレビューは難しい、くどいこんなレビューですが、読みたくなってもらえたら嬉しいです。★★

1

色々読んできましたが、最も好きな作品です。

登場人物達にも、そして私自身もトラウマがあり、思い出しては不快な気持ちになる事があります。
嫌悪感から強い固定概念で決め付けてしまっている事って少なからずあると思います。
その結果行動が世間的には多数では無い選択をして生きていて、孤独を感じたり

これを読むと何かに傷ついていたり、トラウマのせいで自己が歪んでしまったと感じている方の心のしこりが少し溶けるような、そんな気がします。

深く傷ついていた事を自覚した海を包容してくれる明夫。
でもその明夫も自分の固定概念で嫌悪していた事を別の方向から見る事が出来て消化していきます。
海が救われるシーンで私も勝手に救われていました。
エトランゼシリーズも勿論好きなのですが、この漫画が本当に好きです。
読んで良かったと心から思える作品です。

1

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