聖夜 榎田尤利作品集

聖夜 榎田尤利作品集
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神34
  • 萌×214
  • 萌5
  • 中立1
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
9
得点
242
評価数
58
平均
4.3 / 5
神率
58.6%
著者
榎田尤利 

作家さんの新作発表
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イラスト
ヨネダコウ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
価格
¥1,230(税抜)  
ISBN
9784813012634

あらすじ

設計事務所で働く縞岡は、
婚約者と訪ねたマンションの内覧会で、
十年ぶりに雨宮那智、アマチと再会した。
十六から十七にかけてのふたりの時間は、
北の地の短い夏のような輝きがあった。
長い空白の時間を越えて、再会したときから、
縞岡はアマチに触れたくてたまらなくなった。
那智はシマが恋しくてたまらなくなった。
会わないほうがいい。でも、会いたい。
会いたくて、たまらない──
傷つけながら、傷つきながら、恋は深まり……
『聖夜』『名前のない色』に書き下ろし『GRAY』を同時収録。

(出版社より)

表題作聖夜 榎田尤利作品集

縞岡17歳・27歳・37歳
雨宮那智17歳のちに森下那智27歳・37歳

同時収録作品名前のない色

藤野渉・25歳・出版社編集
水窪あきら・29歳・画家

その他の収録作品

  • GRAY

レビュー投稿数9

キャッチーではないけれど。

先生の作品集をぽちぽちと味わっておりまして。

二つのストーリーが収録されています。「名前のない色」は、ダメダメなイラストレーターと彼を担当する編集者の組み合わせ。ノンケ攻め×ゲイ受けです。たまたま読んでいた漫画家シリーズ、ルコちゃんと東海林を彷彿とさせました。

自分の好きな人に忘れられない人がいて、もしその人の名前が自分のものと同じだったら…。初めて恋に「落ちて」しまった藤野の、嫉妬混じりの片思いにきゅーん。恋っていつからが始まりでいつ終わるものなのだろう?自然消滅を待たず、自ら決別する水窪に男気を感じました。先生に限らず、小説家や漫画家さんが描く出版業界のお話はリアリティがあって興味深い。特に編集者さんのご苦労が…。それぞれの抱えた苦悩が切ないけれど、読んでいて心地良かったです。終盤、水窪が砂浜で海のスケッチをするシーンが印象的でした。

もう一つ、表題作がこれまたある意味壮大な物語で、最後に収録されている「GRAY」まで合わせると計三十年の時を経た初恋ものです。冒頭は冬の北海道が舞台。出身地なので方言が気になりましたが、特徴を捉えていて雰囲気出てるなーと。しかし、長いけれど全然読んでいて苦にならない、どんどん引き込まれていく物語でした。コレですよ、先生の手腕は。シリアスなシーンも重すぎず、でもちゃんとインパクトを残してくれて、続きが気になって読み始めたら止まりません。

なんていうか…先生には、ご自分が創られるキャラクターが代弁する、人間性への絶対的な信頼があるような気がするんですよね。シリアスでもどっかしら明るさを湛えているというか、微かな希望とパワーを感じるんですよ、先生の作品には。登場する女性キャラも嫌味がなくて、大概惚れちゃうし…。そんなこんなで毎度のことながら最後まで一気に引っ張ってくれて、とても読み応えがありました。

北は北海道から南は沖縄まで、旅した気分になれる物語。もちろん、濃くはないけどBLとしても満足させてくれると思います。榎田先生の作品を読んだことがなくて、でも先生らしい作品をガッツリ読んでみたいと思ったなら、こういった作品集から手を着けるのも悪くはないかもしれません。いかんせん多産な作家さまですから(汗)。

10

4度泣く30年愛

あれ?
この本、なんで未評価・初レビュー?

旧版「聖夜」に初期作品「名前のない色」と、「聖夜」の後日譚の書き下ろし「GRAY」を加えて、2段組380ページに及ぶ読みでのある一冊。

「名前のない色」
絵描きと編集者のすれ違い愛。
こちらのすれ違いは、夏から秋へ。
一夏の激情。
本の約半分はこのお話で、これはこれでよかった。

そして表題作「聖夜」。
17歳、27歳、37歳の別れに再会。
それぞれに泣かされて。
書き下ろしの「GRAY」。
ようやく一緒にいられるようになっての47歳。
こういう長い愛の物語に、最後に書き加えるべきお話はこうでなくっちゃと、とどめに泣かされる。
だれもに、幸せなクリスマスプレゼントが届きますように。

7

お願いだから是非読んでみて!!

どうしよう。。。この作品が良すぎて、その後買いだめしてある小説を何冊か読み始めたものの気が乗らない。。。

一冊に丸々二作品込められています。地に足のついた人物設定で、余計に感情移入したのか、聖夜は特にグッと来ました。

女を愛する男と、男を愛する女だけを正とする社会が世界が、変わっていきますように。できれば今すぐにでも。そして、誰もが自分に正直な恋をしていけますように。

7

表題作も同時収録作品も、どちらも素晴らしいです!

レヴューを書くために再読したのですが、この一冊は本当にすごいです。
2作品収録されていれば、どちらか一方は好きだけどもう一方はそれほど好みじゃない、とかありませんか?
この2作品は、どちらも素晴らしいです。優劣付けられません。
どちらも心に残って、しばらく現実に戻れませんでした。
初めて読んだ時よりも、今改めて読み返して、さらにぐっと心に響いた気がします。

夏場は仕事が手につかなくなる画家・水窪ミサと、入社三年目の編集者・藤野渉の『名前のない色』
高校の時に親の離婚で引っ越して行ったアマチと、10年ぶりに偶然再会したシマの『聖夜』
『聖夜』はさらに『聖夜』『青い鳥』『楽園』『GRAY』と繋がっていきます。

どちらも、不倫や浮気が絡んでくるので、苦手な方もいると思います。
私も苦手な方なのですが、この2作品はそれほど嫌悪感が湧きませんでした。
女性の登場人物はBLという作品上、影が薄かったり、邪魔ものだったり、主人公たちの幸せの障害だったりします。
ですが今作では、その女性が強いし、逞しいんです。彼女たちの人物像に厚みがあって、魅力的だと感じました。
むしろ、奥さんがいるのに浮気に走る男どもが薄っぺらい。司馬も内藤も、私は魅力を感じなかったけれど・・・けど、少なくとも付き合っていた頃、水窪やアマチは彼らに惹かれるものがあったのだと思います。
好きになるのに明確な理由なんてないし、長く付き合ったら情も湧くし、別れても忘れることが難しい、という彼らの姿にとても共感しました。

何が正解かなんて多分一生分からない。傷つけて、傷ついて、それでも生きていかなきゃいけないなら、自分は誰の隣にいたいのか、誰と一緒に生きていきたいのか・・・どちらの作品も、登場人物たちが悩んで答えを出すまでが丁寧に書かれています。
大きな事件は起こりません。登場人物の人生の岐路に居合わせる、そんな作品です。
派手さはありません。でも美しく、なのに現実的な物語です。
心に響く作品を求めている方に、是非読んでいただきたいです。

5

古さを感じさせない

作品自体は古いし、出てくるアイテムや事象も時代を感じます。
携帯が無いから公衆電話がよく出てきたり、就職難だったり、阪神淡路大震災だったり。

でもそれが気にならない作りになっていてさすが榎田さんだなと。
個人的には名前のない色が良かったかな。赤が認識しにくいという事象は想像すらできなくて、気にしないようにしていた、押さえ込んでいたものが水窪の才能の復活によって暴かれてしまったことが辛かった。
ただ、それが故に二人の関係が進んで行ったとも考えられるので、これからの二人が幸せになれると良いな、、、、

聖夜の方は、二人とも思いが強い。あれだけの時間(20年?)も寄り道しながらも忘れきれない強い思いって、自分には想像できないし、体験もして無いから本当に凄いなと思う。最後は、シマの娘や義理の父とも親戚付き合い?以上に関係を良好に築けていて、、、、
籍を入れることのメリットというか、入れないことのデメリットを語る場面が印象的でした。ICUに入れない、というところは、那智にも大きくインパクトがあったのだと思います。愛する人の側にいることが認められない身分…だから最後の納得に至ったのかなと思う。

今の時代であれば、病院によっては、パートナとして認められるところもあるだろうし、同意書も認めてくれるところも出てきてるんだろうけど。
それでも、普通の夫婦(そこに愛情が無くて破綻してても)よりも病院との関係や沢山の努力がないと難しいんだろうな。

良い作品でした。

1

北から始まりそして南へ、30年愛

この本の中には[名前のない色]と[聖夜]の2本が収録されているのだが、全部読み終わってみて、ある共通点を見てしまった。
それぞれに、片方が恋人としていた人が妻帯の既婚者であったこと。
それにより、[名前のない色]でのミサ先生は苦しんでトラウマとなる既婚者のずるい姿。
[聖夜]では相手に真摯に向き合う既婚者の姿があり、それにより、20年愛となる部分もあるのだが、それはとてもよい人間関係を築いた。
それぞれの主人公は相手の対応によって両極のモノを抱えるのです。
主人公のキャラクターや設定が違うから別物と言ってしまえばそうであるが、[名前~]は比較的シングル要素なものが全面に出た分、[聖夜]はその後の[GRAY]が入ったことで、アダルティな物語展開になったのだと思う。

[名前のない色]
恋人と別れたことがトラウマとなり、夏になると仕事が全くできなくなる作家水窪の絵にほれ込んだ新人編集の藤野が、秋口に出る新刊のイラストに水窪を起用したそれによって、水窪が立ち直りつつも、藤野が傷ついてすれ違ってしまうというちょっぴり切ない話。
ここでは、どうして藤野が水窪の絵に惹かれたのか、その理由が後半になって明らかになる部分があるのだが、一途な健気さのたまもので生まれた愛情だと思う。
水窪が自ら立ち直れ始めたのはよかったのだが、藤野のダメージが悲しかった。でも仕方ないんですよね。
しかし、ここで登場した水窪の元カレ(既婚者)はめちゃくちゃズルいと思う。
恋は盲目で失敗してしまった一例でもあった。
さて、ここでおや?とおもったのが冒頭の部分に「愛とはいえない」で毎回登場するあの恋についての「落ちる」論説。それがつかわれている部分でした。
榎田さんの恋愛スタンスが、ここにあるのだ、と見えた一端でした。

[聖夜]
高校生の時転校していってしまってそれから音信不通だった相手に再会したのは、婚約者にせがまれて見に行ったマンションの内覧会。
もうすぐ結婚を控えたシマと、恋人がすでにいるアマチ。
過去の気持ちがあるのに、それを言えないで一度だけと関係を持って去るアマチが愛おしい。
そして10年後、妻と離婚したシマはアマチの元カレから分かれたことを聞き、アマチを探すのです。
そして、石垣島での再会!

最初はシマ視点で進み、中盤以降はアマチ、そして両視点で。
再会した10年後という歳月の間にあったアマチの出来事を読むと、彼らにはその初恋を実らすにはもっと年月が必要だったことがよくわかる。
元恋人の内藤、彼はちょっぴり意地悪もしたけど、嫉妬したけどでも、アマチに真摯にむきあっていたのです。だからその後アマチと別れることになった決断も、真摯なカレらしい決断だったと、ちょっぴりさみしいけど、カレは彼なりにとても良い人だったというのがわかるから、すぐシマとくっつかなくてよかったな、って思える。
北海道で始まった恋が東京でニアミスを起こし、そして沖縄で再会して
時間も距離もとてつもない日本列島横断の(?)物語だが、それは彼らの心の変遷の雪解けして花咲く具合にも例えて、いいのだろうか?

なんといっても、それより先更に10年後の46歳の彼らの姿を見ることのできる[GRAY]があるのがいい!
こうしたBL小説を読んでいると、ファンタジーだからそこまでは、、とはいうものの幸せなしかもリアルを感じる中年という姿を妄想だけで補うことが多い中、彼らの姿を見ることは、本編が結構リアルをまといながら進行しただけにあってもいい設定だったと思う。
ユニークなのはシマの離婚した妻の再婚相手が娘が家でしたとオロオロしてアマチに相談していることだ(笑)
そしてその中で、元妻、娘、再婚相手、アマチ・シマ、ともによい関係を築いて互いを認め合っている姿がある。
これこそまさにファンタジーなのかもしれないが、こうあってほしいという読者の願いでもあるのです。

8

切なくて胸が痛い

既刊されていた2冊「名前のない色」「聖夜」に、ショート「GLAY」が収録され、ヨネダコウ先生のイラストの新装版です。

2作品とも、受けが既婚者の恋人と別れて、攻めと幸せになる話です。
ハッピーエンドなんですが、そこに至るまでがなんとも切ないです。人を好きになっただけなのに、一生懸命生きているのに、どうしてこんなに胸を痛めなければならないいんだろう?と辛かったです。

表紙めくってすぐのカラーイラストでは「名前のない色」のちらばる紙の中に座る水窪と慌てる藤野がコミカルに描かれていたので、こんなに切ない展開ばかりとは思わず。すっかり騙されてしまいました!いや、そんな意図はなかったんでしょうけれど。

主役二人の周囲にいる登場人物も素晴らしかったです。
「名前のない色」では、稲美が藤野に語る場面。好きになれればそれでいい、の後のセリフ「相手が生きててくれれば、それでいい」に涙がどっとあふれました。

「GRAY」は、タイトルから「名前のない色」の方かと思えば、「聖夜」の10年後ショートでした。47歳の二人が、縞岡の別れた妻の再婚相手の目を通して語られてます。そしてそれだけで終わらず、那智の視点に変わり…ああ良いなぁという余韻が残ったエンドでした。

不倫、攻めに妻子がいる、他の男との性描写、と苦手な方も多そうな設定ですが、すれ違いや切ない話がお好きな方にお勧めです。

5

読み応えのある2作品収録

2作品の収録。
そして2作品とも既婚男性が重要人物となります。要するに結果的に浮気・不倫案件。

「名前のない色」
年下出版社編集者・藤野と、ゲイのイラストレーター・水窪のカップリング。
元々初恋を引きずる水窪に身体から恋をしてしまった藤野の苦悩の物語。
水窪は身体は許してくれるけれど、心は妻の元に戻ってしまった前の恋人にあって、夏の暑さで仕事もスランプの水窪に振り回され…
モノクロームのイラストで有名な水窪が瑞々しいバラの絵を描き上げた時、藤野は水窪から逃げるように姿を消してしまう。
なぜなのか。それがタイトルとも関連する藤野の秘密ですが、私は全然その真相に気づかなくて、藤野の「それ」がわかった時結構驚いた。でも、恋物語にプラスされるその真相はちょっとtoo much だったかな…
前の恋を引きずる同性の相手、その人は芸術家でエキセントリックで、そんな恋愛にプラスしてそんな事情が…というのは少し過剰だった気がしました。

「聖夜」
高校時代の同級生同士の長い長い愛の物語。
こちらは受けの那智が不憫なのです。
家庭環境、両親の離婚、ゲイバレ、社会人になってからの既婚恋人が自分のせいで離婚…
まだ不幸は続く。
初恋のシマと再会して今カレに嫉妬され、シマには婚約者がいて、元の暴力父が癌になり入院費を無心され、契約をチラつかされて変態男に身体を弄ばれ…
まだ続く。
挙句今カレが別れた娘が事故で障害を負ったため家族の元に戻ってしまい、結局一人ぼっちに。
暗いです。
重いです。
しかし、何もかも失くして身軽になった那智に、新しい人生がやってくるんですね。
ここからは何か違う物語が始まったみたいに、トーンが変わるというか…
やはり「沖縄」の土地が持つパワーなんでしょうかね…那智の元にも陽が射して、熱い風が吹き抜けるよう。
そして、同じく1人になったシマが訪ねてきて、ついに20年愛が成就する。
那智の以前の可哀想さがあるから、良かったなあという感慨しかありません。
巻末の「GRAY」に至っては、その後シマの娘・梨音(りお)が成長し、母、義父、梨音総出でシマと那智のゲイカップルを応援する流れ。おそらく2人は養子縁組をするのでしょう。
長く切ない恋心が物語としてハッピーエンド、2人の人生はまだまだ続く、このエンディングで良かった。
読み応え最高でした。

4

長編

全部で2つのストーリーが入っていました。

2作ともどちらも読み応えがありましたね。
面白かったです。

1つめの作品、編集さんと絵描きさん。
絵描きさんの過去だったり、編集さんの彼女だったり
またその編集さんの目の問題だったり
とにかく色々な要素が入っていて
せつなくなったりワクワクドキドキしたり。
ストーリーの中で活きていて楽しめました。

2つ目の作品は、長い時間のストーリー。
高校生から40代まで。
好きな人のことを10年も20年も思っているという事が
スゴイ事だなぁなんて思いながら読みました。
読後にしみじみ・・・しちゃいましたねw

どちらの作品も、またしばらくしたら読み返したくなるんだろうなぁ
と思わせる作品でした!

3

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