悲しみの涙はいらない

悲しみの涙はいらない
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神9
  • 萌×27
  • 萌6
  • 中立0
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
9
得点
91
評価数
23
平均
4 / 5
神率
39.1%
著者
水原とほる 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
ヤマシタトモコ 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
価格
¥552(税抜)  
ISBN
9784861342608

あらすじ

母親に捨てられ、義父の借金のカタとして金融業を営む国枝に引き渡された遥。その美しく儚げな容貌で借金返済のために売春を強要されてきた。男達からの陵辱に耐えるため、固く心を閉ざしていたはずなのに、気まぐれに自分を抱いた国枝の言葉に何故か傷ついてしまう。端整な顔立ちだが冷たい目をした国枝の冷酷さに怯えながらも、垣間見える彼の孤独と優しさに遥の心は揺れ動き…。
出版社より

表題作悲しみの涙はいらない

国枝政信、非情な手段も辞さない取り立て屋
上野遙、国枝に囲い込まれている高校生

レビュー投稿数9

辛かったけどそれ以上に温かかった。

1ページ目から暗い雰囲気で、前半は辛かったです。
遥の両親の失敗や無責任さが、何の落ち度もない遥に降りかかりやるせませんでした。
借金の形に国枝に引き取られウリをさせられて、完済までの果てしない未来に絶望する遥。
それでも”普通の生活がしたい”という思いが遥を支えます。
国枝は、挫けない遥に心を動かされ、きまぐれですが彼を引き取ります。

遥と国枝がじっくりと心を通わせていく過程が温かく、とっても萌えました。
萌えたポイントは、遥の揺れる心と国枝の人となりです。
遥は、国枝と一緒に暮らすうちに彼の本心が見たいと思うようになります。
遥の高校や大学進学の援助をしてくれたり、一方で平然と遥を傷つける言動をしたりと国枝の真意が分からず、遥は翻弄されて疲弊していたからです。
国枝に心を許した後で平然と捨てられたら立ち直れないと、揺れる心が切なかったです。

国枝は遥の繊細な気持ちなど気づくはずもなく、彼なりの(非常に分かりにくい)優しさと不器用さで遥を支えます。
傍から見たら、これ愛情の裏返しだろと思しかえないのですが、当事者にとっては金貸しと債務者という立場である限り、大部分が覆い隠されてしまうのでしょうね。
国枝も不遇の過去を持つ寂しい男です。
不器用であったり決して派手ではない渋さなどの佇まいに、頑なな心が滲み出ているようでした。
だからこそ国枝のデレとか素直な愛の言葉は感動しました。
どちらかというと報いを受けそうな悪人なのですが、幸せにもなってほしいと思わせる多面性のある人物像でとても魅力的でした。

2人は年齢が離れてるし(13歳くらい)、金融屋と債務者という合い入れない者同士に思えます。
しかし、お互い似たような境遇を持ち、心の奥の寂しさみたいな物は共通しているようで妙にしっくりきました。

遥にとって国枝は、初めて触れる大きく優しい愛だと思うのですが、国枝にとってもそうだと思います。
遥と出会ってから国枝は人間的な変化が起きたようなので、これから彼がどう変わっていくのかとても気になります。

6

David Loweのように

文語体を使いますのでご注意を。

正直最初はさしたる期待をしていなかったのだが、一読後評者の期待を大きく裏切っていい作品になっていることに驚愕した。
まず、主人公がどこまでいじらしいのだろうかと思えてならない。完膚なきまでに自己を否定された地点からどのような語りが生まれるのかということに大きなスポットが当てられる。
ついで、マスキュランな男性を水原が否定・排除していることも大きな特徴であろう。一見すると攻め役がマスキュランだといえなくもないが、彼もまた自己が感じた痛みを忘却することなく、たとえ「あしながおじさん」モドキになろうとも、である。
そして、痛みと暴力をどう見つめるかという目線が真剣であること。多くの作品における痛みや暴力は快楽の枠内で描かれるが、この作品ではそうしたものと一線を置いた何かで貫かれていることに注目したい。

イラストのヤマシタトモコもなかなかのイラストを描いている。あとがきコメントさえなければ、なおよかっただろうがそこまでは踏み込まない。

カウントダウンがなる一分間が心の安念になるように、この作品が心の闇を照らす作品であることを願ってやまない。

4

あしながオジさん

最初の方はかなり痛いです、実の母親に捨てられ義父には性的虐待を受けて更には借金のカタに売られて、客を取らされる境遇になった遥〔受〕
ともすれば絶望に流されそうになりながらもそれでもその境遇に身を置いている彼に、遥が売られる借金の原因ともなった金融業の国枝がまるで気まぐれの様に自宅へと遥を連れて来て、学校にも通わせてくれます。
国枝とのセックスは甘いものではないけれど、連日複数の客を取っていた生活と比べれば雲泥の差で遥は国枝の真意を測りかねるまま、彼の元で暮らします。
ラスト近くで国枝の口から語られる言葉で、その行動がどうしてなのかが分かるのですが、ある意味やはりこれは国枝なりのあしながオジさんだったんだなあ、と。

挿絵のヤマシタさんは、木原さんの「薔薇色の人生」の挿絵の時は良いなあと思ってたんですが、なんかこの作品にはあまり合ってない様な気がしました。
ヤマシタさんの漫画は好きなんですけどね、挿絵となるとちょっとなあ…ってのが正直なところ。

6

不器用な足長おじさんと健気な少年の切ない愛

泣けるお話でした。切なさや痛さと優しさが絶妙に調和していて、読後は温かい感動に満たされます。

遥(受)の境遇はひたすら悲惨ですが、彼は「涙はよけいに惨めにするだけ」と決して涙を見せません。健気さがいじらしいです。同時にどこか達観したところが、年齢不相応で、彼の境遇の悲惨さを物語るようで、切なくなります。 

一方の国枝(攻)は、何を考えているか分からない男。気まぐれから遥を引き取り、生活の面倒をみますが、決してやさしく接するわけではなく、時には暴力的に遥を支配する。水原先生いわく「極悪な足長おじさん」。 

表面的には全く正反対に見える二人が実は似ていることが明らかになって行く過程が、二人の気持ちが近づいて行く過程として描かれて行きます。その過程において、「痛い」描写はあるんですが、物語の流れを壊すものではないので、自然に受け止めることができます。この二人が近づいて行くためには、「痛み」を経なければならなかったのではないかと。

国枝が不器用で、遥に執着しているのに、突き放したように冷たく接し(実際はどう接していいか分からなかくてとまどっているのですけどね)、遥は国枝の内面を知りたいと思いながら、それを表に出せず、孤独感を募らせる。傷つけ-傷つけられるという関係でしか繋がることができなかったのは必然じゃないのかな。すれ違いを続けながらも距離が近づいて行く後半以降では、国枝が時々「お父さん」ぽい顔を見せるようになるのがツボでした。

表題「悲しみの涙はいらない」の意味は結末で明らかになり、国枝が遥を引き取った理由や遥に冷たく接していた理由も明かされるのですが、ホント、涙を誘われますよ。遥同様、国枝の不器用さが愛しく思えました。孤独を知る者同士、共に幸せな人生を歩んで行って欲しいですね。

6

極悪な足長おじさん

「極悪な足長おじさん」というのは、水原とほるさん自身があとがきの中で語ってるんですが、まさにその通りだと思いました。
面白かったです。
義理の父親にレイプされた挙げ句、借金を抱えて金融屋の国枝に拉致され、売春させられるハメになった主人公の遥。
その遥がある日を境に国枝のマンションに引き取られて生活や学費など一切の面倒を見てもらうことになる。最初は国枝のきまぐれです。
じわじわとお互いに恋愛感情を持ちはじめる様子が切なく描かれてました。
水原さんはストーリーテラーだと思います。
残虐なシーンを「物語の上での必然」と感じさせてくれる。
痛いけど痛くない、痛いけど切ない、みたいな。

5

理不尽な運命に振り回される少年と素直になれない男

作家とイラストレーターのダブルパンチでKOされました。
ヤマシタ先生は好き嫌い分かれる作家さんなのはわかっているので、嫌いな方には手にとってもらえないかも……というのが難点;;;
でもお話はめちゃ感動モノです!!!!!


あらすじ以上のことを語ると蛇足になる気がするので、読んで感じていってもらった方がいいのですが……レビューじゃないよな、それ^^; 苦笑
序盤は主人公・遥がいかに不遇の人生を歩んできたかを語るので、少々語り口調になっていますが、その淡々とした語りが後で効いてきます。

BLではセックス描写は欠かせないわけですが、こんなに意味のある描写を読んだのは久しぶりな気がします。
遥の心がだんだんとほどけていく様を、そういう描写で描いている…。
徐々に変化していく様子が、より克明になっていたような気がします。
(心が現れやすい行為ですからソレで描くのは当たり前といえば当たり前なんですが…)


以下、p.199~のシーンにツッコミ
・大船の鎌倉方面行きのホームは階段を降りたところです。(not階段を上がったホームでは~)
・JR大船駅から鎌倉駅までは電車で約8分です。(not約30分)

行ったことのある駅なだけに、読んだときに違和感で現実に引き戻されました。
それを気にしなければ話は感動的で素敵なんですが……!
まぁ作者は元・横浜住民らしいですが、きっとあまり大船や鎌倉には行かなかったんじゃないですかね^^;
ちなみに横浜から鎌倉で30分くらいです。

4

優しい少年と、実は優しいおじさんのおはなし

義父の借金のかたに身を売ることになった高校生の遥と、買い受けた金融業の男・国枝の不器用な愛のお話。

高2になるまでにも何かと耐えることばかりの日々を送ってきた遥ですが、義父の会社が倒産し母親は失踪、乗り込んできた金融業者・国枝に身請けされ、借金返済のための売春を強要されるようになります。
ところが突然国枝のマンションに引き取られ復学・受験勉強の日々が始まります。
遥は「国枝のもの」と言われているため彼の命令には逆らえず、逆らっていなくても何かしら逆鱗に触れることがあると叩かれたりするため、国枝に言われるがまま「普通の生活+国枝に抱かれる」毎日を送っているのですが、二人の関係が少しずつ変化していきます。

とにかく遥は自分と言う存在を諦めている様子だし、暴力を振るわれることを極端に恐れて逆らうことをしないため、頭の中で考えていることがあっても言葉に出しません。
どうも、暴力に訴えることもある国枝も実は同じ様なタイプで、彼の考えていることが判明するのはお話も終盤になってからです。そのおかげでもどかしいもどかしい。
しかし、遥が少しずつ国枝に惹かれていく様や、国枝の意外といい人なところがじんわりと伝わってくるのでそこはいいかなっと思いました。

不幸のかたまりのような人が幸せになるお話は好きですが、終盤に入るまで、なぜこういう題名がついたのか分からなかったのです。涙しながら読み終えて納得しました

3

切なさがじわじわと

初めに読んだ水原本はピンとこなかったんですが、この作品は好きでした。

普通に高校・大学行って、普通に教師になって、人並みの生活を送りたいと願っていた遥は母親からは捨てられ、義理の父からは性的虐待。そんな生活の中で全てを諦めてしまった遥の目の前に現れたのは義理の父の借金取り、金融会社を営む国枝であった。
最初は売春をさせられ義父の借金を払うことを命じられますが、ある事件が起きたとき国枝に「どうせ死ぬのなら、自分のための人生を少しでも生きてから死にたいって思ってるだけ」と告げると国枝は何を考えたのかそれ以降、売春もやめさせ一緒に住まわせ学校に行く手配もしてくれます。

一緒に生活を送る中で不本意に身体の関係を持つことになりますが、遥は国枝が背負っている悲しい過去をしったり、優しさを知っていくたび惹かれていきます。一方、国枝も少しずつ惹かれていくんですが何しろ感情表現が乏しいためすれ違ってばかり。その過程がせつなくていろんな場面でホロリと涙を流してしまいました。じわじわ心に沁みついていく切なさがよかったです。国枝の独占欲には少しびっくりしましたw

0

ヘビーでブラックな足長おじさん

電子書籍版では挿絵なし。
義父の借金の肩代わりに未成年の息子を囲い込んで売春させるといった展開が読めるのは2008年刊ならではだな。
未成年絡みのウリ云々なんて今やNGで、その当時では許された痛さ設定だ。

だが、どんだけ痛さ増しになっていくかと思いきや、待っていたのは遙に強要させていたウリを止めさせて休学していた高校に復学させるといった驚きの展開だったりする。
非道なはずの国枝が何故気持ちが切り替わったのか…
「普通に高校を卒業して普通に働きたい」と言う遙の希望を叶えての行動らしい。

う~ん、不遇な身のうえの子に学業などで金銭的な援助の手を差し延べるって、確かに『足長おじさん』を連想したけれどね。
随分とヘビーでブラックな足長おじさんだな。
これって自分の好きな『年上攻め年の差』要素も含まれているのに、紆余曲折の末に結ばれるだろう流れを受け入れていくにはちょっと複雑だった。

遙は義父の借金を背負っている意識が強いし、特殊な環境なのに国枝に感心が移っていく様子はちょっと痛々しい。
事情を知らないとはいえ、そんな遙に告白した同級生の中井くんもいい子だなって感じただけに結局は付き合いを絶つって選択が残念だった。

遙が国枝に精神的にも縛られつつ惹かれていく一方で、国枝のほうがより遙に想いを寄せていくってのは分からなくもないが、「お前は汚れてなどいない、寧ろ綺麗だ」って台詞には"何を今更"感があって白けそうになってしまう。

今まで借金取り立ての為ならば非道な手段も辞さなかったって割には国枝も部下(手下?)のショウも遙にはお人好しっぽい。
まぁ、国枝のこういう気持ちが彼自身変わるきっかけとして必要だったのだろうけれど…
一体、遙のどの部分に周囲を改心させるようなところがあったのかってのがピンとこなかった。

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