どうしてだろう おまえを見ていると――胸が痛い

指先へと百日紅(さるすべり)

指先へと百日紅(さるすべり)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神2
  • 萌×22
  • 萌4
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
4
得点
30
評価数
8
平均
3.8 / 5
神率
25%
著者
水原とほる 

作家さんの新作発表
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イラスト
祭河ななを 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
LUNA NOVELS
発売日
価格
¥857(税抜)  
ISBN
9784896017816

あらすじ

小さな田舎町で、ある事件から淫売の烙印を押された直海は、酔った男たちに乱暴されかけたところを都会から来た加納に助けられた。直海の過去を知っても変わらぬ態度で接してくる加納に、次第に惹かれる直海だが・・・。
(出版社より)

表題作指先へと百日紅(さるすべり)

東京から来た高校教師 加納義明・29歳
叔父のクリーニング店手伝い 木下直海・18歳

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数4

閉鎖的な田舎の町の、内側に閉じた人間関係って、すっごく怖いな。

一人歩きする噂と無責任なイメージは、被害者がこうむる二次被害的に直海をとことん傷つけてしまいます。
誰にも手を差し伸べてもらえず直海が孤独でいるのも物凄く可哀相なんですが、それよりもっと可哀相だと感じるのは、直海自身がそれに慣れて当然だと受け入れていることです。
なんでなんで?って思っちゃう。
直海のせいだったことなんて、ただの1個もないのに!
どうしてこの子がこんなにもツライ目ばっかりに合ってんの?しかもなんでそれに耐えてんの?
と誰にともなく言いたくて、苦しいやら腹立たしいやら。

そんな中、一人だけ、わだかまりなく直海の心に触れたのが先生だったんですが、この先生と触れ合うことで、ようやくちょっとずつ直海の心が溶けていきます。

終盤の何気ない地の文だったんですが、まさに読んでいた私への答えでもあったな、という文章がありました。
「叔父さんの気持ちを今になって姉さんが話してくれたのは、直海が変わったのを感じて話してもいいと思えたからだろう」みたいな文章でした。
ああ、そっか。と思ったんですよね、この文章を読んで。
叔父さんもお姉さんも、いい人なんだから、もうちょっと手の差し伸べようもあったんじゃないの?と思ってたんですが、それは直海に受け皿がなかったからなんだなと思いました。
それは直海のせいではないとは思うけど。
直海はもう、主張したり自己弁護したりすることを無意味と感じていたし、ここから逃げようという気力も出ないほど、心が死んでたんだと思うんです。
だから叔父さんたちも、抱え込む以外の守り方はなかったんだろうなぁ。
ようやく直海の目が外に向いて、初めて押してやる背中が見えた、そんな感じだったんじゃないでしょうか。

私的にこのお話は、攻めと受けの物語というよりも、直海という人が人らしい心を取り戻して一歩外に踏み出す瞬間と、それを見守り支えた人たちの物語だったように思いました。

叔父さんが直海を可愛がってるんじゃないかな…とは本文中でも感じていたんですが、事実を知ると「可愛がる」どころか「溺愛」だったことにちょっと感動してうるっと来ました。
叔父さん好きでした!
影でひっそり悪者を退治してくれてる剣士とか、マジ惚れる!

このお話は、水原作品には珍しく、しっとりと優しいお話だった気がします。
相変わらず痛い輪姦はあるんですけどね。

3

百日紅

帯『濡れた体で1人にしないでほしい』

ほほう、さるすべりって百日紅って書くのかいのーーとか妙な事に感心しつつ。

噂があっという間に広がってしまう様な田舎町が舞台、農村とか山村系じゃなくて地方都市のもっと田舎版って雰囲気の田舎です。
話の軸としては、閉鎖感があり一度悪い噂が流れてしまうとその偏見の目で見られてしまいそんな中で影で時に大っぴらに忌み嫌われながら成長して過ごしている直海[受]と、突然に産休代理教師としてやってきた「よそ者」の加納[攻]との恋愛なのですが、それと共にじっくり描かれるのが直海と直海の叔父との関係です。
閉塞した田舎町が舞台というのはそれを書く為にも必要な空気感で、それ故に叔父と叔父夫婦の態度というのも納得行く展開になってます。
加納は以前の学校で生徒を救えなかったという自責の念があり、また己自身を見つめている最中というのもあって直海と出会い、会話をして少しずつ少しずつ2人は近付いて行きます、この辺は丁寧で町の噂も交えつつ距離感を縮めて行ってます。
個人的には途中の卒業生達の陵辱シーンはもうちょっと控え目でも良かった気はします、水原さんの痛いシーンは好きなのですがこの作品だとそこが浮いて様に感じたので。
校長との描写が直接的な描写を使わず描かれていただけに余計にそう感じました。
といっても神評価まではいかないですが、萌評価としては十分萌な作品です。
百日紅という背景小道具の効果もあって読後感は甘い感じ。

祭河さんの挿絵はカラーは奇麗なんですが本編内のモノクロになるとデジタル処理の素っ気なさというか、自分的にはそれがあまり好みではないです。
加納の黒髪の影処理とか黒過ぎてよくよく見ないと塗り分け部分が分かりにくいのもちょっと勿体ないなあと思っちゃいました。

1

地味ながら良かった

非常に地味なお話でした。
複数の男たちから凌辱される痛いシーンが一ヶ所あるんですが、そこだけどーんと派手です。さすが水原とほるさん。
あとは、田舎町でイジメに合いつつも健気に毎日を生きてる主人公と都会からやってきた高校の先生との恋を淡々と描いてました。出会いから恋心の芽生え、初エッチ、別離と再会のハッピーエンドまで。
主人公が恋を自覚してキュンキュンしてるところ、微笑ましくて可愛かったな。
脇役ではおじさんが良かったです。
主人公にはナイショで竹刀持ち出して不良どもを叩きのめしてたって、想像したら、おかしいやら可愛いやら。

さくさくっと読みやすかったです。
田舎町の人間関係の描写は、もう一ヒネリ欲しかったな。

1

和食を食べたような、あっさりした味わい

祭河ななをさんの絵ははかなげな印象で描かれているけれど、この作品に登場する主人公達はとても強い人達でした。
辛い過去を持ち、それを諦めて受け入れてただ淡々と日常をすごす主人公・直海が、都会からやってきた、やはり心に傷を持つ高校教師の加納と、心を通わせ、互いを必要としていくお話でした。
しかし、決して傷の舐めあいではない。
一見、そんな傷を持ちながらも互いを誉め合って、力づけ会っているそんな関係ではあると思うけれど、直海が主人公であるとすれば、彼がそんな閉じ込められた境遇から飛び立つまでが重要なストーリーの創りだな、というのはすごく解りやすいです。

舞台が閉ざされた田舎町というのがポイントですね。
そういった町では、少し目立つことがあると人々の格好の興味の対象になってしまう。
そうして何かあれば噂だけが独り歩きして、それに巻き込まれないように、その噂の当人には近づこうとはせずに誰もが距離を置いてしまう。
そんな、町の犠牲になったのが直海とその母親だったのですね。
だから、誰も彼等は悪くないと思っても守ってくれようともしないし、好意的にはしてくれない。
やっと守ってくれる人ができたかと思えばそれは心中未遂事件というスキャンダルに!
母の弟の叔父でさえ、姉である母親に怒りを持っていたために直海に対して素直な愛情をもった態度を取ることが出来ない。
でも、直海は決して一人ではなかったんだと、加納と知り合った事で叔父の隠れた優しさを知ることが出来るのです。

加納は、とても教育というものに対して前向きで教育者としては良い先生だったと思います。
しかし、前任の学校で理不尽な目に合った為に、権力への憤りと、それには自分が自分の目指す教師としてあるべき態度がとれなかったことへの後悔があり、自分は逃げてきたのだと思い込んでいる。
彼がこの町に来た理由を読めば、決して彼は逃げてきたわけではないのだ。
それが、直海と話すことにより、彼が町を逃げてしまわずに、周囲の冷たい目にも耐えていることを強いと思い、偏見のない目で直海を見ることができるから、その言葉はどんどんと直海の心へと響いて、彼の力になるのですね。

結ばれたきっかけは、まるでドラマのように、衝動的に互いを求める姿ではありましたし、恋愛という捉え方をするとそういう点は実に薄い感じがするのですが、人間として、と考えれば、それぞれを高めあう対象としての在り方としては納得できます。
直海が暴力を受けたり、叔父と加納のやり取りなど、ヤマとしては小さなものが点々とある感じでドラマティックな展開ではないですが、淡々として読後感はややあっさり目です。
町に囚われるという設定自体、少し古い感じの匂いがするのですが、それが百日紅という木を縁にして展開という部分、しっとりした味わいと夕焼けの印象の本作でした。

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