無垢な人に、嘘の愛を刷り込んだ

愛されたがりの嘘つき

aisaretagari no usotsuki

愛されたがりの嘘つき
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神10
  • 萌×223
  • 萌13
  • 中立1
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
7
得点
182
評価数
50
平均
3.7 / 5
神率
20%
著者
野原滋 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
香林セージ 
媒体
小説
出版社
アスキー・メディアワークス(角川グループパブリッシング)
レーベル
B-PRINCE文庫
発売日
電子発売日
価格
¥640(税抜)  
ISBN
9784048919654

あらすじ

辣腕社長の朝倉と、朝倉を支える有能な秘書・椎名。社外ではセフレとして関係を持っていた二人だが、ある夜、朝倉が怪我で記憶を失ってしまう。無垢で素直な青年になってしまった朝倉に、椎名はちょっとした悪戯のつもりで「二人は正式に交際していて、愛し合っていた」と嘘をつく。かくして、セフレでしかなかった椎名が望んだ通りの、偽りの甘い生活が始まる。しかし徐々に罪悪感と「元の朝倉」への想いが募るようになり――?

表題作愛されたがりの嘘つき

朝倉祐嗣,34歳,建築デザイン事務所の敏腕社長
椎名里斗,29歳,有能な秘書として朝倉を支える社長秘書

その他の収録作品

  • ささやかな約束

レビュー投稿数7

セフレ&記憶喪失モノ

セフレ関係にある社長×社長秘書の、社長(攻め)の方が記憶喪失になってしまい、秘書(受け)は、記憶を失って不安になっている彼に“自分たちは恋人同士だった”と嘘をつく──という内容。

セフレ関係にある間の受けは、プライベートは明かさない・寝ても決して泊まらない・プレゼントも受け取らない、と徹底したツンで、それがまたよかったです。
そして記憶を失った攻めは、俺様キャラ→純朴な優しい青年になっていて、その優しさを愛おしく思いつつも、かつての攻めが恋しくなる受けの心情がとても理解できた。
さらに記憶が戻ってから、純朴だった攻めとの思い出を大切にするくだりまで、切なくて萌えまくりました。

「セフレ&記憶喪失モノだったらこういうのが読みたいな」と思ったそれを具現化してもらえたような満足感。
加えて、ちょっとしたやり取りも楽しくて。
記憶喪失中の、ワインのくだりは思わず笑ってしまった。
記憶喪失ってこんな失敗も起こりうるんだなぁと思って。新鮮でした。

5

恋に臆病になった青年の片思いが叶うとき

記憶喪失ものは好きな題材の一つです。
恋人が自分のことを忘れてしまった苦しさも萌えるのですが、この作品のように愛し合っている恋人同士だったと言ってしまって苦しむのもまた萌えますね。

ストーリーは、フェロモン過多の社長 朝倉と秘書 椎名がセフレ関係から恋の成就まで。

椎名は過去の苦い恋の経験から本気の恋はしない、ゲームのようにその時を楽しめればいいと朝倉との関係も一線を引いてのめりこまないようにしていた。
けれど、本当は心から愛せる人を求め朝倉ともっと踏み込んだ関係を望みながら本音を隠していたのです。

椎名が、朝倉が望むような軽い身体だけの付き合いに徹したり、失敗しないように気をつけていたり、事後に後ろ髪をひかれる思いで部屋を出て朝まで一緒に過ごさないとか、少しでも付き合いをを長らえたくて涙ぐましい努力をしている様子にキュン。

そんなある日、過労から体調不良で転倒し頭を強打したことから意識が戻ったときには記憶を失ったとき、椎名は周りの勘違いをいいことに、記憶のない朝倉に自分たちが愛し合った恋人同士だと嘘をつくのです。からかいとか軽い嘘などと心で言い訳しても、きっと願望だったのでしょうね。心を通わせた恋人だったなら…と。

そうして、短い間を『恋人との同棲生活』を甘く切なく送ることになるのです。
刹那的ですね。
他愛のない日々の中で幸せを感じつつも、いつ記憶が戻るのかとと不安になる椎名の泣き笑いの顔が見えるようで哀しくなりました。

記憶の回復はあっけなく急なのですが、椎名は想定内のことなので慌てず自宅に帰り何事もなく以前の生活に戻るのです。
表面上何もなかったふりをしても心が乱されているんだろうと思うと椎名がかわいそうでかわいそうで。
一方朝倉の方でも、記憶のなかった間のことは覚えていなくても違和感が残り、椎名への気持ちが変化していくのです。

でもこの二人、無自覚だったのかもしれないけれど、本当ひと目惚れの両思いだったって感じです。
生い立ちや経験からまっすぐに恋に墜ちていけなかったんじゃないでしょうかね。
収まるところに収まったという感じのハッピーエンドでした。
きっとこれからは、多忙な中でも同じ趣味があることが分かったのだから余裕をもって公私ともにいいパートナーになることでしょうね。

同じ記憶喪失もので好きな作品の『夢から醒めた恋人は』( 杏野朝水)を思い出しました。
そちらは、攻めが冷酷な男でお互い気持ちのない愛人関係でしたが最後はラブラブでいい作品でした。

2

セフレという拠り所に秘めた甘い望み

社長×秘書(主×従)、華やかな年上攻め×年下美人受けというシチュエーション。
この話のように元々会話や行動の端々に気遣いの利くタイプの受けが実は個人的好みのパターンだったりする。
作中にも無意識に周りの男達の独占欲を刺激していそうなタイプに書かれていて納得…。
相手の朝倉のほうもやり手の若社長という描写がきちんと書かれていて、惹かれるものを感じる。

本当は朝倉の事が好きで堪らないのに、彼が他人にあれこれ詮索されるのを嫌がるのを承知している為に、セフレという関係で割り切っているふうに装わないといけない。

そんな朝倉が記憶喪失になり、椎名は朝倉の面倒を見る事になるが、常に対応が穏やかでガツガツせず大袈裟な振る舞いがないし、せめてもの空白期間に甘い望みを秘めている。
願望をさらしていながらも、嘘って言葉で本音をごまかそうって気持ちが少し切ない。
でも、切なさ一辺倒ではなく淡々と自分の想いを振り返る様子なので重さを感じずに話を追っていける。

記憶喪失ものって、記憶を無くしている最中と取り戻してからの落差をどう埋めるかってのも見ものだが、その後はお互いに一線を意識していた二人が静かに変わる様子が伺えた。
空白期間の望みがちゃんと現実になっていくという、予定調和な甘い展開が心地良かった。

1

本音を隠して

記憶喪失モノですが、とても解りやすいシンプルなものでした。

タウンマネージメントをする建築会社のヤリ手の社長・朝倉とセフレ関係のある秘書の椎名。
この朝倉が過労からくる頭痛発作で倒れた時に頭を打ち、”全生活史健忘症”という過去の総ての記憶を失う記憶喪失になってしまったのでした。
ちょうど情事の直後のホテルから病院へ運ばれた為に二人は恋人という事になっている。
「君は誰?」と椎名に聞く朝倉に、恋人だと嘘をついた椎名は、退院した日から朝倉の部屋で、恋人として一緒に暮らすことになるのです。

仕事も精力的だが人との付き合いも精力的でマメだった朝倉。
本当は椎名は朝倉が好きだったのです。
しかし、過去もあり一歩踏み込ませない、踏み込まないギリギリの関係を楽しむというより、それによって自分を守っているようなスタンスを取る椎名の本当の気持ちはしまっておかなければならないものでした。
また朝倉もそうした踏み込んだ関係を望んでいない様子であったので、本心はどうかわかりませんが、そうした均衡がとれていたセフレ同士だったわけです。
ところが、朝倉に記憶喪失になって何もわからない状態で、椎名しか頼るものがない場面が訪れるのです。
本当は望んでいた椎名の恋人になりたい願望を、朝倉に嘘をつくことによって叶えてしまうのです。
今まで入った事のない朝倉の部屋で寝泊まりし、一緒に食事をし、どんなものが好きで興味があるのか、更の状態の朝倉を知ると共に、朝倉が自分の事を聞いてきてくれる。
そして何より頼り切ってくれる。
本当は嬉しいはずなのに、それが本物でないこと、いつかは記憶が戻ればこの偽りの恋人は終わってしまうことに心苦しさを覚えるのです。

朝倉の記憶が戻る日は突然やってきます。
それによって、椎名も自分の今までの恋愛の在り方を見直し、
朝倉も、その記憶を失くした10日間に感じるものがあり、今までを見直して椎名と恋人になる。
ズバリ、コレ!といった大きな決め手ではないですが、記憶喪失がきっかけで二人が自分自身を見直すきっかけになるという比較的平穏な展開だったと思います。

絵の雰囲気が柔らかく優しい感じなのですが、意外だったのが、椎名が案外に強くて意地っ張り、そして上昇思考のあるアクティブな人間だったというところです。
朝倉に対しては健気な面を見せるので、そんなに強さを感じなかったのです。
本心を隠すのも、嘘で本音を実現させるのも、ずるさというより弱さの反動という二面性だったのかな?なんて思うのでした。
そんな点で、椎名のキャラクターに興味がわいたお話でした。

2

大人の駆け引き、でも本当は・・・

社長と秘書、そして駆け引きめいた遊びの大人の関係、更にそこに記憶喪失モノを
背景にした、愛し愛されたいと思いながらもそれが出来ない切なさを感じさせる作品。

遊びなれた社長とあたかも対抗するくらい大人でクールに装って、気が向いた時に
社長である朝倉とセフレのような関係を持つ椎名。
もともと椎名自身の好みが大人で遊びなれていて、仕事が出来るカリスマ性のある
男がタイプ故に、相手の全てを知りたい束縛するような恋に発展しない相手を
好きになっているみたいなのです。

前の会社で関係のあった年上の元カレに別れる前に言われた言葉で、完全に一線を引かれ
自分から離れて行くしかなった苦い恋。
そしてまた密かに心惹かれた相手も己に自信のあるタイプで、駆け引き上手で
スマートな遊びをこなす朝倉が相手なので、過去の失敗をしないように必死で
朝倉に合わせて遊びなれたクールなフリをしてまで、今の関係を守ろうとしている。
愛されたがり屋のクセに意地っ張りでプライドも高い椎名。

そんな時に朝倉が記憶喪失になり、共にいた椎名が恋人だと病院スタッフに思われ
椎名はほんの悪戯心と、願望から朝倉に恋人同士だと嘘をついてしまう。
記憶を失くした朝倉との日々は椎名にとって夢にまで見た幸せな時間でこのまま少しでも
長く続く事を願うが、そんな日々はあっさり終わってしまう。

朝倉は記憶を失くしていた時の出来事をすっかり忘れているのはセオリーで
椎名にとって愛していた相手は朝倉が記憶を取り戻したと同時に消えてしまう。
記憶を失くす前と同じ日々になるが、椎名はその事を切っ掛けに朝倉とのセフレ関係を
解消し、今度は嘘も見栄も無い心の底から相手と分かり合える恋がしたいと
朝倉に関係解消を告げる。

記憶喪失から椎名も変わったけれど、朝倉もまた、記憶を失くしていた間の事は
思い出せないながらも、自分でも気がつかないうちに変わっていたりするのです。
駆け引きを辞めた後に本当の恋を手に入れる事が出来るハッピーものです。

2

ツンする理由が過去の傷

電子書籍で読了。挿絵有り。

『釣った魚には餌をやらない』のなら『いつまでも釣られない魚』になれば良いのではないか、と考えるのは一つの作戦ではあると思いますけど、でも『恋の駆け引き』って、椎名がやっているのよりも、もうちょっと軽やかなもの。釣り針にかかりそうでかからない様を装うのは、ゆとりがあるからこそ出来ることであって、そんな発想をしちゃう理由が『前の恋愛に傷ついた所為』であるならば、朝倉の記憶喪失事件が起きなかったとしても最後まで完徹出来なかっただろうな―、と思うのです。
擬態は敵から身を守るために行うもの。でも、恋は敵とするものじゃないので、自分から『ネタバレ』した後に『真実の愛(大げさ?)』が訪れるという終わり方で安心しました。
実は記憶喪失ものってあまり得意ではないのですが、何となくお伽噺テイストを感じて面白かったです。

0

記憶喪失後の朝倉のほうが好きなので、受けとは趣味があわないな……

遊び人の社長とセフレ関係にある秘書。

ベタだけど切ないです。
本気を見せたら朝倉(攻め)は逃げると知ってた椎名(受け)だから、「好き」だなんて言えなかった。
だけど朝倉が記憶喪失になったのをきっかけに「私たちは恋人同士」と吹き込んだ椎名は、朝倉の家で一緒に暮らすことに……。
今まで言えなかった「好き」を解禁して、朝倉に「好き」をぶつけてる様子が切ないんですよね。
朝倉の記憶が元どおりになるまでの「期間限定の恋人」というところも切ないし。

なんだけど、あらすじにもある「元の朝倉」への想いが……ってところがピンとこない。
だって記憶喪失になってからの朝倉のほうが、私は好きなんだもん……

「元の朝倉」って「英雄色を好む」じゃないけど、めちゃくちゃバイタリティの塊。
仕事も抜群に出来るし、己の魅力を存分に知ってるし、女がいくらでも寄ってくるので自由気ままにつまみ食いしているけれど、相手が一線を踏み越えようとするとあっさりとポイする。
そんな様子を椎名は間近で見続けてきたので、自分も「あくまで身体だけの自由きままな関係」と演じてきたわけで……。

セフレ関係時のエッチシーン描写は、朝倉が主導権握っててるし、余裕かましてる様子がなんか読んでておもしろくない。
決して意地悪とか嫌なやつでは無いんだけど、でも好きなタイプではない。

記憶喪失になった朝倉は、そういう成功者ゆえのオーラみたいなのも消えて、どこか不安げで純朴な感じで、こっちのほうが好き。
なので元の性格のほうが……と思う椎名とは趣味があわないなと。

0

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